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■「ラーマガ」本誌に載せきれなかったレビューを掲載する「ラーメンレビュー増刊号」です

 「ラーマガ」本誌では、各号で7件の個別レビューを掲載しています。遠征や連食などで、そこに収まらない私のレビューを、随時「ら~マニア共和国」で掲載します。

 今回は巻頭コラムで「金乃武蔵」シリーズ第8弾のレビュー、その他限定メニュー3軒のレビュー、そしてこの夏の冷やしから4杯のレビュー。今回は全編を無料公開です。ラーマガ本誌と合わせてお楽しみください。

□目次

1.「金乃武蔵」レビュー

 ・麺屋武蔵武仁@秋葉原

2.これも食べてほしい!限定ラーメンレビュー

 ・ソラノイロ@半蔵門
 ・大喜@湯島
 ・チラナイサクラ@御徒町

3.この夏の冷やしレビューは無料公開!第五弾はチェーン店も食べてみた!

 ・三田製麺所@御茶ノ水
 ・リンガーハット@大門
 ・麺屋武一@新橋
 ・博多天神@新橋


1.「金乃武蔵」レビュー
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【麺屋武蔵武仁@秋葉原】
「金乃アキバカリー麺」2,160円
※8/25(木)~8/28(日)、各日10食限定。

 「革新的で上質」をテーマに、毎月新しいラーメンを提供している20周年の「麺屋武蔵」の「金乃武蔵シリーズ」。今月は秋葉原の「武仁」が担当。開店してからしばらく提供し、現在はレギュラーメニューにはない「アキバカリー麺」の復活をテーマに、全く新しい一杯が登場した。

 斬新なのは「一つとして同じものがない一杯」である事。鶏・豚・牛・野菜から採った、一番出汁よりも短く、素材の風味を取ったスープと、特製の麺、「武仁肉」は共通。しかし、味の肝になるスパイスを40種類用意。お客の好みに合わせたブレンドをするという。客に「食欲増進」「消化促進」「リラックス」など、体調で気になるポイントや、辛さの好みを聞くチェックシートを用意し、店長がその好みを確認してから、スパイスの組み合わせを決定する。

 麺を茹でるお湯には「レモングラス」「コブミカン」「マリーゴールド」の出汁パックを用意し、スパイスに合わせたものを選んで入れる事で、スパイスに馴染んだ麺に仕上げている。

 「武仁肉」は、金乃武蔵バージョンとして牛肉のイチボを使用。軽くスパイシーな味わいの、かぶりつき甲斐のある肉になっている。白髪ネギの上にはフレッシュハーブが乗るが、これも「パクチー」「クレソン」「イタリアンパセリ」の3種類から、スパイスの調合に合わせて作るという。

 様々なスパイスが出汁の上で主張し、一般的な「カレーラーメン」とは異なる、独特の味わい。今回は一番辛くしてもらったが、それぞれのスパイスを感じられるように一口目の辛さは控えめ。食べていくうちに辛さが徐々に積み重なっていって、食べ終わった時には個性的な「金乃アキバカリー麺」の真髄を楽しめた。

 ラーメン好きはもちろんの事、カレー好き、スパイス好きに食べてみてほしい一杯と感じた。当然一杯ずつ作る事になるので、金乃武蔵専用のスタッフを固めてはいるものの、時間に余裕を持って訪問してほしい。

スパイスが アキバに薫る 四日間

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(今回使用するスパイスの、ほんの一部)

麺屋武蔵 武仁
東京都千代田区神田佐久間町2-18-5
各線「秋葉原」駅から徒歩2分


2.これも食べてほしい!限定ラーメンレビュー

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【ソラノイロ@半蔵門】
「ソラの天塩しじみたっぷりチャンポン」1,200円
※8月31日まで、昼10杯夜5杯限定

 しばらく冷やしが続いてきた「ソラノイロ」の今月下旬の限定はチャンポン。今回は「しじみ」がテーマだったので冷やしにする事も考えたそうだが、貝類の香りという点ではアサリやハマグリほどにはならないという事で、しじみの味を活かしたスタイルを研究したとの事。

 今回の限定は北海道道北地方を流れる天塩川が、日本海に注ぎ込む天塩町とのコラボ。漁獲高が道内一のヤマトシジミを特産として売り込んでいるという事。そのシジミ出汁と、昆布・煮干・宗田節などで採った出汁を1:1で使用し、塩ダレはソラノイロの塩中華そばのものを使用。あっさりしながら、野菜や肉、魚貝のコクがある事で物足りなさは皆無。大きなシジミの味もしっかり出ている。麺はチャンポン麺としては細め、中華麺としては太めのストレート麺を使用し、「北海道で出すチャンポン」のイメージで仕上げたとの事。キャベツ・モヤシ・海老・蒲鉾と殻付きのシジミを中華鍋で炒めてあわせている。柚子の欠片をたっぷり乗せているので、スープに沈めて馴染ませると食べやすくなる。

