TVアニメ「 さくら荘のペットな彼女 」エンディングテーマ「 DAYS of DASH 」
落ち込んだ時は鈴木このみさんの『DAYS of DASH』を聞いて、自分を励ましています。

『さくら荘のペットな彼女』は、そのタイトルや「自分じゃぱんつもはけない。そんな天才少女の“飼い主”になりました。」というキャッチコピー、そして、アニメ第1話を見た印象など、全てが「ありがちなハーレムアニメ」であることを示していました。しかし、第2話、第3話と視聴して行くと、第一印象とは全く異なる、熱い青春ストーリーだと判明して行きます。

以下、ネタバレあり(アニメ第22話まで)の内容となっています。

◆「凡人」と「天才」の間にある超えられない壁

『さくら荘のペットな彼女』は「熱い青春ストーリー」なのですが、物語の主軸は、主人公の「凡人」神田空太と、ヒロインの「天才」椎名ましろの関係性が、どのように変化して行くかに置かれています。そのため、冷めた見方をすれば、「最終的には、主人公とヒロインがくっついてハッピーエンドなんでしょ」という結論が導き出されます。実際、その通りなのかもしれませんが、2人には厳しい試練が待ち構えています。

一般的なラブコメの場合、主人公に対してラブラブ光線を発するサブヒロインや、ヒロインに横恋慕する間男が出現して、2人の関係をかき乱すことが試練となります。『さくら荘のペットな彼女』にも、青山七海という、主人公に好意を寄せるサブヒロインが登場します。しかし、主人公・神田空太と、ヒロイン・椎名ましろにとっての最大の試練は、サブヒロインの行動ではありません。それは、2人の才能格差です。主人公・神田空太は平凡な男子高校生ですが、ヒロイン・椎名ましろは世界的に注目されている画家なのです。

才能に格差のある男女が付き合うことの困難さを示しているのが、主人公やヒロイン、サブヒロインとともに、学生寮「さくら荘」に住む先輩、三鷹仁と上井草海咲です。三鷹仁と上井草海咲。主人公・神田空太の目には、2人とも才能のある人物として映し出されますが、実際には異なります。上井草海咲は「天才」アニメーターですが、上井草海咲のアニメの脚本を担当する三鷹仁の才能は「平凡」なのです。

上井草海咲と三鷹仁は、お互い、相手のことを大切な人だと思っています。そして、上井草海咲は三鷹仁に対して、過剰なまでに好意をアピールします。しかし、三鷹仁は上井草海咲の好意を、素直に受け入れられません。その理由は、上井草海咲が、自分の脚本に「がっかりしている」ことに気付いているからです。そのため、三鷹仁は自身の才能を磨くため、上井草海咲と距離を取ることを決意するのです。

愛さえあれば才能格差なんて関係ない。主人公・神田空太も口ではそう言います。しかし、「凡人」である神田空太も、「天才」である椎名ましろから、直接的に、あるいは間接的に、精神的な苦痛を受け、現実がいかに厳しいかを思い知らされます。

椎名ましろは、イギリスで築いた画家としての地位を捨て、さくら荘で漫画家になることを目指します。神田空太は、まず、椎名ましろが一心不乱に漫画を描く姿に衝撃を受けます。そして、椎名ましろは、物語の早い段階で、あっさりと漫画家デビューを達成します。

神田空太は椎名ましろの漫画に向き合う真摯(しんし)な姿を見て、自分もゲームプランナーになるという夢を目指す決意をします。しかし、最初の挑戦は書類審査で落選。二度目の挑戦ではプレゼンまで進みますが、過度の緊張から企画をじゅうぶんに紹介できず失敗。三度目の挑戦ではプレゼン審査も通りますが、理不尽な理由から、企画は没となります。さらに、追い打ちをかけるように、椎名ましろがプレゼン資料用に提供したイラストを見た担当者から送られた、椎名ましろ「だけ」に協力を要請する手紙を読んでしまいます。

