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ジャズ和声論ミニマム-1
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ジャズ和声論ミニマム-1

2015-06-05 00:00

    [§1 強進行と核音]

    §1.1 オクターブと12音

    音は、空気の振動を耳でキャッチすることで感じられる。
    空気の振動が速いほど「高く」、遅いほど「低く」感じられる。
    一定の速さの振動がある程度持続すると、「ある音の高さ」として認識することができ、これを「広義の音程」とする。
    音の発生源は種々考えられるが、音楽的な高さを発する、つまり「(狭義の,音楽的な)音程」が感じられる発音体は、基本的に1次元とみなせる(線状の)物体である。
    このような線状物体の振動モードは、後述する12音に近似的にではあるがうまく当てはまるからである。
    例)バイオリンやギターなど(弦)、鉄琴など(細長い板)、フルートやトランペットなど(管)。ただし、例外的に、ティンパニやスチールドラムなど、面状の2次元物体を発音体としつつ音楽的な音程を感じられるように作られた楽器も存在する

    ある周波数の音に対して2倍あるいは1/2倍の振動数を持つ音は、高さは違えど同種の音と感じられ、これを「オクターブの関係」という。

    西洋音楽は、オクターブの周波数を均等に一定の比率(2の12乗根の比)でわけることで12種の音を作り、12音を前提として理論を構築していく。
    ※実際は順序が逆で、線状物体の発音モードから得られる音(純正律)をそれらの間隔がおよそ均等になるまで拾い上げると12音になり、歴史的な経緯から現在は完全均等配分の12音(平均律)を基本的な音程として扱っている。


    §1.2 不協和度

    ある音程と1オクターブ内にある12の音程を同時に鳴らした時に、その振動数比が単純であるほど調和して聞こえる。
    P1=1, m2=16/15, M2=9/8, m3=6/5, M3=5/4, P4=4/3, +4 & -5=64/45, P5=3/2,m6=8/5, M6=5/3, m7=16/9, M7=15/8, P8=2
    ※無理数で計算する平均律では2つの振動数比を有理数比で表すことは原理的に不可能だが、ここでは平均律の元になった音程(純正律)での振動数比で考えている。

    古典的な音楽理論では、不協和度は次のように考えられる。

    完全協和音程 … P1, P4, P5, P8
    不完全協和音程 … m3, M3, m6, M6
    不協和音程 … m2, M2, +4 & -5, m7, M7

    ※P(Perfect)は完全音程、M(Major)・m(minor)は長・短音程、+(augmented)・-(diminised)は増・減音程を表す。大文字と小文字の別は慣習による。

    しかし、現代的な評価では、主観的な心地良さが優先されるために振動数比から考えた結論と一部逆転し、また、複雑な和音への慣れから不協和音程もより細かく区分される。
    現代的な不協和度(Dissonance Level)は、次のように考えられている。

    DL.1(協和) … m3, M3, m6, M6
    DL.2(無彩色) … P1, P5, P8
    DL.3(無機) … P4
    DL.4(穏やかな不協和) … M2, m7
    DL.5(鈍い不協和) … m2, M7
    DL.6(不安定) … +4 & -5

    西洋音楽の肝はまさにこの部分にあり、不安定なDL.6である増4が6度に広がることによって、あるいは減5度が3度に狭まることによって安定したDL.1の音程となり「解決」する。
    この解決の動きこそが機能的な音楽の推進力となっている。

    図1.1

    DL.6の音程はちょうど全音3つ分と同じ幅なので「トライトーン(Tritone)」といい、DL.1への解決を「トライトーンの解決(Tritone Resolution)」という。
    このとき、下行する音は半音の動きでも全音の動きでも良いが、上行する音は必ず半音の動きをするものとする。
    半音上行する音を「
    導音(Leading Tone)」という。
    図1.1ではb音を導音と考えている。

    オクターヴ上の音と同時に鳴らした場合と、純正律の増5度上の音と同時に鳴らした場合の波形を示す。



    図1.2 ※縦軸が振動の大きさ、横軸が時間経過である。

    増5度と同時に鳴らした波形のほうが不規則な形であり、波形が繰り返されるまでにも時間がかかるのが見てとれる。


    §1.3 倍音列

    ここまで、あたかも1つの音にはただ1つの周波数の音が対応するかのように扱ってきたが、実際に発音体から生じる音は、複数の周波数を持つ音の重ね合わせである。
    ここでは、最もわかりやすい弦の振動を考える。
    実際に弦に生じる波は複雑なものであるが(ギターの弦振動の動画のページを参照)、両端が固定されている制限があるので、弦長の整数分の1の半波長を持つ波だけが定在波として存在する。

