北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第23回)
『ラーメンの憂鬱』〜腕を磨くか素材に頼るか(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜ラーメン店集合施設興亡史(1)(山本剛志)
□告知スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「卯月に想う」山路力也
4月は新学期や入社など新たなスタートの月。そして私の誕生月でもあるので、子供の頃からワクワクする月でした。もちろん今もそれに変わりはないのですが、一昨年の4月11日に支那そばやの佐野実さんが逝去され、去年の4月1日には大勝軒の山岸一雄さんが亡くなり、少し寂しい月にもなってしまいました。
佐野さんのお通夜は確か4月17日。奇しくもその日が私の誕生日だったわけですが、今まで生きて来た中で一番寂しくて悲しい誕生日だったように思います。正直、さほど生前の佐野さんとはお付き合いもなく、時折パーティーなどでお会いしてご挨拶する程度だったのですが、やはり美味しいラーメンを作って下さってきた佐野さんが居なくなるということは寂しい。もう二度と佐野さんが作るラーメンは食べられないという喪失感。そして何よりも私よりも佐野さんと親しかった皆さんの心中を思うと切なくてたまらない夜でした。そう、北島さんが憔悴し切っていたのが本当に心に残っています。
そして山岸さん。マスターとはご縁があって、生前に何度となくご一緒させて頂いてたくさんお話も伺うことが出来ました。私の雑誌の企画にも何度もご登場頂きましたし、拙書でもロングインタビューを録らせて頂きました。私はラーメン屋さんではないのですが、山岸さんから色紙も頂いたりして。そしてレアアイテムだと思うのですが、山岸さんの金の名刺も頂きました。いつもニコニコしている印象の山岸さんですが、その反面物凄く厳しい顔と鋭い目つきもされることがあって、そのギャップが今も頭から離れません。
佐野さん、山岸さんという偉大なラーメン界の巨星が堕ちた卯月。なんでこんな月に桜の花は咲いて散るのでしょう。今までは桜は散ってこそ美しいと思って愛でていましたが、どうもお二人がいなくなってからは桜が妙に哀しく見えて仕方がありません。今年の桜も美しく、そして儚く、切ないものでした。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は2月に小岩から市川行徳に移転した「らー麺屋 バリバリジョニー」の「バリシオラーメン」を、山路と山本が食べて、語ります。