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エモーショナル・ステンレス
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エモーショナル・ステンレス

2018-04-26 18:51

    この台本はとある作品のオマージュです。
    途中から、割とまんまになってしまって悔しかったのでいつかリベンジしたい所存です←

    [♀]アメジスト
    [♀]アリス・アヴァロン
    [♂]アルバート・ノーグローブ
    [♀]アンジェリカ・ノーグローブ


    アメジスト
    「依頼、ですか?」

    アリス
    「そう、依頼よ。クライアントは作家のアルバート・ノーグローブ様。
     手が細かく動かせないってことで、代わりに私達に文章を書いてもらいたいって話みたい」

    アメジスト
    「代筆ということですね、承りました。
     以前やった、料理店でのお客様の呼び込みより大幅に自信があります」

    アリス
    「無表情且つ無感情だものね、貴方。いつも淡々としてるし」

    アメジスト
    「普通にしているだけなのですが」

    アリス
    「それが無機質ってこと。まあ、いいわ。
     タイプライターの扱いは私も認めているし、仕事としては打って付けでしょう」

    アメジスト
    「アリス様も、今回はご同行を?」

    アリス
    「えぇ、ついていかせてもらうわよ。
     コミュニケーション能力に欠陥があるのは、これまでの経験でよく分かったから。そこは私がフォローする」

    アメジスト
    「お世話をかけます」

    アリス
    「全くよ。とんだ、拾いもの」

    アメジスト
    「捨てられますか?」

    アリス
    「あのね、私は鬼畜ではないのよ。
     生まれたての子犬を、手がかかるからといって放置するわけないでしょ」

    アメジスト
    「子犬? 私は機械であって子犬では」

    アリス
    「例えだから、表現技法。
     なんであれ、貴方はまだ赤ん坊みたいなものなの。能力が、どれだけ凄くたってね」

    アメジスト
    「意味がよく分かりません。
     赤子に近いと言われるのならば、今年で18になるのに未だ幼女のようなお姿をしているアリス様のほうが――」

    アリス
    「――私は成長期が遅いだけ。これからぐんぐん成長するわよ。
     ともかく。いずれは、私が言ったことも分かるようになると思うわ」

    アメジスト
    「そういうものでしょうか」

    アリス
    「そういうものよ。
     だってアメジスト。貴方の胸には、他のどんな機械にも無い、心って回路があるんだから」

           □

    アルバート
    「どなたかな?」

    アメジスト
    「便利屋アヴァロンです。オーダーがありましたので、代書に参りました」

    アルバート
    「あぁ、そうか。そうだ、呼んでいたな……。今開ける」

    アメジスト
    「お初にお目にかかります。私はアメジスト。こちらが代表のアリス・アヴァロンです。
     貴方が、アルバート・ノーグローブ様ですね。有名な作家の方とお会い出来て、大変光栄に思います」

    アルバート
    「――」

    アメジスト
    「いかがなさいましたか?」

    アルバート
    「いや、なんでもない。
     随分と感情の無い、平坦な喋り方をする子だなと思ってね」

    アリス
    「申し訳ありません。お気に障られましたか?」

    アルバート
    「別に。個性的なのは良いことだ。
     僕ら作家にとっては、奇抜は美徳だよ。話の種になる」

    アリス
    「そうですか。なら、良かった」

    アルバート
    「だから、君も普通にしていていい。
     慣れない敬語はしんどいだろう。人として大事な部分を過たないなら自然体が一番だ」

    アリス
    「寛容な方、なんですね」

    アルバート
    「趣味嗜好の問題だよ。
     色々言ったが、本当はかしこまられるのが苦手なだけさ」

    アメジスト
    「私は、常にこうなのですが」

    アルバート
    「なら、それはそれであえて変える必要は無い。敬語が嫌というわけではないしね。
     まあ、何だ。とりあえず上がってくれ。出不精(でぶしょう)の男には外での立ち話すら多少堪(こた)える」

