北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「ラーメンはビジネスなのだ」山路力也
先日、ある集まりに呼ばれました。端的に言うならば、経営などで悩みのあるラーメン屋さんたちの相談に乗るような集まりです。そこで何人かのラーメン屋さんからご相談を受けました。味についての悩みは皆無で、皆さん経営上の悩みでした。平たくいえば「儲からない」という相談です。
自分の出したい味を作りたい。お客様に喜んで頂ける味にしたい。近隣の店よりも高品質のものを作りたい。この姿勢はまったく間違っていませんし、むしろ正しい。金儲けだけを考え、何のポリシーもなくただ売れるものを作る。出来合いのものを使ってバイトでも作れるラーメンを出す。そんなクソみたいな店よりも遥かに前者の皆さんの方が素敵ですし、応援したくなります。
しかし、そのあとがいけません。かと言って、お客様の負担が多くなるのは申し訳ない。だから値段は700円が限界。しかし味や品質は下げたくない。自分の味も守りたい。よって原価は350円。利益が少ないので従業員が薄給のまま。月によっては自分の取り分ゼロ。これは本末転倒です。
趣味やボランティアでやっているわけではありません。ラーメン屋さんにとってラーメンを作ることは商売、ビジネスなのです。ならば正当な価格、正当な利益を得るべきです。法外で不誠実な価格をつけたり暴利を貪ることはありませんが、適正な利益は必ず確保しなければなりません。「儲からない」と言っている人はすべてその適正な利益を放棄してしまっているのです。
もし原価が350円かかってしまったのなら、そこに正しい利益を乗せて一杯1,000円以上の売価にすべきです。逆に700円の売価を死守しようと思うならば、正しい原価率に抑えて一杯200円以下の原価にすべきです。ラーメンを商売として考えれば非常に明快で、当たり前で簡単な話です。そう考えると、現実問題としては原価を下げていくのが今の段階では正解といえるのでしょう。
もしそれが出来ないのなら、趣味としてラーメンを売れば良いのです。家賃のかからない自分の家のダイニングで、従業員も雇わずに自分一人でやればいい。商売としてやった時点で、従業員はもちろん取引業者さんに対してなど、自分一人ではない大きな責任が生じます。従業員にはより多くの給料を払い生活を向上させる責任がありますし、業者さんには売上げを上げてもらわなければなりません。
やはりラーメン屋として商売を始めた以上、適正な利益を出すことが何よりも優先されるべきなのです。その意識を持てない、美味しいラーメンをただただ出したいと思って、寝ずに頑張っている方たちが儲からない。そんなバカな話がありますか。決められた原価の中で最高のパフォーマンスをする。それこそ飲食業やラーメン屋の基本なのです。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は11月17日、成田空港ターミナル内にオープンした中華蕎麦とみ田の新業態「日本の中華そば 富田」の 「中華蕎麦」を、山路と山本が食べて、語ります。
日本の中華そば 富田@成田空港