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■「札幌ラーメンショー2015」に行ってきた!

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 2015年5月19日~25日、札幌大通公園西8丁目会場で、「札幌ラーメンショー2015」が開催された。東京・福岡でラーメンショーを開催してきた日本ラーメン協会が中心になり、北海道・札幌市・北海道新聞などで実行委員会を組織。日本三大ラーメン処で開催したい熱意がラーメン協会側にあり、2年越しで開催にこぎ着けた。開催が決定したのは今年3月になってからだそうで、短い準備期間の中での盛況は素晴らしかった。

 全国ブースは東京、滋賀、大阪、福岡から7軒、地元北海道ブースは5軒が出店し、6日間に亘って行われた。私は2日目から5日目に札幌に滞在し、ラーメン店食べ歩きの合間に会場の様子を確認したり、ラーメンを食べてみた。

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 初日は小雨模様で来場者も多くなかったようだが、2日目以降は天気も回復し、かなりの混雑が見られた。特に、「肉」をメニュー名に掲げた「博多だるま」と「肉そばけいすけ」は、1時間以上の行列を作り続け、「博多だるま」は平日でも2200杯を売り上げていたとの事。イベントが賑わった大きなポイントは、初日の夕方、地元民放テレビ4局が生中継を入れたことだろう。開催直前に、北海道新聞に掲載された全面広告と合わせて、大きなPR効果を上げたと思われる。

 また、例年開催されている「ライラック祭り」の時期になり、ラーメンショーもその協賛イベントになった。大通公園の西5~7丁目でも、それぞれにイベントが開催され、隣の西7丁目では「ワインフェスティバル」が行われていた。その相乗効果も見逃せない。

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 多くの人が来場したイベントということもあり、様々な課題も発生した。当日券購入者の行列が続いた他、食べ終わった人達が片づける「エコステーション」も、2カ所では不足していた。公園ということでペット連れのお客さんもいて、食べている横で犬を私の目の高さに抱っこしていた人がいたり、犬を連れたまま行列に並ぶ人の姿も見られた。東京ラーメンショーでも第一回はペットの扱いは周知されていなかったように思うので、今後変更されるかもしれない。

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 また、ラーメンイベントにありがちな問題点なのだが、全国ブースに人気が集中し、地元ブースの行列はできても短かった。すぐ近くの狸小路に支店を持つ「博多一風堂」にも、「わざわざここで食べなくても」という声が聞こえてきた。地元5店舗では道産食材を使ったラーメンショー限定メニューを提供したが、パンフレットに詳細が一切書かれていなかった。

 全国ブースのあまりの行列ぶりに、場内放送ではひたすら「北海道ブースの紹介」をアナウンスしていたが、こちらも「道産素材を使った限定メニューです」と繰り返すだけで、具体的にどんなラーメンを出しているかが分からなかった。これでは、他地方のラーメンに心動かされているお客さんは引っ張れない。

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 イベント慣れしている他地域のブースは看板をはじめとしたPOPを出す一方、「すみれ」「蜂屋」に至っては上部看板さえ作らなかった。これで思い出すのは、2010年の東京ラーメンショーに出店した「六角家×洞くつ家」の家系コラボ。あの時も明らかに行列が少なかったし、今回も、札幌から140km離れた旭川の「蜂屋」は多少行列ができたが、市内の「すみれ」は待ち客のいない状況が続いていた。

 老舗店側は「わざわざ看板なんかなくても」と考えがちだが、ラーメンが並ぶイベントでは老舗の名前は通用しない。一店舗が極端に販売数を減らせば、他のブースに負荷がかかる事になる。イベント限定メニューをお客さんに伝える重要性を、お店の側に認識させてほしかった。

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 また、公式ホームページの方も、「東京ラーメンショー」「福岡ラーメンショー」と比較すると、必要な情報が分かりづらい構成になっていたと思われる。スタイリッシュなデザインより、コンパクトにまとめて誰にでも分かりやすいページの作り方が必要だったと思う。

 今回の大盛況により、来年以降も開催される可能性が高い。上記の指摘が改善されて、札幌ラーメンショーが市民に愛されるイベントになると期待している。

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札幌ラーメンショー2015のラーメン6杯をショートレビュー!

