人形、おもちゃ、文具、ビーズ、皮革などの老舗専門店で賑わう駅周辺を背に歩くと、情緒ある屋形船が通る隅田川や神田川が見えてきます。
そんな古き良き日本の面影が残る浅草橋エリアにある、築50年以上の物件をフルリノベーションした家で暮らす大西さんご夫妻。
名前(職業):大西邦夫さん(会社員)、けいこさん(会社員)場所:浅草橋
面積:56.9㎡(ワンルーム+ウォークインクローゼット)
予算:非公開
築年数:55年
心地よい風に吹かれながら、川を一望できる眺めが最高なおふたりの住まいを尋ねました。
お気に入りの場所
川の流れを楽しめる窓際邦夫さんが真っ先に挙げたお気に入りの場所は、窓際。
目の前には大きな川が広がっています。川沿いにはジョギングや釣りを楽しむ人も。
「予定のない休みの日に、朝からここでビールを飲むのが最高です。東向きなので朝の光が入ってきて気持ちいいんです」(邦夫さん)
この窓際で川を見ながら飲むビール、間違いなく美味しいですよね!
モニターが見えるキッチン邦夫さんがもう1カ所、気に入っているのがカウンターキッチン。
正面に大きなモニターがあるんです。
「キッチンにスツールを出して、お酒を飲みながら好きなサッカーチームの試合を見ています」(邦夫さん)
けいこさん主導で決めたというこのカウンターキッチンは、キッチンハウスのセカンドライン「GRAFTEKT」です。
「オールステンレスのカウンターキッチンに憧れていたんですけど、掃除をすると拭きムラができてしまうのが悩みどころで、最終的に“エバルト”という素材を使っている『GRAFTEKT』にしました。すごく堅い素材で、水滴が気にならないのでお手入れが楽! とても気に入っています」(けいこさん)
「2人とも料理をするので、キッチンは大きく取ろうと話していて、立ち飲みカウンター的な使い方ができたらと思っていたんです」(邦夫さん)
キッチンの壁にはシルバーの五徳が!
まるでアートのようにセンス良く収納されています。
「いつも洗うのを忘れるので、使ったら洗って壁にかけるようにしているんです。
100均で買った透明フィルムを貼って、その上にかけています」(けいこさん)
ライトを中心とした窓際のコーナーけいこさんのお気に入りの場所は、富山のガラス作家さんが手掛けたライトを中心としたこの一角。リビングのメインとなる場所です。
「季節によって花も変えて雰囲気を楽しんでいます。花瓶の下に敷いているのは、建材のサンプルです。
ちなみに、北島三郎の一輪挿しコーナーは、私は触らないことになっています。コンサートに行って買ってきた湯呑みを活用して、夫が飾っています」(けいこさん)
この家に決めた理由
中野から、浅草橋のこの家に移り住んだ大西さんご夫妻。
なんと、新型コロナウイルスが感染拡大を始めた2月に購入し、半年後の8月に入居したのだとか。
非常時とも言える中で家の購入、リノベーション、引越しまでを完了したパワーの原動力は、この部屋の魅力にあったようです。
「前に住んでいた賃貸物件のオーナーさんから、『孫を住まわせるので更新はしない』と更新の半年前に宣告されたんです。
その前からなんとなく家を買うことも考えていたんですが、更新ができないことが分かったタイミングでたまたま見ていたのがこの物件でした。
リノベーション済みの物件もいくつか見たんですけど、収納が少なかったり、部屋が細かく仕切られていたりで、なかなかこれ!という決め手がなくて。家を買うなら自分たちに合うようにリノベーションしたいと思うようになりました。