神田空太は未熟さゆえ、つらい現実を突き付けられるたび、椎名ましろに対して距離を取ったり、言いたくもない嫌みを口にしたりします。また、椎名ましろも、自分の存在が神田空太を傷つけていることに、心を痛めます。ただし、「天才」である椎名ましろは、神田空太の抱える「凡人」ゆえの苦悩を理解することはできないのです。

神田空太の苦悩を理解できる人物として描かれているのが、サブヒロインの青山七海です。青山七海は、誰もが認める「努力家」です。プロの声優を目指し、日々のトレーニングや、声優養成所に通うためのアルバイト、そして、さくら荘での家事当番を真面目に行っています。しかし、彼女も「凡人」です。養成所の中間発表会では体調を崩し、仲間から罵倒されます。また、「ダメだったら故郷に帰る」と見えを切ったオーディションにも落選してしまいます。

青山七海が神田空太の苦悩を理解できるように、神田空太も、誰にも負けない努力をしたのに報われなかった青山七海を優しい言葉と態度で慰めます。ラブコメにありがちな「恋愛に鈍感」な男子である神田空太と、好意を口にできない、真面目で恥ずかしがり屋の青山七海。価値観を共有できる2人に対して、椎名ましろは蚊帳の外。こうなると、神田空太と青山七海が付き合っても不思議ではなくなるのです。

◆物語最大の魅力は、主人公の「熱さ」

『さくら荘のペットな彼女』はラブコメとしても面白い作品なのですが、最大の魅力は、やはり、主人公・神田空太が自分の気持ちに対して、正直に向き合う「熱さ」にあります。

主人公・神田空太は最初、「天才」や「奇人」が住まう学生寮「さくら荘」から脱出し、「一般寮に戻りたい」と口にしています。しかし、第1話で「さくら荘」にやって来た椎名ましろの存在に、主人公は刺激されます。そして、ゲームプランナーになりたいという思いを強めるのですが、先輩・三鷹仁からは、何事に対しても「口だけ」であることを、あっさりと見抜かれてしまいます。

才能あふれる「さくら荘」の住人に対して、神田空太の誇りは「常識人」であることです。「一般寮に戻りたい」と口にする神田空太は、「奇人」である「さくら荘」の住人に対して、何となく優位に立った気分でいられます。しかし、「さくら荘」に残る場合は、「奇人」たちの才能に向き合う必要が生じます。それは、自分が「凡人」であることを認めるのと同義です。この葛藤を物語の序盤で乗り切ったことで、『さくら荘のペットな彼女』は加速度的に面白くなって行きます。

その、1つのピークが、「さくら荘」の住人で制作する、文化祭の出し物「銀河猫にゃぼろん」です。アニメーション制作は上井草海咲と椎名ましろ、脚本は三鷹仁、キャラクターボイスは青山七海が担当することになります。さらに、「さくら荘」のもう1人の住人である「天才」プログラマーの赤坂龍之介、そして、イギリスから椎名ましろを追いかけてきた「凡人」の画家、リタ・エインズワースが登場することで、物語は前半のクライマックスを迎えるのです。

ここで重要になるのが、主人公・神田空太の役割です。ここまで便宜上、三鷹仁や青山七海、リタ・エインズワースを「凡人」と記してきましたが、それは「天才」たちからの視点であり、ゲームプランナー「志望」である神田空太から見たら、彼女たちは、じゅうぶんな能力を持った人たちなのです。

そうした自分よりも才能ある人間を前に、神田空太はディレクターを引き受けることになります。普段の神田空太は、「凡人」である自分の能力を限界まで引き出せるかで勝負をしている人間です。しかし、優秀な手足のコントロールを任されたことで、自分の限界を超えた「高いハードル」を飛び越える責任を背負うことになるのです。このプレッシャーはいかほどでしょうか。気付けば、自然と神田空太を応援している自分に気付くことになります。