 今回のメニューには、醤油味で生姜を乗せたしじみの炊き込みご飯付き。余ったスープをご飯にかけていただくのがベストなので、スープを先に飲み干してしまわないように注意が必要。

北の風 染みたしじみを チャンポンす

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ソラノイロ japanese soup noodle free style
東京都千代田区平河町1-3-10
東京メトロ「半蔵門」「麹町」駅から徒歩4分


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【大喜@湯島】
「冷やしとりそば」980円
※8月31日まで、昼夜各15食限定

 大喜では期間限定メニューが次々と出ているが、ほぼ毎年食べているのが「冷やしとりそば」。一昨年は「ラーマガ30号」でクロスレビュー、昨年は「レビュー増刊22号」で無料公開レビューしている。お店は年内で移転する事を発表したため、この場所で食べられる「冷やしとりそば」は今年が最後になる。

 鶏をベースにした冷たいスープは単に冷やされているだけでなく、細かい氷も入っているようで、ガラスの器も相まって更に涼しさを演出している。平打ちストレート麺がスープを素直に引き出し、オクラとなめこのとろみがスープのとろみを増幅させている。今年は鶏チャーシューが「モモ肉」と「ムネ肉」の2種類になって、肉の旨みが鶏っぽさをプラスしてくれている。シャキシャキした青菜の食感も心地よい。

 今年は1ヶ月限定で、いつもより少ない各15食限定。それだけに売切れの日も多いとの事。夜のみの突発限定冷やしを出している事もあるようなので、まだまだ創作意欲は溢れんばかり。何を食べても満足できる大喜だが、やはり今年の冷やしとりそばも食べてほしい。

十七年 湯島の夏を 冷やしてる

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らーめん天神下 大喜
東京都文京区湯島3-47-2
東京メトロ線「湯島」駅より徒歩2分


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【チラナイサクラ@御徒町】
「夏野菜とタコの冷やし」950円
※夏季限定

 この日は、チラナイサクラでオフ会をする為に訪問。常連さんの幹事からのお願いで、通常はない様々なつまみメニューも出してもらい、皆で大盛り上がり。締めに皆でラーメンを頼むことになり、今年の冷やしメニューを注文。

 ガラスの皿に入った冷たいスープはトマトも感じるもので、たっぷり入っているので飲むほどに涼しさも感じる。冷たさの中にしっかりした酸味と程よい辛味も感じられ、夏メニューとしての食べやすさとインパクトを持っている。別容器に出してくれる辛味噌で辛さ増しも可能。中太麺はもっちりしながらきっちりと締められていて啜り心地がよい。

 具にはタコスのような辛味をつけた挽肉に、細かくぶつ切りにしたタコ。キュウリやトマトなどの夏野菜がたっぷりと入り、揚げゴボウとルッコラが乗り、種類豊富な味わいが麺の間から口の中に入っていく。氷が乗っていることもあり、最後まで冷たくいただけたのもポイントが高かった。

すっきりの 辛さと酸味で 夏過ごす

チラナイサクラ
東京都台東区上野5-10-14
各線「御徒町」駅から徒歩2分


3.この夏の冷やしレビューは無料公開!第五弾はチェーン店も食べてみた!

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【三田製麺所@御茶ノ水】
「パクチー冷やしレモン麺」830円
※夏季限定

 2008年に三田で創業し、国内20店舗、台湾と香港に7店舗を構えるチェーン店に。こちらも支店の一つだが、駅に近い事もあってほぼ満席の繁盛ぶり。太麺に濃厚なつけ麺で知られているが、冷やしメニューのPOPを見かけて入店。冷やしレモン麺がメインだったようだが、100円プラスのパクチー乗せメニューが気になり、そちらを注文。

 あっさりした鶏メインのスープが冷やされていて、ゴクゴクと飲めるもの。このメニューでは麺は中細でツルツルと食べられる。この食感、スープも含めて、少し韓国冷麺に近い印象。具には鶏チャーシューとはちみつ漬けのレモンを使用。レモンをはちみつ漬けにした事で甘さも感じられ、レモンの酸味が苦手な人でも食べやすい。

 そして、パクチー好きの私でも「たっぷりだなぁ」と思える程のパクチーが乗る。スープに浸したり、レモンやチャーシューと一緒にいただいたりして、口の中に爽快感を呼び込んだ。パクチーが苦手な人には「冷やしレモン麺」もある。酸味や甘さを一気に感じさせ、涼しさを楽しめる仕掛けが楽しめた。

パクチーに はちみつレモンの 味絡み

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三田製麺所 御茶ノ水店
東京都千代田区神田駿河台2-6
各線「お茶の水」駅から徒歩1分


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【リンガーハット@大門】
「冷しちゃんぽん(白)」740円
※夏季限定