    図1.3

    上図の1番上にくる、山をひとつだけもつ一番波長の大きな波(基音 = fundamental tone;mode1)から生じる音の周波数が最も低く、この最も低い周波数が弦から発せられた音の音程として感じられる。
    以下、山が2つある波(2次倍音;mode2)は2倍の周波数、山が3つある波(3次倍音;mode3)は3倍の周波数を持つ波である。
    仮に、基音がgの音であったとし、理論的な2,3,4,…次倍音列(Harmonic Series)に最も近い音符を楽譜にプロットしていくと、下図1.4のようになる。

    図1.4

    ※平均律の周波数とのずれを%で表記した。また、袈裟懸けに線を入れたものは、平均律とのズレが大きく、近似的に当てはめたものでしか無い(平均律における半音の周波数差は約+5.61%)。

    図の最後に示したように、倍音列を拾い上げるとトライトーンを持つX7の和音を構成することがわかる(煩雑さを避けるために、同じ種類の音は省いた。これは、奇数次倍音のみを拾い上げることに等しい)
    これら倍音の含まれる強度の違いによって、楽器の音色に違いが生まれる。
    ただし、高次の倍音になるほど含まれる量は少なくなる。
    およそmode8まで考えれば十分である。
    また、実際の楽器(弦・管・細長い板など)は完全な一次元体ではなく太さや幅を持つので、高次の倍音になるほど、振動数が理論的な整数倍からずれていく。
    楽器の中にはクラリネットのように奇数次倍音しか持たないものもある。

    ※実際の楽器との対応については倍音のページに、原理的については弦の振動気柱の振動のページに詳しい。

    後述するジャズにおける基本的なヴォイシングは、この倍音列を規範にして構築していく。


    §1.4 強進行

    音程を持つ楽器の音は、例え単音で鳴らしても、原理的にトライトーンを含んでしまうことがわかった。
    前述したように、あくまで高次の倍音はわずかに含まれるのみではあるが、倍音間に生じる仮想的なトライトーンが解決されるような音の動きが生じると、強い帰結感を得る。
    基音が高いと倍音が高くなりすぎて感じ取れないので、この帰結感は低音域でしか得られない。
    最も低い位置にできるトライトーンの組み合わせである5次倍音と7次倍音について考える。
    基音が完全4度上行する動きによって、次いでより高い次数の倍音を用いなければならないが完全5度下行する動きによって、b音を導音としたトライトーンの解決がなされる。

    図1.5

    あるいは、基音が短2度下行することによって、f音を導音としたトライトーンの解決がなされる(長7度上行ではうまくいかない)。

    図1.6

    完全5度下行(音名的には同じ対応の完全4度上行も含めて考えている)と短2度下行の2つの動きを「強進行」といい、(低音の)最も基本的な動きとなる。
    強進行はあくまで低音域で成り立つ関係性であり、和音の構成音でいえばベース音として支えている根音の間の動きにのみ当てはまる。
    ただし、逆に解決先の音から見ると、完全5度下行した先の音の倍音列にもまた進行前の基音が含まれるのに対して、短2度下行した先の音の倍音列には進行前の基音が含まれないため、短2度下行については一方的な結びつきであるといえる。

    ※上の例で考えると、cには倍音gが(早々にmode2で)現れるが、♯fの倍音列にはgが現れない。

    そのため、しばらくは強進行として完全5度下行のみを考える。

    ※完全4度上行とはいわず完全5度下行というのが一般的なようである。Ⅴ7→Ⅰを考えると、最後のⅠの最高音をⅠの根音にするには、Ⅴ7の3度音→Ⅰの根音という上行の動きになるので、ベース音は下向きに反行させ完全5度下行とするほうが綺麗に感じられるからであろうと思う。推測で話しているので厳密にはわからない。


    §1.5 核音

    ある中心的な音に対して完全5度下行(完全4度上行)の強進行で結び付けられた2つの音を考える。
    具体的には、中心的な音を主音(tonic)、強進行で主音を導く音を属音(dominant)、主音から強進行で導かれる音を下属音(subdominant)という。
    のように打ち消し線を書いたのは、単純にdと書くとレの音を表すdと区別がつかないからである。打ち消し線で表すのは一般的な表記ではない。また、小文字で表しているものは単音を表し、後に出てくる和音を大文字として区別する。

    図1.7

    tdsの3つの音を(機能を持つ)音階の「核音(nuclear tone)」という。
    cを主音とした場合、完全5度上に来るgが属音であり、完全5度下に来るfが下属音である。


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