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  • 雀士募集

    2018-06-30 21:2421
    毎日天鳳(麻雀サイト)で遊んでいるのですが、遊べる仲間が減りまともに卓が立たない日が増えてきたので、この場を借りて雀士を募集させていただきます。
     条件としましては
    ・麻雀が打てる
    ・基本会話はスカイプ(聞き専可。チャットが打てれば通話出来る必要は無し)
     以上です。よろしくお願いします。
     名前検索は「sahiro」画像はクラウンピースです。





  • 広告
  • 再・雀士募集

    2017-07-31 17:544
    麻雀できる面子がまた減って来たの募集します。
     募集要項としましては
    ・ネットで麻雀(天鳳)が打てる人
    ・スカイプが使える人(チャットのみ可)
     です。よろしくお願いします。
     活動内容について簡単に説明しますと
    ・スカイプでチャット(通話できる人は通話)しながら麻雀(天鳳)を打つ
    ・月初に始まって月末に終わる、一月を通した麻雀大会がある(賞金も賞品もありません)
    ・賭け事禁止
    ・一か月放置で自動削除(最初は1週間放置で削除)
    ・ログイン時間は自由。メンツが揃い次第麻雀を打つ。麻雀中以外は退出も自由。
    ・不本意ながら現在活動時間のほとんどが深夜(22時から5時まで)
     大体これくらいです。私はもっと早い時間帯に麻雀打って夜は寝たいのですが……。
     麻雀以外にも大富豪やゴッフィー、(メンバーが多数集まれば)人狼などをすることもありますが、基本は麻雀です。
     興味があります方は気軽にスカイプにて『vvv_1047』にご連絡ください。麻雀打ってる犬の写真が私です(名前は「ひろ」です)。
  • 汝は人狼なりや? 第一夜

