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ジャズ和声論ミニマム-3
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ジャズ和声論ミニマム-3

2015-06-05 00:00
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[§3 短旋法と和音の機能]

§3.1 自然的短旋法
前章で扱った長旋法は、核音上に生ずる三和音がすべて長三和音となるものであった。
そのため、長旋法で作った曲は明るい響きとなりやすい。

それに対して、核音上に生ずる三和音がすべて短三和音になるように浮動音を調整した音階を作ることを考える。
実際にCを主音として考えると、Cmより♭e,Fmより♭a,Gmより♭bとすればよく、下のような音階を得る。


図3.1

このような音階を、自然的短旋法(Natural Minor Scale)という。
長音階に対して半音下がったものは、ギリシア数字(度数)の前に♭をつけて表してある。
テンションまで含めて和音を考えると、

図3.2

となる。
ここで、3つの核音の上に生じる和音を自然的短旋法の主要和音とし、それぞれm,m,mと表す。
主和音Ⅰm(Cm)の音響的なアヴォイドノートは♭ⅵ(♭a)の音であり、同じく♭ⅵの音をアヴォイドノートとするⅢ♭m(E♭m)がmの代理和音である。
下属和音m(Fm)には音響的なアヴォイドノートはない。
Fmに対する13(d)の音が3度とトライトーンを作るので、前章の議論では省く必要があるように思えるかもしれないが、このトライトーンは主和音を導くもの(ⅳとⅶとの組み合わせ)とは別のものであるから、機能的なアヴォイドノートとは考えない。
mの和音から逆算して考えて、♭aをアヴォイドとしない和音はすべてmの代理和音として使える。
属和音Ⅴm(Gm)の音響的なアヴォイドノートは♭ⅲ(♭e)の音と♭ⅵ(♭a)の音である。
Ⅴmはトライトーン、特に主音への導音を持たず、主和音への結びつきが根音の強進行のみしかないため主和音を導く力がかなり弱い。

前章と同じ観点で見るなら、機能的なアヴォイドノートの議論も必要である。
mに対する音響的なアヴォイドノートから、mを特徴付ける音とは♭ⅵであり、これがmに侵入することはありえないといえる。
つまり、に対する機能的なアヴォイドノートはⅳであったが、mに対する機能的なアヴォイドノートは♭ⅵに変わったといえる。
しかし、mが導音を持たず不完全なものであるため、mやmに対する機能的なアヴォイドノートは上手く定義することができない。
後述する他の短旋法においてmをと変化させた場合は、mに対する機能的なアヴォイドノートは♮ⅶであり、に対する機能的なアヴォイドノートはⅰであるとして定義することができる。

まとめると、

m系統 … Ⅰm7,Ⅲ♭△7
m系統 … Ⅳm7,Ⅳm6,Ⅱm7-5,Ⅵ♭△7,Ⅶ♭7
m系統 … Ⅴm7

となる。
また、Ⅶ♭7はトライトーンを持つが、Ⅰmへ解決するトライトーンではないので系の和音とはならない。
そして、Ⅶ♭7→Ⅲ♭△7の動きをしてしまうと、もはやKey.♭ⅲmajへ転調してしまったかのように感じられるので気をつけなければならない。

6度を含む四和音に関しては、ダイアトニックコードの範囲ではⅣm6しか存在しない。


§3.2 和声的短旋法と旋律的短旋法

自然的短旋法は、属音ⅴ()の上に生じる和音が導音を持たないため、主和音を導く力が弱い。
§2.4で触れたように、主音ⅰ(t)に生じる和音が安定するには、属音上に生じた和音の持つトライトーンが主和音に解決することが必須であると考えられる。
そこで、♭ⅶの音を半音上げて導音とした音階を考える。

Cを主音として考えると、

図3.3

となる。
専らⅴに生じる和音の都合で作られたものなので、和声的短旋法(Harmonic Minor Scale)という。
Cを主音として考えると、

図3.4

となる。
Ⅲ♭+5の和音は、増5度の音を含むため響きが悪く、オーソドックスな音楽ではほとんど使われない。
また、Ⅴ7(G7)の和音において、3度を導音化したためトライトーンが生じるため、自然的短旋法とは異なり♭9(♭a)の音と♭13(♭e)の音がテンションノートとして許容され、反対に、11(c)の音はアヴォイドノートとなってしまうことに注意する。
合わせて、Ⅶdim(Bdim)は主和音を導くトライトーンを持つことを優先して、'となる。
この時、Ⅶdimは短3度を積み重ねた和音で、減7の和音またはディミニッシュコード(Diminished Chord)という。
Ⅱm7-5に対する13の音の扱いは前章と同じで、機能的にはアヴォイドであるが音響的にはアヴォイドでない。

まとめると、

m系統 … Ⅰm△7,(Ⅲ♭△7+5)
m系統 … Ⅳm7,Ⅳm6,Ⅱm-5,Ⅵ♭△7
系統 … Ⅴ7,Ⅶdim

となる。

さて、和声的短音階によってⅴの和音の問題は解決したが、♭ⅵ(♭a)とⅶ(b)との間の間隔が増二度(3半音)となり広すぎるため、旋律がいびつとなってしまう。
そのため、♭ⅵの音も半音上げた旋律的短音階(Melodic Minor Scale)を考えてみる。

