• かつて俺がクソゲーオブザイヤーと戦い袂を分かった話

    2020-02-11 18:10

    クソゲーオブザイヤーという5ch(旧2ch)のスレッドがあります。
    現在では昔ほど騒がれることはなくなった印象がありますが、その名を目にしたことがある人は多いでしょう。
    大雑把に言えばクソゲーについて語り、その年一番のクソゲーを決めてネタにすることを目的にした場で、私がその存在を知ったのは当時のニュースサイトで「メジャーWii パーフェクトクローザーのバグが酷い」みたいなニュース記事だったと思います。

    出来の良いゲームではなく、あえてクソゲーについて語り、大真面目にどれが最も酷い作品であるかを考える。そんな奇妙なエンターテイメント性に興味を惹かれた私は、徐々に当該のスレッドやwikiを読み漁るようになり、いつしか実際に何度もスレに書き込みながら、どのゲームが一番クソであるかを語るようになっていました。

    そして、2011年のクソゲーオブザイヤー据え置きの大賞が決定した時。
    私は「2度とクソゲーオブザイヤーには関わらん」と決心しました。

    当然ながら人の考えは千差万別であり、「私が正しい、あいつらは間違い」とは言えませんが、いずれにせよクソゲーオブザイヤーというスレッドと私は相容れない存在だと思い至ったため、スレッドからは離れたし以前ほどの関心もなくなりました。
    そんなわけで長らくその存在を忘れていたのですが、先日「RPGツクールMV Trinityがクソゲーオブザイヤー大賞になった」という話が流れてきたのを見て、ふと当時のことを思い出したので、かつて私がクソゲーオブザイヤーのスレッドで戦っていた頃の話でも書こうと思います。


    私がスレ住人と化していたのは2011年のクソゲーオブザイヤーで、この年の議論は過去に類を見ないほど意見が割れ、長引くものとなりました。
    おおむね例年では「明らかにこれが一番ひどい」と言われる作品が登場して満場一致で大賞が決定するか、精々2本の候補作が対立する程度なのですが、2011年においては最終的にノミネートされた7作品、その全てが最低一度は大賞としての総評が書かれました
    つまり最後の最後まで、どの作品にも「これが一番ひどい」と考える派閥が存在し、そしてそれぞれが一定の支持を得ていたわけです。

    普段のクソゲーオブザイヤーにおける総評とはスレの意見を面白おかしく書いた要約文程度のものでしたが、前述の点から2011年における総評は例年と全く異なるものとなっていて、「自分が最も酷いと思う作品を大賞にした総評を書いて、スレ住民を納得させれば勝ち」とでも言うような、ある種のゲームか、文章で戦う競技のような状態でした。
    そして、当時の住人はそれぞれが総評を書き、それに対して様々な反応をしながら、ああでもないこうでもないと議論が続いていたわけですが。



    私が見た限り、最初に「これが大賞で決まり!」みたいな空気を作り出したのがグラディエーターバーサスでした。
    本作の不評点は「過去作で好評だった要素の撤廃」「売りにしているキャラメイク要素がしょぼい」等が挙げられますが、何よりも当時の住人に語られていたのは「課金要素の酷さ」でした。
    本作はパッケージ版が定価6,279円(税込)と普通のフルプライスでありながら、昨今のソーシャルゲームのようにアイテムボックス拡張、キャラクタースロットが有料DLCとなっており、挙句装備の強化に使うアイテムも有料DLC、しかも購入はガチャ方式で欲しい物が手に入るかはランダムと、あらゆる面で追加課金を要求してくる有様で、この点から「剣闘士じゃなくて剣投資」「アクワイア(開発・販売元の企業名)じゃなくてアクドイワ」などとネタにされるようになりました。
    加えて、本作の公式サイトがウィルスバスターから「オンライン詐欺に関係している」と表示されたなんて話もあってネタには事欠かず、それらの一件から本作が大賞確定のような流れに変わってゆきました。


    ですが、ここには大きな問題がありました。
    そもそもクソゲーオブザイヤーにおける「クソゲー」の評価基準(2008年以降)は、単純に「単品のゲームとしての評価」で行うことになっており、例えば「シリーズの名に泥を塗った」「超大作として宣伝していたのに実際には駄作だった」のような期待に対する落差、いわゆるガッカリゲー要素は加点しないし、「企業の応対が悪い」「開発者の発言で炎上事件が起きた」みたいなゲームと直接関係がない部分での悪評要素も度外視するはずなのです。

    では改めて前述のグラディエーターバーサスを見てみると、キャラメイク要素のショボさは確かにゲームとしてダメな点ですが、「過去作で好評だった要素の撤廃」については微妙なラインです。
    撤廃されたことで明らかに単品のゲームとして退屈なものになっていれば問題ですが、ただ単に「過去作の要素が削られた」だけでは単品の作品としてのクソ要素としては不十分です。
    これは課金要素についても同様で、「課金しなければ全く楽しめない」「課金をしてもなお駄作」であればクソ要素となりますが、ただ単に商法がえげつないだけでは、クソゲーとはまた別の問題となってきます。
    そして、オンライン詐欺の警告やゲーム名・企業名のいじりは言わずもがな、完全にただのネタでしかなく、ゲームのクソ要素とは全く無関係な問題点です。

    つまるところグラディエーターバーサスは、本来のクソゲーオブザイヤーの判定基準に無関係な部分のネタばかりが騒がれて、実際に単品のゲームとしてクソなのかを大して議論されないまま大賞として担ぎ上げられかけたわけです。
    この点はどう考えても納得できなかったので、当時のスレッドで私は「単品のゲームとしての評価をしろ」としつこく書き込みまくっていたのですが、結局その点については明確に賛同を得ることがないまま、他の大賞候補が話題になったことでそのまま有耶無耶になってゆきました



    長らく議論が続くうち、色々とありながらも大賞候補は徐々に絞られてゆきました。
    おおむね終盤の議論で対象候補として挙がるものは
    Wizardry 囚われし亡霊の街
    Piaキャロットへようこそ!!4 ~夏の恋活~
    人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ

    以上の3作がほとんどとなりました。
    そして、その後また長い議論を経た末に、「人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ」が大賞として選定され、クソゲーオブザイヤー2011は幕を下ろすこととなりました。
    それでは、人生ゲームが大賞となった決め手は何だったのか。
    これは今でも鮮明に思い出せます。

    当時のスレッドに書き込まれた、「友人と人生ゲームで遊んだらクソすぎて友情ブレイクした」「妻と一緒にプレイしたら夫婦仲に亀裂が入った」といった感想文です。
    ぶっちゃけ今の時代なら「嘘松」の二文字で切り捨てられるような創作感バリバリの内容でしたが、当時のスレッドはこれによって「人間関係に悪影響を及ぼすほどの要素は他の2作には無い」と人生ゲームが大幅にリードしたような流れが出来上がり、そのままなし崩し的に人生ゲームが大賞として確定してゆきました。

    で、もう今更言うまでもないのですが、この流れについては全面的に問題だらけです。

    ・そもそも体験談の真偽自体が怪しい
    ・仮に真実だったとして、それは傑作・駄作問わずパーティゲーム全体で起こり得る問題であって人生ゲームの問題点とは言えない
    ・こんなものが通るなら、逆を言えば「クソゲーハンターの友人と一緒に遊んだら盛り上がって楽しめた、だから人生ゲームはクソじゃない」とも言えてしまう