    2017-07-25 20:485

     プロローグ

    「さ、昨晩はあんたか」

     無残な死体を前にして、村で唯一の警備員がため息をつく。

     警備員と言っても齢三十を過ぎた彼が誰かを守れたことなどなかった。ただ身体が他の村人よりも一回り大きいが為に『死体処理役』を押し付けられただけに過ぎない。

     鋭い牙と爪で切り裂かれ、内臓は食い散らかされて、元々人間だった『それ』は原型を留めていなかった。

     警備員は大量の血がしみ込んだ絨毯の上を歩いて、死体の前で手を合わせ、頭を下げた。

    「こここ、今晩こそ、おお俺の番かもし知ーれねえ」

     吃音を生じながら震える声で呟き、嗚咽を漏らす。その言葉とは裏腹に、うつむいた彼の表情は笑っていた。

     この村では毎晩誰かが死んでいる。

    『人狼』の犠牲になって。



     第一夜 狩人

    「何か食べるものをください……」

     木の椀を差し出し、消え入りそうなほど小さな声で、ぼろぼろの衣服を着たみすぼらしい幼女が家主に向かい懇願する。

    「またお前か」

     体毛の濃い家主が露骨に嫌そうな顔をして「ちっ」と舌打ちし、幼女を突き飛ばした。

    「あっ!」

     突き飛ばされた幼女は木の椀を抱きしめて地面に倒れ込んだ。

    「バンさんには同情するが、うちにだって余ってる食糧なんざ無えんだよ!」

     吐き捨てるように言い捨て、荒々しく扉を閉める。

     バン、とは幼女の父親の名前だ。元々は村の中心的人物だったが、一年前に事故で両足を失い、今では働くことも出来ず車椅子の生活をしている。

     普段はバン自ら頭を下げて他の村人に食料を請うて回っているのだが、娘のアンも父にならって、お腹が空いた時に扉を叩く習慣を身に着けていた。

     最初は父娘に同情的だった村人たちも、物乞い同然の生活が一年も続けば父娘を疎ましく思うようになり、今では疫病神のような扱いをするようになっていた。

     幼女は椀を持ったまま立ち上がってふらふらと歩き、他の家の扉を叩いて回った。

    「何か食べるものをください」

     しかしどの家も最初の家と似たような反応だった。

    「食いもんなんかねえよ!」

    「ごめんね、あげられる程うちにもないの」

    「……ごめん」

     全ての家に断られた幼女は、ふらふらとした足取りで最後の家の扉を叩いた。

    「……リオお姉ちゃん。何か食べるもの……」

     か細い声で呟くと、扉はすぐに開かれ、中から若い女性が姿を現した。

    「リオお姉ちゃん……」

    「アン。また、他の人達に断られたんだね」

     リオと呼ばれた女性は、幼女――アンの姿を見るなり事情を察し、目を細めて笑みを浮かべた。

    「おいで」

     アンの小さな手を取り、リオが家の中へと誘う。

     家の中に入った瞬間、食べ物の匂いがアンの鼻腔をくすぐった。

    「ちょうどシチューを煮ていたの」

     そう言って、アンの手から椀を取り上げる。

     汚れたアンの椀を綺麗に洗い、リオはシチューの中身を二度すくってアンの椀にいれた。

    「さ、お食べ」

     椀の中に木製のスプーンを入れて、アンに差し出す。

    「ありがとう」

     アンは嬉しそうに顔を輝かせ、椀を受け取るなり、顔を椀に近づけてむしゃぶりついた。

     シチューの中にはキノコや山菜の他に肉も入っており、少女はそれらを美味しそうに頬張りながら瞬く間に椀を空にした。

    「おかわり、する?」

    「うん!」

     元気の良い返事にリオは目を細めて、アンから椀を受け取って厨房へと向かった。

    「……お姉ちゃん。アンも森に入っちゃダメ?」

     厨房にいるリオの背に向かい、アンが恐る恐る問いかける。

    「ダメだよ。森の中には恐い生き物が沢山いるんだから」

     アンに背を向けたまま、リオが答える。

    「でも、アンも自分で食べ物採りたい」

     うなだれ、消え入るような声でアンが呟く。

    「村の人たち、嫌い」

     アンの言葉を聞き、リオが目を細め、唇の端を吊り上げて笑う。

    「そう。はい、おかわり」

    「ありがとう!」

     リオから椀を受け取り、アンが嬉しそうな声を上げる。

    「……ねえ、リオお姉ちゃん。なんでリオお姉ちゃんの家には最後にしか来ちゃいけないの?」

     勢いよくかき込んだ最初とは違い、ゆっくりとシチューの中身を味わいながら、問いかける。

    「お姉ちゃんだって裕福じゃないのよ。毎日アンとバンさんにご飯あげてたらお姉ちゃんの食べるものがなくなるでしょう?」

     リオの答えを聞いてアンがうつむく。

    「……でも、リオお姉ちゃんの家にはいつも食べ物があるよ。他の家の人は食べ物なんてないって言ってた」

    「それはね、嘘をついているの。本当は食べ物があるのに、アンにあげたくないだけなのよ」

    「どうして他の家の人たちはアンとお父さんに意地悪するの?」

    「さあ。貴方達のことが嫌いなんじゃない?」

     アンがうつむき、スプーンを椀の中に落とす。

    「どうしてアンとお父さんは嫌われているの?」

     涙と鼻水で顔を濡らしながら、消え入るような声で問いかける。

    「分からないわ。でも――」

     リオがアンに近づき、両腕でアンの頭を抱きしめる。

    「私だけはアンの味方よ」

    「リオお姉ちゃん……!」

     リオの胸に顔を埋めて、短い腕をリオの背中に回してアンは泣きじゃくった。

    「……シチューが冷めちゃったね」

     そっとアンの頭から手を離し、リオが囁く。

    「温め直してあげる。食べ終わったらバンさんの分も持っていきなさい」

    「……うん」

     涙と鼻水をこすりながら、アンが頷く。

     椀の中身を鍋に戻し、リオが再度火を入れる。

    「アン。シチューおいしかった?」

     鍋の中身をかき混ぜながら、リオが背中越しにアンに向かい問いかける。

    「うん。キノコも野菜もおいしかった。でも――」

    「でも?」

    「アンはお肉が一番好き」

    「そう。私もお肉が一番好きよ」

     火を止めて、温まったシチューを椀にそそぎ、リオがアンの方を向く。

    「さあ食べなさい。貴方の大好きなお肉がたっぷり入ったシチューよ」

     目を細め、口元を歪めながらリオがアンに椀を差し出す。

    「ありがとう!」

     アンは無邪気な笑みを浮かべて椀を受け取り、それをおいしそうに頬張った。

                   * * * *

     あまり舗装されていない荒れた道を、一台の馬車が駆けていく。山と森に囲まれた景色の中、御者の目には遠くに一つの小さな村が見えていた。

     馬車の中には四人の男女がいた。一人の少女が水晶玉を見つめ、他の三人は緊張した面持ちで水晶玉を持った少女を見つめていた。

    「この村に『人狼』がいます」

     感情のない少女の呟きに、二人の男女が頷く。

    「やはりか」

    「その『人狼』とは一体、何者なのですか?」

     髪が薄く身体の肥えた男が、三人の男女に向かい不安そうに問いかける。睡眠不足によるものか男の目は窪み、目元には濃い隈が出来ていた。

    「人狼とは人に化けた狼。毎晩人を食べる恐ろしい化け物」

    「毎晩人を……!?」

    「村長。『教会』で聞いた貴方の話とも一致するはずですが?」

    「はい。あ、いえ……」

    『村長』と呼ばれた男は歯切れの悪い口調で、流れる汗を布でふき取った。

    「実は一晩だけ、誰も被害者が出なかった日があるのです」

    「一晩だけ?」

     村長の言葉を聞いて、羽飾りの帽子をかぶりマントを羽織った男が訝し気な声を上げる。

    「はい。ですが、そのたった一晩だけです。それ以外は五日前からほぼ毎日人が死んでいます」

    「ふむ……」

     羽根帽子の男が首を傾げ、言葉を続ける。

    「村長。この村には貴方を含め、あと何人の村人が残っているのですか?」

    「十二人です。昨日また一人食われました」

     怯えた様子で村長が答える。

    「では我々を含めて十五人ということになる。もし人狼が一匹だけならば、いや例え二匹いたとしても、『負ける』ことはないでしょう」

     羽飾りの帽子をかぶった男の言葉に、村長が目を輝かせる。

    「本当ですか!?」

    「ええ。ですが、無傷と言うわけにはいきません」

    「お願いします。貴方方だけが頼りです」

     村長がそう言った瞬間、他の三人が同時に顔を見合わせる。

    「あの、何か失礼なことを……?」

    「村長。貴方は思い違いをしています」

     恐る恐る尋ねる村長に向かい、フードをかぶった女性が凛とした声で言い放つ。

    「『人狼』を殺すのは我々ではありません。貴方方なのです」

    「は……!?」

    「着きました」

     馬が止まり、御者の男が客室の幕を開ける。

    「降りましょう村長。そして広場に全村民を集めてください」

    「は、はい……。あのしかし、我々が殺すとはどういう……?」

    「私たちは組み立て式の処刑台を持ってきました」

     村長を見据え、フードをかぶった女性が言う。

    「今日殺す人を、貴方方で決めるのです。貴方方が『人狼』だと思う村民を」

                   * * * *

     それは異様な光景だった。

     広場に来ると壇上が設置され、その中央にはギロチン台があった。壇上には見知らぬ三人の男女と、村長が上がっていた。

    (なんだこれは?)

