産業新潮
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6月号連載記事


■その23 ノーベル賞経済学者の大罪

●アルフレッド・ノーベル

 今や世界中の誰もが知るようになったノーベル賞は、1833年にスウェーデンに生まれた化学者、発明家、実業家であるアルフレッド・ベルンハルド・ノーベルの遺産によって創設された。彼は、350もの特許を取得し、中でもダイナマイトの開発で巨万の富を築いたことから、「ダイナマイト王」とも呼ばれた。

 遺言で賞を授与するとされた分野は、まずは物理学、化学、医学または生理学の3分野である。さらに4つ目として(理想的な方向性の)「文学」、5つ目は軍縮や平和推進に貢献した個人や団体に贈る「平和賞」である。

 実業家であると同時に化学者でもあったノーベルが「科学・化学」関連分野の研究を高く評価していたのは間違い無い。ダイナマイトを含む多数の発明は科学・化学の知識のおかげである。

 ノーベルが「文学」を選んだ理由は定かでは無いが、「平和に対する貢献」を賞の中に含めたのはわかるような気がする。

 ダイナマイトは軍事用というよりも、民間建設工事などで重宝されたのだが、その「危険な爆発のイメージ」や、父親がクリミア戦争で兵器生産によって大儲けをしたこともあってか、世間からは「死の商人」と呼ばれることもあった。また、1864年には、爆発事故で弟エミール・ノーベルと5人の助手が死亡し、ノーベル本人も怪我を負った。それゆえ「平和」には人一倍関心があったのではないかと考えられる。

 しかしながら、最初の3つの賞が世界的権威となっているのに対して、後の2つは、選考における恣意性や妥当性の欠如などがしばしば指摘される。
 私も、この2つの賞は、少なくとも現在は格調高きノーベル賞の足を引っ張っているように思う。しかし、それでも「平和賞」がノーベルの遺言によって創設されたのは事実である。

 それに対して、「経済学賞」は、1968年にスウェーデン国立銀行が設立300周年祝賀の一環として、ノーベル財団に働きかけた結果設立された賞であり、ノーベル本人の意志とは全く無関係なのである。そして、その後の選考運用についても首をかしげざるを得ない。


●ノーベル賞経済学者の大罪

 「ノーベル賞経済学者の大罪」(ディアドラ・N・マクロスキー ちくま学芸文庫)はそのノーベル経済学賞についての辛口評論であり、一時期話題になった書籍である。

 著者のディアドラ・N・マクロスキーは、優秀な経済学者であるが、それだけでは無く、本書でも述べられている通り、「彼」から「彼女」になったことでも注目されている。

 「彼女」が女性になってよかったことは「経済学を女性の視点」で見ることができるようになったことだそうだ。

 もちろん「彼」の時代にも「数字を振り回す経済学者」には批判的であったのだが、女性になってみて「机上の空論」をやりとりすることによりバカらしさを感じるようになった。

 確かに私が観察する限り、「屁理屈をこねくり回す」のは概ね男性的特質であり、「生活感あふれる考え方」は女性の特質である。

 私と財務省OBの有地浩が、「人間経済科学研究所」(https://j-kk.org/)を発足したのは2018年4月である。「すでに終った」マルクス経済学はともかく、その他既存の経済学も、やたら数式を振り回して「意味のないこと」を真剣に論じるのはばかげたことであると感じたのがその理由である。

 もちろん、我々は(残念ながら・・・・)女性では無いが、「屁理屈」を排除し、「人間(の生活)」に根ざした「人間経済(科学)」に舵をとったのは、彼女の考え方に通じるところがあると思う。


<続く>

続きは「産業新潮」
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6月号をご参照ください。


(大原 浩)


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