• 【第7回東方ニコ童祭Ex】幻想の妖怪村【東方SS】

    2015-11-29 13:56
    意外とSSが少ないので投稿しました。
    ハーメルンでも同名で活動しております。

    短編です。

     ○ ● ○


    砂利道を踏みしめながら、慎重に歩む。

    利き手に小刀、左に提灯。

    ちょっぴりへっぴり腰で、それでもゆっくりと、探りながら歩いて行く。
    周りは暗く、頼りになるのは提灯と月光のみぞ。

    周りに立ち並ぶ家屋からは明かりなど以っての外、物音ひとつ聴こえなかった。

    不気味で、もう今すぐ帰っちまいたいところだが、そういうわけにも行かない。俺にもプライドってもんがある。

    野郎と呑んでいた勢いで、肝試しがてらここに来なきゃいけなくなっちまったのさ。

    この村は、通称『妖怪村』。
    数ヶ月前突如として人里からすぐ近くの所に現れ、以来気絶した奴がよく人里に運ばれている。

    それでも人の好奇心は止まず、俺みてぇな輩が行っているそうな。

    砂利、砂利と踏んではまた進む。だが、何も起こらない。

    「なんだ、デマかよ」

    呆気なく村の奥まで辿り着いた俺は、そのまま帰ることにした。
    帰ろうとした。が、どこからともなく女性の悲鳴が、こだまして聞こえた。

    ───きゃあああああ。

    何事だ、と思って音の源を振り向こうとしたが、如何せんこだました音だから方向が掴めなかった。

    しばらく周囲を警戒するが、矢張り何も起こらなかったため、今度こそ人里への帰路につく。

    生憎、この村での怪我人や、まして死者などただの一人も出ていないのだ。しいていえば驚いてすっ転んで擦り傷をつくったやつくらいだが。
    とりあえず、悲鳴の女性を放置して置いても問題は無いだろう、という算段だ。

    無視無視。とっとと帰っちまおう。

    むしと言えば、ここらへんは妙に虫が多い気がする。先ほどから自分の周りを蚊がぶんぶんと飛び回ってて五月蝿い。
    人里には、そこまで発生していなかったはずだが──。


    瞬間、提灯が消える。
    「!?」

    提灯どころか、月明かりも見えなくなり、完全に闇の中だ。
    見えなくとも村の出口の方向が分かっている。驚いた俺は、急いでその方向に向かう。駆ける。

    だが、10メートルぐらい走ったあたりだろうか。突如として、提灯に火が灯り、地面が月光に照らされる。

    不思議に思った俺は立ち止まってそのまま振り返る。

    そこにあったのは、黒く混沌とした霧、いや闇であった。

    未知の闇に包まれていたことを知った俺は、恐怖のあまりまたも走り出す。

    寒気がする、あんなおぞましい物に囲まれてたかと思うと。
    ぶるるっと身震いが起こり、鳥肌がたつ。

    走りながら思う。なんだこれは、と。
    いくら恐怖に怯えたからといって、未知のものに晒されたからといって、体の体温が下がるのはおかしい。

    周りの異変に気が付いたのは、皮肉にもその異変により頭が冷やされたからであった。
    外気が、どんどん下がっているのだ。建物の影などに霜ができている。

    体温を上昇させるためにも、急いで村の出口へ、走る。走る。

    するとどうだろう。どこからともなく女性の麗しい歌声が聞こえてくる。

    最高だ、と口の中で皮肉る。
    もうとっくにパニックに陥っても良いはずなのに、恐怖しながらも思考はいたって冷静だった。

    最高に恐れを煽る効果ではないか。

    女性の美声を聞きながらも、駆ける。
    しかし、なぜか目の前の視界が狭まってゆく。
    眠たいわけではない。現に俺の目はパッチリと見開かれている。

    さらに精神を追い詰められながらも、必死に出口を目指す。







    おかしい。先程から同じ所を何度も通ってるような気がするのだ。
    それに、走り続けてこんなにかかるはずがない。
    そんな、正体不明の恐さからも逃げようとしていた。

    早くここから出してくれ。妖怪なんてもうこりごりだ。

    ループしていると知りながらも、成す術の無い俺は走り続けるしかない。

    そんな時であった。

    数十メートル先に傘を持った少女がしゃがんでいるのが見えた。

    もしかしたら、俺と同じように肝試しに来たはいいものの、怖くて動けなくなったのかもしれない。

    そんな事を考えて、一緒に逃げよう、と話しかけようと近づいた時であった。

    彼女は突如振り向き、元気いっぱいに叫ぶ。



    「驚けーーー!!」






    あ、かわいい。


     ● ○ ●


    わちきちゃんはもう暫くの間、腹を満たすことはできなかったとさ。



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