     不安を隠しきれず、リオが表情を曇らせる。周りを見渡すと他の村民たちも動揺し、怯えているようだった。

    「リオお姉ちゃん!」

     リオの姿を見つけ、アンが泣きそうな顔で駆け寄ってくる。傍にはアンの父親である、車椅子に乗ったバンもいた。

    「アン。バンさん。これは一体……?」

    「私達にも分からん」

     リオの問いかけに、バンが首を左右に振る。その表情は険しく、他の村民同様怯えているようだった。

     誰もが状況を理解していないようで、辺りが騒然とし始める。原因はやはり壇上で一際異彩を放つあの『ギロチン台』の存在だった。

    「皆さん! 聞いて下さい!」

     壇上にいる、羽根つきの帽子をかぶりマントを羽織った男が声を張り上げる。

    「この村には『人狼』が潜んでいます!」

    『人狼』……聞き慣れないその単語に、村民たちがまたざわつき始める。

    「『人狼』は毎晩人を襲って食う化け物です!」

     羽根帽子の男が大声でそう言った瞬間、今までとは種類の違う動揺が村民たちの間に広がっていった。

    『毎晩人を襲い食う』その言葉は正に、今この村で起こっている恐ろしい事件そのものだった。五日前からほぼ毎晩誰かが何者かに襲われ、翌朝惨殺死体が見つかるということが繰り返されていた。

    「『人狼』は夜にだけその力を発揮します。無力な昼の間は我々人間に化け、日常に溶け込んでいるのです!」

    「人間に化ける……?」

    「じゃあ、やっぱりあの子が……!?」

     辺りが騒然となり、視線が一点に集中する。

     その視線の先には村の若い女性、リオがいた。

    「な、なんで皆こっちを見るの……?」

     不安そうな面持ちで、アンがリオの腕をぎゅっとつかむ。リオは視線に臆することなく眉をしかめ、「ちっ」と鋭く舌打ちした。

    「誰が『人狼』なのか、我々には分かりません。しかし昼の内に処刑するしか人狼を倒す術はありません。そこで皆さんに『話し合い』と『投票』をして頂きます!」

    「投票だって……!?」「何の……?」「処刑、って……」

     男の不穏な言葉の数々に、村民のざわめきが一層増してゆく。

    「話し合いの結果、一番票を集めた村民をこのギロチン台で『処刑』します!」

     村民たちの間で一際大きなどよめきが上がる。リオは歯ぎしりをして、壇上にいる羽根帽子の男を睨み付けた。

    「『人狼』を倒す術はこれしかないのです! ご理解下さい!」

    「リオだ!」

     誰かが叫び声を上げる。その声を皮切りに、次々に村人たちが声を張り上げていった。

    「リオに決まっている! この村でよそ者はあいつだけだ!」

    「そうだリオだ!」

    「前々からおかしいと思っていたのよ! あの子だけいつも平然としていたわ!」

     村民たちがリオ達三人を取り囲み、攻撃的な言葉を叫ぶ。

     バンは戸惑った様子でリオを見上げ、アンは怯えた様子でリオの腕を強く握り続けていた。

     当のリオは周りの声に臆している様子もなく背筋を伸ばし、胸を張った状態で壇上を睨み据えていた。

    「これが話し合いか?」

     壇上にいる四人に向かい、リオが凛とした声を放つ。

    「このようなものが話し合いだと言えるのか? 私はただ『よそ者』というだけで殺されるのか? 村長、答えて頂きたい」

     問いかけられた村長がびくっと震える。

    「わ、わしは何も……」

     リオがアンの手を振り払い、壇上に向かい真っすぐに歩いていく。リオを取り囲んでいた人垣はリオを避け、彼女の背中を見送った。

     リオは見知らぬ三人と村長が立っている壇上に上がり、羽根帽子をかぶった男性と向かい合った。

     リオが男性を睨み付けると、男は一瞬気圧されたように一歩下がった。構わずリオが口を開く。

    「私はやっていない。その証拠に私には昨日のアリバイがある」

     自分の胸に手を当て、はっきりとした口調でリオが言い放つ。

    「アリバイ……?」

     小声で羽根帽子の男がリオの言葉を繰り返す。辺りが静まり返っているため、小さなその声すらも村民たちに伝わっていた。

     リオは首をひねり視線をアンとバンに移し、再度口を開いた。

    「昨日私はバンさんの家にいました。アン、そうよね?」

     住民たちの視線が一斉にバンとアンに集まる。

     リオの言葉に一番驚いたのは、バン本人だった。

    (違う!)

     昨日、リオは自分の家になど訪ねて来なかった。リオは嘘をついている。そう言いたかったが、バンはとっさにその言葉が言えなかった。

    (しかしそう言ってしまったら、あの子が殺されてしまうに違いない!)

     アンがリオに懐いていることは知っていた。自分たちの食事の面倒を誰よりも見てくれていたのもリオだった。その恩義があるため、バンはリオの言葉を即座に否定できなかった。

    「バン。どうなんだ?」

     村民の一人が問いかけてくる。バンは冷や汗をかいてうつむいたまま、何も言う事が出来なかった。

    「バン。はっきりと――」

    「いたよ」

     別の村民が何か言いかけた途端、アンが明るい声で、はっきりと言い放った。

    「リオお姉ちゃんは昨日、ずっと私達と一緒にいたよ。一緒にお歌を歌って遊んでたの」

     アンの言葉に、村民たちがまたざわつく。

     バンが目を丸くして娘を見ると、アンはその視線に気づき、バンに向かいにこっと笑った。

     その笑顔を見た瞬間、バンは背筋が凍りつくような思いをした。

    (この子は本当に私の娘なのか!?)

     何か恐ろしいものを見るような目でアンを見つめる。アンは笑顔のまま、ずっとバンを見つめ返していた。

    「本当か?」

    「リオがバンの家に入るところも出るところも見ていないぞ」

     騒然とする村民たちを無視して、リオが羽根帽子の男を睨み付ける。

     羽根帽子の男は苦々し気に頷き、再度前に出た。

    「皆さん、落ち着いてください。他にアリバイがある人はいますか?」

     男の言葉に村人たちが我に返り、そしてまた次々に騒ぎ出す。

    「お、俺は昨日ずっと家にいたぞ! 家族も一緒だ!」

    「そうよ、ずっと家族と一緒にいたわ!」

     毛むくじゃらの男のブラウンと、その妻のアンジェラが叫ぶ。その間に挟まれて、娘のメイと息子のカールも怯えながら頷いていた。

    「俺もだ!」

    「お前は独り身だろう! そんなもの証拠になるか!」

    「皆さん、静粛に!」

     羽根帽子をかぶった男が声を張り上げる。

    「家族がいない人で、昨晩のアリバイを立証できない人は前に出てください」

     村民たちは周りを見渡したりうつむいたりして、押し黙った。皆一様に怯えているようで、羽根帽子の男の言葉に従い前に出る者など一人もいなかった。

    「ドガ」

     静まり返った会場に、凛とした女性の声が響き渡る

     皆がその声の主に注目する。冷たい目をして一人の村民を指さしているリオの姿がそこにあった。

    「なっ……!」

     ドガと呼ばれた体格の良い若者が絶句し、戸惑った表情でリオを睨み付ける。

    「アル。ローラ。そして私。この村で『独り身』となった者はこの四人だけです」

     次々に名前を呼び、指をさし、最後に自分自身を親指で指して、羽根帽子の男に向かいリオが言い放つ。

     名前を呼ばれた者達も、名前を呼ばれていない者達も、皆驚いた表情でリオを見つめ、次いで怒りの目を向けた。

     ただ一人、彼女の『信望者』であるアンだけは、眩しいものでも見るかのような目でリオを見つめ続けていた。

    (リオお姉ちゃんは『村の皆』とは違う)

