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    • 2019/07/19
      岡田斗司夫プレミアムブロマガ「21世紀の『ローマの休日』になった、新海誠の『君の名は。』」
    • 2019/07/20
      岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『君の名は。』完全解説と、もしも3つの願いが叶うなら?」

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『君の名は。』解説:複雑な仕掛けは抑えて、ベタなドラマ作りに徹した新海誠の割り切り」

    2019-07-18 07:002時間前
    216pt

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/18

     今日は、2019/06/30配信の岡田斗司夫ゼミ「『君の名は。』完全解説と、『なつぞら』『ガンダム THE ORIGIN』、プラス6月のお便り&ステッカープレゼント」からハイライトをお届けします。


     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。
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    nico_190630_03146.jpg【画像】サロンオフ会より

     じゃあ、どんなドラマを隠したのか?
     続きの映像をこれから見てもらいます。

     テーマとストーリーの関係性についての話なんですけど。
     これも同じく2016年の9月に話した映像です。
     それでは、よろしくお願いします。

    (録画映像開始)

     テーマとストーリーの関係なんですけど。

     今回、映画の中に「結ぶ」という言葉が出てきています。
     「結ぶ」という言葉とか、あと組紐という、細かい糸を撚って紐にするというのが、何回か出て来るんですけど。
     お話としては、「1つの円環の中で、同じことが繰り返され、いろんな時間軸でいろんな事件が組み変わることで、話の糸を紡いでいく」というふうになっています。
     つまり、「結ぶ」、「結う」というのが、お話全体のテーマとして流れているんです。

     主人公の三葉と瀧は「お互いの身体が入れ替わる」という体験をするんですけど。
     三葉が、それをお婆ちゃんに話した時、お婆ちゃんが「ああ、身体が入れ替わる、そんなこと私にもあった気がするわ」と言うんです。それどころか「お前のお母さんにもあったんじゃなかったっけ?」と言うシーンがあるんですけど。
     つまり、この神主の一族……三葉は神主の一族なんですけど。神主の一族は、昔から思春期になると、どこかの誰かと身体が入れ替わったみたいなんですよね。
     こういう話が、ごく自然に入ってくるんです。

     「三葉と瀧は身体が入れ替わるんですけど、お婆さんも誰かと入れ替わったことがある。お母さんも誰かと入れ替わったらしい」と。
     でも、劇中では、お母さんが誰と入れ替わったかが、描かれてないんですね。
     ただ、描かれてないだけで、わかるようになっている。これ、実は三葉のお父さんなんですね。
     だからこそ、町長であるお父さんのところに、三葉が「みんなを避難させなければいけない!」と言いに行った時、その理由を告げるまでは、お父さんは全く納得しなかったんです。でも、三葉が「自分は身体が入れ替わったんだ」ということを言った瞬間に、お父さんは彼女の言葉を信じたんです。
     お父さんが、なぜ、それまで再婚しなかったのか? なんで、お母さんのことをずっと大事に思っていたのかというと、こんな体験があったから。
     だからこそ、娘の世迷言のように聞こえた話を、お父さんも本気にしてくれて、「ああ、じゃあ、本当に隕石がこの場所に落ちてくるんだ」と信じてくれた。
     でなければ、お父さんの心変わりする理由がないんですね。

     映画の中では、三葉がお父さんのところに行って、真剣に「お父さん、話を聞いて!」と言うところまでしか描いてないんですけども。
     その後は、もう全て終わってて、「町長が急にすごい指導力を発揮して、村民を避難させた」という新聞記事が出ているだけなんですよ。
     なぜ、このお父さんが動いたのか、全く説明がない。
     でも、それは、「思春期に誰かと入れ替わるという関係が、三葉の一族それぞれに成立してたから」なんですね。

     つまり、この『君の名は。』というお話では、時間的、空間的な部分で、多重構造的に「結ぶ」ということが行われているんです。

     では、ティアマト彗星の軌道図というのを考えてみましょう。
    (ホワイトボードに図説する)

    nico_190630_03607.jpg【画像】彗星の軌道

     まあ、いくつか間違いも指摘されていますけど。太陽があって、その周りを地球が回ってる、と。
     ティアマト彗星は1200年に一度、太陽系外から地球の近くを通って、太陽の方に行く彗星です。
     なので、彗星の位置がここにある時は、尾がこのように伸びていきます。太陽風で彗星の尾というのは伸びていくからですね。

     今回は、この彗星が2つに割れ、その破片が地球に落ちたことで、大災害が起こります。
     ところが、彗星が落ちる前のこの村の写真というのを見てみると、巨大なクレーターのようなものがあって、その真ん中に神社があるんですね。この隣に村があるような構造になっている。
     もちろん、このクレーターというのは、1200年前に彗星が落ちた時に出来たクレーターです。
     つまり、「この村に彗星が落ちる」という事件は、さっき言った「三葉、お母さん、お婆さんそれぞれが、思春期に誰かと身体が入れ替わる」というのと同じく、過去に何度もあったのかもしれない。1200年前、2400年前という周期で、あったのかもしれない。
     そして、なぜ、こんなことが繰り返されるかと言うと、「かつて地球に落ちて来た隕石の欠片が、ティアマト彗星にもう一度会いたいと思ったから」なんですね。