    実際、人生ゲームのクソ要素をネタにしながら楽しんでいる実況プレイ動画も存在した(確かURLまで貼った)


    と、私は全力で猛反発していたのですが、結局は人生ゲームが大賞として選出されたわけで、私の意見は全く聞き入れられなかったわけです。
    これがまあ、単に自分と意見が違うだけなら納得できたんですが、前述の通りそもそもクソゲーオブザイヤーの判定基準として単品のゲームとして評価することが決まっていたはずなのに、結局はゲーム自体の評価とは無関係な創作の事件(まあ創作と決定付ける証拠も無いんですが)によって大賞が決定したことが我慢ならず、私は「こんな奴らと議論してらんねー」と、半ば不貞腐れたようにスレッドを閉じて、完全に別の道を歩むことを決心しました。


    結局の所「クソゲーオブザイヤーはネタスレ」とは当時から何度も言われていたことで、厳密な基準による議論と判定なんかよりも、スレ住民が楽しいか否かで判断すること自体は一概に否定すべきとも言えないのですが。
    それにしたってテンプレに書かれているような前提条件すら平気で無視するアホの方が大多数で、もはやゲーム自体とは関係ないネタ要素で馴れ合うことの方が中心化しているようにすら見えるようになったので、もはや私はクソゲーオブザイヤーというスレッドにエンターテイメント性を感じられなくなりました。

    私は本当にクソゲーについて議論をしたかったんですよ。
    もうクソゲーオブザイヤーのスレに居たのも10年近く前の話になってしまいましたが、その考えは今も変わりません。
    クソゲーとかクソ映画とか、駄作について事細かに指摘し感想を述べたレビューは傑作に対するレビューとはまた違った面白さがあり、読むのも書くのも楽しいものです。だから私はクレヨンしんちゃん映画の超駄作についても長ったらしいレビューを書いたりしたんですよ
    なのに、当時それなりに有名だったクソゲーオブザイヤーという場は、自分が書き込んでるスレのテンプレも読めないアホだらけだった

    改めて思い返しても歯痒いと言うか悲しいと言うか、まあ良い気分じゃない話なんですが、お陰様で今こうして記事を書くネタになったのでその点では良かったのかもしれません。(毎回こんな無理やりなプラス思考にしている)
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  • 映画クレヨンしんちゃん26作品 個人的ランキング ~感嘆と爆笑の傑作編~

    2019-12-26 19:4014
    Aランク
    クレヨンしんちゃんを知らない人でも迷わず見るべき大傑作

    5位 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦

    春日部で平和に暮らしていたしんのすけが何故か突然戦国時代へとタイムスリップしてしまう。そこでひょんなことから、歴史上討たれるはずだった侍を救ってしまう。歴史を変えてしまうわけだが、そんなことはどこ吹く風とばかりに、しんのすけは政略結婚に巻き込まれたり、戦で戦ったり、と戦国時代でも大暴れ。  そして、後から何とか車で(?)追っかけてきたひろし達とも再会をするものの、歴史の荒波は一家を大きく変えていく・・・  果たしてしんのすけ達はどうなってしまうのか?  そして、変えられてしまった歴史はどうなるのか?
    言わずと知れた、クレヨンしんちゃん映画の中では「オトナ帝国」と並んで最高傑作と称されることも多い名作です。

    本作の中心となるのは侍の又兵衛と、という姫の身分違いの恋愛劇なのですが、当然それだけには留まらず、過去へタイムスリップした野原一家との人物との交流による「変化」の到来、時代劇らしい緊迫感がありながらもクレヨンしんちゃんらしさのあるコミカルで笑いを誘う戦い、しんのすけがタイムスリップした「意味」が知らされるオチと、とにかく最初から最後まで視聴者を退屈させない展開が目白押しです。
    「雲黒斎の野望」において「時代劇なんて大体武士の戦いしかやる事がない」と書きましたが、本作は同じく時代劇をテーマにしつつも「ただの武士の戦い」の物語にならないように、一方で武士の戦いを疎かにすることもないように、あらゆる要素を最大限かつ無理なく組み込んだ、完璧に近い構成だと思います。

    物語の構成もさることながら演出面も素晴らしく、特に印象的なのは野原一家の車に乗せてもらった廉と、自身の馬で駆ける又兵衛の距離が開いてゆくシーン。
    どこか寂しそうな目で又兵衛を見る廉と、その後に立ち止まる又兵衛の様子は、本作の物語そのものを端的に表していると言えます。
    それ以外にも、シーンの一つ一つにおいてキャラクターの表情の細かな変化も見逃せないような見事な描写で占められており、二度、三度と見返しても新たな発見があるほどです。

    なお、本作は時代劇マニアからの評価も高く、「時代考証がしっかりとされている」という意見を頻繁に目にするのですが、あいにく私は時代劇マニアではないのでその辺りに関してはよく分かりません。まあ、それだけ出来が良いのでしょう。

    と、ここまでベタ褒めしておいて本作が5位止まりなのは、実際の所「クレヨンしんちゃん映画でやらなくてもいい」という感が多少なりとも感じられるところ。
    誤解を招かぬよう書きますが、本作が野原一家の魅力を描けていないわけでは全くありません。ただ、あくまで物語の中心が又兵衛と廉であり、それを取り巻く物語も戦国時代の人物が中心であるため、野原一家は最後まで異邦人・来訪者という構図が変わらないのです。
    また、かすかべ防衛隊については「先祖」という形でそっくりさんが登場するのですが、あくまで別人であるため本人と同等に扱うことは出来ず、出番は少なめ。
    そうした舞台の中では十二分に野原一家の魅力やクレヨンしんちゃんらしさを描いているとは思うのですが、どうしても「野原一家が戦国時代へ行く」ストーリーの時点で登場人物や展開の制限は少なからず受けてしまい、「足りてはいるが濃密とは言えない」範囲に収まってしまっている感は否めません。

    まあ、こうした話をしてゆくと結局「私がファンタジー系の派手な世界観の方が好きで、時代劇は地味だからあまり好きじゃない」みたいな話になってしまうんですが。
    その辺りを差し引いても本作の完成度は間違いなく素晴らしいもので、時代劇が好きな人であれば更に楽しめるだろうと思います。


    4位 爆睡!ユメミーワールド大突撃

    毎晩、楽しい夢が見られる世界、ユメミワールド。 何でも叶う夢の世界の訪れに、しんのすけたちは喜びいっぱい!・・・だったのに、 突然、楽しい夢は悪夢の世界へと姿を変えた! 時を同じくして、春日部の街にやってきた少女・サキ。 しんのすけたちカスカベ防衛隊の仲間になり、悪夢に立ち向かうと約束するが、 サキにはある秘密があった・・・
    いわゆる「暗黒期」より後、近年のクレしん映画では間違いなく最高の完成度を誇る、と個人的に太鼓判を押したい作品がこれです。

    ふたば幼稚園へ編入してきた少女「サキ」と、同時期に発生した悪夢の事件が本作の中心となるのですが、まず注目したいのはネネちゃんの出番が多いことです。
    私が見た限りだと、彼女はかすかべ防衛隊の中では個別の活躍が少ない方で、作品によってはウサギ殴ってるだけくらいしか印象的な場面がないことも結構多いのですが、本作においてはサキの心を開くまでの過程においてしんのすけ、そしてネネちゃんの二人が中心となります。
    様々な事情から心を閉ざし、頑なでひねくれた態度と化しているサキに対して、良くも悪くもマイペースで自分勝手な部分がある二人が積極的にサキへと絡んでゆき、友達となった上で事件の真相へと近付く過程は二人のキャラクターを特に良く活かしています。
    女同士という点もあってか、今までギャグ以外ではあまりメインで描写されることのなかったネネちゃんの性格が良い方へと活かされているのは新鮮さがありながらも安心感を覚える描写で、「おお、そう来たか!」と思わされます。