     この場で唯一人毅然とした態度を貫いているリオの姿を、アンは誇らしく思っていた。

     羽根帽子の男が村長に目を向ける。村長は頷き、リオの言葉を肯定した。

    「分かりました。ではドガさん。アルさん。ローラさん。壇上に上がってきてください」

    「ひっ!」

     羽根帽子の男が告げた途端、名前を呼ばれた三人が一様に恐怖で引きつった表情をする。

    「気持ちは分かりますが、早く来てください。もうすぐ日が暮れてしまいます」

     辺りは紅く染まり、夕暮れ時になっていた。

     羽根帽子の男がそう言っても、三人は動こうとしなかった。ドガはリオを睨み付け、アルはうつむき、ローラは両手を目に当てて涙を流しながら首を振っていた。

    「では、こうします」

     村の来訪者の一人である、フードをかぶった女性が一歩前に出て、初めて声を上げた。

    「三人の内最も遅れて壇上に来た者を、今日の『処刑』の対象とします」

     フードの女性の、静かだがあまりにも残酷な言葉に、村民たちが絶句する。

    「もう話し合っている時間はないのです。ご理解いただきたい」

    「そ、そんな横暴な……!」

     誰かが非難の声を挙げかけたその瞬間、ドガがふらりと一歩前に足を進めた。

     それを見たアルとローラは目を見開いた。

    「うおおおおおおおお!」

     ドガが叫びながら壇上に向かい駆け出し始める。アルは一瞬ローラを見つめた後、ドガに遅れて走り始めた。

    「ま……待って!」

     駆けていく二人に向かい手を伸ばし、一人取り残されたローラが悲痛な叫び声を上げる。

     それでも二人は止まらず、競い合うようにして壇上に駆け上っていった。

     結局そのまま、ドガが一番に壇上に上がり、次にアルが上がった。ローラだけがその場に屈みこんだまま、両手を目に当てて泣いていた。

    「――決まりですね」

     フードの女性が、泣き崩れているローラを見つめて淡々とした声で言い放つ。

    「今日の『処刑』は、ローラさんです」

    「いやあああああああああああ!!」

     ローラの絶叫が広場に響き渡る。

     羽根帽子の男は壇上を降り、ローラの傍まで歩み寄って、無理やりにローラを立たせた。

    「いや! いやあああああああああああああ!!」

    「諦めてください!」

     足を踏ん張り、両手を振り乱して泣きながら抵抗するローラを、羽根帽子の男が無理やりに押さえつける。

     力の差は歴然で、ローラはすぐに組み伏せられた。押さえつけられた途端ローラは大人しくなり、地面に伏して嗚咽を漏らし始めた。

    「もう決まったことなんです」

     静かにそう言い放ち、羽根帽子の男がローラを壇上まで連行する。ローラはまだ泣き続けていたが、諦めたのか抵抗する様子もなくなされるがままにしていた。

     周りの村民達は羽根帽子の男に怒りの眼差しを向け、ローラに憐みの目を向けていたが、羽根帽子の男を止めようとする者はいなかった。

     そしてローラはそのままギロチンの台まで連れられ、頭を板に挟まれ固定された。

    『勝負』に勝った二人、ドガは歯を食いしばりながら悲痛な顔でローラを見つめ、アルはローラの方を見ようともせずじっとうつむき続けていた。

     当のローラは余りの恐怖に我を失い、目を開いて涙を流したまま失禁していた。

    「やめろ!」

     村民の誰かが叫び声をあげる。

     フードを被った女性がそちらを見つめ、ゆっくりと口を開いた。

    「では彼女の代わりにどなたか身代わりを?」

     そう問いかけると、誰もがフードの女性から目をそらし、口をつぐんだ。

    「誰も殺すな、と言うのであればそれでも構いません。我々はこのまま引き上げても良い。但しその場合、この村は『人狼』によって滅ぼされるでしょう」

     予言と呼ぶには余りにも断定的なその言葉に、誰もが抱いている疑問を口に出せる者はいなかった。

    『ローラが人狼である証拠はあるのか』

     壇上に行くのが遅れた、ただそれだけの理由で処刑されるローラに、そんな証拠などあるはずもない。しかしやらなければ状況は変わらない。あまりにも残酷なこの処刑に対し、口を挟める者はいなかった。

     ただ一人を除いて。

    「待ってください」

     ギロチンの準備が整い、刃が降ろされようとした瞬間、一人の女性が異議を唱えた。

    「彼女が『人狼』である可能性は低いのではないでしょうか?」

     異議を唱えたのは、それまで沈黙を保っていたリオだった。

    「どういうことですか?」

     羽根帽子の男がリオに向かい問いかける。

     リオは羽根帽子の男を見据えて口を開いた。

    「『人狼』という化け物は、本来狡猾な存在なのではないでしょうか?」

    「その通りです」

     リオの言葉に、それまで一度も喋っていなかった水晶玉を手に持った少女が頷き、言葉を続けた。

    「『人狼』は人に化け、自らの正体を明かすことなく人々を騙し続ける、とても狡猾な存在です」

    「ならば彼女の行動は『人狼』の存在と矛盾していませんか?」

    「どういうことでしょうか?」

     リオの言葉に、水晶玉の少女が首を傾げる。

    「そこの女性が『遅れた者を処刑する』と言った時もその後も、彼女はただ戸惑い、泣き崩れているだけでした。そんな頼りない存在が果たして『人狼』であると言えるでしょうか?」