           □

    アルバート
    「しかし、驚いたよ。
     まさか、代書を頼んでやってきたのが少女二人とは」

    アメジスト
    「私達ではご希望に添えませんか?」

    アルバート
    「そういうわけじゃない。
     もちろん、満足に仕事が出来ないなら話は別だが。そこは心配いらないんだろう?」

    アリス
    「えぇ、お愛想はてんで駄目でも基本的な業務においてアメジストは優秀と言える。期待してもらっていいと思うわ」

    アルバート
    「はは、お墨付きというやつだ」

    アメジスト
    「……アルバート様」

    アルバート
    「どうかしたかな?」

    アメジスト
    「私の眼には、貴方様の手に酒瓶(さかびん)が握られたように見えますが。
     職務を執行するにあたって、それは不要なものでは?」

    アルバート
    「僕は、アルコールを入れないと書けないタチでね」

    アメジスト
    「書くのは私ですが」

    アリス
    「ちょっとアメジスト」

    アルバート
    「いいよ、アリス。なるほど、確かに君の言うとおりだ。
     僕は書かない。僕は物語を語り、君が文字に起こす。役割分担はそうなってる。
     ただね、頭にファンタジーを描く方法は人それぞれ。僕にとっては、酒を飲むことがそれに当たる」

    アメジスト
    「ルーティンということでしょうか」

    アルバート
    「そう、成功者の秘訣だよ。
     ということで、作業を始めるのは少しばかり待ってくれ。ほろ酔う」

    アメジスト
    「では、その間に私は部屋の掃除を。
     ここは、どこもかしこも散らかっていますから」

    アリス
    「あんた、本気で失礼千万よね」

    アメジスト
    「事実を述べたまでです。
     それで、普段書いている場所をお教え頂きたいのですが」

    アルバート
    「日常的には、この居間かテラスか。
     だけど、いいのかい? 僕の依頼は代書であって清掃じゃあないのに」

    アメジスト
    「務めの為に環境を整備するのもまた、私達の役目です。
     因みに、追加料金を頂戴しようなどということも考えてはおりません」

    アルバート
    「大したサービスだ。助かるよ。
     あぁ、だがその前に大事なことを思い出した」

    アメジスト
    「何事でしょうか?」

    アルバート
    「食料を切らしてるんだ。
     金は出すから、買ってきてくれないか?」

    アメジスト
    「ご自分で行かれては?」

    アルバート
    「そこは辛辣なんだな。とはいえ、僕は飲酒してしまった。
     このまま行くと、罪状、飲酒歩行でお巡りに捕まる恐れがある」

    アメジスト
    「飲酒歩行。飲酒運転は耳にしますが、そのような交通法規があるとは。初耳です」

    アリス
    「アルバート様。
     アメジストは接して分かる通り、冗談の通じない子なので。あまり嘘を教えないでくれないかしら」

    アルバート
    「悪かった。つい、ふざけたくなってね。
     それで、君も買い出しは断固拒否の構えかい?」

    アリス
    「流石に私も家政婦じゃないもの。
     でも、上限それなりで私達の分の食料品も買っていいっていうなら。当然、話は別だわ」

    アルバート
    「いいだろう。豪遊しているわけでも無し、財産は残ってる。好きなものを買ってくるといい」

           □

    アルバート
    「上手い……」

    アリス
    「どう、中々の腕前でしょ?」

    アルバート
    「見かけによらずとはこのことだな。
     それに、誰かの手料理なんて久しぶりだ」

    アリス
    「これまではずっと自分で?」

    アルバート
    「パンばかりさ、料理はからきしでね」

    アメジスト
    「栄養に偏りがありそうです」

    アルバート
    「健康より楽をとる主義なんだ。
     元来、作家は短命な生き物でもある。太く短くが信条さ」

    アメジスト
    「真実、そう思っているのですか?」

    アルバート
    「口から出任せ。
     無名であれば馬鹿らしい台詞だろうが、有名作家なら格好のつく言葉の上位だ。実際は、下らない考えだよ」

    アメジスト
    「……」

    アルバート
    「それより手が止まってるぞ。早く食べよう。
     折角の美味しい料理、冷めてしまわない内に食してやるのが礼儀というものだからね」

           □

    アルバート
    「アビゲイルの台詞。この雷の山を越えなければ、魔物を倒す魔法を知ることは出来ない。
     ト書き、石の獣が現れる。獣の台詞。私が貴方の盾となりましょう。そうすればこの山を越えられるはず」

    アメジスト
    「はず、なのですか?」

    アルバート
    「いいや、きちんと越えられるさ。
     ト書き。雷から獣はことごとくアビゲイルを守る」

    アメジスト
    「獣は、大丈夫なのでしょうか?」

    アルバート
    「痛みはある。けれど、獣にとってそれはかすり傷に過ぎない。
     ――なぁ、どうだろうか。君にとってこの話は面白いか?」

    アメジスト
    「そうですね、不思議な心地です。
     お話であるというのに、まるで自らがそこにいるかのような。
     自分が、このアビゲイルという少女と同じように気持ちを動かされているような。
     これは、どうしてなのでしょう。怒るも、悲しむも、私は知らない筈なのに」