     お話全体は「七夕」なんですよ。
     2つに分かれたもの同士が「もう一度会いたい」と願う。これは、人間であっても隕石であっても気持ちは同じなんです。その願いが奇跡を起こす。
     ただ、星の願う奇跡というのは、人間界にものすごい迷惑をもたらす。
     なので、まるでウルトラマンが「ハヤタ隊員、私は命を2つ持って来た」と言うように、この村に住む一族に超能力が与えられて、せめて人間が、そこから逃げるようなチャンスを与えてくれたのかもわかりません。

     「星と星とのもう一度出会いたいという思いは、確かに1200年に一度、叶うんだけど。その度ごとに、地球人類にはエラい迷惑が掛かる」と。これ、この太陽系というスケールだけで見ると、そういう話なんですけど。
     ところが、太陽系自体も、ペテレルギウス座だったかな? その辺りを中心とした巨大な円周軌道を回っています。そして、この円周軌道自体も、巨大な銀河平面に対して回転しています。
     銀河を真上から見ると、渦巻き状になっていて、地球はその第3渦状腕だったかな? 中心から3.5光年くらい離れたところで、1周辺り10億年くらいの時間を掛けて回転しています。
     なので、太陽の回転というのは、銀河平面上で見ると、このような渦巻状になっているわけですね。
    (銀河の中心に対して、受話器のコードのような軌跡を描きながら回る図を描く)

    nico_190630_03821.jpg【画像】太陽の軌道

     それに対するティアマト彗星の軌道は、この渦巻状に移動する太陽系に出会うために、このようになっているわけです。
    (太陽系の軌道に絡まるように飛ぶ、ティアマト彗星の軌道図を描く)

    nico_190630_03833.jpg【画像】彗星の軌道

     こんなふうに、かなり複雑なものになっていると思われます。

     これが、お話全体のテーマ、「結ぶ」なんですよ。この中で、奇跡が起こったり、何かをしたりする。
     人の縁そのもの指す言葉である「結ぶ」とか「結う」。それと対応するように、映画の中には糸を撚る、紐を組むシーンが出てくるんですけど。それと共に、銀河平面で見た太陽系の軌道と、それに絡み合うように進んでいるティアマト彗星の軌道という全体が、大きい1つの糸を作っているんです。
     つまり、そんな中で、1200年に一度だけ出会える彗星が、離れ離れになったもう1つの片割れに「もう一度会いたい」と思っているからこそ、起こるドラマなんです。
     さらにその中で、一度別れた、もう二度と会えない相手に会いたいと思う人間が、心の入れ替わりみたいな奇跡を起こして、それが代々受け継がれて行く。
     そんなふうに、物語全体が「結ぶ」とか「結う」、糸から紐が組まれていくような構造で出来てるんですね。

     なので、新海誠としては、それまでの宇宙モノとかを合わせた集大成としてやっているんですけど。
     この辺りの説明を全て諦めてまで、ベタな泣かせドラマに集中したというところが、「すげえよ、新海! よく割り切ったな!」と思うんですけども(笑)。

     面白いのは、三葉の友達にテッシーという、ざっくばらんな男の子がいるんですけど。
     このテッシーは、最初、自転車に乗ってるんですね。テッシーはこの自転車を「行って来いや! この村を救って来い!」みたいな感じで、三葉に貸してくれるんですよ。
     で、三葉はその自転車で走って行くんですけど、途中で転んで、自転車を壊してしまうんですね。
     なので、その後、瀧とクレーターで出会った後で、三葉はテッシーに「ごめん、自転車、壊しちゃった」って言うんですけど。テッシーは「何のこと?」って言うんですよね。

     なぜ、ここで「何のこと?」と言ったのかというと、実は、瀧と三葉が出会った時に、もう時間軸全てが変わっちゃったんですね。
     テッシーが自転車に乗っていない世界にズレちゃってるんですよ。
     この世界では、テッシーは自転車に乗ってなくて、ずっとバイクに乗っている。その後、そのバイクを貸してくれたんですけど。
     ここからもわかる通り、実は、時間軸のズレというのは、かなり早い時点で行われているんですね。

     まあ、でも、そこら辺の説明も全て抑えて、「もう描かなくてもいいや!」と排除して行って、ベタなドラマにしているところが面白いと思いましたね。

     あとは、「ティアマト彗星の軌道が曲がっているように見えて、ちょっと変だ」というふうに、SF作家の山本弘さんが指摘されてて。まあ、天文学的に考えればそうなんですけど。
     ここら辺も、作画ミスと考えることもできるんですけど。その他にも、「いや、そうじゃなくて、これはこの星と星とが出会いたいからだ。作為的なリードなんだ」というふうに考えることもできるんじゃないかと思ってました。
     まあ、99%作画ミスだと思いますけどね(笑)。

