ディベートを覚えた猿 後書きの後書き
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

ディベートを覚えた猿 後書きの後書き

2020-03-21 20:11
    一年半くらい前に書き始めたディベートの小説の投稿が完了して一ヶ月ほどが経ちました。

    投稿の最後に後書きを掲載したのですが、その際に「こんなことまで書かなくてもいいか」と思って削った部分が結構あったので、今回はそれを書こうと思います。
    「この場面ではこんな事を考えていた・こういう意図があった」といった、まあ裏話的なものです。

    当然小説の内容に言及する以上、この記事は上記の小説を読んだ人向けの内容になるのですが、アクセス状況を見た限り最後まで読んだ人は大体10人くらいしかいません。その上でこんな記事を読む人なんて多分地球に3人くらいしかいないと思うのですが、逆に言えば読む人が3人くらいはいると思うので自己満足も兼ねて書きます。

    小説の内容が気になる人はこの記事より前に読んでください。(冒頭の太字部分がリンク)
    世間一般的に見て面白いかどうかはともかく面白いって言ってる人はいるぞ!(ものすごく微妙なアピール)


    ○執筆のきっかけ
    大雑把な動機は「ディベート物と恋愛物が両方書きたかったのでミックスした」程度なのですが、実際に執筆に至ったきっかけは当時どこかのニュースサイトで「憲法9条についてディベートする美少女ゲームがある」という記事を見かけたことです。
    何だそりゃ!?と思って件のゲームについて調べてみたところ、その内容はよくある「間違ったディベート」で、ルールも何もなく自分の意見をひたすら相手にぶつけ合う「ただの口論」でした。
    それで「こんなもんと比べたら俺の方がまだ面白いもん書けるわ!」と考えてtwitterで「ディベートの小説を書きたい」みたいな発言をしていたら、「ディベート」という単語を拾ってきたらしき界隈の人物からそこそこの反響があり、モチベーションが上がると同時に逃げ道を奪われていきました。

    結局どうなったかと言うと見ての通りで、実際に「ちゃんとしたディベート」を描くに当たっての困難に直面し続けるうちに手が止まりがちになり、最終的に書き上げて投稿したのは最初の宣言から一年半後。当初に「期待してます!」と言っていた人の中で私のことを覚えている人が一人でも残っていたんでしょうか?
    最終的にしっかり完結まで書き上げられたのでそういった意味ではマシですが、色々とボロボロでした。


    ○主要人物

    ・水島渚
    おそらく当初の構想から最もマイナス方向に変化した人物です。
    当初はディベートの実力が全国トップクラス、部の指導者・管理者としても優秀な完璧超人みたいな設定でした。それが崩れたのはディベートという競技の構成上の問題です。
    基本的に全員で原稿を作り、練習した上で試合に挑む競技という都合上、まとめ役の部長が優秀すぎると主張・原稿作成時点でのミスは描けなくなるし、試合中のアドリブ面についても毎回部長に指示を仰ぐのが最適解になってしまうため、他の部員の活躍が非常に描きにくくなるのです。
    その対策としていくつか案を考えた結果、「部長も最初はそれほど強くない設定にして、主人公たちと一緒に成長していく」という形にするのが一番妥当だと判断、現在の形になったのですが、後になって読み返すと多分彼女が部内で一番メンタルが弱くなっていたと思います。

    太陽の喩えに対する「一日の半分は沈んでいる」は、そんな彼女の象徴みたいな台詞になりました(この言い回しはちょっと面白いので気に入っている)。


    ・鹿野島夕那
    前述の通り本作の執筆を明確に決めたきっかけは美少女ゲームへの対抗意識みたいなものだったので、本作も当初は「美少女ゲームのシナリオ」のような内容で構想していました。主人公以外の部員が全員女子なのはその時の名残で、18禁要素まで入れる予定がありました。
    彼女はその頃に「18禁方面で積極的なキャラが欲しい」と考案したキャラクターなのですが、見ての通り実際に執筆した頃には18禁要素を撤廃したので、その時点で完全に存在意義を失っていました。

    それで、当初の構想では主人公と渚がくっつく予定だったのですが、渚が当初の構想よりも色々と能力を引き下げられたこともあり、「主人公と夕那をくっつけて、渚をフォローに回らせた方が夕那の存在意義と渚の精神的成長を両方描ける」と考えたことで急遽メインヒロインに昇格。結果的に恋愛部分とディベートを繋げる橋渡し的な立場も手に入れることに。
    今となっては「エロ用キャラ」で終わらせなくてよかったと心底思います。


    ・天王寺秋華
    東龍の部員の中では構想が最後になったキャラです。
    最低一人は主人公の同級生が欲しい、同級生を出すなら主人公の相棒あるいはライバルのような肩を並べて戦うキャラが良いと考え、最後まで残った案が「お嬢様系」と「ヤンキー」の2つだったのですが、部内にテンションが高めのキャラの不足を感じていたこと、主人公と言い合いをさせるにあたって好戦的なキャラの方が都合が良いことでヤンキーが採用されました。

