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今日から少しの間、本編の合間にタイトルのとおり論考してみたいと思います。
先日アップした最新話で登場した「矢倉91手組」は、実際のプロ棋戦では2012年11月5日に行われた第71期A級順位戦・屋敷伸之九段-渡辺明竜王(肩書きは当時)戦以降、現れていません。
その屋敷-渡辺戦は、まさに屋敷九段の研究炸裂といった感じで、渡辺竜王が為す術なく討ち取られています。
【第1図は▲3四歩まで】
91手目から△4三金▲4一龍△4二歩▲3四歩と進行(第1図)。感想戦によれば、渡辺竜王は▲4五桂を想定していたようで、本譜▲3四歩は盲点だったとのこと。どうやらこの時点で後手がどうしようもなくなっていたようです。
そこで終局後に検討されたのが△4二歩と打たずに△3三玉と逃げ、以下▲4五桂△4四玉▲3二竜△3六飛▲3五歩という順でした(第2図)。
【第2図は▲3五歩まで】
しかし渡辺竜王は「駒を取られながらの入玉になりそうなので」と自信がない様子だったとのこと。実際ソフトに解析させてみても、後手よしといえる変化はでてこないんですよね。せっかく打った飛車が、入玉の助けにならないどころか竜王の言葉どおり取られてしまう運命に。
かくして先手よしの結論が出され、プロ間ではこの形が避けられるようになりました。ちなみに木村一基八段の『木村の矢倉 3七銀戦法最新編』という本では△4三金▲4一龍から△8六桂の反撃が掘り下げられています(第3図)。
【第3図は△8六桂まで】
これは次に△7八桂成▲同玉△4八飛▲6八銀打△6六桂▲同銀△6九角以下の詰めろになっています。
なので▲8六同歩△8七香▲同玉△8六歩……という順で玉頭を攻めていきますが、木村八段は「簡単には結論が出せない」と書いています。いずれにせよプロが実戦で用いないということは、後手があまり面白くないということなのでしょう。
では入玉を目指すのはどうか? 木村八段は「後手は攻め合うしかない」と断言されているのですが……。
そもそも将棋は相手玉を詰ますのが目的であって、自玉の遁走に情熱を傾けるようなゲームではない。水面下で研究されていたのは間違いないが、御堂の言葉どおり、苦労して入玉の可能性を追及するくらいなら、他の手段を探したほうがいいと結論づけられたのだ。
作中でもこのように書いているとおり、こんな論考そのものが無駄かもしれません。しかしそこはアマチュアの特権、勝敗度外視で好きなように考えてみたいわけです。
それで可能性があると思ったのが、△4三金▲4一龍△3三玉▲4五桂とされたあとに△4四玉ではなく△3四玉と逃げるというもの。
当然先手は▲3二龍と歩を取りながら迫ってくるのですが、そこであらためて△3三歩と蓋をします(第4図)。
【第4図は△3三歩まで】
△4四玉と逃げるのに比べて、入玉コースが近づいたような? みなさんどう思われるでしょうか。次回からこの変化を考えていきたいと思います。