そんなタイミングで見つけたこの家が、『リノベ前』『採光性の高さ』『眺望がいい部屋』という探していた条件を満たしていたんです。
物件情報を見たときは、築55年ということで正直不安でした。
とはいえ、半年後には家を出て行かなくてはいけなかったので、あまり期待せず内見に来てみたら、川が一望できるこの眺望が気に入ってしまったんです」(邦夫さん)
「とにかくこの家は風が気持ちいいんです! 初めて内見したのは1月で、午前中だったんですけど、あまりに良かったので夜も見に来たくらい」(けいこさん)
邦夫さん曰く「ざっくり言うとリノベーション前はボロかった」という築年数を払拭したのは、とにもかくにも目の前に広がる広大な「川景色」。
そして、けいこさんの職場へも通いやすい立地の良さも後押しし、購入を決めたそうです。
リノベーションのポイント
「リノベーションは『デキマスワークス』(工務店)さんにお願いし、設計事務所の『MILESTONE』さんを紹介してもらいました。
中野に素敵なレストランがあって、そこを手掛けた工務店さんと設計士さんなんです。
そのレストランは照明の使い方もかっこよくて、我が家の壁につけたFLOSの『MINI GLO-BALL』という丸い照明も設計士さんの提案です。
さりげないところが気に入っていて、廊下や洗面所などに5個つけています。
実は、リノベ期間が緊急事態宣言にぶつかって、その間ショールームが閉まっちゃったんですよ……。
トイレとかユニットバスなど水回りは物流が止まってしまって、実物を見ずにインターネットで発注した設備もありました。届くまで不安はありましたけど問題なく終わりました。
どこへも遊びに行かなかったので、家のことに集中した3ヶ月間でしたね」(けいこさん)
「壁は自分たちと設計士さんたちの合計5人で1日かけて塗りました。
『ポーターズペイント』の石英が入っている、ざらっとした触感に仕上がる塗料を使っていて、玄関と廊下はグレーがかったベージュに、その他の主な部分は白っぽく塗り分けています。
こだわったのは収納です。趣味のアウトドア用品がたくさんあるので、『ここには○○を入れたいから、このくらいの大きさにしてください』という要求にも細かく対応してもらって、本当にお世話にありました。
その甲斐あって、すごく快適に暮らせています」(邦夫さん)
残念なこと、気になるところ
電車の騒音「想像以上にうるさいんです。窓を閉めれば気にならないんですが、朝早くから夜遅くまで電車が走っているので窓を開けたい季節は音が気になります」(けいこさん)
ベランダが狭くて、古いから心配「ベランダが古びていて不安なこともあり、上にタイルを被せて隠しています。
工事している時にベランダのコンクリートにクラックがあるのが見つかったので埋めてもらったんですけど、地震があったら怖いですよね」(邦夫さん)
玄関を広くしたかった「もうちょっと土間を広く取りたかったんですが、玄関の横にトイレがあって移動できなくて……。
本当はもう少し明るくて、広い感じにしたかったんです」(けいこさん)
お気に入りのアイテム
リビングの鏡リビングのチェストの上に置いた、大きな鏡が邦夫さんのお気に入りのアイテムです。
「千葉県・佐原市に攻防がある『icca』さんで買いました。ここに置くと鏡に川が映って、部屋の中に川があるように見えるんです」(邦夫さん)
チェストは北海道の「交点」のもの。はさみなど、細々したものを収納するのに便利だそうです。
千亀利(ちきり)タオル邦夫さんのお気に入りアイテム・その2は、「千亀利織」のタオル。
伸縮性があって、とっても柔らかい!
