「3A07 ~Memories are here~」について今頃語る(後編)
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「3A07 ~Memories are here~」について今頃語る(後編)

2014-05-05 08:02
  • 7



通常の合作のやり方も、一般的な脚本の生成技法も、何もかも捨てた。
完全分担作業なんてハナからするつもりは無かった。
だから「演出責任者は七夕P、演技責任者はセバスPとする」と最初に二人に告げた。

これには3つの意味があった。

・シネ☆MAD3rdの企画コンセプト『完璧な合作』の順守。
・それぞれの分野での最高意思決定権を明確にすることで喧嘩の発生を極力未然に防ぐ。
・相棒二人の覚悟とモチベーションの維持。

相棒二人は、自分の脚本を出力するだけの駒ではない。
自分の指示をただ聞いてもらうだけの駒になってもらうつもりは毛頭無い。
同様に、本来なら立ち入らない相棒二人の領域にも自分は口を出すという意思表示。

二人のアイデアや意見を積極的に取り入れ何度も会議にかけ、さらにセバスチャンPの疲労度を計算に入れ、リアルタイムで柔軟にシナリオを変化させていった。
何度も脚本を壊して、何度も再構成した。何度も、何度も。
全体を通して、最終的に20稿以上改定したはずだ。

作業をしながら連日連夜の打ち合わせ、朝チュン会議が続いた。
ある日、打ち合わせのチャット会話をIRCの他部屋に誤爆させてしまい、それを見た他のPから「まだやってんのかお前ら、いま朝4時だぞ」と呆れられたことがある。
それぐらい激しい打ち合わせを重ねていた。全ては三人の意思を合わせる為。




自分の脚本の中で1つだけ自画自賛するとすれば、それは企画動画という名目において、あずささんのあの名作フィギュアをモデリングしてもらう言い訳を正当化したことだった。
2009年当時にあずささんフィギュアが画面内で動くんですよ。すごいよね。

「ところでセバスP、どこまで作りこんでるの?」
「……乳首まで」

朝チュン会議のハイテンションの中、モニタを通してセバスPのニヤリ顔が見えた気がした。


「あの丘」の全景


懸念事項はあった。桃邪気Pの急逝によって彼の動画が神格化されてしまったことだ。
動画のジャンルを問わず、『隣に…』が流れた瞬間に桃邪気Pの名前がコメントされる。
彼らの存在はもはや荒らしと変わらない。自覚が無いから余計にタチが悪い。

考えてみてほしい。『隣に…』をモチーフにした瞬間、必ず「桃邪気P」とコメントする人が現れる。だから製作者はやる気を無くす。『隣に…』で動画を制作する人が激減する。

あずささんも『隣に…』も、みんなのモノであるはずなのに。
桃邪気Pは誰よりもそれを視聴者に伝えたかったはずなのに。
あずささんと『隣に…』を独り占めするなんて、本人が一番望んでいなかっただろうに。
結果として、「あずささん&『隣に…』」は、桃邪気Pが持って行ってしまった。
いや、そう祀り上げられてしまった。一方的な、無自覚の善意によって。

だから自分は、3A07のクライマックス制作において、七夕Pにこう指示した。
「桃邪気PのPVに喧嘩を売って欲しい」と。七夕Pは「えっ、勝てるわけがないよ!?」と嫌がっていたが、そう指示を出したことだけは事実だ。桃邪気Pに対する敬意は抱いているが、それとこれとは話が別になる。『隣に…』を扱う以上、それは不可避の覚悟だ。

つまり3A07には、桃邪気Pに対するリスペクトなんて一欠片も含まれちゃいない。
敬意を抱いているからこそ、全力で彼に挑まなければならなかった。
ゆえに断言する。全ての『隣に…』動画で不用意に桃邪気Pの名前を持ち出す方々へ。
貴方達は彼を冒涜している。




2009年下半期の自分は完全に壊れていて(いや、今も壊れているのかもしれないが、少なくともあの時は本当におかしかったのだ)、3A07だけでは足りないと思っていた。
だから「im@s 雀姫伝 第七話 前編」と



「ガン・スモーキー・ベイベ」と

「無彩色の憂鬱」の制作を並行して進めていた。

つまり、同時に4本のラインを稼働させていたことになる。
どれ1つとして手なんか抜いちゃいない。掛け値なしの全力だ。

どうしてそんな真似が出来たのか? 答えはシンプル、とっても簡単。
睡眠時間を含めてリアルを犠牲にしたから。以上。





中盤以降、セバスチャンPの疲労の度合いが酷く、俺と七夕Pは何度も何度も話し合った。
セバスチャンPの負担を減らそうと、徹底的に脚本を絞り込み、練り上げた。

例えば、動画の16:20~17:20の1分間だ。あそこはセバスチャンPに律子の顔と背景の静止画像だけ用意してもらい、自分と七夕Pだけで組み上げたものだ。とにかくセバスチャンPの作業量を減らすことだけを考えて実行した。

