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「美容の世界は、なぜここまで嘘が多いのか?」の続きです!(#1,#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8)

 

このシリーズでは、とかく「正しいもの」を選ぶのが難しい美容の世界において、

 

  • なぜ美容の世界にはヤバい情報があふれてしまうのか
  • その情報をかいくぐって良いものに到達するにはどうすればいいのか

 

といったあたりを掘り下げております。でもって、前回は「アンチエイジング成分の“当たり”と“ハズレ”」を掘り下げましたんで、今回は「髪のケアはどうすべきか問題」を見ていきましょう。

 

 

 

トリートメントは何をしているのか?問題

さて、シャンプーとトリートメントの話をするにあたり、まず押さえておかねばならないのは「髪は死んでいる」ってポイントです。「死んでいる」ってのは「細胞レベルでの“生命活動がない”」という意味でして、というのも髪の毛の主成分ってのはケラチンという繊維状のタンパク質なんですよね。これがどういう性質を持っているかと言いますと、

 

  • 爪、角、羽、うろこなどと同じ「構造タンパク質」

  • 非常に丈夫で、水にもある程度耐性あり

  • 一度形成されると、代謝しない=再生しない

 

みたいになります。なので、このケラチンでできた髪の本体(毛幹)には、血管がないし、神経もないし、細胞活動がないわけです。つまり、髪の毛ってのは、ケガをしても出血せず、切っても痛くない状態だってことですな。

 

というと、「えっ?髪って伸びるじゃん?死んでたら伸びないでしょ?」みたいに思うかもですが、正確には、

 

  • 髪の毛そのもの(毛幹)は死んでいる

  • 髪を生やしている部分(毛包の毛母細胞)は生きている

 

みたいな仕組みになっております。毛母細胞は髪の“生産場”みたいなもんでして、髪の根本にある「毛包(hair follicle)」が髪を生み出す工場だとしたら、その中にある「毛母細胞(matrix cells)」が分裂・増殖して角化し、最終的に細胞は死んでケラチンの“死体”だけが外に押し出されるイメージっすね。つまり、髪は「生きた細胞の死骸が外に出てきたもの」でして、それゆえに“死んでいる”と表現されるわけです。

 

重要なポイントとしては、私たちの皮膚ってのは生きている細胞で構成されているので、

 

  • 傷ついても再生する(ターンオーバー)
  • 栄養や薬が“効果を及ぼす”可能性がある

 

って特徴があるんですが、その一方で「髪の毛」ってのは、

 

  • 細胞が死んでいるため、再生しない
  • 傷ついたらそのまま。元には戻らない

 

って性質を持つので、熱で変性したケラチンや、カラーやブリーチで痛んだ部分や、摩擦で剥がれたキューティクルは元通りにはならないんですよね。

 

 

 

 

髪のダメージは“不可逆”ってどういうこと?

ということで、私たちの髪ってのは、一度ダメージを受けたたら元には戻らないわけですが、それでは続いて「髪のダメージはどこに起きるのか?」ってのもチェックしておきましょう。髪ってのは、主に3層構造でできてまして、

 

  1. キューティクル:表面のうろこ状バリア。ツヤと手触りを左右する

  2. コルテックス:髪の“芯”の部分。強度・弾力・色(メラニン)を決める

  3. メデュラ:中心部。役割は不明瞭で、細くて柔らかい髪には存在しないことも多い

 

みたいになります。この3層構造ってのは、それぞれ異なったダメージを受けるようになってまして、

 

  1. キューティクルの損傷(表面の破壊):摩擦・ドライヤー・紫外線・シャンプー・ブラッシングなどにより、キューティクルが剥がれる → 髪がザラザラ・ツヤがなくなるといった問題が起きる。これは完全に不可逆なダメージで、トリートメントで擬似的に埋めることはできても、本来の構造には戻らない。

  2. コルテックスの損傷(内部構造の破壊):ブリーチ・パーマ・熱・カラー剤などにより、タンパク質が変性し、S-S結合(シスチン架橋)が切断 → ハリ・コシ・強度が低下といった問題が起きる。こちらもダメージは不可逆で、結合が元通りになることはない。プレックス系処方(ジマレイン酸ビスアミノプロピルジグリコールなど)は一部の結合を補助してくれるんだけど、再構築ではなくあくまでも補助的な感じ。

  3. メデュラの消失(中心の空洞化):加齢・過剰な化学処理・脱色などにより、髪の中空化 → 髪の強度低下・パサつき・光の乱反射でツヤがなくなるといった問題が起きる。こちらも構造的に修復は不可能。

 

といった問題がよく起きるんですな。つまり、「トリートメントしたらサラサラになった!」「ダメージ毛が生き返った気がする!」みたいな話は、「錯覚」に近いものでして、あくまで一時的な処置によるものであり、構造的な修復ではないのだとお考えください。

 

「一時的な処置」の主な例としては、以下のようなものがあります。

 

成分役割実際に起きていること
シリコン(ジメチコンなど) 表面をなめらかにコート 手触りとツヤが改善されたように感じる
カチオン界面活性剤 静電気の抑制・くし通り向上 摩擦減少で「傷んでない感」が出る
ポリクオタニウム系 疑似皮膜形成 光の反射で“ツヤ”を演出
加水分解ケラチン 空洞部分に入り込む 一時的に質感を改善、洗えば流れる

 

ご覧のとおり、これらはすべて「見た目・触感の改善」であり、内部からの再生ではないとこに注意しましょう。実際のところ、多くの毛髪研究者は以下のように明言しておられます。

 

髪は自己修復できない。タンパク質構造が損傷すれば、それは元に戻らない。

 

ついでに、毛髪科学の教科書『Robbins Basic Hair Cosmetic Science』でもこう述べられてたりします。

 

キューティクルやコルテックスが受けたダメージは蓄積して元に戻らない。改善できるのは、あくまで見た目を整える化粧的な処置だけである。

 

ってことで、最大のポイントとしては、髪の毛は古くなるほどボロくなり、傷が癒えずに積もっていくだけってことですな。なので、化粧で肌をきれいに見せるのと同じで、トリートメントはメイクアップの一種とお考えください。