     そんな感じがしますということで、ロー・ドラマの名作、『君の名は。』の話はここまでです。

    (録画映像終了)

     はい、どうもお疲れ様でした。

     コメントを見てたら、「新海誠はそこまで考えていたのか?」と言う人がいたんですけど。考えているに決まってるんですよ。
     ええとね、アニメの監督って、たぶん、普通の人が思っているより100倍考えています。これ、本当に真面目な話。
     100倍考えた上で、「これをどこまで見せようか?」というのを調整しながら出してるんです。

     それまでの新海誠は、そういうのを「わかってほしい! わかってほしい!」という出し方をしてたんですけど、「やっぱり、それでは売れない」というのがわかるわけですよね。
     そこで、「あくまでベタなドラマを提供して、そのバックグラウンドの方に自分の言いたいことを引っ込める」ということを徹底的にやった。そのおかげで、プロデューサーの思惑通り、ちゃんと当てることができたんですけども。

     まあ、解説の中で、いくつかミスがありました。地球はですね、銀河の中心から「3.5万光年」です。3.5光年のはずがない(笑)。
     あと、銀河の自転って、僕が昔、本で読んだ時は、「10億年」と書いてあったんですけど、最近は「2億年から2億5千万年」となっているそうです。
     ちょっと、そこだけ修正しておきます。

     なぜ、町長である三葉の父が、三葉の言うことを信じて町の人達を避難させたのかというのは、映画内ではほとんど説明されてないんですね。
     これも、やっぱりわざとなんですよ。新海誠は、これを説明しようとしたら、そういう脚本も描けるわけですね。でも、それを描かないわけなんです。抑えるわけですね。
     「そうか! 三葉の父も、三葉と同じように、昔、入れ替わった記憶があるんだな! 構造的に重なっているんだな!」というのは、気が付ける人にだけ気付いてもらおうというふうになってるんですね。

     これに気付かないような人というのは、とりあえず主題歌をガンガン掛けて、盛り上げたら、勝手に感動してくれるわけですよ。
     そうやって、「ベタで盛り上げつつ、映画の構造的な面白さというのも、わかる人にだけわかるように、あえて後ろに引っ込める」というところが、この『君の名は。』の、世界映画としてメジャーを狙ったところだと思います。
     「ティアマト彗星が、地球に落ちた欠片に会いたがって、1200年に一度地球に欠片を落としてくる」という、七夕のような、大変ロマンチックなお話を、夏に持ってくる。もう「この映画で当ててやる!」という勢いを感じる戦略、僕は好きですね。

     「テッシーという友達の自転車を壊したことは、映画の中ではクライマックス以降、なかったことになっている」ということで、世界線がそこで切り替わっているんですけど。これも、気が付く人だけが気が付けばいい。
     もうね、新海誠は変わりましたよ。『秒速5センチメートル』とかだったら、絶対にいくつも映像的な伏線を持ってきて、押し付けるように説明してたのが、そこら辺サラッサラになってきた。
     なので、『天気の子』も、たぶん、やるとしたらこのベタ路線だと思うんですけど。どれくらいやるのか、ちょっと興味がありますね。

     この辺りの仕掛けを、わかる人だけにわかるようにするというのは、作家としてはかなりシンドいんですよ、正直言って。
     さっきも言ったように、作家というのは、僕らが考えるよりは10倍100倍は考えているんですけど、どうしても「わかってほしくなる人種」なんですね。
     で、この「わかってほしくなるバルブ」というのを、どれくらい開けるのかによって、やっぱり、その作家の格みたいなものが変わるんです。

     あの、皆さんもご存知の通り、僕の中で『けものフレンズ』という作品の評価が大変低いのは、そのバルブがガバっと開くからなんですよ。
     「なんじゃこりゃ!?」ってくらい、かなりガバっと開いて、「はいはい、そういうことをやろうとしているのね。ほた見ろ、普通のアニメファンでも気が付く出来になってるじゃねえか」って思うから、「ああ、俺はもういいや」ってなっちゃうんですけど。
     ……ああ、2016年の口の悪い俺に戻ってしまう、アハハ(笑)。

     でも、新海誠のこの『君の名は。』の場合は、これを思い切って隠しているから、ドラマとしては、あくまでもベタに進行できる。
     このアニメは、作品としての側面と、商品としての側面、2つを持っていることになると思います。