    「成程」

     リオの言葉に、水晶玉の少女が頷く。

    「それだけですか?」

     水晶玉の少女が、淡々とした口調でリオに向かい問いかける。その表情には怒りも焦りもなく、ただリオの言葉に対する僅かな『関心』だけが窺えた。

    「もう一つ。今ローラは気を失っているように見えますが、『人を騙し続ける狡猾な存在』がこの場においてただ気絶しているだけというのは、些か不自然ではないでしょうか?」

    「それすらも演技だとしたら?」

    「ギロチンは振り下ろされようとしていました。もし演技だとすれば、演じ切ることに何の意味があるでしょう」

    「一理あります」

     リオの言葉をあっさりと認め、水晶玉の少女が頷く。そしてギロチン台の傍にいる羽根帽子の男へと目を向けた。

    「彼女を解放しましょう」

    「しかし……」

    「ええ。彼女の代わりとなる『犠牲』が必要です」

     その言葉に、場が再び凍り付く。

    「とはいえ、もう時間がありません。今日はお二人の内のどちらかに決めるしかないでしょう」

     その言葉に、アルとドガの二人がビクッと震える。

    「……二人って言うのは、その……僕たちのことですか?」

     ずっとうつむいて沈黙していたアルが、恐る恐る顔を上げて震える声で問いかける。

    「そうです」

    「ふざけんな! なんで俺達だけが!?」

    「時間と情報がないからです」

    「理屈になっていませんよ!」

    「私も今のような状況で処刑するのは心が痛みます。リオさんや村の人々が言った『アリバイ』は不完全であり、ローラさん含め三人に絞られる理由にはならないからです」

     言葉とは裏腹に、淡々とした口調で水晶玉の少女が言い放つ。

    「じゃあ――」

    「それでも誰かを処刑しなくてはなりません。『縄』に余裕はないのですから」

    「縄……?」

    「時間がありません。情報を整理します」

     ドガの呟きを無視して、水晶玉の少女が一呼吸置いて再度口を開く。

    「サラの提案の後、真っ先に動いたのはドガさんです。次にアルさん。ローラさんは最後まで動くことが出来ませんでした」

    「……それがどうした?」

     不安と怒りを露にしてドガが問いかける。が、その問いかけに対し水晶玉の少女は何の反応も示さなかった。

    「ドガさんはずっと苛立っている様に見えました。アルさんは壇上に上がった後は何も見ようとせず、ただうつむき続けていました」

    「それで……?」

    「それだけです」

     水晶玉の少女がそう言い放ち、羽根帽子の男に目を向ける。

    「ヒース。『投票』を行いましょう」

    『ヒース』と呼ばれた羽根帽子の男が頷き、懐から紙の束を取り出した。

    「皆さん! 聞いて下さい!」

     ヒースが紙の束を頭上に掲げ、声を張り上げる。

    「今から皆さんに『投票』をしてもらいます! 『アル』か『ドガ』どちらかの名前を書いて下さい!」

     村民達がざわめき立つ。

     ヒースは壇上から降り、動揺する村人一人一人に紙とペンを渡していった。

    「これは……その、何の為の『紙とペン』なんですか……?」

     村人の一人、アンジェラが紙を手にしたまま、震える声でヒースに問いかける。

    「最初に言った通りですご婦人。最も多く名前を書かれた者を『処刑』します」

    「そんな!」

    「それともう一つ」

     淡々とした口調で、ヒースが人差し指を上げる。

    「皆さん、ちゃんとご自分の名前も書いてください。その名前も壇上で読み上げます」

    「何のためにそんなことを!」

     アンジェラの傍にいる、体格の良い毛むくじゃらの中年の男、ブラウンが声を荒げる。その傍には二人の子供のメイとカールが、怯えた表情でヒースを見上げていた。

    「もちろん『人狼』を捕まえるためです。この投票は後々、貴重な情報源に成り得ますから」

    「貴様らは狂っている……!」

    「我々は至って冷静です。自分が死ぬことに比べたら、これから死ぬ人に恨まれるなんてこと、大した問題ではないでしょう?」

    「狂人め!」

    「可愛らしいお子さんですね。ご息女と、ご子息ですか?」

     怒りを露にするブラウンから視線を逸らし、ヒースがメイとカールにに目を移す。

    「……それがどうした」

     ブラウンの問いかけを無視して、ヒースが腰を屈めてメイの視線に合わせる。

    「ひっ……!」

    「お嬢ちゃん。弟さんを守りたい?」

     問いかけられたメイはただ怯え、ヒースと目を合わせたまま、何も答えることが出来ずにいた。

    「じゃあ、お父さんとお母さんは? 村の人が死んでも平気?」

     ヒースの恐ろしい問いかけに、メイがゆっくりと首を左右に振る。

    「そう。でも、この村には悪い狼さんがいるんだ。どうしたらいいと思う?」

    「……狼さんを、やっつける……」

     小さな声を震わせて、メイが答える。

     ヒースはにっこりと笑い、頷いた。

    「そう。その紙は、そのためにあるんだ。自分が悪いと思う村人の名前を、その紙に書いてお父さんかお母さんに手渡すんだよ。自分の名前も一緒に書いてね」

    「娘から離れろ!」

     ブラウンが声を荒げて、ヒースを力任せに突き飛ばす。

     突き飛ばされたヒースは尻もちをついた後、何事もなかったように立ち上がり服についた土や草を掃い、ブラウンを見据えた。

    「お父さんも、ご家族の命が惜しければ早く記入して下さい。それともこのまま何もせず、ただ村が狼に食い尽くされるのを待つおつもりですか?」

    「何を……!?」

    「もう一度だけ言います」

     すっと息を吸い、ヒースが顔を上に向ける。

    「この村には確実に『人狼』がいます! 『人狼』は夜の間は無敵、我々が奴らを殺す方法は『昼の内に処刑する』ことしかありません! 座して死ぬ前に、こちらから奴らを狩り尽くすのです!」