 1962年に創業した一家により、1977年に誕生した「リンガーハット」。国内は福島福井以外の都道府県に730店、海外にも4店舗を展開している。もちろん「長崎ちゃんぽん」を看板メニューにしているが、夏季限定で「冷やしちゃんぽん」を販売していると聞いて、そのユニークさに惹かれて訪問してみた。2014年から販売しているとのことで、今年は注文した「白」の他に、辛口の「赤」もあり、「夏の紅白」と銘打って、アイドルグループとのコラボキャンペーンも行っている。

 白濁した冷たいスープはまろやかさを持ちながら固まらず、辛味の油が少量加えられている。冷やし用にと、キャベツに変えてレタスをメインにした野菜との相性もよい。プチトマトやモヤシなどの野菜をシャキシャキといただきながら、麺を引き上げて楽しめる。チャンポンの野菜を楽しめるように、「しょうが」「ゆず」の2種類のドレッシングが用意されている。少量ながら肉も乗っていて、カイワレで口の中をリフレッシュできる。

 珍しい点はないが、冷やしでもちゃんぽんを主張してくるスタイルに、野菜をメインに据えている事でヘルシーさもアピール。お店のブランドを活かした一杯になっている。

長崎の 味を冷やして 再構築

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長崎ちゃんぽん リンガーハット 大門店
東京都港区浜松町1-27-14
各線「大門」駅から徒歩2分


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【麺屋武一@新橋】
「比内地鶏の冷やしラーメン」780円
※夏季限定

 2012年に創業し、都内を中心に国内7店舗、海外に5店舗を構える新興チェーン店。鶏白湯をメインに「鶏」を推しているのは、「焼鳥店とのコラボによる」というバックストーリーがあるからか。烏森口から一本曲がり、路地を入った所にある新橋本店は初訪問。鶏白湯のラーメンは他の支店で食べたので、夏季限定メニューである「比内地鶏の冷やしラーメン」を注文。

 醤油色のスープはあっさり系を思わせるが、実際にスープには魚介系の旨みも感じ、「鶏にこだわった」と名乗る店にしては、鶏は控えめになっているように思える。氷を加えているので徐々に冷たくなっていくが、最初は驚くほどの冷たさがないのが気になる所。鶏チャーシューや玉ねぎ、水菜、ネギ、海苔といった具も含め、極力ラーメンに寄せていった感じの一杯でした。動物系の食材は冷やすと脂が固まる問題点はあるものの、もう少し「鶏」のユニークさを感じられたらと思った。

鶏の店 夏の冷やしは 取りあえず

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麺屋武一 新橋本店
東京都港区新橋3-6-13
各線「新橋」駅から徒歩5分


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【博多天神@新橋】
「冷やし中華」400円
※夏季限定

 「博多天神」といえば、ワンコインで博多ラーメンを提供するチェーン店として有名。福岡には店を持たず、東京の繁華街を中心に10店舗を構えている。創業は1979年と言われていて、博多ラーメンを標榜する東京のラーメン店としては古い部類に入る。こちらは2002年に開店した、新橋SL広場から虎ノ門に向かって歩くと、通りの角に出現する店。ドアを開け放して、店員さんも通りがかる人に声をかけていて賑やか。こちらの夏季限定メニュー「冷やし中華」にもファンが多い。

 決して凝った冷やしラーメンではない。タレは酢醤油のスタンダードなものだし、具にはキュウリ、モヤシ、白滝、錦糸玉子、チャーシュー。紅生姜と辛子を両方乗せて、かき混ぜていただくスタイル。「キンキンに冷たい」というわけでもない。しかし、それでも嬉しくなるのは、麺にラーメンとは異なる緑色の「翡翠麺」を使っている事と、何よりラーメンより安い400円という価格。ラーメン店の冷やしも、中華屋さんの冷やし中華も、はラーメンより高いケースが多い。それだけに、安さで人気を集めるラーメンより更に安いという努力に敬服したくなるのです。

ちょっと寄る 財布は冷たく なりません

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博多天神 新橋1号店
東京都港区新橋2-8-15
各線「新橋」駅から徒歩4分


■編集後記

 最近はチェーン店でも様々な冷やしメニューを提供するようになりました。通常メニューのラーメンやつけ麺とは異なる味わいになる事が多いですが、涼んでもらおうという意識が嬉しいと思えます。来年の夏も、暑さを忘れる冷やしメニューが登場してくれることに期待しています。なお、「この夏の冷やしレビュー特集」はもう1回続く予定です。


1d12777c7c29bf73cd6d25efb0e1b67a4b35bee3山本剛志:ラーメン評論家、ラーメン王。1969年生まれ。東京都出身、東京都在住。TVチャンピオン第6回ラーメン王。ぐるなび「メシコレ」キュレーター。「ラーメンwalker」百麺人。