     今、ちょっとコメントで流れたんですけど、そうなんです。宮崎駿って、ここら辺のバルブが、割りと開いちゃうタイプなんですよね。
     『未来少年コナン』とかを見たら、バルブが開いちゃってるんですよ。なので、一生懸命、たぶん、鈴木敏夫さんに言われて閉めようとした。
     その甲斐あってか、『ナウシカ』は、割りと開け気味で作ってるんですけど、ジブリというスタジオが出来てからは、バルブを閉め気味にして、1回見ただけでは見抜けないような構造にしているところが面白いと思います。
     ……ああ、そうですね。高畑勲さんのバルブは逆に硬すぎて、俺でもシンドいです(笑)。

     兎にも角にも、『君の名は。』というのは、商品と作品という2つの部分を合わせ持ったまま出したので、国民映画として成立したと思います。
     『シン・ゴジラ』で、「ゴジラの正体は、人間が変身したものだ」という設定を、いまだに徹底的に隠しているのと同じです。これを隠すことによって、ゴジラが暴れるシーンというのに、映像的な快感を与えることに成功したわけですね。


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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『君の名は。』解説:大ヒットの鍵は「作家性の諦め」にあった」

    2019-07-17 07:00
    216pt

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/17

     今日は、2019/06/30配信の岡田斗司夫ゼミ「『君の名は。』完全解説と、『なつぞら』『ガンダム THE ORIGIN』、プラス6月のお便り&ステッカープレゼント」からハイライトをお届けします。


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    『君の名は。』と『Gu-Guガンモ』のドラマ構造

    nico_190630_01640.jpg【画像】スタジオから

     じゃあ、『君の名は。』の話に行きましょうか。
     今日の第1特集です。新海誠監督の『君の名は。』ですね。

     これについては、まず、映画公開当時に僕が語った解説があるので、その録画映像を見ていただきたいと思います。
     2016年、今から3年前の9月4日に、サロンのオフ会で語った、ほぼ10分間の映像です。
     この録画映像が終わった後に、また生放送の方に戻りますので、そのままお待ちください。

     それでは、岡田斗司夫ゼミの2016年9月4日号として公開した、3年前の映像です。よろしくお願いします。

    (録画映像開始)

    nico_190630_01733.jpg【画像】サロンオフ会映像

     『君の名は。』というのは、飛騨の山奥に住んでいる女子高生・三葉と、東京に住んでいる男子高校生・瀧の話です。
     ……ネタバレですよ。大丈夫ですね?

     ある日、この2人のお互いの身体が入れ替わっちゃった、と。
     まあまあ、「わあ! 俺、女の子になっちゃった! ……おっぱいモミモミ」みたいなやつがあって、「わあ! 私、男の子になっちゃった! おしっこに行く時に、なんか変なものがついてる!」みたいなものもあります。
     で、お互い、自分が持っている携帯にメッセージを残すことを思いついて、2人のコミュニケーションが始まる。一度も会ったことのない2人は、徐々に互いに気になる存在になりました。

     それと同時に、映画の中でも最初から語られるのが、1200年に一度、地球に接近するティアマト彗星ですね。この彗星が、どんどん近づいて来る。
     実は、この女の子というのは、3年前に死んでいるんです。
     「お互いの身体が入れ替わった」と思ってたんですけど、実は「3年前の女の子と、現代の男の子が入れ替わった」という話で出来ています。
     ティアマト彗星は、地球に近づいて来る時に2つに分かれて、彗星の欠片が女の子の住む村に落ちて来て、その村全てが消えてしまう。「これを知った2人が、なんとかして全滅してしまう村からみんなを逃がそうとする」というのが、お話のクライマックス辺りのプロットになっています。
     結局、ちゃんと成功はするんですけどね。

     瀧と三葉という2人の高校生は、その消えてしまった村の、クレーターの端で、黄昏時、逢魔が時に出会うんですね。
     その時間だけ奇跡が起こって、時間を超えて2人は出会う。お互いに「あなたのことは絶対に忘れない」と言い合って、「みんなを助けよう」と決意する。
     しかし、確かに覚えていたはずなのに、2人共、記憶がどんどん薄れて行くんですね。絶対に忘れたくない、覚えておきたいことなのに、どんどん忘れてしまう。
     それでも、肝心なことだけは覚えていて、「このままでは村が滅びる。だから何とかして、村の人を騙してでもいいから、避難させなきゃいけない!」ということで、女子高生の三葉は、学校の放送部から嘘の避難放送をして、村の人を動かそうとするんです。でも、村の人は動いてくれない。
     そこで、村長だったか町長だったかをやっている三葉のお父さんに、話をしに行って、「最初は信じてもらえなかったのに、最後は三葉の熱意がなぜか通じたような形になって、協力してくれて、みんな助かる」という話になる。