    しかし序盤のうちは台詞を書いていてもいまいちしっくり来ず、一時期は一人称を「オレ」にしようかとかなり本気で悩んだこともあるくらいキャラクター付けが迷走していたのですが、最終的には「短気で勝負好き」という個性で一番キャラが明確になっていた気がします。


    ・三上真勇
    話をする部であれば、話すのが好き・得意なキャラクターを出すのは当然として、逆に「話下手を克服したくて入部したキャラクター」も必須だろうと考えて登場させたのが彼女です。
    しかし本当にただの「おとなしい後輩」では面白くない、と考えて色々と改造していった結果があれです。モノローグやキャラクター固有のイベントシーンみたいな部分は書いていて一番楽しかった記憶があります。

    競技の制約上、試合におけるキャラクターの個性が出しづらい中、彼女は珍しく「質疑で相手の急所を突いて仕留めるのが得意」という結構明確な個性を持っていたのですが、途中で「質疑で反駁やっても次の反駁で同じこと言うだけだから無駄じゃね?」と気付いたため、その希少な個性が早々に否定されることとなりました。
    「スタンドプレーをやめてチームのための戦いを考える」という成長も定番と言えば定番だと思いますが、いわゆるマンガ的な面白さとしては初期の方針のままの方が良かったかもしれません。


    ・猿渡雄一郎
    いわゆるゲームの主人公的な無色透明なイメージにするか、ラノベ主人公のようにがっつりキャラクター付けするかで散々悩まされた人物。最終的には後者に近くしたと思うのですが、読者からの印象はどうなのか分かりません。
    彼の名前や「テニス部全員半殺し」は初見の人へのインパクトを与えるために考えたのですが、結局内容が渋い議論の連続なのであまり機能していませんでした。
    一応爆発力と言うか、スイッチが入った時の行動力は高いキャラクターとして描けたと思うので、その点で一貫させられたとは思います。


    ・鹿野島小夜
    夕那に関する掘り下げ要因として登場させたキャラクター。
    夕那の悩みのタネとして登場させつつ、小夜に悪印象を持たれないようなキャラクター付けを狙っていたのですが、良くも悪くもかなり地味になった印象があります。
    非情にどうでもいいことですが、彼女が髪を一つに縛っているのは二つに縛っている夕那の妹として印象付けやすくするためでした(これも地味だ)。



    ・木戸川麗沙
    彼女だけ扱いが大きいのは渚との関係もあるのですが、「美少女ゲームで言うところの隠しヒロイン」のような立場としてデザインしたためです。
    彼女と渚の関係は結構序盤から最後まで引っ張るわけですが、最後の試合の後に長々と悩み解決のエピソードを入れるのは避けたかったため、描写としてはかなりあっさり終わっていたと思います。同じメッセージが2通届く場面は結構気に入っているんですが。

    試合では一応作中最強格の人物なのですが、そもそもフルに実力を発揮している場面が実質1戦しかないので強そうなイメージを与えられているかに関しては正直かなり微妙だと思います。
    と言うか主人公側の主張に明確な穴を作ってやらない限りは致命的な指摘ができないし、かと言って誰でも気付くような穴を指摘させても強そうな印象は付かないし、「特別頭が良さそうに見せる」というのが絶望的に難しかったのでテンプレを忠実に守らせるくらいしか強さの表現ができなかったような所はあります。苦しい。


    ・泉水直樹
    チンピラっぽいのに試合では冷静、みたいなギャップを狙ったキャラとして出したような記憶があります。とは言え質疑のパートがやや短いこともあって印象的な相手になっているかと言うと今一つな感がありました。
    「質疑で無理に相手を潰そうとするな」と指摘する辺りが彼の全盛期だったような気がします。実際の経験者から見ても正しい理論なのかは分かりませんが。


    ・比嶋連理
    天王寺のキャラクターに「ヤンキー」を採用した際、余った方の「お嬢様系」を流用してきたのが彼女です。その名残で「メガネを取ると実は天王寺と顔がそっくり」という設定があって、天王寺と入れ替わって主人公をからかうイベントなんかも構想していたのですが、ゲームの自由イベントならともかく小説のストーリーに組み込む必要性が皆無だったので削られました。
    しかし彼女も麗沙と同じくテンプレを守ることが強さ表現、みたいな人物なので何か一つくらい印象を強められるようなイベントを用意しても良かったかもしれません。