神田空太の才能は、おそらく最後まで「平凡」です。一生かかっても「天才」を超えられないでしょう。しかし、自分の気持ちと正直に向き合う「熱さ」を持つことで、日々、「挫折」を味わいながら「成長」を繰り返して行きます。こうした経験は自分だけのものだと、青山七海も訴えます。

才能の違いや、どうしようもない理不尽を突き付けられても、それでもなお、自分を奮い立たせられる。神田空太や青山七海のひた向きさが、才能あらざる自分にどれだけの勇気を与えてくれたか。『さくら荘のペットな彼女』は、達観や自虐といった仮面をかぶることになれた自分に、喝を入れてくれた作品なのです。

◆今年で40歳。しかし、まだまだ「挑戦」は続く!

さて、ここまでアニメについて記してきましたが、少し有料メルマガの話もしましょう。

私は2012年9月から「タグマ!」にて「渡辺文重の有料メルマガ批評」という有料Webマガジンを発行し続けているのですが、日々、「挫折」の連続です。有料会員数が伸び悩んでいるのはもちろん、自分では「いい出来だ」と思った文章が全く評価されなかったり、かと思えば、「いまいち」と思った文章がネット著名人に紹介されて、爆発的なPV数を稼ぎ出したりといった具合で、常に無力感を味わわせられています。

しかし、私は今年で40歳ですが、まだまだ文筆業を諦める気はありません。それどころか、きょうからは「ブロマガ」でも有料サービスを開始することにしました。「無謀」だとか「ニーズがない」と言った批判は、すでに聞き飽きています。批判に耳をふさぐつもりはないですが、いまだに学生気分が抜けず、ふわふわした楽天的な性格だけが、自分の取りえなのです。そう簡単には、諦めたりしません。

確かに、私には、『さくら荘のペットな彼女』の主人公・神田空太のような肉体的な若さはありません。すぐに疲れるし、徹夜なんて絶対に無理です。しかし、東京都北区と言う辺地ではありますが、マンションの一室を購入したことで、当面、住む場所に困ることはありません。マンション管理費と日々の食費や光熱費を稼げれば、何とか生活できる「安定」は手に入れました。ですから、まだまだチャレンジは可能です。

インターネットの普及により、テキストデータの価格は、ほぼ無料に等しくなりました。しかし、私は、良い文章に対しては、相当の対価が支払われるべきだと考えています。「有料メルマガ」は、そうした可能性を実現する、有効なツールの1つです。ですから、私は「有料メルマガ」の普及に貢献したいと思っていますし、自身も文章で飯が食える人間になりたいと思っています。

そういうわけで、『さくら荘のペットな彼女』のレビューを持って、これからも「有料メルマガ評論家を続ける」という決意表明とさせていただければと思います。

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◆サムゲタンと川澄綾子

ここからは余談となります。正直に言うと、『さくら荘のペットな彼女』はワンギリ候補でした。アニメ第1話を見た限り、どう考えても平凡なハーレムアニメでしたからね。しかし、視聴を継続しようと思ったキッカケが2つあります。それがサムゲタンと川澄綾子さんです。

サムゲタンは、いわゆる原作改編騒動です。そこまで騒ぐならと言うことで第2話以降を視聴したという経緯があります。しかし、サムゲタンが登場することには、もう『さくら荘のペットな彼女』の魅力にどっぷりハマっていたので、本当にどうでもいい問題でした。

しかし、サムゲタン騒動がなくても、私は間違いなく『さくら荘のペットな彼女』を視聴したでしょう。理由は、私が最も好きな声優である川澄綾子さんが、リタ・エインズワース役で登場したからです。どうでもいいことですが、最近の川澄綾子さんは、金髪のイギリス女性ばかり演じている気がしますね。

何がキッカケで作品にハマるかなんて分からない。ですから、何事も瞬発力って重要だなと思うのです。そういうわけで、ここまで文章を読んでくれた、あなた! ぜひ、有料会員登録をお願いします。