     で、最後、もう、それから10年後くらいに、2人は東京の街で偶然出会うんです。
     それまで、2人共「何かが足りない。自分は何かを探しているはずだ。何か思い出せなかったことがあったはずだ」という思いを抱きながら、10年くらい生きてたんです。だって、お互い、もう名前も何も覚えていない状態ですから。
     そんな中、東京の街で偶然、出会った2人は、お互い振り返って、「君の名は?」というのを聞き合う。再会できたわけです。
     その時に、「2人共、なぜか、すれ違った時から涙が止まらなかったから、わかった」という話になっているんですね。

     「この構造、どこかで見たことあるな」と思ったんですよ。
     何かというと、少年サンデー原作版の『Gu-Guガンモ』なんですね。

     『Gu-Guガンモ』のメインキャラクター「ガンモ」というのは、高い空が飛べない鳥だったんですけど、最終回の間際になって、やっと飛べるようになった。そしたら、ガンモが空を飛ぶ時、なぜか、その周りで、いろんな鳥が一緒に飛ぶようになるんですね。
     その時から、話が「あれ? ガンモって、ダメな鳥だと思ったけど、鳥の王様みたいだな」というふうになるんです。
     そしたら、夜中に変な使者が来て、ガンモに「あなたは実は鳳凰なんです」と告げるんですね。

     ガンモって、ドラえもんみたいな、コーヒーを飲んだら酔っ払う、人間の言葉を喋るキャラクターなんですよ。
     でも、この姿は卵体という、巨大な卵だったんですね。卵に手足がついて羽がついた存在。だから、ちょっと飛べて話せるだけだったんですけど。その中には、何十匹もの鳳凰の子供が入っている。
     ガンモはそこで、「鳳凰というのは、人間の子供の純粋な気持ちというのを受けて、清い気持ちのまま、この世に羽ばたかなければいけない。だから、1年間という期間に限って、卵の状態で人間社会の中で過ごすことが必要でした。でも、あなたの役目はもうすぐ終わります。あなたはもうすぐ消えてなくなります」と言われるんですね。
     つまり、ガンモというのは包み紙だったんですよ。元から捨てられる運命の、1年間限定の包み紙。それが破れることで、素晴らしい鳳凰が生まれるんですけど。
     でも、ガンモのことを「自分の無二の親友だ」と思っている男の子や、その家族にしてみれば、ガンモというかけがえのない存在はいなくなっちゃうんですね。

     最後は、ガンモの殻が破れて消えてしまうんですけど。その前の晩に、ガンモはみんなに挨拶するんですね。
     「実は僕の正体は卵で、もうすぐいなくなっちゃう。でも、悲しまなくてもいいよ。僕がいなくなった瞬間に、みんなの記憶から、僕は消えてしまうから。半平太君、これからは僕なしでもちゃんと生きてね」と。
     こんな、ドラえもんの最終回レベルの大感動の盛り上がりがあるんです。

     これ、なぜかと言うと。
     『Gu-Guガンモ』の作者である細野不二彦という人が、少年サンデー編集部に最初にマンガを持ち込んだ時から、小学館の編集者は「ゲェェーッ!」って思ったんですよ。
     「こいつ、メッチャ絵が上手い! おまけに子供向けの話が描ける! オバケみたいな大きいキャラクター描いてもいける! こいつは藤子・F・不二雄になるしかない!」と。

     細野不二彦って、もともと、『アクエリオン』とか『マクロス』の監督をやったスタジオぬえの河森正治の友達だった人で、慶応大学の小等部の頃からSFばっかり描いてた人だったんですね。
     それが、大学生になった頃、少年サンデーに持ち込んで「SFを描きたい」と言ったら、「お前はそんなものを描いてはダメだ! 細野不二彦、お前は藤子不二雄の後を継げ!」と命令されて、苦しみながら描いたのが『Gu-Guガンモ』なんです。
     まあまあ、『バクマン。』でいうと『走れ!大発タント』みたいな話なんですよね。
     そんな人が描いてるので、まあ、上手くて当たり前なんですけど。

     さて、その最終回。
     前の夜にガンモが、みんなに「これでお別れだよ。でも、みんなの記憶から僕は消えてしまうから、悲しまなくてもいいんだ」という、藤子・F・不二雄ばりの挨拶をするんです。
     で、挨拶をし終わった瞬間に、その場でガンモの身体がボンッと破けて、その中から何百匹もの綺麗な鳥がブワーっと世の中に羽ばたいていく。
     この鳳凰がまたこの世界をきっと平和にしてくれる。良くしてくれる。
     でも、半平太という主人公の男の子は、「ガンモのことは絶対に忘れない! 忘れない! 忘れない!」と言って、夜が更けて行く。
     そして、その翌日の朝というのが、マンガのラストシーンです。

     半平太が目を覚ますと、何かが足りない気がする。だけど、それが何かはわからない。思い出せない。
     そんな中、お母さんが「もう学校に行きなさい」と言って、半平太にコーヒーを淹れてくれるんです。コーヒーというのは、消えてしまったガンモがすごい好きだった飲み物なんですけど。
     半平太は、コーヒーを飲んだ瞬間に、なぜか涙が出てくるんです。
     「自分は何かを忘れている。それは一番大事なものだったはずなのに。なんだろう?」ということで、涙だけが止まらないというラストシーンなんですよ。
     ものすごい感動のクライマックスなんです。

