• 深海紺「春とみどり【1】」

    2019-04-14 12:42


    好きだった親友が亡くなり、その親友の娘(!)を引き取ることなったOL、そんな複雑な年の差同居百合を描いた深海紺先生の「春とみどり【1】」が発売されましたね。

    人見知りが激しい31歳のOLみどりですが、中学時代(!)から片想いしていた友達つぐみが急逝したことを知り、葬儀に参列しますが、そこでつぐみそっくりの娘春子に出合います。
    さらに、残された春子を取り巻く複雑な事情を知り、思い余って春子を引き取ることになりますが…。

    そんな今まで顔も見たことがない母娘のような二人の同居生活が、深海先生のシンプルで淡い絵柄によって、時にはぎこちなく、時にはコミカル(?)に綴られていく様が、とても新鮮に感じました。

    そして、みどりからは人気者に思えたつぐみも、実はみどりのことを大切に思っていたことが徐々に分かってきたり、そのために春子もドジっ子的なみどりに反発することなく、みどりとつぐみをつなげていた「お弁当」が、今度はみどりと春子をつなげていく展開にはぐっとくるものがありましたね~。

    あと、春子が引き取ってもらったことを後ろめたく思わず、逆にみどりを支えようとしてくれているところも、すごくよかったです。

    この作品は、決して王道とはいえないと思いますが、それでも奇をてらわず、ダークさを強調したりせず、真っ当な「百合」になっているところが素晴らしいと思いました。

    深海先生には、これからも二人のハートウォームな同居生活を描いていってもらいたいと思います。

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  • 犬井あゆ「定時にあがれたら【1】」

    2019-04-14 09:53


    犬井あゆ先生による王道社会人百合「定時にあがれたら【1】」が発売されましたよぉぉぉ。

    営業の湯川さんは、前から気になっていた企画の水城さんとちょっとしたことで知り合い、一緒に食事をする仲に。
    しかし、そんなことを繰り返すうちに、それ以上の関係になることを望んでしまった湯川さんに、水城さんは「お試し」で付き合う、ということにしたのですが…

    ということで、同じ会社でも部署が違うためほとんど接点のない二人が、コートのポケットにメモを入れて食事の約束をしたり、休日デートで終電を逃して一緒にお泊りとか、さらには百合の定番(!)「水族館デート」とか、風邪の看病とか、王道な展開を積み重ねながら、湯川さんと水城さん、双方の気持ちの揺れを丁寧に描いているのに、非常に好感が持てました!!!

    あと、社会人百合というと、会社内のイザコザとか、社会人ならではのメンド臭さとかを前面に出すことも多いのですが、その点この作品は、主役二人の想いにポイントを絞ることで、サクサク読めるのがとても心地よかったです。

    ともかく、まだ続いてくれるみたいですから、あゆ先生にはこのまま百合の王道を突っ走っていただきたいと思います!!!

  • 百合姫における連載打ち切り危機について

    2019-04-09 22:078
    先日、現在「百合姫」で連載中の岩見樹代子先生の「ルミナス=ブルー」、結野ちり先生の「スカーレット」、ゆあま先生の「イケメンすぎです紫葵先パイ!」の3作が、単行本1巻の売り上げ不振により打ち切り寸前の状態であることが突然ツイッターで明らかにされ、私を含む百合関係者の大きな反応を引き起こしました。

    私個人としてもこの3作は、以前の百合姫連載作に比べ、編集部のアイディア先行で作家さんの個性を殺すような「コレジャナイ感」が感じられず、安定した面白さを発揮していたため、少なからずショックを受けたというのが、正直なところでした。

    もちろん、昨年に百合アニメや一般誌での百合作品の新連載が多発されたことで、今年はその反動による供給過多が懸念されていましたが、当の百合姫を中心とした百合アンソロジーラッシュなどが続き、一見、百合の定着と勢いはまだ持続しているように錯覚されていましたが、今回の出来事で、百合で盛り上がっているのは極一部のみであり、シーン全体は非常に危ういことが露呈したと思っています。

    まあ、百合姫自体はずっと以前から作家さんを出しては捨てるの繰り返しで、ある程度辛抱強く作家さんを育てていくという発想が欠けていたきらいがあったのですが、月刊化当初の打ち切り連発の惨状に少しは懲りたかと思っていた矢先に、このような危機的状況が持ち上がったのは、私とすればこの出版不況の最中に月刊化を強行した編集部の責任が非常に大きいと思っています(月刊化すれば、単純に隔月刊時代の倍(!)の量の単行本が刊行されるわけですから、よほど売れないかぎり以前の売り上げを維持するだけでも難しいのは、素人でも分かりますよね)

    しかし、今回の問題は、ただ百合姫編集部を叩けば済むものではなく、友情から性愛まで、学生から大人まで、良くも悪くも非常に表現の間口が広く、ファン同士でも様々な好みの違いが出てしまう「百合」というジャンルを「いかに売るのか」という難しさが改めて問われているのだと思います。

    例えば、「百合」を「友情」「恋愛」「性愛」「学生」「大人」「年の差」といったように細分化した上で、特化して売るというのも一つの手段かもしれませんが、細分化や差異化自体が目的となり、「百合」という「一つのジャンル」が持つ幅広さが分断され、台無しになる危うさもあります。

    あるいは、コアなファンを囲い込むことで、ヒットなど狙わずに、ある程度持続可能な収支の範囲内で安定的な運営を目指すという道もあるかもしれません。

    いずれにしても、私とすれば、「百合」を作り続けたいという作家さんの想いが一番大事だと思っていますので、クラウドファンディングを含めた「百合」供給の選択肢がより増えて、百合作家さんが報われることを願いたいものです。