【会計】政府資産(備品)管理の実務
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【会計】政府資産(備品)管理の実務

2016-11-26 23:01
    今回は、備品管理の実務上の取り扱いについて、最近話題になっているニュースをもとに考えていきたいと思う。



    ①事例その1(内閣府における備品管理)

    【政府の備品約65億円分が行方不明に!? ファクス、シュレッダー、防災無線まで…】
    2016年11月25日
    【産経新聞】

    「政府の備品約65億円分が行方不明に!? こんな仰天のデータが、政府が25日に閣議決定した答弁書で明らかになった。民進党の長妻昭元厚生労働相の質問主意書に答えた。
     答弁書によると、管理簿で保管・供用中とされている物品のうち、(1)実際はすでに廃棄されていた(2)現物の確認ができなかった-のいずれかに該当するものが内閣官房で3469万円分(26点)、内閣府本府で64億3789万円分(201点)確認された。
     品目別では、防災無線通信設備関連の機器など(179点)、ファクスなど(19点)、シュレッダーなど(10点)が目立った。
     質問主意書は、所在不明となった物品が転売されたり、職員が自宅などに持ち帰ったりした事例の有無も尋ねたが、「確認されていない」(答弁書)という。
     答弁書は「物品の適正管理の重要性について周知徹底を図るなど事態の再発防止に努める」としている。」



    (備品の約65億円の所在が不明となっている)


    (シュレッダー)


    (画像データを無線通信回線で送受信できる装置)

    ②会計検査院の法的位置づけ

    憲法上の論点が存在する。
    が、ここでは割愛する。

    ※本当は、書くのが面倒くさかっただけです。。。ちょっとした論点で、しかも細かいため。。。
    気になる人は、ネットで検索するなり、憲法の基本書を読むことをオススメします。
    ただ、芦部信義先生は初学者向けではないように思うので、個人的には高橋和之先生の薄い本とかその辺がオススメです。


    ③備品の会計的位置づけ

    基本的に、資産は、流動資産・固定資産・投資その他の資産に分類できる。
    今回問題になっているのは、主として固定資産についてである。

    固定資産については、有形固定資産と無形固定資産が存在するが、ここでは有形固定資産についてみていく。

    実務上、有形固定資産については、台帳において管理している。
    上記記事にある管理簿というのがそれである。
    台帳と聞くと、紙媒体でそこにつらつらと資産の一覧が書かれているイメージがあるが、実際のところはデータ上で管理している。
    もちろんそのデータから、csv形式やexcel形式、pdf形式などで吐き出すことが可能になっている。
    そこで、会計検査院が、そのデータと実備品の存在の有無を突合させた結果、約65億円について、その存在が確認できなかったと相成ったわけである。

    ところで、備品といった場合、実務上は、(有形)固定資産と少額資産を指す場合が多い。
    簡単に関係性を示すと以下のようになる。

       10万円未満→消耗品 (費用)
    10~30万円未満→少額資産(資産)
       30万円以上→固定資産(資産)

    上記の取り扱いを行っていることが多く、また内閣府の内規もそのようになっているはずである(少額資産と固定資産は、償却や税務上の取り扱いが異なる)。

    そもそも、備品については億単位の代物が存在することが多く、最近では小型でも高価な備品も存在する(例えば、医療機関が保有している高価な細菌・ウィルスなどは、シャーレで保存してあったとしても固定資産になる)。つまり、紛失もしやすいのである。

    そこで、備品管理の限界について記述したい。それは主に下記の2点である。

    (Ⅰ)庁舎の移転や組織再編などの大規模な変革が起こった場合

    この場合、それに伴い、多くの事務官・技官・研究者などが移動することになる。
    すると、その省庁に設置していた備品は、古いがために廃棄されたり、人の移動と同時に移転したりする(例えば、研究者が有していた研究用備品などは、当該研究者がその他組織や民間企業に移った場合、その備品も移動する可能性が高い)。
    問題は、廃棄や移転の際に、データ上にそれが反映されなかった場合、当該資産はデータの上では台帳に存在することになってしまうということである。