    アルバート
    「それは、共感しているということだよ。
     感情移入してるんだ、アビゲイルに。物語に、深くのめり込んで。心ごと、入り込んでくれているのさ」

    アメジスト
    「心ごと」

    アルバート
    「安心したよ。君が、そういう風に言ってくれて。
     久しぶりの作品、ましてや不慣れな子供向けの作品だ。正直、自信が無かった」

    アメジスト
    「不安になることは無いかと。
     この後、アビゲイルは魔法を手に入れ魔物を倒すのですよね?」

    アルバート
    「あぁ。けれども、その代わりに石の獣をはじめとする仲間達はそれぞれの力を失ってしまう。魔法も同様に、使うことが出来なくなってしまうんだ」

    アメジスト
    「なら、アビゲイルはどうやって故郷へ帰るのですか?
     移動手段は全て絶たれました。その上、力も何も無い少女に戻ってしまえばアビゲイルはどうすることも出来ません」

    アルバート
    「……そこはまだ、考えていない。
     アイディアが浮かんでいないんだ」

    アメジスト
    「考えましょう。考えなければ、家族の待つ家に帰ることが出来ません」

    アルバート
    「そうだね。だが、着想はまだやってこない。――少し、気分転換しないか?」

           □

    アルバート
    「良い天気だな。良すぎるくらいに」

    アメジスト
    「アルバート様。こちらの傘を使われては?」

    アルバート
    「あ……日傘、か。玄関に置いていたやつだね。
     心遣いは嬉しいけど、僕はいいよ。戻してきてくれるかな」

    アメジスト
    「……」

    アルバート
    「どうかしたかい?」

    アメジスト
    「いいえ。とても、綺麗なものだと思いまして」

    アルバート
    「……体調不良だ」

    アメジスト
    「え?」

    アルバート
    「部屋に戻る」

           □

    アルバート
    「……アンジェリカ」

    アリス
    「お邪魔だったかしら」

    アルバート
    「アリスか。昼食の用意は終わったのかい?」

    アリス
    「まあね。それはそうと、いかがなされたのよアルバート様は。顔、酷いわよ?」

    アルバート
    「フランケンシュタインの怪物みたいかな?」

    アリス
    「茶化さないで。何か、あったんでしょう。
     アメジスト、寛大な貴方ですら許せないような事件でも起こしちゃった?」

    アルバート
    「違うよ。彼女はこれっぽっちも悪くない。善意からの行為だ」

    アリス
    「アンジェリカ」

    アルバート
    「――!」

    アリス
    「さっき呼んでた名前。それが、理由?」

    アルバート
    「聞かれてたか。そりゃそうだよな、あのタイミングじゃ」

    アリス
    「その写真。娘さんがいたのね」

    アルバート
    「知らなかったろ。メディアには非公表だったから」

    アリス
    「……」

    アルバート
    「妻が亡くなって。寂しくなった邸宅を後にして、僕は娘と一緒にこの別荘へ越してきた。
     母親がいなくて辛かったと思う。だけど、アンジェリカはそんな様子は欠片も見せず。
     僕が仕事を頑張れるようにと、何かと気遣ってくれてたんだ。
     そんな娘の好きなものが可愛らしいデザインの日傘と、大空を自由に飛ぶ鳥だった」

    アンジェリカ
    『わぁー。良いなぁ、鳥さん達。
     私もあんな風に、空へ羽ばたくことが出来たらなぁ』

    アルバート
    「日傘を差して風を利用すれば、出来るかもしれないね」

    アンジェリカ
    『ふふ、とっても素敵。
     じゃあ、いつか。私が空へ羽ばたく所、お父さんに見せてあげるね』

    アルバート
    「程なくして、アンジェリカは病に倒れた。不治の病だと言われた」

    アンジェリカ
    『大丈夫。私は、大丈夫だから』

    アルバート
    「医者との押し問答を繰り返し、残された時間を少しでも一緒に過ごす為。
     僕は、娘を連れて家に戻ることにした。久しぶりの娘の笑顔。穏やかで優しく、悲しい日々。そうして、たった一つの宝物は……」

