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為替市場動向~米利上げ直前、静かなドル高基調~
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為替市場動向~米利上げ直前、静かなドル高基調~

2017-12-16 12:56


     師走も半ばに近づき、来週末はクリスマス。
     海外のクリスマス休暇や年末が意識される今週、注目イベントが予定されています。

     米国では、米利上げが確実視されるFOMC(連邦公開市場委員会)(発表は日本時間14日未明)と税制改革法案審議の行方、そして、明日は欧州中銀(ECB)理事会、英国中銀(BOE)理事会が予定されています。

     今回の米FOMCでは、以前から0.25%の利上げは確率100%と確実視されています。
     逆に利上げがなければ大事件となるでしょう。

     今回の注目は、来年の利上げ継続がどの程度表明されるのかにありそうですが、終了後に記者会見するイエレンFRB議長は2018年3月にパウエル氏に交代しましすので政策に大きく影響するような目新しい発言をするとも思えません。

     一方で、今回のFOMCでは理事による経済見通しドットチャートが(匿名で)発表されます。特に、これまでも注目されてきたインフレ見通しについては、来年以降の利上げ確率についてのヒントが得られるものとして要注目でしょう。
     昨日発表された11月の生産者物価指数は、プラス0.4%(前月比)と予想以上の数字でしたので、これがどう消費者物価に今後影響していくかも見ておきたいところです。


     米国発のもう一つの材料は、税制改革法案の審議です。懸念されていた暫定予算の期限切れは両院議会の暫定予算案の可決によって政府機関機能マヒを避けることができ、今週は両院案の一本化に向けての協議が行われ、クリスマス前の法案通過を目指すと思われます。
     税制改革は、金利面では金利上昇要因と言えますが、この材料は既に織り込み済ではないかとも思え、昨年トランプ氏が税制改革を公約としたときに2.6%近辺まで10年債利回りがジャンプしたときに比べると、材料は既に賞味期限切れで反応薄かもしれません。


     一方、欧州のECB理事会は注目された10月理事会で当面の政策を表明して実行していく過程にあるので大きな変更があるとは思えません。また、英国中銀BOEは11月利上げをしたばかりでもあり、ポンド安による消費者物価の上昇(直近11月は年率3%)はあるものの、2020年にかけて追加利上げは2回程度という基本姿勢は変えないのではないかと推測します。
     なお、ポンドに関しては、BREXIT交渉の前進により多少持ち直す動きも出ています。


     諸々ニュースや材料はあるものの、為替市場は静かな展開が続いています。
     FOMCでの利上げ観測によりドル指数はこのところ11月の安値から回復しつつあります。ドル円相場の変動率も低下し、トランプ米大統領の中東関連政策一部変更(イスラエルの首都問題)、ミサイル、テロなどのリスクオフ要因が発生しても瞬間反応にとどまり、111円50銭~114円レンジでの動きが続いています。12月に入ってからの滞在時間では112円~113円半ばに集中しています。
     注目材料の結果待ちという言い訳もありますが、海外のクリスマスや年末要因により大きな動きは期待できないように思います。


     本日の日本時間昼過ぎに、米国のアラバマ州上院補欠選挙で、共和党候補(セクハラ問題も話題となり)が敗北したため、上院での共和党議席が100中51に減り税制改革法案最終可決への懸念によりドルが売られる場面があっ
    たものの値幅は今のところ限定的です。


     そんな中で、このところ話題に上っているのが先月に海外での講演で使われた黒田日銀総裁の「リバーサル・レート」理論に関する発言です。
     「リバーサル・レート」は、「金利が下がり過ぎると、金融仲介機能に悪影響があり、金融緩和の効果が逆に減衰する」というもので、黒田総裁は11月28日の衆院予算員会で日銀のイールドカーブコントロール政策もこの考え方に基づいて運営され、今後も変わらないとの見解を示していました。

     金利の過度な低下が銀行の収益悪化も含めて金融異次元緩和の副作用も懸念されてきたので、黒田総裁の発言は「次は出口」との示唆なのか、と疑心暗鬼は高まります。

     現在行われている量的緩和のツールの一つ、日銀による長期国債購入ペースの減額は、減額とは明示しない「ステルス・テーパリング」により既に行われています。これは、量ではなく長期金利の水準コントロールに軸足をおくためでした。
     今後、「出口」へ動く場合には、金利コントロールの水準を上げるのかもしれない可能性には注目しておく必要があります。

     また、世界的にも稀に見る中央銀行による巨額のETF買いも、株式市場上昇の環境の中、今後どのように異次元から普通に戻していくのか、物価上昇率2%迄は現状維持とされてきた政策の出口について(生活の中の身近なモノの値段の上昇を実感する中でもあり)関心が高まりそうです。


     最後までお読みいただき、ありがとうございました。

    ※12月13日東京時間13時執筆
     本号の情報は12月11日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
     なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。


    式町 みどり拝


    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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