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一杯のかけそば
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一杯のかけそば

2015-01-16 23:52
    今さらだけど、古い話しで今でも感動するので残しておきます。

    そば屋にとって一番のかき入れ時は大晦日である。

    北海亭もこの日ばかりは朝からてんてこ舞の忙しさだった。

    いつもは夜の12時過ぎまで賑やかな表通りだが、夕方になるにつれ

    家路につく人々の足も速くなる。

    10時を回ると北海亭の客足もぱったりと止まる。

    頃合いを見計らって、人はいいのだが無愛想な主人に代わって、

    常連客から女将さんと呼ばれているその妻は、忙しかった1日をねぎらう、

    大入り袋と土産のそばを持たせて、パートタイムの従業員を帰した。

    最後の客が店を出たところで、そろそろ表の暖簾を下げようかと話をしていた時、

    入口の戸がガラガラガラと力無く開いて、2人の子どもを連れた女性が入ってきた。

    6歳と10歳くらいの男の子は真新しい揃いのトレーニングウェア姿で、

    女性は季節はずれのチェックの半コートを着ていた。

    「いらっしゃいませ!」

    と迎える女将に、その女性はおずおずと言った。

    「あのー……かけそば……1人前なのですが……よろしいでしょうか」

    後ろでは、2人の子ども達が心配顔で見上げている。

    つづき


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