    ・八木拓馬
    彼の登場は王麟の他の3人よりも後ですが、実際キャラクターとして考えたのも最後でした。
    他の3人が揃いも揃って人格に難がある人物になっていたので、クッション役になるようなキャラクターとして考案しました。実際には挑発的な言動も時々していた気がしますが。
    実際上手いかどうかは知りませんが、彼の立論パートは2回とも「ちゃんと上手な立論をやってる感」が出せた気がするので個人的には結構気に入っています。



    ・菅孝
    鳳南高校自体、東龍や王麟と比較して後者の強さを際立たせるための存在、つまるところ完全な噛ませ犬なのですが、ある程度まともに戦ってくれないと噛ませ犬にもならないし、かと言って鳳南に苦戦しすぎると東龍や王麟の格が下がる、と難儀な立場にいました。
    その中でも、3戦中2戦の試合描写をカットされた彼が間違いなく最大の被害者だと思います。
    「鳳南の中では一番上手い」という個性もギャグ的な方向に活かせないため扱い辛く、第二反駁自体が第一反駁の繰り返しみたいな内容になりがちなこともあって、完全に「わざわざ描写しても面白くない」立場と化していました。無情。


    ・大林平蔵
    真勇に殺されるために出てきているような人。
    ぶっちゃけ鳳南の中でも一番地味だったと思います。


    ・川上志門
    ・茶谷雷太
    ダメな二人。彼らに限ったことではないのですが、とにかく負ける側の「リアルなダメさ」を出すためには最初から最後まで難儀しました。
    「そもそも勝敗に納得がいかない」なんてことは最も避けるべきことですが、一方で露骨に負けさせるためにミスを描いているのが読者にバレバレになっても面白くないわけで、負けが納得できるように描きつつもミスにわざとらしさを感じさせないよう、「自分で執筆しながらも見落としかけていた点」は積極的に作中に取り入れていきました。



    ○物語の構成に関して
    そもそも本作では、一応は全国大会まで出ているはずなのに対戦を描かれている学校が主人公たち含めて実質3校しかないわけですが、これも競技に対する苦肉の策でした。
    本作の執筆を開始した時点で、長い試合だと2万字くらいの文章量を取られることを見越していたため、ストーリー全体を通して描ける試合数は部内の試合等も含めて10試合くらいが限界だろうと考えており、大会において4試合も5試合も描く余裕はとても無かったのです。

    一方で、競技物としては「因縁の相手」は絶対に必要だろうし、初対面の相手とひたすら対戦をさせるのも望ましくない。そうして考えた結果があの形です。
    また、二度目の大会を非公式なローカル大会にしたのは、いくら何でも優勝常連校に対して経験の浅い主人公たちが普通に公式大会で勝利するのは無理があると思い、「公式とは判定基準が異なる大会で」「一か八かの策が上手く当たり」「相手がミスをする」くらいに条件が重なった上でギリギリ勝利するくらいが妥当だろうと考えたためでした。

    特に最後の試合に関しては、やはり最後らしく特別な試合にしたかったのであのような形になったのですが、多分公式の大会じゃ絶対に認められないような手なので、そういった意味でも架空のローカル大会を作った方が都合が良いものでした。


    本作はどちらかと言えばディベート経験の無い人向けに書いたつもりでした。
    と言うのは単純に自分に競技経験がないため、経験者向けに書いたところで絶対ボロが出るだろうと考えての逃げの思考が主だったのですが、単純に間口を広げたい意図も大いにありました。
    そのため専門用語についてはできるだけ意図的に減らして汎用的な言い回しに置き換えているほか、堅苦しい論題の渋い議論ばかりにならないように緩めの論題を取り入れてみたりと、色々と自分なりに工夫をしてみました。
    最初の試合の「消費税率100%」はその最たるもので、無理難題に対してどう立ち回っていくのか、と読者を引きつけるために設定したものです。

    ……なのですが、結局のところディベートに全く興味のない人がこんなタイトルの作品をそもそも読むわけもなかったようで、引きつける以前にアクセス自体が全然伸びませんでした(以前に練習として書いたファンタジー物よりも少ない)。
    そして各話へのアクセスを見ても、犬VS猫や「ドラえもん」に関する論題の方がよっぽど多い始末で、この「消費税率100%」については完全に狙いを外していました。
    内容が内容だけに大ヒットは期待していなかったし、何なら経験者からボロカスにこき下ろされることも覚悟の上で投稿したのですが、実際には批判すら来ないままインターネットの海に沈んでいきました。ただ、感想を下さった方がゼロではなかったのが本当に救いです。

    確か私が投稿する前に探した範囲だと、「小説家になろう」においてディベートを題材にした作品で完結まで書かれた長編は一件も存在していなかったはずなので、現実のルールに則ったディベート作品としては多分オンリーワンです。
    そろそろ一日のアクセス0件が当たり前になってきたのですが、そのうち忘れた頃に誰かがこれを発掘して、ちょっとでも面白いと思ってくれたらいい。
    今はそう考えています。


    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。