ユーザーブロマガは2021年10月7日(予定)をもちましてサービスを終了します

まさか自分が新聞の勧誘にのってしまうなんて その③
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

まさか自分が新聞の勧誘にのってしまうなんて その③

2021-06-20 17:01


    [前回のお話]

    まさか自分が新聞の勧誘にのってしまうなんて その①

    まさか自分が新聞の勧誘にのってしまうなんて その②






    「...すいません...印鑑をどこにしまったか忘れて...」



    そう、見当たらない。いくら探しても、しまっておいたであろう場所に印鑑が無い。ズボラな私にありがちなことだ。
    私はこれをチャンスと捉えた。印鑑がなくては、契約も何もできないはずだ。ズボラな面は紛れもなく私の「地」の部分。
    さぁ、ようやくお互い、地で勝負する時が来たではないか。





    「あ、でしたら全然サインでもいいですよ!」





    いいんかーーーーーーーーーーい







    後に調べて分かったことだが、内閣府の発行している、押印に関する書面の中には「書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。」と記載されている。
    「特段の定め」とはどんなものか詳しく知らないが、契約の中にはハンコなど要らないものもあるのだろう。よく考えてみればうちのWi-Fiの設置も、印鑑など押した記憶はない。スマホだって電子契約であった。



    かくして、完全に私の敗北が決定したのだ。つい先程身の半分を玄関に入れたばかりのイケメン新聞屋は、いつの間にやら完全に玄関に入っていた。これは家宅侵入罪ではないのだろうか。しかしもはや、今更それを咎め、帰ってもらうような気力は私に残されていなかった。あとは言われるがまま、住所と氏名、そしてサインをするのみである。




    「これ、僕の娘です!」




    書いている途中で、スマホで撮影した娘さんの映像を見せられた。
    ふざけるな。1歳前後の娘なんて可愛いに決まっている。




    「あは、可愛いですね...あはは...。」




    気のない返事を返しつつも、ペンを進める手が止まることはなかった。





    「本当にありがとうございます!あ、お兄さんいい人なんで、商品券もっと差し上げますね!いや〜本当によかったです!」



    「はは...あなたも、上手いですね...」





    「いい人」とは今の自分にとって最高の皮肉であるものの、お互い最後はお世辞で締めくくり、この攻防は幕を閉じた。




    「本日は本当にありがとうございました!お兄さんも頑張ってくださいね!あ、あとからやっぱり契約やめますって言わないでくださいね!?そしたら僕の実績がつかなくなっちゃいますから!!ホントに、それだけはお願いしますね!?」



    「はいはい、しませんから。あなたも頑張ってください。」




    そう言ってドアを閉じようとした瞬間、彼は最後にもう一つだけ、私に質問した。




    「あ、親御さんとかに何か言われたりしないですか!?契約したこと怒られたりとか...大丈夫ですか!?」



    「大丈夫ですよ。一人暮らしですし。」



    「あは、そうですよね!僕らもう2□歳ですもんね!ははっ!では!!」




    ガチャン。




    可愛いかよ。はは〜ん...さすがイケメンだ...。
    これは「顔が」という意味ではない。
    人当たりの良さそうな雰囲気で相手を油断させ、少し距離が縮まったタイミングで自分の弱みを露わにし、相手が同情したのを見計らって要求を迫るそのスキル...それ自体がいかにもイケメンらしいって意味だ。
    営業の仕事はしたことが無いので研修中にどんなことを教わるのかは知らない。だが仮に今のような技術を教わったからと言って、まだ経験も浅いであろう研修生が実践で使いこなせるだろうか。



    否、恐らくお前は、仕事上のやり口としてだけではなく、今までもそのようにして人間関係を上手くくぐり抜けてきたのだろう。そしてその延長で、今の奥さんを捕まえたのではないだろうか...。


    もちろん、全ては私の偏見だ。だが嫉妬からの偏見ではない。ここまで鮮やかに、そして最後は持ち前の可愛らしさでしっかりオチをつけられてしまったので、その一連を思い返すとすがすがしくさえ思い、なんとなく彼の人間性というものに想像を張り巡らせてしまったのだ。



    しばらくそんな余韻に浸っていると、さっきまで忘れていた眠気も再び押し寄せてきた。



    (今日はさっさと寝よう。編集だけ早く終わらせるか...)



    そう思い、部屋に戻ろうとしたついでにふと、手に持っていた契約書の控えの、裏に目をやってみた。





    『契約して8日以内であれば、クーリングオフが使えます』






    ...クーリングオフ、か。




    終わり。





    -後日談-

    昨日、クーリングオフで解約をしました。
    クーリングオフという言葉を目にした瞬間、もらった品は使ってはいけないだろうと思ったので、全て未開封、未使用の状態で保管しておきましたが、やはり返すことになりました。その際は会社の人間がもう一度訪問をしてくることになったので、さらにもう一押しを粘るのではないかと疑った僕は、前回の失敗を省みて、服装はできるだけきっちりとし、あとは少しでも威圧感が出るように髪をワックスで固め(普段あまりしないのに)、インテリっぽいメガネをかけてついでにネックレスもして、靴は革靴を履いて挑みましたが、普通に品だけ渡してあっさり終わりました。
    コメントでも言われましたが、疲労状態で訪問販売に挑むもんじゃないですね。ましてや僕のような情に弱い人間が。彼には可哀想ですけど、しっかり寝た後に正常な判断能力を取り戻した上で、今回は自分の都合を優先いたしました。まさに敗者復活です。

    印鑑はまた探しておきます。





    【おことわり】
    偏見と称していくつかの意見を述べましたが、あくまでこの体験で自分がその時感じたことを書いたまでですので、それを助長する旨ではございません。また、訪問販売を批判するつもりもございませんのでご了承ください。

    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。