    そして本作の舞台となる「夢の世界」は、かすかべ防衛隊の思い描く「夢」を描写することで各キャラクターの個性を分かりやすく見せつつ、視覚的にも楽しめる内容。
    ここで酷く今更な話をしますが、アニメの映画ってシリーズのファンじゃない人も見るわけじゃないですか。つまり映画においては、「初見の人が置いてけぼりにならないように、キャラクターがどんな性格か分かるよう端的に描写する」「シリーズファンが『そんなもん知っとるわ!』と感じないように、説明臭さのない描写にする」という二点が求められるわけですよ。
    その点において本作の夢の世界の描写は、シリーズファンであれば納得と笑いを得られ、初見の人でもキャラクターの性格の根幹を端的に掴める、見事な構成です。

    サキとの関係と、夢の世界。
    この並行して描かれる世界で個性を爆発させてゆく登場人物たちの描写はひたすらに楽しく、そして物語の真相へと向かいどんどんと盛り上がりを増してゆきます。
    中盤からの目的として探し続けていた「バク」が現れるシーンは驚き、納得、喜びが同時に得られる瞬間で思わず目頭が熱くなるし、その後のかすかべ防衛隊たちが夢を叶えてしんのすけの助けとなるシーンになると何だかもう笑っていいんだか泣いていいんだか分からない混沌とした感情に襲われ、そんな思いに混乱しつつもこれこそが「クレヨンしんちゃん」の面白さだ!と再確認させられる、怒涛にして最高の場面です。

    最終的に、事件の解決からエンディング映像として描かれるエピローグの完成度も素晴らしいもの。今までの出来事を思い返しつつ、それぞれの夢の光景と築き上げた関係性を楽しみ、まさに良い夢を見たような心地よい余韻を感じての完結は感嘆のため息が出るほど。
    個人的には、この作品に出会えただけでも暗黒期のゲロ吐きそうな駄作に必死に耐えてきた価値はあったと感じられました。それくらいに素晴らしい内容です。

    明確な不満点はほぼ一つだけで、過去作でも何度かあった「流行りの芸人ネタが邪魔」な点。
    中盤ごろの登場は特に問題なかったのですが、いくら何でも終盤のシリアスなシーンの最中にまで出す必要はなかったでしょう。
    とは言え、あくまで「必要ない」程度であってシリアスをぶち壊すほど酷いわけではないし、ある種「お邪魔虫」としては適切な存在とも言えなくはないので、そこまで大きなマイナスとも言いません。いいんですよ。最終的に面白ければ。


    3位 ヘンダーランドの大冒険

    今度はテーマパークを舞台にしんちゃん大活躍!?  幼稚園の遠足で出かけた“群馬ヘンダーランド”。実はそのヘンダーランドこそオカマ魔女とその一味が地球征服を企む本拠地だった!  そこで地球のピンチに立ち上がったしんちゃん。お馴染みのアクション仮面、ぶりぶりざえもん、カンタム・ロボと強力な助っ人を引き連れて、オカマ魔女率いる強敵陣と世紀の大勝負!!当時セクシーアイドルとして大活躍した雛形あきこも登場。  さあ、地球の運命はいったいどうなる!?
    「クレしん映画の名作」という話題になると、大体はオトナ帝国と戦国大合戦の二大巨塔みたいな扱いをされることが多いのですが、それらに次いでファンの声を目にすることが多いのが本作だと思います。
    で、実際見てみるとその扱いに偽りは一切無くて、とにかくメチャクチャ面白いわけですよ。

    クレしんの映画の見どころとして、「日常が少しずつ侵食されてゆくホラー要素が怖い」みたいな印象を持っている人は結構多いと思うのですが、大体そうした印象を形作っているのは「オトナ帝国」と、そして本作によるものでしょう。
    タイトル通り本作の舞台となる「ヘンダーランド」の、明るい雰囲気の一方で所々に見える不穏な要素。脅かされ始める日常と"敵"の存在、そして戦いまでの流れは子供でも分かるくらいシンプルで分かりやすく、様々な作品を見慣れた大人でもグイグイと引き込まれていく巧みな進行。

    一方で私が何度も述べているクレヨンしんちゃんの魅力、「真面目にやってるのに面白い」要素にも満ちており、しんのすけはもちろん、本作でパートナーとなるトッペマも、裸のしんのすけを見かねて魔法で服を着せたり、紙芝居で状況説明をするなど、所々のコミカルな描写で親しみを持たせてくれます。
    中盤、緊迫した場面の後の「あんた、いつも裸ね」という台詞は、脅威が去った安心感と気の抜けるような面白さが混ざり合って、地味ながら印象に残っていたり。

    しかし、やはり本作の"面白い"部分と言ったら、敵のボスであるマカオとジョマとの戦いでしょう。
    オカマの魔女」なんて、その時点でインパクト抜群の設定と外見をしていながら、「トッペマの国を既に滅ぼしており、これから世界征服を企てている」と結構ガチ目の脅威度も誇ります。実際オープニングでは、巨大なドラゴンを難なく倒せるほど強いトッペマの国の王子を、全く寄せ付けずに倒してるし。
    ですが驚くべきことは、このマカオとジョマ、実際に野原一家と対峙してから決着がつくまでの時間は10分ちょっとしかないんですよ。
    じゃあ描写不足や消化不良があるのかと言ったら全くそんな事はなく、その10分余りの時間に胃もたれしそうなくらいに濃密を極めた展開が詰まっています。
    ラストの、野原一家との追いかけっこのシーンは頻繁に語り草になるのですが、本当に一瞬たりとも目を離せないくらいにテンポ良く、おバカで、なのに緊迫した奇怪な魅力の結集体
    このシーンだけで、クレヨンしんちゃんという作品の魅力は全て分かると言っても過言ではないくらいでしょう。

    細かな台詞が実は伏線になっていたり、序盤の展開に対してエンディングがちょっと皮肉を効かせていたりと気の利いた演出も欠かしておらず、とにかく「クレヨンしんちゃんの映画」として全てが完璧と言える大傑作です。


    2位 嵐を呼ぶ 夕陽のカスカベボーイズ

    映画館「カスカベ座」で遊んでいたかすかべ防衛隊だが、トイレに行ったしんのすけを残して、みんな忽然と姿を消してしまう。夜になり行方不明になったみんなを心配した野原一家。映画館を探しに来たが、延々と上映されている西部劇の映像に目を奪われているうちに、気が付けば一家は映画と同じ西部劇の街に立っていた・・・。  春日部に戻ろうと街をさまようしんのすけたちの前に、変わり果てたかすかべ防衛隊のみんなが!風間くんは乱暴な保安官に、マサオくんとネネちゃんは・・・なんと夫婦になっていた。みんなは春日部の記憶を失っており、それぞれ新しい生活を送っていたのだ。唯一記憶が残っていたボーちゃんと帰る約束をするが、この世界での生活が長引くにつれ、徐々に春日部の記憶を失い、この世界の生活に馴染んでゆくしんのすけたち。
    「個人的な好み」という点だけで言うと、実質この作品が1位です。
    ただ、クレヨンしんちゃんの映画として見ると異質な点も多くて……まあ、それだけ語れる部分も多いのですが。

