北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「ラーメンVSつけ麺」山路力也
ラーメンVSつけ麺、と言っても大つけ麺博の宣伝でも無ければ、あの企画の話でもありません。単純にラーメンとつけ麺どちらが好みか、という話です。ラーメン評論家としてお仕事をするようになってからは、個人的な嗜好に依った評価なり情報発信はしないように心がけて来ました。豚骨でラーメンにハマり、家系をこよなく愛するというバックボーンは置いておいて、他のラーメンも食べ歩いてその美味しさを伝えよう、というのは至極当然のことであります。
そういう意味において、ではつけ麺というのも同様に扱わなければならないのか、というのが常に頭の中から離れません。もしラーメン評論家がつけ麺も同様に扱うべし、というのであれば、この話は僕の立場では言ってはいけないことなのでしょうが、コラムのネタとして許して頂けるならば、僕はつけ麺よりもラーメンの方が遥かに好みです。両方あったら迷わずラーメンを選びます。
しかし、今のところつけ麺評論家という人はほとんどいませんし(数名いたようにも記憶しますが)、ラーメンとつけ麺は同じカテゴリで語られているのが一般的だと思います。よって、僕もラーメンとつけ麺を分け隔てなく論じなければならない。なので、ラーメンもつけ麺も出している店で、つけ麺をプッシュしている店の場合はつけ麺を先に食べるようにしています。本当はラーメンの方が食べたいのに、です。
誤解のないようにいえば、どちらが食べ物として優れているかとか、どちらの方が調理が難しいかとか、そういう話ではなく、単純に私の好みの問題です。しかし、ラーメンとつけ麺というのは、スープと麺が一緒か別かだけの話ではなく、そもそもの設計や思想が異なる食べ物だと思っていて、これを一緒くたにラーメン類としてしまうのは、どちらに対しても失礼ではないのかなぁとも思ったりするのです。まぁそれを言い出したら、白湯も清湯も味噌も塩も醤油もそれぞれ違うわけではありますが。
先日、つけ麺の店を一日に何軒か回ったのですが、明らかにラーメンを数軒回る時と感覚が違うのです。頭の中で考えていることや、目の前のものを見てチェックするところ、舌で感じるところが違うのです。ですからラーメンとつけ麺をハシゴしようものなら、軽くパニックになってしまいます。
それをやるのがラーメン評論家、なのでしょう。だから僕はどちらも分け隔てなくおつきあいするように頑張っています。でも本当はラーメンの方が好きなんです。大勝軒でもとみ田でも、何ならラーメンが喰いたいんです。
しかし僕にとってはまだ高いハードルが残っています。まぜそばまでもラーメンの仲間と言われた日にはもうどうしてくれましょう。まぜそばはまぜそば。ラーメンともつけ麺とも違う世界の食べ物だと思うのですが。豆腐やキャベツが入ってもラーメンなのだと言われました。いったい僕はどうしたらいいのでしょう。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は今年1月に復活オープンした「らーめん香月」の「醤油らーめん」を、山路と山本が食べて、語ります。