• 東京都杉並区で聞いた話

    2015-01-23 11:24


    2005年、兄から聞いた話。


    以前私の住んでいたアパートは、それまで兄が生活していたところでもあった。

    大学の都合で兄がその部屋を出てしまうので、
    新しく東京で住み着く私が、
    これから新しい部屋を探すのも面倒だろうという計らいだった。

    さて、その兄が部屋を立ち去る片づけをしているときに話してくれたのだが、
    その部屋で奇妙な体験をしたらしい。


    大学二年のある夜、兄は部屋でタバコを吸っていた。

    大学一年目は皆の学力をそろえるため基礎系の事柄ばかりで時間があるが、
    大学二年目は専門知識も入るし、部活での仕事も徐々に増えてくる。

    そこに掃除や洗濯などの雑務も一気に押し寄せてきて、
    大分お疲れの日々を過ごしていたのだという。

    そんな中でほっとのんびりした時間を過ごせるのは自室くらいなもので、
    帰宅後のほっと一息、夕食を食べた後タバコをふかせてだらだらと過ごしていた。

    日々の疲れもあってか、兄はウトウトと眠りにつき始めた。

    次に兄が意識を取り戻したとき、耳元でなにかを鳴らされる音に気が付いた。

    ―――カチッ、カチッ

    何処かで聞きなれた音だったのだが、
    なんだうるさいなと目を開けてみると、
    自分の耳元で見慣れない子供が歯をカチカチ鳴らせていた。

    無表情で無機質な子供だったのだが、
    しばらくの静態の後、ふたたび兄は意識を失ってしまった。

    うあああああ、と、悪夢から目覚めるように身体を跳ね起きさせると、
    そこはさっきまで自分がダラダラしていた自室の中だった。

    嫌な夢を見たものだと思っていると、
    ちょうど、灰皿の上の置きタバコから火がこぼれ落ち、床に落ちる瞬間だった。

    やれやれ寝タバコをするなんて自分も疲れているんだな、
    それにしても火事にならなくて良かった、と火をもみ消した後、
    新たにタバコに火をつけた時に気づいた。

    ―――カチッ、カチッ

    さっき子供が鳴らせていた歯の音は、自分がライターで火をつける音だった。

    そこまで話をして、
    兄は楽しそうに「ここの奴は良いヤツだよ」と言っていたのを、私は今でも覚えている。

    ちなみに、その部屋に住み着いた私が見た奇妙な夢は、
    寝ている私の股の間から興味深そうにお尻を触ってくる子供の夢だった。


    わけあって大学三年生のときに、私はその部屋を出ることになったが、
    それは人間の女性が原因だったことを追記しておく。


    ストーカー女とか自称ミュージシャンの隣人だとかに比べれば、
    案外、都会という場所はお化けの方が『良いヤツ』なのかもしれない。





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  • 調布市国領で聞いた話

    2015-01-21 11:57


    2008年、東京都調布市国領の飲み会で聞いた話。


    その時、私は国領である飲み会に参加する機会があった。
    一次会が終わり二次会に参加した際に、少し不思議な話を聞いたことを留めて書く。

    その人物はAというのだが、
    彼は仕事で遅くなり、京王線の終電ギリギリで帰ってきたのだという。

    その日は夕方から雨で、宵の口からさらに雨脚が強くなり、
    深夜にはちょっとした強い雨になっていたらしい。

    Aは折り畳み傘を取り出そうとしたが、その日に限って自室に忘れてきたのを思い出した。

    やれやれと思いながら改札を抜け、階段を降りる。
    彼はそこで一本の放棄されたビニール傘を見つけた。

    透明であるはずのビニールは色がくすみ、
    傍目にもわりと年季が入っていることが伺えた。

    元の持ち主は、古くなったのが原因で捨てたのだろう。

    渡りに船とばかり、ありがたくその傘を使わせてもらおうとした。
    ビニール傘を手にしようと思った瞬間、


    ―――バッ、と傘が開いた。

    誰が手にしたわけでもない。

    唖然とするAを前に、ビニール傘はクルクルと二、三度回った後、
    フラフラ深夜の街に消えていった。


    東京のような画一化された都市部でも、まだ妖怪は生きている。

    この話を聞いて、なんか嬉しくなった。




  • 高校二年生の夏のお話

    2015-01-20 04:01


    200X年のお盆の話。


    私の実家は兵庫の田舎でとても過疎化が進んだ山深い土地にある。

    当時高校二年生だった私は日課の犬の散歩をしていたのだが、
    ふと、いつもの散歩コースから外れて山の中へと入ってみようと考えた。

    それは小さな石材店の横から入る山道なのだが、
    私はその道のことを幼少期のころからある程度は把握していた。

    とある方の待山で、田舎の事、風習というか山道の脇には幾つかのお墓が置かれている。

    山道に入って20分くらいして、
    私は杉林の隙間からお墓参りをしている家族連れを見かけた。

    大人二人に、子供が一人。

    時期が時期だけに、こんな山の中にまでご苦労様じゃな~と思いつつ、
    なんか微笑ましくなって、その家族連れに声をかけてみようと彼らの方に向かった。

    しかし、杉林を抜けるある瞬間、私はその家族連れの姿を見失ってしまった。

    あれっおかしいな?とは思ったので件のお墓の前まで行ってみると、
    墓には立ち消えの線香と真新しい花が飾られている。

    私はさらに奥の方のお墓に向かったのかなあと思い、
    せっかくここまで来たのだから、ともう少し奥に入ってみることにした。

    しばらく一本道を道なりに行き、少し開けた場所で廃屋を見つけた。

    そこから先の山道は人の手が入っておらず、
    続いてこそいたが倒木に邪魔され、あの家族連れが通ったとも思えない。

    私はおかしなものがあるものだとは思ったが、
    そのままそこにいても仕方ないので今来た道を引き返すとこにした。

    うちの帰って山の中であったことを家族に話すと、

    「ん?あそこ…30年くらい前まで火葬場に使われていたんやで」と教えられ、
    ついで、あの山道の先が隣町まで続いていることを教えてもらった。

    あの家族連れがなんだったのかは今でも分からない。

    もしかしたら草ぼうぼうで倒木だらけのあの道を、
    二時間くらいかけて隣町まで下りていったのかも知れない。


    ーーー私としては、そっちの方がある意味怖い。