    本作の特徴は何と言っても、その舞台設定でしょう。
    野原一家・かすかべ防衛隊を含む春日部の人々が西部劇の映画の中に取り込まれ、その世界が舞台となるわけですが。
    西部劇と言えばみんな銃持ってて、すぐ「決闘」とか何とか言って撃ち合いを始めるアレですよ。そんなシビアな世界観を本作はしっかりと作り上げていて、身も蓋もない言い方をすれば話がものすごく重苦しいんです。

    映画の中の世界にいると、元の世界のことを忘れてゆく」設定だけでも結構キツいし、実際かすかべ防衛隊にしんのすけが顔も名前も忘れられたり、ぶりぶりざえもんの顔も思い出せなくなってゆくシーンは恐ろしくも切ない。
    そして舞台が舞台だけにバイオレンス描写が多数かつ全くオブラートに包まない表現をされていて、序盤から酒場での乱闘騒ぎ、罪人へのリンチじみた殴る蹴るの暴行、鞭打ち、馬に繋いでの市中引き回しの刑といった描写が当たり前のように存在します。
    特に凄まじいのは、みさえが大勢の前で笑い者にされた挙句、そこに怒って割り込んだしんのすけもろとも昏倒するまで鞭で打たれ、川に捨てられるシーン。こんなもん見せられたら子供泣くぞ

    そんな調子なのでギャグ要素は極端に少なく、所々にコミカルな描写はあるものの、あまり笑えない内容になっています。
    例えば映画の中の世界でマサオくんがネネちゃんと結婚するけど尻に敷かれているとか、みさえが必死に若作りして酒場の歌姫になろうとするが、周囲にはドン引きされているなんてシーンも滑稽と言えば滑稽なんですが、舞台を考えるとそうでもしなきゃ生きていけないわけだし、元の世界に帰ることよりも映画の中の世界での生活に執着、適応していく様子はホラーじみた恐ろしさすらあります。

    と、これだけでは本当にただの暗い作品にしか見えないと思うのですが、それだけの暗さ、重苦しさを重厚かつ丁寧に描いているだけあって映画の世界に引き込まれるような、視聴中の没入感は恐ろしく高く、同時に映画の世界から脱出しようとするしんのすけに対する感情移入や、「頑張れ!」と応援したくなる気持ちは随一
    「ドラクエ7のダーマ編みたいな感覚」と言えば、伝わる人には伝わるでしょうか。

    そして物語の中盤が過ぎ、映画の世界から脱出する手がかりを掴んだ人々が希望を持つ瞬間のシーンは演出と併せて最高に盛り上がり、その後終盤のド派手なアクションシーンは今までの重苦しさを吹っ飛ばすような激しい戦いの連続で、最後まで目が離せません。




    何よりも本作において語らずにいられないのは「つばき」という少女について。
    彼女は野原一家が映画の世界で最初に出会う友好的な人物なのですが、自分でも「臆病だから」と言う通り、当初は事なかれ主義な所があります。
    ですが、しんのすけと出会い、彼の行動を見ているうちに少しずつ勇気を持ち、助ければ自分も同罪と見なされかねないのを承知で拷問に遭った人を助けたり、映画の世界を脱出するためにしんのすけたちと供に戦う決心をしてゆく……と、ちょっと昔の正統派ヒロインといった感じの人物なのですが。
    なんと、本作ではしんのすけが彼女に対して本気で恋をします

    「オラの花嫁」のレビューの際に書きましたが、しんのすけは頻繁にナンパこそするものの、本気で惚れる事は滅多になく、本編において本気で惚れたのは「ななこお姉さん」一人だけだったはずです。
    そのしんのすけが、それも作中で言っている通り高校生以上のお姉さんでもない、セクシーでもない相手に対して本気で惚れるのは結構な出来事なわけですが、本作ではそれまでの過程がキッチリと描かれているし、つばきの魅力もしっかりと伝わってくるのが「オラの花嫁」との大きな違いです。
    個人的に嬉しかったのは、しんのすけがつばきに惚れたきっかけとも言えるシーンが「ケガの手当てをしてもらった」であること。
    確か原作においてしんのすけがななこお姉さんに惚れたのは「目に入ったゴミを取ってもらった」場面であり、ちょっとシチュエーションが似ています。これを考えると、しんのすけは母性的で優しい人が好きで、特に不意に優しくされるのに弱いという好みが見えてくるんですよ。まあ実際製作側がそんなところまで考えてたかどうかは知りませんが
    いずれにせよ、ただ何となくひろしとの共通点を付けるためにヒロインをみさえに似た方向性にした「オラの花嫁」とは違って、こちらは「しんのすけが選びそうな女性」を描けているし、実際に彼女の魅力もそれだけ描けているので、あらゆる点で雲泥の差です。

    しかしながら悲しいかな、これは映画なわけで。
    しんのすけと彼女が結ばれて、この先ずっと暮らすことになり、今後の『クレヨンしんちゃん』において彼女がずっと出演する」なんて展開で終わらないのは最初から分かっちゃってるんわけですよ。最終的に別れるのは分かりきってるわけです。そして、オチも結構予想がつく内容です。
    なのに、その別れ。そして、別れた後のしんのすけの様子が本当に辛くて、切ないんですよ。
    そしてエンディング映像の演出は悲しいようで嬉しいようで、とにかく胸が締め付けられるようで涙を誘います。

    ギャグらしい要素はほとんど無し、ストーリーはやたら重苦しく、加えて「しんのすけの本気の恋」を取り扱った内容……と、クレヨンしんちゃんの映画としては類を見ないほど異色な作品ですが、それでいて「クレしんらしくない」という感想は不思議と出てきません。
    正直クレしんの映画の中でも特に人を選ぶ内容だと思いますが、刺さる人にはとことん刺さる物語なので是非とも一度見てもらいたい作品です。



    Sランク
    映画史に名を刻むレベルの超傑作。これを見ないのは人生の損

    1位 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲

    ある日、春日部で突然「20世紀博」というテーマパークが開催された。昔のテレビ番組や映画、暮らしなどを再現し、懐かしい世界にひたれる遊園地に大人たちは大喜び。でも、しんのすけをはじめとする子供たちには、ちっとも面白くない。毎日のように夢中になって遊びに行く大人たち…。  そのうちにひろしは会社に行かなくなり、みさえは家事をやめ、しんのすけがひまわりの面倒をみる始末。実はこれは、“ケンちゃんチャコちゃん”をリーダーとするグループの、大人だけの楽しい世界を作って時間を止めてしまう、恐るべき“オトナ”帝国化計画だった!
    何と言うか、もう、この作品に関してはあらゆる場所で語り尽くされているので今更俺が何か書く意味があるんだろうかと思わなくもないのですが。
    1位に挙げておいて何も書かないのはさすがに気が引けるのでちゃんと書きましょう。

    言わずと知れたクレヨンしんちゃん映画の、一般的に言われる最高傑作。「クレヨンしんちゃん映画は大人が見ても感動できる」みたいな風潮を作り出した張本人です。
    で、自分で言うのもなんですが私は結構ひねくれ者なので、世間で評価の高い作品をその通りに1位に持ってくるのは抵抗があるというか、なんか癪だなと思わなくもないのですが、本作に関してはどう頑張っても1位以外に置くのは無理でした。
    まあ1位にするかどうかはともかく、これを最高クラスの傑作として評価しない奴がいるとしたらよっぽど感性がねじ曲がっているか、あるいは典型的な天の邪鬼だと断言しても良いでしょう。