     「要するに、『君の名は。』ってそういうことね」と。
     「わかった。『Gu-Guガンモ』だったんだ!」と。
     「泣けるあれを持ってくるのは偉い!」と、僕は思いました(笑)。

     何が言いたいかというと、『君の名は。』にしても、『Gu-Guガンモ』にしても「ハイ・ドラマ」を目指しているんですね。
     それが「半平太がコーヒーを飲んだ時、なぜだかわからないけど涙が出てきた」なんですけど。
     でも、『Gu-Guガンモ』って、僕が改めて話をするまで、みんなも思い出さなかったくらいの作品なんですよ。つまり、名作だけどマイナーなんですね。

     ええとですね、今回、新海誠が挑戦したのは「作家性の諦め」なんですよ。
     それまで、新海誠というのは、例えば『ほしのこえ』という「愛し合う2人が何光年も離れ離れになってしまって、男の子の方は女の子のことをいつまでも思っているはずなのに、勝手に結婚なんかしやがって、女の子の方は宇宙の果てで宇宙人と戦っていて、いつか私はあの人に会える時が来るんだろうかと考えている」みたいな、もう救いようのないほど切ない話を連続して描いてて、そこそこ評価もあったんですけど。
     「このままでは、俺はジブリにはなれない! 庵野秀明にはなれない!」と、自分で思ったのか、他人から言われたのかはわからないけど。
     そこからガラッと作風を変えて、「よっしゃあ、わかった! 俺はもう、中学生や高校生、言い方は悪いけど馬鹿でもわかる映画を撮るぜ! ほら、作った! ほら、馬鹿が泣いてる!」というのが『君の名は。』なんじゃないかな、と。

     まあ、「馬鹿が泣いてる」って言ったら、言い過ぎなんですよ。
     さっきも言ったように、世の中の大半の人は、そういうのしかわからないんだから。メジャー作家としてデビューしている以上は、みんなにわかるのものを作るのが正しいんですね。
     わかる人にだけわかっちゃったら、それはもう『水曜日のダウンタウン』になっちゃうんですよね。
     新海誠というのは、そういう方式で十数年間、頑張ってきた上で、「ああ、この方法では先が見えない」と思い直して、徹底的にベタの方向に振った。
     その結果、まあ、大ヒットしてるんじゃねえかなというふうに思います。

    (録画映像終了)

     ……いやあ、2016年の俺は、ものすごく口が悪いね(笑)。
     今だったら、まず、言わない言い方してます。「3年前の俺は、もう怖いものなんてなかったんだなあ」と思いますけど。
     本当に口が悪くてビックリしました。

     コメントで、ちょっと聞かれたんですけど、『君の名は。』というのは、SFなんですよ。
     というのも、科学的な縛り、例えば「複雑に混じっている世界線」とか、「タイムパラドックスの矛盾」とか、「ティアマト彗星の軌道」とか、そういう科学的な縛りというのを、全部、楽しんで使いこなしてる。
     この感覚がSF特有だと思うんですけどね。

     さっき話した中で「ベタ」っていうのは何かというと、「わからない人にもわかるような感動をさせる表現」というのを、ベタと呼んでいるんですけど。
     同時に、「作家性の諦め」というふうにも言いました。
     これはどういう意味かというと、「自分の中で考えた、ストーリーとかテーマを作家性にするのではなく、自分が持っている絵の力、絵の表現というのを作家性と決めた」ということです。
     その結果、ドラマ部分というのは、あえてベタの方に思い切って持っていっちゃった。そういうところが、『君の名は。』のすごいところだと思います。

     絵の力というのは、例えばどういうものかと言うと。
     『君の名は。』にタイムラプス的な表現というのが出てくるんですよ。タイムラプスというのは、「日が昇って、その後、日が沈んでいく」というのを早回しにして見せるみたいなものなんですけど。
     これは、『AKIRA』というアニメの中で使われた、ストリーク表現のようなものなんです。

     バイクが走る時、テールランプがビューっと後を引く。こういうのをストリーク表現と言うんですけど。
     ストリークというのは、もともとビデオカメラのレンズの奥にある光学センサーの限界によって発生するものなんですね。ビデオカメラの光学センサーの処理速度が、現実に求められているより遅いから、光っているものが動いた場合、尾を引いているように見えてしまう。つまりは、ビデオカメラの欠点なんですけど。
     『AKIRA』という映画では、それをあえてバイクが走るシーンに入れることによって、逆にリアリズムを表現したんです。