だから、最終的には脚本から一切の贅肉が削ぎ落とされた状態にまで昇華された。
骨と筋肉しかない脚本。それが限界であり、最大の妥協点だったといえる。
とにかく10月に間に合わせようと必死だった。三人が三人とも疲れ果てていた。

***

だが9月上旬、シネ☆MAD3rd運営は当初の公開予定だった10月10~12日から11月21~23日に延期する事を決めた。理由は単純で、このままいくと3チームしか公開できなくなる程に進捗が酷すぎたからだ。原因は色々ある。身体を壊して入院者が出てしまったチーム。仲違いによって空中分解したチーム。コミケを優先した為に何も出来上がっていなかったチーム。
最初に二桁数いたはずのチームは、気がつけば半壊していたのだ。

だから、イベントの〆切を守る為にデスマーチを指揮していた自分は本気で怒った。だったら3チームだけ公開すればいいだろう。他チームの怠慢に付き合う理由なんてこちらには無い。しかしシネ☆MAD運営としてはそんなわけにもいかない。空中分解したチームの残留者を編纂し、体制を建てなおし、1つでも多くの企画動画を完成させる方向性に動くしか無い。


イベントの延期が確定した瞬間、自分の中で何かの糸が切れた。
そもそもの切っ掛けだった『覇道』の事も、再生数等の数値的な見返りのことも、そういった妄執や我欲的なモノの大半が雲散霧消していた。

ただ動画が完成すれば良いと思ったし、そしてそれはセバスチャンPと七夕Pの二人だけが満足すればいいと思った。純粋に、二人だけの為に作業を完遂させようと思った。相棒二人も自分と同じだったようで、三人が三人とも「他の二人の為だけに作る」と言い出し始めた。
そこにはイベントのことも視聴者のことも存在していなかった。ただ動画だけがあった。
おかしな話だ。3A07を作ろうと思った切っ掛けは、間違いなく数字の為だったのに。

元々10月合わせでスケジューリングしていただけあって、100の完成度で仕上げる事は可能だった。ただ、その延期した分で、
100を120にする時間と心の余裕を生み出せた。

もっと上を。さらなるこだわりを。後悔の無いように。ただ仕上げる為だけに。
修正箇所は70箇所以上に及んだ。百回以上見なおした。徹底的に手を入れなおした。

初稿から大きく変わったのは、ラストシーンだろう。
初期案は、悲しみの中で静かにカードを手放して、別れを告げる方向性の脚本だった。
つまりこうだ。崖の上に立ったあずささんは真っ直ぐ右手を伸ばし、手にしていたトランプを離す。トランプは上から下に流れて消える。あずささんは悲しげに、物憂げに、寂しそうに。

では、完成した動画はどうだろうか。あずささんは笑顔で、トランプは下から上だ。
何故そうなったのか、何故そうしたのかは語るまい。全ては動画に込めたつもりだ。




そして、21分45秒の動画は無事に完成した。
当初「3分しか作る気が無かった」と語っていたセバスチャンPは、最終的に15分程作るハメになっていた(残りは七夕PのPV時間等)し、全ての作業に三人の意志が宿っている。

だからシネ☆MAD3rdの打ち上げの時、俺ら三人、無言でハグタイムとかありました。
固く握手して、抱きしめあって、ただ「お疲れ様」と言い合う。それだけの時間。
(ホモじゃねーし! 変な想像すんなし!)

セバスチャンPは「実は4回ぐらい逃げようと思ったんだよ」と笑ったし、
七夕Pは「ニコマス動画の1つの答えになったんじゃないかな」と笑ったし、
自分は自分で、4本のラインを完遂した反動で真っ白に燃え尽きてた。

***

……と、いうか。無理が祟って、年明けの1月から入院するハメになりました。
血圧の数値がヤバすぎて、病院に行ったらその場で強制入院を命じられてしまいました。
だから病院のベッドの上で、馬鹿だなぁ俺、とぼんやりしてました。

こんな事をしても、世界は何1つ変わりゃしないのに。頭悪いよね、自分。





結論から言えば、世界はほんのちょっとだけ変わりました。

アニメの26話は公式からのアンサーだと思ってるし(誰がなんと言おうが俺にとってはそうなの!)、色々な人から動画がきっかけでアイマスにハマったとかニコマスPになったとか言われたし、アイマスのことをもっと好きになることができました、と言われたりしました。

ただ、「また3A07みたいなの作ったりするんですか?」と聞かれた時は、否定するようにしています。……駄目です。それは、自分が関与しちゃいけないんです。



ニコマスPは数千人もいるのですから、その中にはきっと自分みたいな馬鹿がいるはずなんです。そんな事をしても1円にもなりゃしない、世界は何1つ変わらないと知りながらも、削っちゃいけないリアルを削ってまで、伊達と酔狂で魂を削る馬鹿がいるはずなんです。