    そもそものところ、本作は物語の構成の時点で恐ろしい完成度をしています。
    本作の全体の構図は「過去VS現在・未来」であり、序盤のうちはそれをもっと縮小した、「大人VS子供」の構図で物語が展開します。
    幼い子供とは、「過去」を持たない存在です。懐かしむほど昔の出来事がない。そんな昔には、まだ自分は存在していません。
    ゆえに大人が昔へ帰りたがる、つまり「現在・未来」よりも「過去」を求めると、必然的に「子供」という存在そのものも否定されます。過去に戻るために、その頃には存在しなかった「子供」なんてものは存在してはいけないためです。
    この「必然的な対立構造」が本作の肝であり、善悪の戦いではないどころか、敵意や悪意自体が存在しなくても、大人にとって子供は相容れない存在と化すわけです。
    「アクション仮面なんかより絶対面白いぞ!」と言って、しんのすけに昔のヒーロー作品を見せるひろしの様子は、その構図を端的に描いていると言えるでしょう。

    一方で、じゃあ子供は大人を否定するのかと言えば、そうではない
    子供から見た大人は「過去の人」ではなくて、「これから自分がなる、未来の姿」の象徴だからです。
    だからしんのすけたち子供は、大人たちとの戦いの中でもバーで大人の真似をして遊んだり、大人の真似をして車を運転して逃げたりする。
    大人VS子供の構図でも安易に互いを否定させるのではなく、子供側は「未来」としての大人を肯定しながら戦っている、というポイントを考えて彼らの行動を見てみると、どれだけ本作が考え抜かれて作られているかが分かると思います。

    いや、まあ、俺が勝手にそう考察してるだけで、実際に製作側がそう考えて作ってたかどうかなんて知らねえんだけどさ。俺にはそう見えたんだよ。

    で、まあ、この先になると野原一家が中心となって、明確に「過去VS現在・未来」の構図に変わってゆくわけですが。
    もう、この先を書こうとしたら「この演出が素晴らしい!」「このセリフが後で効いてくる!」みたいなことを一つ一つ挙げていかなきゃいけないし、ネタバレまみれになる予感がするので書けそうにないです。書くのが面倒になったんじゃないぞ、マジで。

    それで話は変わりますが本作、シリアスな方面でのストーリーが素晴らしいだけでなく、ギャグの質・量すらクレしん映画全体で見てもトップレベルなのが驚異的です。
    子供を捕らえに来た敵組織とかすかべ防衛隊たちの戦いは、もう私が何度も書いている「真面目にやってるのに面白い」展開が息をつく間もなく押し寄せてきて、ひたすらに笑って、気が付いたら後半のシリアス部分に入っている。完成度が高すぎて恐ろしいくらいです。

    出来の悪い所がないどころか、素晴らしくない部分が一つもない。全ステータス最大値の怪物みたいな存在の映画です。良い意味で「本当に地球の人間が作ったのか?」と驚愕するほど。
    クレヨンしんちゃんの映画どころか、私が知る、あらゆる映画の中でも最高峰の完成度を誇る作品です。
  • 映画クレヨンしんちゃん26作品 個人的ランキング ~のんびり楽しむ佳作・良作編~

    2019-12-24 22:41
    Dランク
    あえて薦めるほど面白くはない。とは言え悪いとまでも言わない

    17位 オラの引越し物語~サボテン大襲撃~

    父・ひろしは、メキシコの町に生息するサボテンの実を集めるため、転勤を命じられる。 一家そろっての引越しを決意したみさえやしんのすけたち。 春日部のみんなと涙なみだのお別れ。 そして辿り着いた町の名前は「マダクエルヨバカ」 個性いっぱいのお隣さんたちに囲まれて、楽しい毎日がスタートするはずが… 待ち受けていたのは人喰いキラーサボテンだった~! しんのすけとメキシコのご近所さんたちは、この絶体絶命の大ピンチを乗り越えられるのか?! 町の平和は、しんのすけに託される!
    タイトルを見た時点での期待値は最下位クラスでした。だって引越し物語ですよ。そんな題材で面白くなると思えるか?

    しかしまあ、実際見てみると「酷い」と言うような内容では無かったのですが、あまり面白いとも言えませんでした。
    本作の内容は典型的パニックホラーといった感じで、ひろしの転勤でメキシコに引っ越した野原一家が、町に現れた人食いサボテンを退治する戦いです。
    パニックホラーとしてのツボは一通り押さえている感じで、突如として怪物が現れるショッキングさ、そこからどんどんと絶望的になってゆく状況、しかしそこに一筋の光が見え始め、生き残るために全力を尽くして戦う……と、ストーリー展開自体は十分な出来です。
    ひろしが突然メキシコへの転勤を命じられるという導入は正直強引と言うか、いくら何でも無茶苦茶だろうと思わなくもないですが、まあそこには目を瞑りましょう。

    本作の問題は、それをクレヨンしんちゃんの映画でやったことでしょう。
    だって、パニックホラーと言えば人が死ぬから面白いわけじゃないですか。で、露骨にイヤな奴が出てきたら「あ、こいつ死ぬわ」と予測できるとか、逆に臆病な性格の奴は"ビビり役"として最後まで多分生存するんだろうなとか、そういう楽しみがあるわけですよ。
    じゃあ、それをクレヨンしんちゃん映画でやったとして、野原一家から死人が出るわけがないのは分かり切ってるし、ゲストキャラやモブにしたって、子供も見る映画でそんなにバタバタ死なせるわけがないのは大抵の人が予想できてしまうでしょう。
    で、やはりと言うべきか本作は全員生存オチでハッピーエンド。まあ、そうだよなという感想しか出てきません。

    正直本作で一番面白いのは、風間くんの扱いがどう見ても純愛漫画のヒロインみたいな立場になっていることです。
    しんのすけが春日部を離れ、会えなくなってしまうことに人一倍悲しみ、落ち込み、強がり、会えなくとも絆は消えないことを主張する。
    ラストでは他のかすかべ防衛隊を差し置いて彼一人だけが「しんのすけが帰ってくる知らせを受けて喜ぶ」というシーンを貰っています。
    まあ確かに、かすかべ防衛隊で一番しんのすけに対する依存が強いなのは彼だと思いますが、彼だけが飛び抜けてしんのすけに執着しているような様子は下手なギャグより面白いです。


    16位 爆発!温泉わくわく大決戦/ 映画クレヨンしんちゃん クレしんパラダイス!メイド・イン・埼玉

    悪の科学者“ドクターアカマミレ”率いる「YUZAME」は、地球を温泉で沈めてしまう“地球温泉化計画”を実行に移そうとしていた。それを阻止できるのは、世界の温泉の平和を守る秘密組織“温泉Gメン”だけ。  温泉Gメンは、「YUZAME」に対抗するため、不思議な温泉パワーを秘める伝説の“金の魂の湯”(きんたまの湯)を探していた。そして、ようやく探し当てたきんたまの湯は、なんと野原家の地下にあった! ------------- 「野原刑事の事件簿」/「ひまわり あ GOGO!」/「ふしぎの国のネネちゃん」 「ヒーロー大集合」/「私のささやかな喜び」/「ぶりぶりざえもんのぼうけん 銀河編」  6作のコントあり、ミュージカルありの短編。
    「2本立て」とは言っていますが、後者はちょっとしたギャグ短編集で、全部合わせても10分程度なので良くも悪くもオマケ程度です。
    メインとなるのは前者の「爆発!温泉わくわく大決戦」の方なのですが、非常に地味な作品。