    アメジスト
    「大切な人と、離ればなれになるということは。
     二度と会えなくなるということは。こんなにも切なく、耐えがたいことなのですね……」

    アリス
    「アメジスト」

    アルバート
    「全く。君達は、揃って盗み聞きとはな」

    アメジスト
    「申し訳、ありません」

    アリス
    「貴方、泣いているの?」

    アメジスト
    「はい。きっと、共感、感情移入したのです。アルバート様の、お心に」

    アルバート
    「……アメジスト。君の髪は、君の瞳は。亡くなった娘によく似ている」

    アメジスト
    「……」

    アルバート
    「完成させるよ、彼女の物語を。
     アビゲイルは故郷へ帰って家族と再会する。文句なしのハッピーエンド。幸せな結末で終わらせてみせる」

           □

    アルバート
    「そして、打ち倒される怪物。獣の台詞。
     遂に、怪物を倒した。よくやったな、アビゲイル。ト書き。光に包まれていく獣を含む仲間達。
     獣の台詞。私達はここでお別れだ。魔物が消えた今、私達を繋ぎ止めていた奇跡の力も同時に消え果てる。
     立ち尽くすアビゲイル。さて、ここからどうやってアビゲイルを家に帰すか。うんと、夢のある方法がいいんだが」

    アメジスト
    「鳥でしたら飛んで帰れますが……」

    アルバート
    「羽で、飛べばいいのか」

    アメジスト
    「アビゲイルに羽はありません」

    アルバート
    「あるんだよ、アビゲイルの背中には大きな羽が。
     石の獣が言うんだ。アビゲイル、君にはもう魔法の力が無い。
     けれど、今の君は冒険を始めた時には持っていなかったものを持っている。
     それは、豊かな感情だ。勇気は君の翼になり、希望は強い追い風となる。
     太陽に寄りすぎた時には、日傘を広げるといい。愛が、どんな熱をも受け止めてくれるだろう」

    アメジスト
    「感情が、形を伴って力になるのですね」

    アルバート
    「そうだ。育まれた感情が、家族との絆を辿る架け橋になる。
     そうして、アビゲイルは父と再開して。まず、何と声をかけるか……」

    アメジスト
    「着想が、やってきませんか?」

    アルバート
    「そうだな、そのようだ。
     君、ちょっと向こうから歩いてきてくれないか?
     日傘をさして、追い風を受けて。イメージがしたい」

    アメジスト
    「歩いてくるだけでいいのですか?」

    アルバート
    「出来れば、翼を生やしてくれると良いね」

    アメジスト
    「分かりました」

    アルバート
    「……え?」

    アリス
    「あーあー、あれは本気で飛ぶわよ。
     言ったじゃない、あの娘に冗談は通じないって」

    アルバート
    「アリス。いや、しかし」

    アリス
    「飛べるわけない? 翼なんてない?
     どうかしら、案外あるのかもしれないわよ。現実にも、ファンタジーっていうものが」

    アメジスト
    「いきます」

    アンジェリカ
    『じゃあ、いつか』

    アルバート
    「羽が……」

    アンジェリカ
    『私が空へ羽ばたく所、お父さんに見せてあげるね』

    アルバート
    「アンジェリカ……っ」

    アルバート
    『何千回、何万回だってそう呼ばれたかった。
     死なないで、いてほしかった。生きて、大きく……育って、ほしかった……っ』

    アリス
    「アルバート様。腕、動いて……っ?」

    アルバート
    「動くさ。だってここに、ファンタジーがあったんだ」

           □

    アメジスト
    「よろしいのですか? この日傘を頂いてしまって」

    アルバート
    「むしろ、もらってほしい。
     君は、死んだ娘のいつかを叶えてくれた」

    アメジスト
    「いつかを……」

    アリス
    「アメジスト、そろそろ出航の時間よ」

    アメジスト
    「それでは、失礼します」

    アルバート
    「あぁ、二人とも元気で」

           □

    アリス
    「それで、翼なんか生やしちゃったりしてたけど。記録は全く戻ってないと」

    アメジスト
    「そのようです。
     ですが、心というものは少しだけ理解出来た気がします」

    アリス
    「貴方には、最初からもっと、本を与えるべきだったかしらね」

    アメジスト
    「大丈夫ですよ。
     いつか、記録の再生はかないます」

    アリス
    「そう。――ねぇ、アメジスト。今日は、良い天気ね」



















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