     広場中に響き渡る大声で、ヒースが叫ぶ。

     その声には有無を言わさぬ迫力があり、ヒースの言葉に異議を唱える者は最早いなかった。

    「今日は『アル』か『ドガ』の名前を書き、右端に自分の名前を書くだけで構いません。もう日が暮れる。本格的な話し合いは、明日から行います」

     そう言ってヒースはまた歩き始め、静まり返った広場の中、全ての村人に紙とペンを渡していった。

     そして壇上にいる七人、村長と水晶玉の少女、そしてサラとリオと放心したままのローラ、最後に『アル』と『ドガ』にも紙とペンを渡した。

    「貴方方も、投票に参加してください」

    「……ふざ、けんなよ……なんで俺達が!」

     ドガがヒースにつかみ掛かる。瞬時にヒースはドガの左足を払って転ばせた。

    「君達が名前を書かないのならそれで結構。但し一票差で自分が処刑されても誰も恨まないことだ」

     地面に倒れたままドガはヒースを睨み付け、アルは紙とペンを持ったまま震えながら泣いていた。

     再びヒースが歩き始め、壇上の中央へと戻る。

    「三分後に紙とペンを回収します。未記入の者は無効票とします。投票した者、された者の名前は全て読み上げます」

     そう宣言した後、あからさまな仕草で腕にはめている時計を見る。

    「さあ、記入してください!」

     ヒースがそう言うと、全員が紙に視線を移した。

     リオは紙に名前を書き終えた後、ふと放心したままのローラを見、傍へと歩み寄って行った。

    「ローラ。大丈夫か?」

     リオに問いかけられても、ローラは放心したままぴくりとも動かなかった。

    「おい――」

    「時間です!」

     リオが更にローラに近寄ろうとした瞬間、ヒースの大声が響き渡った。

    「今から紙とペンを回収します!」

     そう言ってヒースがリオに近寄ってくる。

     リオは紙とペンを渡すと、親指でローラを指した。

    「こいつがまだ書いていない」

    「無効票として回収します。問題ありません」

    「いいのか?」

    「これはこれで一つの情報ですから」

     そう言ってヒースがローラの白紙を取り上げる。

     ヒースが近寄った瞬間、ローラがびくっと震えて反応したが、ヒースはそれに取り合わず、次の回収先へと向かっていった。

     ヒースは自らの足で全ての紙を回収し、そして再び壇上へと戻って来た。

    「全ての紙を回収しました」

     再び壇上に戻って来たヒースが、紙の束を掲げて宣言する。

    「今から読み上げます」

    投票者

    投票先

    オスカー

    ドガ

    リオ

    アル

    アン

    ドガ

    バン

    ドガ

    未記入

    未記入

    ジェイク

    ドガ

    狩人

    アル

    エマ

    アル

    サラ

    アル

    ドガ

    アル

    アル

    ドガ

    ブラウン

    アル

    アンジェラ

    アル

    カール

    アル

    メイ

    アル

    ドガ……5票

    アル……9票

     全ての投票者と投票先の名前が読み上げられる。

     ドガは安堵から顔を落とし、アルは目を見開いて硬直していた。

    「投票結果は以上です。これよりアルさんを『処刑』します」

     淡々とした口調でヒースがそう断言する。

    「僕は『人狼』なんかじゃない!!」

     ヒースを睨み付けてアルが怒声を荒げる。

    「そうですか。残念です。時間さえあれば、十分に貴方の話を聞くことも出来たのに」

     感情のない声でそう言いながら、ヒースがアルを立たせて連行する。

    「止めろ! 離せ!」

     アルはヒースの腕を振り払おうと必死の抵抗をしていたが、抗いきれずにギロチン台の傍まで立たされる。

    「僕じゃない! 僕は本当にただの人間なんだ!!」

     喉が張り裂けんばかりの大声を張り上げるが、ヒースは構わずアルの首と手首をギロチン台の板で固定した。

     泣き叫ぶアルがギロチン台に固定されてゆく様子を、村民達は固唾を飲んで見守っていた。ずっと壇上に居る村長は、目を瞑り耳を押さえてアルに背を向けた。

     羽根帽子の男がギロチン台の脇にだらりと吊るされている紐に手をかけ、軽く引っ張る。ギロチンの刃がゆっくり上げられ、やがて限界値に達した。

    「さようなら。君の言葉が嘘であることを願っているよ」

     低い声で呟きながら、紐からぱっと手を放す。

    「僕はにんげ」

     アルの言葉が終わるより早く、ギロチンの刃が降ろされた。

     次の瞬間、アルの首は胴から離れて宙に舞った。

    「きゃーーーーーーー!!」

     悲鳴を上げる者、泣き崩れる者、卒倒する者、様々な反応を村民たちが示す。来訪者の三人は視界を分けてそれらの反応を見つめていた。

     阿鼻叫喚の世界の中、村人たちの中ではリオ一人が平然とした様子で立っていた。

     水晶玉の少女と目が合うと、リオは薄ら笑いすら浮かべて、あごをしゃくり首のないアルの死体を指した。

     リオの様子を見て、水晶玉の少女が小さく溜息を吐き、目を伏せる。

    (アルが人狼である証拠など何もなかったぞ。これがお前たちの仕事か?)

    (手段を間違えたことは認めます。しかし、仕方ありませんでした)