自分が『覇道』をぶん殴ろうとしたように。
『3A07』をぶん殴ろうとする奴が現れる。
それはもう、必ず、絶対、運命のように。


だから、その、なんだ。自分はホントに馬鹿ですが。
――さらなる大馬鹿、待ってます。ずっと。



P.S. 俺と七夕Pがキスシーンの実演指導したっていう話、あれはジョークです。
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あの時、『3A07』が実際に流された時、自分はコメントを打つことができませんでした。
うつむいて涙を溢れさせ、メガネのレンズの内側が表面張力いっぱいになるまでただ泣いていました。
自分の中でこれほど感動したノベマス(ノベマスPゆえ敢えてノベマスとさせて頂きますが)はなく
また『映像作品』として鑑みても巨額を投じて作られた巨匠映画と肩を並べております。
拙くはあれども、同じカテゴリの同じ作品形体の二次創作物を作る者として、RAPという頂点Pの一角
(この評価に文句がある奴は言いに来い、ただしご本人以外)に最大の敬意と称賛を以て一言お伝えしたい。
『あんたみたいな馬鹿そうそう出てくるわけないよ』
59ヶ月前
×
 恥ずかしながら、このブロマガで、始めてこの動画を知りました。コメントを消し、1回目は、茫然としながら、2回目は、涙を流しながら、コメント付きの3回目は、(途中で、アニマス26話を挟みつつ)ひたすら感心しながら、みていました。

 この動画を知ること、見ることが出来て、私は、とても幸せです。本当に今更ですが、動画作成の為に死力を尽くして下さった、3人のプロデューサーに感謝します。

 しかし、ここまで力を入れて創作をされいるのを改めて知ると、今後のRAPさんの動画を見るのに、相応の覚悟が必要になりそうで、ちょっと怖いですねw

 それと、以前、WUGのブロマガで、(本気で思っていた事とはいえ)軽率な言い回しで発言をした結果、コメント欄が荒れてしまい、本当に、申し訳ありません。それ以来、書き込むのは自重していたのですが、今回は、どうしても気持ちを抑えられず、書かせていただきました。長文乱文、失礼致しました。
59ヶ月前
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前半読んだ時点で、ただ一点、桃邪気P関連の無自覚な荒らしになにかいうかどうかが興味の対象でした。
作品を見せるって作り手の覚悟の話で、あの大挙押し寄せた、「作品をみていながらみていない」人間の大群は、疑いようもなく作り手の精神に鑢をかけていただろうからです。

「まあ、十中八九、スルーするだろうな」という予想に反して、ある程度の本音が聞けたのが嬉しかったです。
59ヶ月前
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お疲れ様です。

はじめてこの動画を見たとき、ひとつの終着点がここにあるな、と思いました。
余計な詮索もなにもなく、ただただ作品として楽しむことができたのは、クオリティが高いから、の一言に尽きます。
考察は楽しいです。でもそれ以上に、「最高の動画作品のひとつ」だと思っています。

私が御三方に言いたいと思ったのは、『ありがとう』というお礼だけ。
この作品を生み出してくれて、本当にありがとう。
お疲れ様。
59ヶ月前
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こんばんは。

恥ずかしながら、このブロマガを読んで初めて3A07を拝聴しました。
・・・涙が自然と溢れてきました。
RAPさんの魂の作品、感動しました。
ありがとうございます。
そして、ますますアイマスが好きになりました。

9th、もしチケットが当選したのなら、是非、会場にてお会いしたいですw

59ヶ月前
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2009年頃のニコマスで『隣に・・・』の呪縛に真正面から抗って打ち勝った動画はこの『3A07』と(・A・)Pの『【シュヴァルツシルト】S H IDOLM@STER30 第六章Hパート』くらいでしたね。
両作品とも当時『隣に・・・』に着けられた強烈なマイナスイメージを覆すために身を削り血を流すが如く思いを籠められた脚本や演出が素晴らしかったです。
59ヶ月前
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なんというか・・・あの動画を過去に見たことがあるので、その時の感動もあるけども、そのときのコメントのおかげで桃邪気Pのことを知ったり、尊敬してるからこそできた動画なのかな?と思ってたので、ある意味残念、というかがっかりしたのが正直な感想です・・・。
 ただ、あの動画の裏で、こんな葛藤や苦労があることを知れたのは良かったです。大きい壁があり、あえて挑発するつもりで作ったからこその熱さがあったから、あの動画は名作になったのかもしれません。
 
最近、プロマガが多いのは色々な葛藤があるからかもしれませんが、得するか?損するか?誰かのためにするのか?とかめんどくさいことは考えずに自分のやりたいようにやることが重要だと思いますので、RAPさんの自由にやったよいかと思います。
59ヶ月前
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