「吸収性も良くて使いやすいので、うちではこのタオルしか使っていません。バスタオル4枚、フェイスタオルサイズ7〜8枚を使っています」(邦夫さん)
洗面所のタイルけいこさんが真っ先に「お気に入りです!」と紹介してくださったのが、洗面所のタイル。
これは、お気に入りのレストランで使われていたのと同じもの。
「このタイルをどうしても使いたくて、洗面所に入れました。
設計士さんの提案で、洗面所の正面ではなくサイドに貼りました。さすがですよね!」(けいこさん)
福岡のアンティーク屋さんで買った照明実はけいこさん、「わたしの部屋」にも愛用中の照明を投稿してくださいました。
「今使っているのとは別のデザインの照明が欲しかったんですが先約が入っていてご縁がなかったので、お店の方にそれと似ているものを紹介してもらって買いました。
ボリュームがあるので、この部屋と相性が良くて気に入っています」(けいこさん)
ちなみに、インスタグラム(@zembkity)で、ご自宅のインテリアなどを紹介されています。リノベーションや収納術など、参考になる情報満載ですので、ご興味ある方は、是非チェックしてみてくださいね。
旅先や骨董市などで、少しずつ買い集めた食器食器もお好きなけいこさん。
キッチンの棚には骨董市や旅行先で買い集めたという器がたくさん並んでいました。
「このなます皿は、ほとんど新井薬師の骨董市で買いました。
鍋の取り皿にしたり、煮魚を入れたり。普段使いできるし、雰囲気があってどれもお気に入りです」(けいこさん)
プラスチックのワイングラス邦夫さんとけいこさん、おふたりのお気に入りアイテムがこちら、「モバイルワインシステム」と名付けたワイングラス。
ガラス製ではなく、プラスチックなんです。
「インターネットで買って、シールも自分たちで作って付けています。
キャンプやお花見などに持っていって、ワインだけでなく、ビールなどシュワシュワしたものをこれで飲むとテンションが上がるんです。
グラスにカラビナをつけて、バッグなどに下げて持ち歩いているんです」(邦夫さん)
通りすがりの人にびっくりされるそうです。
暮らしのアイデア
ざっくり収納で、すっきり見せる「目に見えるケースは揃えて、中はざっくり収納しています。使っているケースは、インターネットや無印良品で買いました。
色は白やグレーで統一しています」(けいこさん)
見えるところだけでも揃えると、こんな風に気持ち良く収納できるんですね。
生活感が出やすい細々したものやケーブル類の収納のお手本になります。
とてもスッキリしているおふたりのお部屋。その理由は、ケーブル類が一切ないこと。
いったいどのように工夫しているのでしょう? 配線や配管を担当した邦夫さんにこだわりや工夫を伺いました。
「妻が『ホコリが溜まって掃除が大変なので、テレビ周りにボードは置きたくないし、ケーブルも出したくない』と言っていたので、ボードは置かず、ケーブル類を壁の中に這わせることにしました。
パントリーにルーターなどをしまうスペースを作って、ケーブルを壁の裏側に通すための先行配管をあらかじめ施工してもらいました。
1番長いもので15メートルくらい、全部で100メートルくらいのケーブルを壁の裏側に通しているんですが、施工してもらった先行配管にケーブルを通す作業は自分でやりました。
トータルするとケーブルを15本くらい通したかなぁ」(邦夫さん)
これはもう、プロの域。このこだわりがお部屋のスッキリ感に繋がっているとは、脱帽です!
ランドリールームとクローゼットをウォークスルーで繋げて、生活効率をアップ「憧れていたランドリールームを作りました。収納用品などはイケアのものを使って、コストを抑えています。
洗濯機の左手にあるドアを開けるとクローゼットと繋がっているので、洗濯したものをランドリールームで畳んで、そのまま持っているようにしました。
洗濯周りはここで完結させています」(邦夫さん)
収納にこだわったというだけあって、クローゼットも収納力バツグン!
ランドリールームはお風呂にもつながっているので、お風呂上がりにそのままベッドゾーンに行くこともできるそうです。
これからの暮らし
「これから10年くらいはここに住む予定です。その頃には、建物全体の建て替えの話も出るでしょうから、今後のことはその時に考えます」(邦夫さん)
「今後はリビングを整えたいです。在宅勤務に対応できる大きめのテーブルや、テレビの前に置くラウンジチェアが欲しいです。
あとは、スペースの余白を大事にしながら、空間を上手に使えたらいいなと思っています」(けいこさん)
緊急事態宣言中だったからこそ、家のことを集中して考えられたと話す大西さん夫妻。
邦夫さんとけいこさんの「好きなもの」と「こだわり」が最大限に詰まった川沿いの家で暮らすことに慣れた頃、お部屋の中にはどんな家具が増えているのでしょう?
Photograped by Kosumo Hashimoto
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