    冒頭のしんのすけが見知らぬおっさんと何故か風呂に入るシーンは色々とシュールでインパクト抜群なのですが、正直それ以外に目立って印象的なシーンがありません。
    全体の内容はあらすじ通り、温泉嫌いの敵組織との戦いを描いたもので、敵の正体は序盤に明かされるし、以後はひたすらその敵と戦い続けるだけの内容のため、今一つ起伏に乏しい。
    町が侵略されていく絶望感の表現はクレしん映画全体で見ても強く描かれている方ですが、「金の魂の湯を手に入れれば勝てる」と結構序盤から言われているので、まあ普通にそれで勝つのは予想できちゃいますし。「どうやって勝てばいいんだ?」みたいな絶望感は実際それほど強くありません。

    あと、温泉が題材という都合上「お約束」といった感じでお色気系のネタが結構多めなのですが、本当に「よくある定番ネタ」な内容なので面白くはありません。
    酷くダメなわけではないんですが、どうにも全体的にパッとしない作品。


    15位 ブリブリ王国の秘宝

    オラ、野原しんのすけ。こんどはオラが南の島のブリブリ王国で大活躍!!  福引きで当たった海外旅行、オラとかあちゃんととうちゃんでおバカンスーと思ったら、ホワイトスネーク団て悪いやつらの罠だったんだ。変なオカマにオラが誘拐されて、オラにそっくりのスンノケシ王子なんてのに会わされて、最後はブリブリ魔人が出て、もー、みんな見ればー!
    個人的に一番語るところがない作品。
    フツーにそこそこ面白くて、フツーにそこそこ盛り上がって、フツーに終わった。そんな感じです。
    しんのすけとそっくりな「スンノケシ王子」との出会いについても、まあ描写不足がない程度には描いているけど、すごく良く設定を活かしていると言うほどでもなく。
    秘宝や魔神といった要素についても、まあ定番と言えるものを順当に押さえた感じ。
    良くも悪くもひたすら普通、という感想しか出てこない。ある意味では逆に特徴的かもしれません。




    Cランク
    そこそこいい感じ。少なくとも見て損はしない

    14位 暗黒タマタマ大追跡

    かつて暗黒魔人ジャークを封じ込めた埴輪と、ジャーク復活のカギとなる2つの“タマ”--。  --今、その“タマ”をめぐって、世界征服を企むホステス軍団と、それを阻止しようとするオカマ3兄弟の対決が始まった! “タマ”の1つをひまわりが飲み込んでしまったため、争いに巻き込まれたしんちゃん一家が東日本をまたにかけ、所狭しと駆けめぐる!!  銀座のクラブのママ玉王が率いるセクシーなホステス軍団に、世界一強~い男ヘクソンが加わって今度の敵もパワフル&パワフル!でも、絶対負けられないゾ!
    ホステス軍団とオカマ3兄弟という、やたら濃い面子が目に付く一作。
    内容は大半がギャグですが、それに加えてしんのすけが「兄」としての覚悟を持つとか、かと思えば「何だこりゃ、"ジブリ"か!?」と思わされるような粛然とした戦闘も存在したりと、節操がないと言えるくらい様々な要素を取り入れた意欲作。

    ヤキニクロードとは違って本作ではギャグ要素のある敵、無い敵が明確に分けられており、その点でギャグとシリアスの乖離を可能な限り抑えているし、シリアス部分にも明確な破綻は特にありません。
    そのため全体的なクオリティはなかなか安定しているのですが、最大の不満は終盤の盛り上がりに欠けること。
    中盤~終盤であれだけシリアスな戦闘をやったのに、最後はギャグと肩透かし展開で終わりなので若干のモヤモヤ感というか、尻すぼみな印象が付きます。
    十分面白いんだけど、だからこそ不満点も目立つ。そんな映画でした。


    13位 襲来!!宇宙人シリリ

    ある夜、突然野原家に宇宙人がやってきた。その名もシリリ。 シリリの謎のビームでひろしとみさえは25歳も若返り、こどもの姿になってしまった。 大人にもどるため、こども野原一家は、シリリをしんのすけのシリに隠し、 ニッポン縦断の旅に出ることに… しかしその裏ではシリリの父親が企む<<巨大な陰謀>>が進行していた!! 果たして野原一家は、地球のピンチをすくうことができるのか!? そしてもとの家族の姿にもどることができるのか!?
    「頭が尻みたいな形をした宇宙人」なんてバカげた絵面から、どうせひたすら下らないギャグなんだろうな、と思って見てみたら、予想に反して中身はかなりシリアス寄り。
    地球で孤立状態になった宇宙人シリリが慣れない環境で恐怖・苦心しつつも、しんのすけとの出会いを通じて今までの価値観を改めたり、友情を築いてゆく……と、題材のツボをキッチリ押さえた、驚くほどまともな展開。

    最初のうちは地球、及び地球人を露骨に見下していたシリリが、いつの間にかしんのすけと仲良く旅をしながら「地球って楽しいなあ!」と言うくらいに変わってゆく様子は見ていて気分が良くなるし、そこまでの過程も過不足なく描けています。

    ただ、エンディング後のオチ部分に明らかな描写不足が存在するのは考えもの。
    せめて「お父さんは反省した」とか、そんな感じの台詞が一つでもあれば綺麗に終われてたのに、と思うと非常に惜しい。


    12位 アクション仮面VSハイグレ魔王

    オラ、のはらしんのすけ!オラがチョコビで当てたカードを使って入場した「アクション仮面アトラクションハウス」で乗り物に乗ったら、一家そろって異次元世界に来ちゃったゾ!!  そこでは、ハイグレ魔王っていうおかまのおねいさんに、み~んなハイグレにされているんだ!ハイグレ魔王とその手下の悪いヤツらをやっつけるには、なんとかしてアクション仮面をよばなくちゃ!よ~し、アクション戦士に選ばれたオラもいっしょに戦うゾ!!
    記念すべきクレヨンしんちゃん映画の第1作目です。
    さすがに古いだけあって、しんのすけたちの絵柄も現在とは結構違っており、さらに風間くんがスネオ的なキャラ付けだったりと、時代の流れを感じられます。

    内容は非常に王道で、しんのすけがアクション仮面と共に悪の「ハイグレ魔王」を倒す、というもの。しかし王道ながら地味ではなく、日常が非日常へと変わってゆく流れの雰囲気はよく出ているし、何よりハイグレ魔王のキャラの濃さが印象的。
    青肌で赤髪のモヒカン、後ろ髪は三編みにしたレオタード姿のオカマなんてデザインの時点でトチ狂っていますが、やっている事はキッチリとした悪のボスだし、終盤のアクション仮面との剣戟のシーンになって激しく動いているところを見ると、何だか普通にカッコよく見えてきたりするのがまた面白い所。