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【ラーメンにっこう】
「鶏ネギ白湯」800円

 滋賀県彦根市の人気店で、滋賀県にラーメンブームの波を起こしたきっかけの一軒。鶏白湯スープはしっかり鶏を濁らせながらも、必要以上のとろみや油を感じさせず、誰にも食べやすい店の味をきちんと出していた。ネギの他にカイワレや茎ワカメで食感の変化を出し、チャーシューもモモとバラの二種類を用意。仕上げにひと掛けくれたのは、京都原了郭の黒七味。これがスープの味をしっかり断ち切ってくれた。
 ちょうどブース前に並んだ時、翌日分のスープを仕込んでいたらしく、鶏をどんどん寸胴に入れている所に遭遇した。イベントであっても一切手を抜かず、ラーメンをその場で作り上げる姿勢にも感服した。

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【函館麺厨房 あじさい】
「新味彩潮【塩】ラーメン」800円

 函館ラーメンを代表する人気店。イベントや物産展催事でもしばしば見かけるが、今回は「新味」と銘打ったメニューを販売ということで気になっていた。
 見た目にはオーソドックスな塩ラーメンで、麩が2つ乗っているのが特徴に見えてくる。今回はスープに「コマイ」をたっぷり使い、苦みのないコクある味わい。道産小麦を使った特注麺もスープのパワーを受け止めている。原価がかかりすぎているようにも思えるが、函館ラーメンを札幌でPRしたいという心意気はさすがです。
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【すみれ(札幌)】
「味噌ミルクラーメン」800円

 札幌ラーメンの大人気店として新横浜ラーメン博物館に出店し、出身者を含めた「純すみ系」で札幌ラーメンの世界を動かした「すみれ」が、札幌ラーメンショーに登場。味噌ラーメンに、北海道産の牛乳をブレンドした「味噌ミルクラーメン」を登場させた。
 アツアツのスープにミルクの滑らかさが入り、独特だがクセのない味わいになっている。アスパラ・ベーコン・じゃがいも・ヤングコーンも道産で、スープに相性よい程度の味付け。
 一見して際物のようだが、スープの地力が牛乳をしっかり受け止めている事で、香辛料がなくてもちぐはぐさのない、北海道らしい個性を持った味噌ラーメンにまとまっていた。スープの中で存在感を示す森住製麺の中太麺も印象的。
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【札幌ラーメン 武蔵】
「熟成味噌」800円

 正統派札幌味噌ラーメンを標榜する「武蔵」。本店に訪問した、初めての札幌遠征を思い出す。今回もアツアツの味噌ラーメンを提供している。こちらでは西山製麺に専用麺を発注していて、一週間寝かせた熟成麺。味噌ダレも熟成させていて、まさに「熟成」にこだわりを見せる店。
 今回の札幌ラーメンショーでは、道産小麦を100%使用した麺を使っているとの事で、プリプリした食感が心地よく、味噌の旨みをしっかりと掬い上げてくれる。通常から道内産の豚モモ肉を使用しているチャーシューも、醤油ダレに煮込まれてから焼いて仕上げていて、香ばしさと肉質がしっかりと楽しめた。

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【蜂屋(旭川)】
「醤油ラーメン」800円

 旭川ラーメンを代表する老舗として新横浜ラーメン博物館にも出店し、その後飯田橋に店を構えていたが撤退。蜂屋ならではのラードの匂いは、旭川でないと楽しめなくなった。それが札幌に登場すると言うのだからやはり注目せざるをえない。140kmという距離は札幌市民にはあまり遠くないのか、最初はあまり混み合っていなかったが、週末にかけて徐々に並びができるようになった。
 ラーメン自体は通常の醤油ラーメンと同様だが、かけられているラードがややマイルドに感じられる。とはいっても魅力が減じられている訳ではなく、まろやかだがしっかりした味付け。そして、道産小麦を使った麺がモチモチしていて、食後感が非常によかった。この麺は札幌ラーメンショー限定のようだが、また食べたいな。
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【富良野 とみ川】
「焙煎煮干トリプルチャーシュー」800円

 富良野の名店「とみ川」。一度本店まで行ったことはあるが、営業時間が変更されていて食べられず。イベントでは常にこだわったメニューを出している。

 富良野産小麦を焙煎して蕎麦のように黒ずんだ麺を、通常は動物系スープにあわせているが、今回は煮干100%のスープに合わせている。煮干をしっかり効かせながら、苦さは出ていないので飲みやすい。チャーシューは鶏、地豚、山桜でスモークした豚肉の3種類。燻製したチャーシューが特に美味しく、口の中を燻製のインパクトが覆ってくれる。

 来月には、富良野駅近くの市街地に完成する「ネーブルタウン」にネクストブランド店を出す予定との事。今回の煮干スープはそこで提供されるかもしれない、との事でした。

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編集後記
 今回、札幌ラーメンショーに行くと決めた時点では、このレビュー増刊を出すつもりはありませんでした。しかし、現地の盛り上がり、食べに来た人の笑顔、作り手の真剣な表情を見るにつれ、きちんとレビューしておかないとな、という思いになりました。初回という事でなかなか大変だったとは思いますが、その経験を是非2回目に活かしてほしいと思います。


c557c6830f3e2bc329f263c11be51fa2cf589930山本剛志:ラーメン評論家、ラーメン王。1969年生まれ。東京都出身、東京都在住。TVチャンピオン第6回ラーメン王。KADOKAWA「ラーメンwalker」百麺人