前日の取材
飛島工場の取材を翌日に控えた7月29日。
この日は午前中に若田宇宙飛行士の帰国記者会見があったので、機材一式を車に積込み、移動開始。
とは言うものの都内の車移動はメリットが無いため、つくばに車を置いてTXで日比谷へ。
打上げ前に筑波宇宙センターでお会いした時と変わらず、素敵な笑顔で、言葉を尽くして宇宙で感じた事を語る姿は頼りがいのある優しいリーダーと言う感じだ。
会見の模様はYoutube( http://youtu.be/gpQRsuAyP9Y )でご視聴いただけます。
会見後、一度つくばに戻り夕方まで仕事をこなして19時過ぎに名古屋へ向けて出発した。
深夜の移動
19時過ぎに仕事を終わらせて移動を開始。お昼に名古屋というタイミングだと、新幹線こだまで名古屋まで移動する方が安いのだが、北関東から東京を超えて南方への移動でネックになるのは都内の渋滞と通勤ラッシュだ。時間的に通勤ラッシュに重なる為、機材ケースに三脚、さらには脚立の3コンボではまともに移動できる気がしない…車の場合も首都高と一般道での通勤ラッシュは避けられない。その為、渋滞の無い深夜のうちに東京を通過してしまう作戦だ。
取材に備えて体力は温存しておきたいので車中泊は避け、インターネットカフェの座敷席で仮眠をするのが最近のパターン。出来ればちゃんと宿をとって休みたいところだが、深夜に到着して4~5時間寝るだけの為に宿というのはコストパフォーマンスが悪い。しかも、最近のネットカフェはシャワールーム付の店もあるので、重宝している。
そして、長距離移動の定番と言えば。自動設定をしたノートパソコンでのニコ生車載だ。長時間の運転は退屈だが、話し相手がいれば疲れも紛れる。ニコ生の視聴者と音声読み上げでコミュニケーションをとり、道中の相手をしてもらう仕組みを「ニコナビ」と呼んでおり、遠距離取材の楽しみの一つだ。
出発が19時過ぎだった事もあり、早々に空腹に見舞われたが都内で駐車場のある飲食店を探すのは一苦労。途中、鶴見でニコナビで紹介してもらった駐車場のあるラーメン店に入り夕食を済ませる。神奈川ではニコナビでバイパスへの道案内をしてもらい、インターを間違えつつも順調に進む。
今日の経由地、静岡ではシャワー付きのネットカフェを見つける事ができず、一般道からも利用できる牧の原SAのコインシャワーとネットカフェをはしごをする予定だったのだが、ここでもニコナビに焼津でシャワー付きのネットカフェを見つけてもらう事に成功。3時過ぎに焼津に到着し、ニコナビさまさまで眠りについた。
カメラマンと合流
7月30日。掛川で今回カメラマンをお願いする霧島さん(@kirishima_ns)と合流。前回もカメラマンはサークル「液酸/液水」の金木犀さん(@kin_mokusei)にお願いしており、本誌を手に取って頂いた方にはおなじみの顔ぶれと思うが、これにはちゃんと理由がある。大きなロケットの機体を間近に撮影するのは思ったよりも難しく、ロケットの撮影実績のある方にお願いしている次第。両氏ともすばらしい本を出しておられるので、機会があれば、ぜひお手に取って頂きたい。
名古屋
昼過ぎに名古屋に到着。1時間ほど時間があった為、食事処を探すが、工場地帯のため、なかなかお店が見つからない。午後から夕方までの取材になるので、お昼抜きは避けたい所、せっかく名古屋に来た所ではあるが、途中で見つけた吉野家の牛丼でお昼を済ませる…
その後、対岸や、隣地の「木場南広場野球場」から飛島工場を見て時間をつぶす。
左:飛島工場は伊勢湾岸道路の名港トリトンそばの工業地帯の中にある
右:木場南広場 野球場より、中央のクレーンの向こうに飛島工場を望む
対岸より飛島工場を望む。中央、右寄りにロケット運搬用のコンテナが見える。
H-IIAロケット 25号機
ペイロード:静止気象衛星ひまわり8号
機体:H-IIA 202型
フェアリング:4S型
打上げ時期:調整中
25号機は固体補助ブースターを2本装着する202型に4S型のフェアリングを装着するH-IIAロケットのラインナップでも定番のタイプで、今回公開されたのはロケットのうち三菱重工で生産されている1段と2段を合わせたコア機体と呼ばれる部分で、フェアリングは川崎重工。SRB-AはIHIエアロスペースで生産され、すでに種子島へ搬入済みとの事。
工場内では1段と2段はまだ分離した状態なので、オレンジ色の1段とカーボンブラックの2段は並べて置かれている。
ロケットに装着されている銀色のリングとオレンジの金具は運搬用の治具なので、最終組立てで外される。直径4m長さ31mのロケットに対して華奢に見える台車がロケットの軽さを物がっていると感じた。作業時には作業がしやすいようにロケットをバーベキューの様に回転させることができるそうだ。
変更点
今回のペイロードは気象衛星ひまわり8号。2008年に14号機で打上げた「きずな」以来の静止衛星だ。打上げ重量は3.5トンでH-IIA202型の静止トランスファ軌道打上げ能力の4トンよりも軽く余裕がある事から、従来、種子島からの打上げでは軌道傾斜角を28.5度にするのが最適とされていたが、今回は軌道傾斜角を22.4度で打上げるそうだ。この点は機体の性能向上ではなく、あくまでロケットの余剰能力によるものとの説明だった。
軌道傾斜角が浅いと言う事は、種子島から赤道に向けて打上げられた後、静止軌道(赤道上)に遷移する際に人工衛星が使用する燃料が少なくて済むと言う事になる。今後、更にペイロード(人工衛星)の負担を軽くするため、高度化した2段ロケット(P6の右下に見える白い機体)の開発を進めているところだが、今回の打上げでペイロード分離後の2段を使用した高度化実験などは特に計画されていない。
また、今回の主な変更点としては、SRB-Aの分離を確認する為のカメラ映像を1つに合成をする事で、画像圧縮伝送装置を2個から1個へ減らし、重量とコストを削減している。搭載機器はある程度まとめて箱の形で搭載しているが、今回、画像圧縮伝送装置を含め、合計3つの箱を削減している。
画像提供:三菱重工