cocoastory 05 06
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cocoastory 05 06

2013-12-10 09:16
    5.

    ロンドラインは高校を卒業するのが目前にせまっていた。

    といっても同じ船のなかで暮らしてきたロンドラインだ。この船は狭い。
    小中高は一貫で、小学校のときの先生にも毎日会う。学校のクラスなんか多くもない。

    学校のチャイムがなり、もう何日もない授業の日が終わろうとしている。

    あーちゃんの帰る準備を待ってそれが終わると一緒に帰路につく。

    「今日から始まるんでしょ?研究講習」

    「そうだね。あーちゃんの分の白衣も用意したよ。」

    この船から進学をする生徒は民間シャトルにのって遠い場所にある船で授業を受けるか、
    他の船に移り住むか、この船で何か仕事を見つけるしか選択肢がない。

    あーちゃんと私は身近なところで、ロンドラインの家の研究施設の手伝いをすることになったのである。

    あーちゃんは毎日うちに通うことになる。ロンドラインは少しそれが嬉しく感じる。

    「ただいまー。」

    「おかえり。」

    手のあいた研究員がロンドラインたちが帰ったことに気がつき返事をする。

    「研究の手伝いに使う白衣、2着ありますよね?使えますか?」

    「ああ、あるよ。手伝い始めるんだってね。それじゃあ着替えてもらおう。」

    二人は新品の白衣を服の上に羽織り、研究員に挨拶をした。

    「今日から研究に参加させてもらいます。ロンドラインです!」

    「あーちゃんです。よろしくおねがいします。」

    挨拶を終えると拍手が二人を包み、
    ここが我が家であるのにロンドラインはとても気恥ずかしくなった。

    それから簡単な研究の手伝いをして一週間が経った。

    ロンドラインは物足りない仕事内容に少しの疑問を抱いていたが、
    今まで家族のように暮らしてきた研究員のミクたちの助けになっていると考えると、
    つまらない疑問を口に出す気にはなれなかった。

    もうひとつロンドラインは気がかりがあった。
    この研究所では10人ほどのミクが常に動いていて、そこに今は2人加わる感じで働いている。
    うち5人はロンドラインが入ったことのない部屋で研究を行う。
    だから夜遅くまでその5人は朝から顔を合わせることがない。

    分かたれた部屋で研究を行うのは毎回のように同じミクである。
    そのミクたちが行う研究の内容をロンドラインは聞いたことがなかった。

    あーちゃんはその事が気にかかって仕方がないようだ。
    何に関しても興味が優先されてしまう性格の彼女は今日も別室のミクたちの行動を気にしていた。

    「ロンちゃん気になんないの?ほんとは何か知ってるんでしょ!」

    「知らないよ。本当に中も覗いたことないもん。」

    「君には好奇心ってもんがないよね。」

    「そうかなあ・・・。」

    わりとハッキリものを言うあーちゃんに気おされているように見えるが、
    毎日こんな状態なのでロンドラインが強く反発することはない。

    「じゃあさ・・・ごにょごにょ」

    「なに?・・・・・・いや、まずいでしょそれは。」

    「やらないと友達やめるよ?」

    「えー・・・わかったよ・・・。」

    あーちゃんはどうしても秘密の部屋が見たいらしく、研究の観察用カメラを白衣に忍び込ませるという。
    今どきのカメラは小さいのでうまくやれば身に着けている本人も気がつかない。

    考えた末、白衣の後ろにカメラを縫い付けて携帯端末で中継を見届けることにした。
    実行は後日朝。二人は休みをとってロンドラインの部屋で中継画面を覗く。

    これがバレたら何を言われるんだろう?
    ロンドラインには想像もつかなかったが、あーちゃんの一言で部屋の中身が気になってきていた。



    6.

    「カメラおっけー。映像オン。いくよ?」

    「おー映ってる!」

    真っ暗な部屋で二人、携帯端末をじっと見ている。
    カメラを付けた研究員のミクが別部屋に入ろうとしている。

    扉が開き、中へ入っていった。こっちから見える映像は後ろ向きで分かりづらいが今は部屋の中だ。

    研究員が振り返る。しばらくして扉をロックする音がしてまた振り返る。
    ここは真っ白な部屋だ。

    そのままカメラの主は歩いてゆく。何かが開く音がして暗がりに入ってゆく。

    「あれ?何もないとこに入っていったよ?」

    とても厳重なロックがかかった部屋なのだろう。さっきまで壁だったところへ研究員が入ったらしい。
    ロンドラインはとんでもないことをしてしまったのではないかという気がしてきた。

    しばらく歩き、光が漏れた部屋へ映像が変わった。

    よくわからないモニターと筒状のベッドがそこにはあった。

    カメラの主が筒のベッドに近づいていきそちらを向くと、映像はモニター類のほうを映す形になった。

    モニター上では人型がホログラフで浮かび上がっている。その特徴は映像が乱れていて誰だかわからない。

    「人うつってる!拡大して!」

    「いまやってるよー。」

    映像がだんだんホログラフに近づいていく。


    ・・・しかしそこで映像は真っ暗になった。

    ブツンという音とともに映像はシャットダウンされ、中継のシグナルはオフになる。

    「・・・もしかしてバレた?」

    「・・・。」

    二人で肩を落としているとトコトコと足音がし、ドアをノックする音がする。

    もうロンドラインは気が気ではなく、真っ青な顔で俯くしかなかった。

    「ちょっといいかな?」

    ロンドラインはフラフラとした足つきでドアを開ける。
    別室にいた白衣のミクの1人が困った顔でこちらを見ていた。


    ロンドラインたちを呼び付けたのはこの施設ではチーフ的な存在のミクだった。

    真っ青な顔のロンドラインとそっぽを向いているあーちゃんを見ると一言。

    「これ、身に覚えがある?」

    もう、今ここで気を失えたらどんなに楽だろう。とロンドラインは思った。


    すべての陰謀を洗いざらい話したあと、二人は解放の時を待った。
    でも返ってきたのは予想外の結果だった。

    「まあ大事には至らなかったみたいだし、君たち二人はこっちの研究にも参加してもらいましょ。」

    「え、あの部屋で?」

    面食らった顔の二人はなかば強制的にそっちの秘密の研究に加わることになった。

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