    強烈にパンチの効いた部分があるわけではないものの、全体的にしっかり作られていて楽しめる作品。


    11位 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~

    春日部にある中華街、≪アイヤータウン≫。マサオの誘いで伝説のカンフー、ぷにぷに拳を習うことになったしんのすけたちカスカベ防衛隊は、カンフー娘・ランとともに修行に励んでいた。一方アイヤータウンでは、謎のラーメンが大流行。その名も・・・“ブラックパンダラーメン” 一度食べた人はヤミツキになり、凶暴化してしまうおそろしいラーメンだった!突然襲ってきたラーメンパニック!アイヤータウンを救うため、カスカベ防衛隊が立ち上がる!!果たして彼らは、街の平和を取り戻すことができるのか!?
    カンフー「ぷにぷに拳」の習得、その中で落ちこぼれてゆくマサオくんの問題、一方で暗躍する敵組織、そして新たに発生する事件……と、多角的にストーリーを進行させつつ、しっかりとまとめ上げた優等生的な作品。

    とは言え不満点もそこそこあって、「ネタ」は多いけど「ギャグ」は少ないとか、正直あの程度の見せ場しか無いならマサオくんをあそこまで露骨に落ちぶれさせる必要はなかったんじゃないかとか、ラストは少々ご都合主義感があるとか、文句を言い始めると結構出てきます。

    あと、強烈に印象に残っているようなシーンが特にありません。そこそこ面白かったはずなんですが、語る部分には困ります。ストーリーは丁寧に作ってあってしっかり面白かったはずなんですけど。うーむ。

    10位 雲黒斎の野望

    「おおっ、シロがしゃべった…!」未来の30世紀からやってきたタイムパトロール隊員のリングが、シロの体を借りてオラに話しかけてきたんだ。悪いヤツが時間をこえて、過去を変えようと企んでるって!人類の大ピンチ!!  そんでもって、オラが人類をオタスケするっていうワケ。敵は雲黒斎(うんこくさい)なんてとーってもにおいそうなヤツだゾ~ ”タスケテケスタ”の呪文でオラが3回大変身!? カンタムロボも活躍するゾ!!
    本作の見所は、何と言っても終盤の怒涛の展開です。
    「雲黒斎」を名乗る敵の妙に印象的なキャラクター性、それに対し、未来の力で一時的に大人の姿に変身したしんのすけの戦闘シーンはビックリするほど普通にカッコよくて、まばたきする程度の暇すらありません。
    そしてさらに、本作ではその後に大きなどんでん返しの展開が待っており、終盤の面白さだけで言えばクレしん映画でも5本の指に入ると思います。

    で、こんな書き方をした時点で分かると思うんですが、前半部分は正直言ってつまらないと言うか、ひたすらに地味なんですよ。
    戦国時代が舞台という時点で大体武士の戦い以外やる事がないんですけど、本作は敵の居城に到着するまでの「移動」がひたすらに長い。歩いて、戦って、歩いて、休んで、また歩く
    敵の部下との戦いも、まあ一応未来の力で変身したしんのすけが戦いをかき回す部分もあるのですが、基本的にはリアルな時代劇らしい渋い戦いで、退屈なわけではないのですが派手さには欠けます。

    あと、非常に印象的なのは本作中で、しんのすけが生身の人間を二人殺していること。
    「やっつけた」じゃなくて、どう見てもマジで死んでます。さすがに直接斬ったり突いたりしたわけではないんですが、せめて何かしらのフォローと言うか、殺さずに無力化するような内容にはできなかったのかと思います。

    ついでに個人的に印象深いのは吹雪丸のである雪乃
    彼は見た目は完全に女性、声優も女性なのですが、性別としては男、という「オカマと言えば大体おっさん」なクレヨンしんちゃんにおいて非常に稀有な人物です。
    そして彼について「生まれながらに自分を女と思い込んでいて、直らない」と異常者みたいな説明がされるのですが、性同一性障害への配慮とかが騒がれるようになった今の時代じゃ絶対出せないキャラだよな、と思うと何だか時代の移り変わりを感じます。





    Bランク
    ファンなら迷わず見るべき。ファンじゃなくても間違いなく楽しめる

    9位 電撃!ブタのヒヅメ大作戦

    オラ、のはらしんのすけ5才。またまた地球の大ピンチだゾ!!  時は現代。世界征服をもくろむ秘密組織“ブタのヒヅメ”は、電子工学の天才・大袋博士とその助手アンジェラ小梅をだまし、恐ろしいコンピュータウィルスを作り出した。それを知った正義の秘密組織“SML”の一員、コードネーム〈お色気〉は、機械を動かすために必要なパスワードが入っているトランクを盗み、お台場の海に逃げ込んだ。彼女が救いを求めて転がり込んだ屋形船では、なぜかふたば幼稚園の先生としんのすけたち園児が、大宴会中だった!?  巨大飛行船を舞台に、“SML”の一員’お色気’と春日部防衛隊のみんなも地球の平和を守るために大活躍だゾ! 父ちゃん、母ちゃんもひまわりを連れてオラたち救出のために立ち上がった!よ~し、おバカ・パワー全開だぁ!!
    ジャケット画像のしんのすけの目がやたらとでかい。

    確か、私が最初に見たクレヨンしんちゃんの映画がこれだったと思います。当時は小学生くらいだったと思うんですが、シリアス・ギャグ双方で楽しめたのを覚えています。
    本作のストーリーの中心は「世界征服が可能なほどの凶悪なコンピューターウィルスを巡った、2つの組織の戦い」であり、当たり前のように銃が登場する緊迫した内容です。
    シリアスな部分だけ見れば息が詰まりそうなくらいにハードなのですが、随所に込められたギャグ要素がそれを感じさせません。
    以前語った「真面目にやってるのに面白いのがクレヨンしんちゃんの良さ」という考えを形成したのが、この作品と言えるかもしれません。

    ぶりぶりざえもんにスポットが当たっているのも今となっては珍しい要素で、彼が「小心者で裏切り者、でも根はいい奴」というキャラクター性を確立したのも、おそらく本作によるものと思います。

    どこを見ても良く出来ているのは間違いないんですが、強烈に印象に残る要素がやや薄いのでこの順位に。



    8位 ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん

    ある日、ギックリ腰を治しにマッサージに行ったとーちゃん。 そしたら…なんと、ロボットになって帰ってきた!? ロボットになったひろしに戸惑うみさえと大喜びのしんのすけ。 美味しい料理を作ったり、家をピカピカにしたり、リモコン操作もできる“ロボとーちゃん”は、ちょー便利。 しかしそれは、家庭での立場がすっかり弱くなってしまった日本の父親たちの復権をもくろむ、 父ゆれ同盟(父よ、勇気で立ち上がれ同盟)による巨大な陰謀だったのだ! 正気を失った父親たちによる“父親革命”が勃発し、野原家も春日部も崩壊寸前!! その時、“ロボとーちゃん”がしんのすけと一緒に立ち上がる!! はたして、野原一家の、そしてロボひろしの運命は!? 今、日本中の家族の愛が試される!
    公開当時、本作は結構話題になっていた記憶があります。
    本作の出来が良いのもそうなんですが、これより前の作品が駄作だらけだったこともあって「クレしん映画の暗黒期を抜けた」と、象徴的に語られているのを目にしたりもします。

    本作はタイトル通り、「ロボとーちゃん」をめぐる要素が最大の見所で、「自分を"自分"たらしめているのは何か?」という哲学的な要素すら含んだ、非常に印象的な展開が待ち受けています。
    「ロボとーちゃん」をあっさり受け入れるしんのすけと、そうそう許容できないみさえの対比、そして「ロボとーちゃん」自身の考えの変化など、個々の人物の心象の一つ一つが効果的に表現されており、そして最後の展開に繋がってゆく……と、ストーリーに込められたメッセージ性の強さ、それに対する演出の強烈さもあって、視聴時の没頭感はトップクラス。