     態度と仕草で意思の疎通をした後、二人は同時に目をそらした。

    「今日の集会はこれまでです! 明日の朝十時に、またこの場所にお集まりください!」

     ヒースが村民達に向かい言い放つ。

    「遅れた人やいない人もチェックしますので、ご注意ください!」

     村民たちがお互いの顔を見つめ合う。多くの者はまだ涙を流したまま、不快そうに表情を曇らせていた。

    「明日は時間もあることですし、全ての人の意見を聞きます。『人狼』を殺すのは他でもない、貴方方なのですから」

     ヒースの声をまともに聴く者などいなかった。重い足取りで散会し、それぞれの家へと帰っていった。

     壇上にいる者は皆まだその場に残っていたが、それ以外ではバンとアン、それに村一番の大男だけが広場に残り、壇上を見つめていた。

    「リオお姉ちゃん」

     リオに向かい、アンが手を振る。

     リオはアンを一瞥した後、大男の方に目を向けた。

    「ジェイク。何故お前が残っている」

     リオに睨まれ、『ジェイク』と呼ばれた大男が明らかに狼狽した様子で視線を宙に泳がせる。

    「おおおお俺死体、かかかかかか、かた、片付けるる……」

     ひどい吃音症で、体格に似合わぬか細い声をジェイクが出す。

    「あの男は?」

     リオに向かい、ヒースが問いかける。

    「ジェイクはこの村の警備員です。もっとも、役に立ったことなどありませんが」

     ヒースを見つめ返して、感情のこもってない声でリオが答える。

    「警備員、ですか」

    「実際は死体処理係です。死体を埋めるのがあの男の唯一の仕事なのですよ」

    「死体を……?」

     ヒースの目がギラリと光る。

    「ああああああアル、かかかかわい、そそそそそう。おおおお俺、ち、ち、ち、地に還すすす……」

     そう言いながら、ジェイクが壇上に近づいていく。

    「お待ち下さい」

     フードを被った女性がアルの死体の前に立ち、ジェイクを睨み付ける。

    「この死体は私共が引き取ります」

    「な、な、な、なんんんんで……?」

    「この者が『人狼』であるか否かの検分を行います」

    「けけけけ、け、けん、ぶぶぶぶぶん……?」

    「ほう」

     ジェイクを無視して、リオが高い声を上げる。

    「アルが人狼であるかそうでないのか分かるのですか」

    「はい。死体ならば」

    「死体なら……?」

    「解剖して調べる必要があります。生きた人間には試せないのです」

    「成程」

     フードの女性を睨み付けたまま、納得したかのようにリオが頷く。

     そして再び視線をジェイクに戻した。

    「聞いての通りだジェイク。お前は村長と一緒に家に帰れ」

    「でででで、で、で、ででも……」

     戸惑った様子で、ジェイクがアルの死体とリオを交互に見比べる。

    「いいから言う通りにしろ」

     リオが静かに命令すると、ジェイクはびくっと震え、怯えた視線を村長に向けた。

     村長は苦々し気な顔をリオに向けた後、ジェイクに顔を向けゆっくりと頷いた。

    「うむ……帰るぞ」

     来訪者の三人に向かい頭を下げ、村長がゆっくりと壇上から降りていく。

    「仕事熱心な息子を持って、村長は幸せですね」

     村長の背に向け、リオが目を細めながら話しかける。

     途端村長がゆっくりと振り向き、凄まじい形相でリオを睨み付けた。

     リオはその視線を受け、目を細め口元を歪めて笑っていた。

     ぎしっと歯ぎしりをした後、村長は再びリオに背を向けた。

     ジェイクはずっと心配そうに二人を見守っていたが、村長が自分の前を通り過ぎると、リオに一礼した後、大きな体を縮めて村長の後についていった。

    「ジェイクは村長の一人息子なんですよ」

     三人に向かい、リオが軽く説明する。

    「随分嫌われているんですね」

     フードを被った女性が、リオを見据えて言う。

    「誰に?」

     フードを被った女性を見つめ返して、リオが問いかける。フードの女性は嫌悪を隠そうともせず、顔をしかめた。

    「この際だから、はっきりしておきましょう」

     顔を上げて来訪者の三人を見下ろし、リオが胸元で腕を組む。

    「私は、貴方達のことも嫌いです」

    「悲しい人ですね」

     フードの女性の言葉を「ふん」と一笑し、リオがヒースの背後に目を向ける。

     そこにはヒースに向かい拳を振り上げているドガがいた。

    「ヒース!」

     リオの視線の先に気づいた、フードを被った女性が悲鳴声を上げる。

     ドガの拳がヒースの顔面に振り下ろされる。衝撃を受けたヒースは二、三歩後ろによろめいた後、ドガを見つめた。

    「よそ者がやりたい放題してくれたなあ」

     ヒースを睨みながら、ドガが低い声を上げる。

    「村長がどういうつもりかは知らねえが、これ以上勝手な真似はさせねえぞ!」

     再びドガがヒースに殴りかかる。

     しかしヒースはドガとの間合いを詰めて、彼の手首を掴み上げた。

    「いてえ!」

    「一発は仕方ありませんが、それ以上殴られるつもりはありません」

    「てめえ……!」

    「今日はもう帰りなさい。怒る気持ちはもっともですが、君の言い分は明日ゆっくりと聞かせてもらいます」

    「ぐっ……!」

     敵わないことを悟ったのか、脂汗を流しながら、後ろに下がってヒースの手を振り払う。

     そしてその場に唾を吐き、ヒースに背を向けてドガは壇上から降りていった。

    「チンピラのような男ですが、村一番の働き者です」

     去りゆくドガの後姿を見ながら、ヒースに向かいリオが言う。

    「分かっています。根は悪い方ではないのでしょう」

    「では、彼は人狼ではないと?」

     ヒースに向かい、リオが意地の悪い笑みを浮かべる。

    「それは……まだ、何とも言えません」

    「では、簡単に『悪い方ではない』などと言いきらないことです。貴方は言動が軽すぎる」

     返答に困り、ヒースが苦笑する。

     リオはそれ以上何も言わず、ゆっくりとギロチン台の傍へと歩いていった。

    「何を――」

     ヒースが何か言うより早く、リオはギロチン台の傍で唾を垂らして放心しているローラに手を伸ばした。

    「帰るわよローラ。今日だけ家に泊めてあげる」

     リオの言葉に対しローラは只ぶつぶつと呟くだけで、何の反応も示さなかった。

    「……ほう」

     感心したようなヒースの声を無視して、リオはローラに肩を貸しながら壇上を降りていった。

    「リオお姉ちゃん!」

     リオが壇上から降りると、彼女をずっと待っていたアンが、無邪気な顔をして近づいてきた。

    「かっこよかったよ!」

    「ありがとう」