     それと同じように、『君の名は。』でも、タイムラプス的な映像を入れることによって、リアリズムを出している。
     つまり、僕らが持っているリアリズムというのは「現実にどういうふうに物を見えるのか?」ではなく、「日常的にどういう映像を目にしているのか?」によって出来ているわけですね。
     なので、あえてビデオ風に荒くした画面にリアリティを感じる場合もある。ストリーク的な表現や、タイムラプス的な表現というのを、あえてアニメの中でやることによって、ドキッとするくらいリアリティが出る場合もあるんです。

     あとは、新海誠の絵の力というのは……ちょっとこれ、説明しにくんだけど。説明できるかな?
     空に鳥の影があるんですよ。
    (ホワイトボードに図説する)

    nico_190630_03027.jpg【画像】鳥の影

     すみませんね、絵が下手で。ええと、これ、わかりますかね?
     太陽が沈んでて、空に鳥が飛んでるんですけど。鳥の後ろの空に、影がちょっとあるんですね。
     これ、現実にはありえないんですよ。空に影が落ちるなんてことなんて、あるはずがない。でも、新海誠の『君の名は。』の中には、空を飛んでいる鳥の後ろに軽く影が落ちているシーンが、何ヶ所かあるんですね。

     これも、現実ではないんですよ。むしろ、マンガの表現に近いんですよね。
     つまり、マンガの表現に近いことをあえて映像の中でやることによって、「これ、なんか見た事ある!」っていう感じを出してるんですね。
     僕らがそれを見たのは、さっきのストリークやタイムラプスと同じように、作られた映像の中なんですよ。
     それを、あえて入れることによって、ドキッとするようなリアリティを出す。

     『君の名は。』というのは、新海誠の作家性というのを、こういった絵としての表現の部分に限定して、テーマ的、ストーリー的なところは思い切ってベタな方に振ってしまった。
     つまり、ハイ・ドラマというのを押し付けず、ドラマの中に隠すことをしたわけですね。


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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「今日のニコ生は、ガンダム完全講義第16回です」

    2019-07-16 07:00
    216pt

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/16

     今日は、岡田斗司夫のコンテンツ情報をお届けします。


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    7月16日(火) 20:00~ 「機動戦士ガンダム完全講義〜第16回」 

    ニコ生テキスト全文公開

     2019/07/02配信の岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話テキスト全文をアーカイブサイトで公開中!

    ホワイトベースに遠回りさせて、地球全部が戦争状態にあることを見せる

     おはようございます。岡田斗司夫です。
     岡田斗司夫の機動戦士ガンダム講座、今日は第14回。「コアファイター脱出せよ」ということになってますけども。
     ……というか、おはようじゃないですね。もう夜の8時だわ。はいはい、すみません。

     今日はね、もう1日家の中にいたもんで、季節感がわからなくなって来て。
     1日家の中にいたんじゃないですね。正確に言うと、夕方に一度、睡眠呼吸科に行って、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)の機械を取り替えたんですけど。
     これまではPhilipsだった機械を、TEIJINの機械に取り替えるというのをやってたんですけども。
     そんなこんなで7月2日の火曜日です。

     最初は、福井県のハンドルネームこうこうさんのお便りからいきましょう。


    岡田さん、こんばんは。ガンダム講座を見て疑問がわきました。
    「ホワイトベースの大気圏突入は、シャアによって妨害され、ジオン軍が支配する北米カリフォルニア付近に降下した」とのことですが、ロサンゼルスからブラジル・サンパウロは1万キロですので、そのまま南下して南米大陸に行けばいいと思うのです。
    なぜ、わざわざ西回りで地球を一周4万キロの旅をしてジャブローに行ったのでしょうか?


     これ、なぜかと言うと。ここに簡単な世界地図を用意したんですけど。
    (世界地図を使って図説する)

    yawa_190702_00225.jpg【画像】世界地図

     ホワイトベースは、南米のジャブロー、この辺に行きたいわけですよ。なのに、シャアに妨害されて北米カリフォルニアに着いてしまった。
     「だったら、そこから真っ直ぐ南に行きゃあいいじゃないか。なんで真っ直ぐ行かずに、こんなふうに日本の鳥取砂丘に行って、その後、モンゴルを突っ切って、黒海付近のオデッサに行って、イギリスのベルファストに行く、みたいに、がーっと行ったのか?」ということなんですけど。

     これ、まあ簡単に言うと、南米の辺りというのは、ジオンの防衛線というのがメチャクチャ堅いからですね。
     連邦軍の最大の主力が残っているジャブローを包囲するためのジオンの包囲戦力があるので、ホワイトベースとしては、例えば「一旦、太平洋に出て、東からジャブローに入る」というコースであろうとなんだろうと、難攻不落で通れない。
     そういう設定上の理由があります。