    政府機関や公的機関では、おおよそ実務が書面主義となっているため、廃棄や移転をする場合は、所有者がその申請書を記載し、資産管理者に提出することが求められる(資産管理者はその書面に基づいて、データから資産を抹消することになる(実務上は、これを除却という))
    が、所有者自身にそのような規範意識がない場合や(そもそも書面作成義務があることを知らない場合もある)、煩雑さゆえに書面の作成・提出を怠った場合などは、その分の備品が資産台帳に反映されないという事態が生ずる。

    e.g.
    ここで、内閣府の組織図をみていただければわかると思うが、
    http://www.cao.go.jp/about/doc/soshikizu.pdf
    内閣府は、さまざまな担当部局が存在し、例えば、防災担当部局であれば、職員が大学や研究機関等に異動し、それに伴い防災機器等を異動先へ移したとする。その際に、仮に書面手続きを失念していた場合は、当該防災機器が管理簿上(内閣府)と実態(移転先)とに乖離が生じうる。


    (Ⅱ)時間的に把握が困難になってしまっている場合

    上述したように、備品管理は現在データにおいて行われている。
    ただ、かつて、はたして何年頃からかまではわからないが、昭和の頃は、紙媒体で備品管理を行っていた
    そもそも、パソコン自体が存在しなかったり管理ソフトが存在しなかったりした時代である。
    したがって、その当時の備品については、庁舎や部屋の増改築・解体・移転などの際に、何千何百とある備品を一つ一つ人海戦術でチェックしていくのだから、人間の作業的にも見落としがどうしても生じてしまう。
    また、データ化する際に抜け落ちてしまっている場合もある

    おそらく、実備品と管理簿との相違は、上記の2つが主なものである
    そうであれば、実際の備品金額に管理簿上の備品金額を合わせるだけであるので、資産金額の実体はなんら変化しないことになる(つまり、会計上は何か、税金が約65億円無駄になってしまった!!!などということはないのである)。

    簡単にいえば、金庫の中に税金が100万円入っていて、帳簿上は150万円と記載があった場合、実体は100万円に他ならない(50万円を誤記帳していた)わけであるから、単に帳簿を修正すればよいだけである。もともと金庫にあった150万円が、誰かが持ち出して50万円流出して無くなってしまった!ということにはならないのである。

    したがって、記事にもあるとおり、
    民進党の長妻昭元厚生労働相の質問主意書・・・質問主意書は、所在不明となった物品が転売されたり、職員が自宅などに持ち帰ったりした事例の有無も尋ねた」
    とあるが、そういったことはまず考えにくいだろう。

    ただし!!!
    もし、そのようなことがあれば、税金の流出であり大きな問題である。

    質問主意書の意図としては、そのような問題を追及したという意味で大きな意義がある(あるいは与党の揚げ足を取っているだけとの見方もあるだろう)。
    つまり、長妻議員は、野党の役割をきちんと果たしているともいえるし、悪く言えば与党の政権運営のミスをつつこうとしているともいえる(ただし、その場合は、事務組織の同一性から、旧民主党政権時代にも生じていた問題が今発覚したというだけのことであるから、そのような批判的な考えはおそらく間違いだろう)。
    どのような見方をするかは、その人の持つイデオロギー、つまり左翼的なのか右翼的なのかによって異なるであろう。ただ、冷静な判断をするのであれば、民進党は仕事をしたという客観的な事実が存在しているということに変わりはない

    解決策は、備品に一つ一つ目印をつけ、その目印と台帳データが自動で連動するようなシステムを導入することくらいだろう。そうすれば、確実に実備品とデータが常にイコールになる。だが、これは技術的にもコスト的にも非現実的であろう。
    ということで、結局は、備品所有者の意識付けをしっかりしておかなければいけないということになる。
    つまり、政府答弁の「物品の適正管理の重要性について周知徹底を図るなど事態の再発防止に努める」ということになるのである。

    また、実備品が存在しないことが発覚すれば、速やかに確認し、台帳から消すことが必要であろう。


    会計検査院は、最近はかなり細かいところまで突っ込んでいるように思う。
    ※会計検査報告書というものが出ているので、そこからも確認できる。
    もちろん、彼らは、上述した書面も逐一チェックしていく。そして、不備があれば訂正を求める。
    民間企業の場合は、監査法人がその役割を持つのであるが、会計検査院とはその役割や権限が全くと言っていいほど異なる。
    よって、民間企業の場合と公的機関の場合は必ずしも比較はできないが、今回の場合のように備品管理の重要性については官民問わず共通している。


    今回は、政府備品について考えてきたが、今回のニュースを聞いて、自民党はダメだ!と叩いている人がいたら、それは的が外れているように思う。
    政治的ニュースは、あくまで冷静にとらえなければその本質が見えてこない。
    右翼左翼のバイアスを抜きにして、一旦落ち着いて考えてみたほうがよいだろう。
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