
「美容の世界は、なぜここまで嘘が多いのか?」の続きです!(#1,#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8,#9)
このシリーズでは、とかく「正しいもの」を選ぶのが難しい美容の世界において、
- なぜ美容の世界にはヤバい情報があふれてしまうのか
- その情報をかいくぐって良いものに到達するにはどうすればいいのか
といったあたりを掘り下げております。でもって、前回は「ヘアケア」の話を掘り下げましたんで、今回は女性からよく尋ねられる「ネイルやメイクが体に悪いって言われるんですけど……問題」を見ていきましょう。
というのも、ここ数年ネイルやメイクに対して、一部から批判がでてまして、
- ジェルネイルは、UVライトで皮膚がんの確率が上がる!
- マニキュアの成分には、体に悪いものが入っている!
- 「10フリー」って書いてあるものじゃないと安心できない!
みたいな意見をチラホラ見かけるんですよ。このあたりは、美容好きなら一度は耳にした批判じゃないかと。
とりわけここ数年、ネイルやメイクの“安全性”に関する話題が増えた印象でして、「自然派ネイルじゃないとヤバい!」とか「発がん物質がどうたらこうたら!」とか、やたらと不安を煽る話が多く出回っているんですな。というわけで今回は、ネイルやメイクは本当に体に悪いのか?というテーマをチェックしていきましょうー。
「ネイル=危険」説はどこから出てきた?
まずネイルが問題視されるようになったのは、こいつに使われる成分の中に「有害」とされる化学物質がいくつか含まれている事実が指摘されはじめたからです。ネイルポリッシュやジェル製品に含まれる一部の成分は、過去に「人体に有害かもしれない」とされたケースが多いんですよ。
代表的なのは以下の3つであります。
- ホルムアルデヒド(Formaldehyde)
- 用途:ネイルハードナー(強化剤)などに使用
- 問題視:発がん性があるとされる(IARCグループ1)
- 実態:ネイル製品における濃度はごく微量(〜0.2%以下)
- フタル酸ジブチル(DBP)
- 用途:可塑剤(ポリッシュの柔軟性保持)
- 問題視:内分泌かく乱物質(ホルモンに似た作用の可能性)
- 実態:EUでは使用禁止、米国では使用制限あり
- トルエン(Toluene)
- 用途:ポリッシュの溶剤
- 問題視:吸入時に中枢神経系への影響の懸念
- 実態:揮発性が高く、換気された空間であればほぼ問題なし
ということで、これを読むとなかなか恐ろしい印象があるわけですけども、ここで問題になるのが「動物実験の結果が一人歩きしているぞ!」ってところです。多くの「危険成分」は、動物実験(ラット・マウス)で「高用量を継続摂取した場合」の結果に基づいて議論されてまして、たとえば、
- DBPをネズミに1日あたり数百mg〜g単位で与え続けたら生殖機能に影響が出たよ!という研究(R)は確かに存在するが、これをもとに「ネイルに使うDBPも有害!」と主張する。
みたいな感じっすね。しかし、人間がネイルポリッシュから経皮吸収する量はごく微量であり、しかも一時的な使用がメインなんで、同じような影響が出るとは思えないってのが実際のところです。
さらには、一部のアレルギーや皮膚炎のケースが「全体のリスク」と混同される例もよく見かけたりします。ごくまれに起きる問題が、「絶対的な危険」に拡張されちゃうパターンですな。これについては、たとえば、
-
メタクリレート系モノマー(ジェルネイル)による接触皮膚炎
-
ホルムアルデヒド系成分によるアレルギー反応
-
染料・溶剤による局所的かゆみや発赤
みたいなものがあります。これらの症例は確かに実在するんだけど、その発生率は非常に低いもんでとても「全員が危険」と言えるレベルじゃなかったりするんですね(R)。
もちろん、トルエンもホルムアルデヒドも、ある濃度以上で吸い続けたり、飲んだりすれば確かに有害ではあるものの、ネイルに使う程度では、ほぼ無視できるレベル。実際、現在の市販ネイル製品は厳しい規制のもとに製造されており、EUやアメリカでは「安全域を超える濃度」は基本的に使えないようになってたりします(R)。
が、近ごろはメーカー側も「ネイル=危険説」を利用する方向にかじを切ってまして、毎度おなじみ 「◯◯フリー表示」をやたらとマーケティングに使うようにもなってたりします。ざっくりと例を挙げると、
- 3-free(トルエン、ホルムアルデヒド、DBP不使用)
- 5-free(+ホルムアルデヒド樹脂、カンファー)
- 10-free(さらにパラベン、キシレン、動物実験成分など)
- 21-free(もはや何が含まれていたのか分からない)
みたいな表記がメジャーどころでして、とにかく「有害成分が入っていないから安心!」という意味で使われてるんですな。
しかし、実際には上述のとおり、すべては「動物実験+大量使用」って条件を強引にヒトにも当てはめた暴論なので、「◯◯フリー」って表示の大半は、科学的根拠よりもイメージ戦略に依存しているのだと申せましょう。「怖い言葉を消した」こと自体が、逆に不安を増幅させているって側面もありますしね。
さらにいえば、たとえば「ホルムアルデヒドフリー」と書かれていても、そもそも現在の製品には最初からそんなもん入ってないのが普通ですし、「カンファーフリー」「グルテンフリー」「パラベンフリー」みたいに、まったく関係ない成分まで排除して安心感を演出するケースもあったりします。
結局のところ、“◯◯が入ってない”ってのは別に“安全だ”って意味ではなく、その多くは、実際には含まれていない成分を“わざわざ”排除したと主張することで、他製品を危険に見せてるだけだと申せましょう。いやになっちゃいますなぁ。
また、もうひとつネイル製品が危険だと言われるようになった原因に 「におい」があります。ネイル製品ってのは、揮発性の溶剤(アセトン、エタノール、酢酸エチルなど)を多く含むもんで、特有のツンとした匂いがあるんですよね。
すると、これが以下のような連想を生んだわけです。
- 匂いが強い → 化学物質が多そう
- シンナー臭い → 工業用っぽくて怖い
- 換気しないと頭痛がする → 体に悪いに違いない
たしかに、これらの物質を密閉空間で長時間吸い込むのはおすすめできないんだけど、香り=毒性の証明ではない点には注意が必要ですな。
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