    ただ気になるのはメッセージ性を意識しすぎたと言うべきか、少々人物の台詞や行動にわざとらしい部分、明らかに伏線のためにやっているのが分かる部分があること。
    若干ながら「狙いすぎ」と鼻につく場面もあるので、手放しで称賛しきれない部分もありました。

    それから、いわゆる「中の人ネタ」がクライマックスのシーンに思いっきり入ってくるのは大問題。はっきり言って邪魔でしかありませんでした。
    クレしん映画において「流行りの芸人ネタ」が取り入れられ、恒例となったのは結構前の作品からですが、本作のそれは最悪に近い内容でした。これが無ければワンランク上に置いても良かったくらいなんですが。


    7位 嵐を呼ぶジャングル

    “嵐を呼ぶ園児”しんのすけ、妹のひまわり、父ちゃんひろし、母ちゃんみさえのおなじみ野原一家は「アクション仮面」最新作の完成を記念した豪華客船ツアーに参加していた。南の島に近づき、いよいよ待ちに待った船上試写会が始まった。  と、突然、会場に謎のサル軍団が現われ、あっという間に父ちゃん、母ちゃん、大人達そしてアクション仮面がさらわれてしまう!船に残されたのは子供たちばかり。呆然とするしんのすけと仲間たち。  しかし、しんのすけはアクション仮面の活躍を思い出し、風間くん、ネネちゃん、マサオくん、ボーちゃんの“カスカベ防衛隊”で勇気をふりしぼって大人達を探しに行く。島に上陸するが、進んでも進んでも大人たちは見つからない。
    個人的にこれも視聴前の期待値が低かった作品です。
    だってジャングルですよ。密林の中で自然や獣と戦う以外に何やるんですか。

    実際、本作の中盤ごろまではジャングル内でのかすかべ防衛隊の冒険が中心です。
    で、まあ予想通り大自然や野生動物と出会ってのドタバタとしたコメディが中心なのですが、その内容はキャラクターの個性がしっかりと出つつもギャグとして十分楽しめるもので、予想通りながらも予想外と言うべきか、存外に高評価。
    個人的に好きなのは、滝から落下したしんのすけがひまわりを守って、水底に頭をぶつけるシーン。
    これが、いかにも「ひまわりを守ってあげました」感を出したシーンだったら「ああ兄弟愛をアピールしたいのね」なんて考えてしまって笑えないんですが、本作では「ひまわりを抱いたしんのすけが無言で水底に頭をぶつけ、巨大なタンコブを作って浮かんでいく」という描写をしており、絵面としてはひたすらシュールで面白いのに、ひまわりを守ってやるしんのすけの優しさもしっかり感じられる、一粒で二度美味しいシーンになっています。

    全体的に本作のギャグは、いかにも「ほら、今が笑いどころですよ!」とアピールしてくる感がなくて、面白いのに、それをサラッと流している点が好印象です。
    しんのすけとひまわりが猿の警備を欺くために猿の顔真似をするシーンなんかもお気に入り。




    しかし何と言っても本作の見所は後半部分、ボスのパラダイスキングが登場してからです。
    紫の巨大なアフロ頭、星型のサングラス、やたらと股上の浅いズボンなど尋常じゃないファッションの彼ですが、シリアスとギャグが絶妙に混在したキャラクターで、個人的にはクレしん映画の悪役の中で一番好きなキャラです。

    こんなバカげた見た目の上、初登場シーンが立ちションなんて奇怪な登場をするくせに、アクション仮面と対峙した際の台詞、

    「まともじゃ王様は務まらねぇ。王様ってのは欲張りで!気まぐれで!残酷で!」

    「……退屈してるんだ」

    この部分は本当に、正統派少年漫画の大物悪役が口にしていても違和感がないような言葉で、彼の王としての価値観、主義が見えて最高にカッコいいです。
    それに加え、いざアクション仮面との戦闘になると純粋な格闘戦でアクション仮面を圧倒するほど強いし、格闘戦における動作の一つ一つにパワフルでワイルドな悪役らしさが見て取れ、見れば見るほどにひたすら印象的。

    一方のアクション仮面も、観客たちの熱い応援を受けて劣勢を跳ね除けパラダイスキングを追い込み、終盤ではしんのすけとの共闘で勝利と、こっちはこっちで十分にカッコいいのが素晴らしい。

    全体で見るとギャグとシリアスが8:2くらいで、バトルシーンの最中にも頻繁にギャグが挟まるのに、戦いの緊迫感を削ぐこともなく見事に調和しています。
    ひたすら楽しく、結構気軽に見られるのに、シリアスな場面の面白さ、そして悪役キャラの魅力も最高な傑作です。


    6位 バカうまっ! B級グルメサバイバル!!

    これは、ある春の日、春日部で起こった奇跡と友情と空腹の物語である。 グルメの祭典“B級グルメカーニバル”へ向かう、しんのすけたちカスカベ防衛隊。 途中、謎の女性・紅子に出会い、「このソースを会場に届けてほしい」と壺を託される。 そのソースは“B級グルメ”を滅ぼそうとする秘密結社“A級グルメ機構”の企みを阻止することができる“伝説のソース”だった! そんな大事なソースとは露知らず、のんきにソースを運ぶカスカベ防衛隊。 しかし、そこへ、ソースを奪おうとするA級グルメ機構の刺客たちが次々と襲い掛かる。 不安と恐怖と空腹で、しんのすけたちカスカベ防衛隊は、ついに仲間割れをしてしまう…! はたして、カスカベ防衛隊の友情の行方は!? そして、無事にソースを届け、B級グルメを守ることができるのか!?
    これも視聴前の期待値は凄まじく低かった作品です。
    B級グルメなんて題材でどうやって面白くするんだよ、と思った部分もあるし、何より本作の前が8作くらい連続で駄作でしたからね。「暗黒期」なんて言葉が作られたのは伊達じゃないです。

    しかし本作、蓋を開けてみればその中は古き良きクレヨンしんちゃんのノリを受け継いだ、質・量、共にトップクラスのギャグの嵐のような内容。
    ギャグ中心のクレヨンしんちゃん映画の傑作」という言葉を使うなら、私はこの作品を選びます。
    本作の中心はかすかべ防衛隊で、当然そのメンバー内のやり取りもありますが、何よりも注目すべきは本作の敵、A級グルメ機構との戦い。私が思う「クレヨンしんちゃん」という作品の魅力である「絵面として面白くて、でも同時に敵を出し抜くしんのすけや野原一家、かすかべ防衛隊たちのしたたかさ、あるいはカッコ良さが楽しめる」内容でガッツリ占められており、ドタバタとして、バカげていて、どこかシュールで、だけど感心できたりもする。「こういうのが見たかった」という場所を的確に押さえた内容です。

    シリアスっぽい要素も無くはないのですが、敵キャラの背景設定および動機を軽く語る程度で、無駄に尺を取ったり、ギャグの邪魔をするほど重苦しくなることもありません。
    そして、ラストのシーンでは「ちょっといい話」くらいで終われる程度のまとめ方をしており、変に感動を煽ってきたり、説教臭くなることもない。
    とにかく、ギャグを楽しみつつ映画としてのストーリーを持たせるにあたっての必要十分を的確に掴んでおり、ひたすら笑って、最後には気分良く見終われる。見事な構成です。
    ぶっちゃけ題材のB級グルメは焼きそば以外ほとんど無関係なんですが、面白いから良いでしょう。




    5位以上の作品は次回。