     この設定上の理由以外には、『機動戦士ガンダム』って、実は、高畑勲と宮崎駿が作った『母をたずねて三千里』をモデルにしているんですね。
     『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』の時に、富野由悠季監督は絵コンテをやってたんですけど、高畑勲から散々ダメを出された。「これではダメだ。これではリアリティがない」と言われたんです。まあ、『赤毛のアン』もそうなんですけど。
     そうやって、高畑勲に散々鍛えられた富野由悠季が、「じゃあ、俺が作れるものは何なんだろう?」と考えた時に、モデルに選んだのが『母をたずねて』なんです。
     『母をたずねて三千里』って、もともと原作の小説は、確かね3、40ページくらいしかない、かなり短い話なんですよ。
     それを、1年間のドラマにした高畑勲の手腕というのに、富野由悠季はものすごく感動して、「ああ、そうなのか! これがドラマ作りというものなのか!」というのがわかったわけですね。

     主人公の少年に世界中を旅させることによって、「戦争状態というのは何か?」ということを見せる。
     例えば、中盤の砂漠地帯での戦いとか、ベルファストという軍港、あとはジャブローという南米。こういうふうなところへアムロを行かせることによって、地球全部が戦争状態にあるということを見せる。
     それも、「船の上から眺めているだけ」ではなく、時々、下に降りて、土地の人と混ざることによって、いろんな経験をしていく。
     アムロがガンダムを盗んで脱走した時の、たまたま会った砂漠のお爺さんとの「水、ありませんか?」みたいな会話って、僕らは単なる繋ぎのシーンとして見てるんですけども。そうではなくて、あれは本当に「どうやったら、地球全体が戦争状態にあるという極限状態を見せられるのか?」という、富野由悠季なりの工夫なんですね。
     あとは、「この『母をたずねて三千里』を、俺もちょっとやってみたい」というか。「アムロ・レイという少年の目線を通じて、地球1周をさせてみたい」という、そういう野望が混ざっているんだということを、ちょっと覚えておいていただければありがたいです。

     すみません、面白いお便りを頂いたので、こうこうさんには6月のステッカーを1枚差し上げます。

    yawa_190702_00529.jpg【画像】ステッカー

     では、今回の『コアファイター脱出せよ』という話。
     コアファイターというのは、ガンダムのお腹の中に入っているカプセルの部分が広がって、飛行機の形になったものです。
    (模型を見せる)

    yawa_190702_00550.jpg【画像】コアファイター

     これ、35分の1のスケールだから、かなり大きいサイズで作ってあります。
     窓も、このように、OPの「まだ怒りに燃える~♪」という時にアムロ君が乗り込むシーンのように、ちゃんと窓がせり出てくるという、なかなか良いプラモデルなんですけど。
     これを使って弾道飛行をする話です。

     弾道飛行というのは何かというと、「軌道速度に達しないロケット・ミサイルの飛行経路」だと思ってください。
     この弾道飛行のモデルになっているのは、富野由悠季さんが子供の頃に憧れたX-15という、ロケット飛行機のコースだと思います。
     X-15というのは、2分間の加速でだいたいマッハ5からマッハ6くらいの速度に達するんですけども。そのX-15と同じく「宇宙高度」と呼ばれる、だいたい高度10万メートルあたりをかすめて南米まで直行する予定でした。
     つまり、普通の飛行機として、大気圏の中をビューっと飛んで行くのではなくて、本当にミサイルの飛び方なんですね。「最初に思いっきり加速して、石ころが飛んで行くみたいな形で、ジオンの制空権の遥か上を飛び越えて、南米ジャブローまで行っちゃおう」という計画だったんです。

     「最初の30秒がツラいぞ」というふうに、アムロ君は連邦軍の士官に教えられます。
     まあ、怪我をしているので、サラミスのカプセルと一緒に降りて来た士官なんでしょうけども。
     「中央カタパルトを使ってコアファイターを発射させる」と言います。つまり、コアファイターの足のところに、橋桁みたいなやつをカチャッとくっつけちゃって、これを中央スチームバルブで思いっきりバーンと引っ張る。

    yawa_190702_00739.jpg【画像】コアファイター脚部

     それと同時に、コアファイターの後ろのブースターを思いっきり吹かすことによって、30秒間加速する。
     たぶん、この加速によって、5G、重力の5倍の圧力が掛かるんじゃないか、と。つまり、毎秒50メートルの加速で行くんじゃないかと、僕は考えています。
     毎秒50メートルということは、発射して1秒後は、まだ秒速50メートルなんですけど、7秒後には秒速350メートル、つまり音速に達します。そして、30秒後、加速の終わった時の終端速度は秒速1500メートルですから、マッハ4.5ですね。時速5000キロくらいだから、まあまあな速度なんですよ。
     アムロ君は、これでジャブローまで行こうと考えます。

     果たして、アムロのこの大胆な計画は成功するのか?
     では、機動戦士ガンダム講座、第14回、「コアファイター脱出せよ」前半の解説をお楽しみください。
     では、どうぞ!

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