図3.5

結果的に、旋律的短旋法と長旋法は音階の第3音のみにしか違いがなくなってしまっている。
Cを主音として考えると、

図3.6

となる。
Ⅵm7-5はⅠm6と構成音が同じであり、機能はm'となる。
Ⅱm7に対する13の音の扱いは他と同様である。

まとめると、

Tm系統 … Ⅰm△7,Ⅰm6,Ⅵm7-5,(Ⅲ♭△7+5)
S系統 … Ⅳ7,Ⅳ6,Ⅱm
D系統 … Ⅴ7,Ⅶm7-5

となる。

3種の短旋法が出揃ったところで、§2.1で取り上げた長旋法の優れた点、

①音階の中に3つの核音が全て含まれている。
②すべての音が完全5度の関係に乗っている。
③主音に対し導音となる音を含むトライトーンが存在している(さらには、その他にトライトーンが存在しない)。
④音階の各音の間が半音又は全音で構成されており、大きな音の飛びがない。

と比較してみる。
自然的短音階は、③の本文,カッコ書き共に満たさない(さらに、Ⅶ♭7の持つⅱと♭ⅵという余計なトライトーンが生じたために、Ⅶ♭7→Ⅲ♭△7,Ⅲ♭6があたかもⅲを主音とするⅤ7→Ⅰと取られかねない危険性がある)。
和声的短音階は、③の本文を満たしカッコ書きも改善される(ⅱと♭ⅵは依然存在するが、♭ⅲ音上の和音がⅢ♭△7+5という主和音となりえない和音となったため、Ⅴ7→Ⅰと取られる心配はなくなる)代わりに、②(♮ⅶの音は強進行の結びつきから浮く)と④から外れてしまう。
旋律的短音階は、④を再び満たし、③のカッコ書きもさらに改善される(♭ⅲと♮ⅵという新たなトライトーンは出現するものの、♭ⅲにしても♮ⅵにしても、上行する先がⅳと♮ⅶという全音上のものなので、短旋法の中の何かの音に対して導音とはなっておらず、全く問題にはならない)ものの、②はさらに悪化して(主音に対する6度は♭ⅲ→♭ⅵから♮ⅵ→ⅱに結びつきが変わるだけで強進行の結びつき自体は失わない。この結びつきの付け替えからもⅥ♭△7はmとなり、Ⅵm7-5はmとなるのだといえるかもしれない。しかし、依然♮ⅶは浮いた存在であることに加え、♭ⅲまでもが結びつきから外れて)しまう。
つまり、どの短旋法をとってもなにかしら不完全であり、そのためそれぞれをキメラ的に組み合わせて使う必要が生じてくるのである。
使い分けについては、次節で述べる。


§3.3 短旋法に用いる和音

3種類の短旋法を紹介したが、実際上どれを使えばよいのだろう。
どのコードも探せば使用例があるのかもしれないが、軽重をつけておかないと方針が立たないので、ひとまず基本的なものを取り上げておく。

基本的に、ⅰ音上の和音には旋律的短音階を、次いで和声的短音階を用いる。
理由は、終止感を強く出すにはⅠm6やⅠm△7を使う方が好ましいからである。
自然的短音階により生じるⅠm7は、実際上Key.♭ⅲmajの中のⅥm7とも見立てることができ、Key.ⅰminとしての終止感が弱いからである。

v音上の和音には和声的短音階を、次いで旋律的短音階を用いる。
導音ⅶがなければ主和音への解決感が弱いためであった。
また、♭9をテンションとして持つ和声的短音階の方がより短旋法としての印象が強くなるので好ましい。
そして、和声的短旋法のⅤ7においては♭9とM3の間に♯9の音を埋めることで音の飛びを無くすこともある。
ただし、Vm7sus4として使う場合は自然的短音階のコードを用いることもできる。

ⅳ音上の和音には自然的短音階を用いるのが基本だが、旋律的短音階を用いることもある。
具体的には、mのⅣm7を使うのが基本であるが、旋律的短音階によって生じるⅣ7を用いることも多い。
このⅣ7は構造上X7コードになっているので、その代替コードⅦ7を使用することができる。

Ⅴm7sus4とⅦ7については第5章で詳しく触れる。

その他の代理和音については、原則的に自然的短音階で考えるのが良い。
ただし、Ⅵm7-5は比較的用いられることがある。

まとめると、

- Natural Minor -
T
m系統 … Ⅲ♭△7

Sm系統 … Ⅳm7,Ⅳm6,Ⅱm7-5,Ⅵ♭△7,Ⅶ♭7
Dm系統 … (Ⅴm7sus4)

- Harmonic Minor -
Tm系統 … (Ⅰm△7)
D系統 … Ⅴ7

- Melodic Minor -
Tm系統 … Ⅰm△7,Ⅰm6,(Ⅵm7-5)
S系統 … Ⅳ7
D系統 … (Ⅴ7)

となる。


§3.4 短旋法においてダイアトニックコードに準ずるコード

自然的短旋法においてⅡm7-5の根音を半音下げたⅡ♭△7も比較的よく使われる。
このコードも♭ⅵがアヴォイドノートにならないので、機能はm'である。

図3.7

第1章の倍音列のところでやったように、♭ⅱの音はⅰの音に強進行する。
そのため、Ⅱ♭△7は弱いとしても使うことができる。
♭ⅱに生じる和音としては、トライトーンを持ちより強く主和音と結びつくⅡ♭7も存在する。
Ⅱ♭7についても第5章で扱う。


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これを読んで音を出しましょう。音楽は百読は一聴だ。この記事に音が埋め込まれていたら最高。
62ヶ月前
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