     アンの髪を撫で、リオがくすっと微笑む。

    「リオ……」

     車椅子のバンも手で車輪を回しながら、リオに近づいていく。

    「……昨日の話だが……」

     バンが言いかけた途端、リオは無言で自分の口元に人差し指を立てた。

    「内緒ですよ」

     横目でバンを見てにやっと笑った後、ローラを連れてまた歩き始め、バンの横を通り抜けていった。

     バンはそれ以上何も言わず、曇った表情でリオの後姿を見送った。

    「また明日ね!」

     リオの背に向かい、アンが手を振る。リオは振り向きもせず、左手を軽く振った。

    「……まるで魔女だな」

     ぼそっと呟いたバンの言葉は、誰の耳にも届かなかった。

                   * * * *

    「それじゃあ私は死体を検分するから」

     アルの首と身体を借家に入れ終えた後、フードの女性――サラが二人に向かい軽く一礼する。

    「気を付けて――と言っても、無駄だろうけどな」

     ヒースが苦笑し、暗い表情を見せる。

    「気にしないで。貴方はエマを守ってあげてね」

    「ああ、分かっている」

    「サラ、また明日」

     水晶玉を持った小柄な少女――エマが、サラに向かい小さく手を振る。

    「ええ。貴方も占い頑張って」

     サラも軽く手を振って答えた後、ゆっくりと扉を閉めた。

    霊能者:昼に処刑された人が『人狼』であるか『人間』であるか夜に視ることが出来る。

    狩人:夜に誰か一人を人狼の襲撃から守ることが出来るが、自分自身は守れない。

    占い師:夜に誰か一人を占って『人狼』か『人間』か視ることが出来る。

    「行きましょうヒース」

    「了解しました、お姫様」

     ヒースがおどけた口調でエマの後を追う。

    「私はお姫様ではありませんよ」

    「守らなきゃいけないからね。今晩だけはお姫様さ」

     軽口を叩くヒースにエマは一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに彼を無視して歩き始め、サラとは別の借家に入って行った。

     素っ気ないエマの態度に軽く溜息を吐いた後、ヒースもエマの後に続き、家の中へと入って行く。

    「ふー疲れた」

     家の中へと入るとすぐ、ヒースは羽根帽子とマントを帽子置き場にかぶせた。

     そして土足のままソファに寝転がり、足を延ばした。

    「ヒース。他人様の家ですよ」

    「死んだ住人の空き家だろう」

    「マナーの問題です」

    「どうせすぐ血で汚れる」

     これ以上の問答は無駄と悟ったのか、エマはそれ以上何も言わず、別の部屋に向かい歩き始めた。

    「今日は誰を占うんだ?」

    「それは言えません」

     ヒースが問いかけると、エマは扉の前でぴたりと止まり、背を向けたまま答えた。

    「『リオ』って言ったっけ? あの姉ちゃんなんてどうだい?」

    「彼女は占い位置ではありません。今後も毎回『処刑』の候補として名前が上がるでしょう」

    「まあ、恨まれてそうだもんな」

    「それに彼女はどちらかと言えば『白』寄りです」

    「『白』ぉ!? あいつがただの村人だってのかい!?」

     狩人が占い師を見つめ、頓狂な声を上げる。

    「発言は白寄りでした。それに私の仕事は『黒』を見つけることより『灰』を潰すことだと思っています」

    「『灰』ねえ……。確かに今日の集会では得た情報が少なすぎたな」

    『白』:村人あるいは村人陣営のこと

    『黒』:人狼あるいは人狼陣営のこと

    『灰』:白か黒か分からない人のこと

    「私はしばらく部屋に籠ります。分かっていると思いますが、絶対に覗かないでください」

    「分かってるよ」

     ヒースが答えるよりも早く、エマは部屋の中へと消えていった。

    「さて、と……」

     コンコン。

     ヒースが立ち上がろうとした瞬間、不意に玄関からノックされる音が居間に響き渡る。

     狩人は警戒した様子で立ちあがり、自分の荷物から弓と矢を手に持った。

    「……どなたですか?」

     警戒した足取りで玄関に近づき、玄関の外にいる者に話しかける。

    「相談があって来ました。他の村人たちには言えないことです」

    (怪しさ爆発だな)

     苦笑しながら、そっと玄関の扉を開ける。

     そこには想像した通りの声の主がいた。

    「あんたか。なんの用だい?」

    「相談があるんです。中に入れて頂けますか?」

     狩人は少し思案した後、首を左右に振った。

    「いや、話があるなら外で聞こう」

    「わかりました」

     相手は素直に頷き、ヒースに背を向けて歩き始めた。

    「あまり遠くに行かれても困る。広場の辺りでどうだい?」

    「わかりました」

     背を向けたまま相手が頷く。狩人の勘が、危険信号を発していた。

    (恐らくこいつは『黒』だ)

     何の証拠もないが、狩人は相手をそう判断して最大限の注意を相手に向けていた。

     それがいけなかった。

     突然背後から狩人の肩を何者かが押さえつけ、首元に噛みついてきた。

    「な――!?」

     振り向き、顔を確認しようとした瞬間、今まで前を歩いていた相手が振り返り、狩人の顔を片手で捕まえた。そしてそのままぼきりと首の骨を折る。

     ヒースが絶命したことを悟ると、全てを見届けていた小さな人影が木陰から出てきた。

    【――】

     その小さな人影は二人に何事か命令すると、二人は軽く頷き、より大きな方がヒースの死体を持ち上げて、小さな人影の後ろに付き従っていった。

    【アオォーーーーン】

     二人の『人狼』の内、ヒースの死体を持ち上げている大きな方が遠吠えを上げる。それに対し咎める者はなく、またその『遠吠え』を聞くことの出来る者もいなかった。

                   * * * *

    「ローラ。先にお風呂入りなよ」

     リオの呼び掛けに対し、ローラはただぶつぶつと呟いたまま、何の反応も示さなかった。

    「あんた失禁してんだ。そのままでいられたら迷惑なんだよ」

     苛立ちを含んだ再度の呼び掛けに対しても、ローラは相変わらず何かを呟いたまま、反応を示さなかった。

    「ちっ」

     鋭く舌打ちして、リオがローラに背を向ける。

    「勝手にしな。私は先に風呂に入るよ」

     そう言ってリオが浴室に消える。

     ローラは相変わらず小声で同じ言葉を繰り返していた。

    「……ない……」

    「……村の人たちなんて、もう信じられない……」

    「人狼に……」

    「みんな『人狼』に食べられてしまえばいいんだ……」

    狂人:村人だが、人狼に加担する人間。人狼陣営の勝利が狂人の勝利となる。

    (第二夜に続く)