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『機動戦士ガンダムUC』の感想を書いた!(ネタバレあり)
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『機動戦士ガンダムUC』の感想を書いた!(ネタバレあり)

2014-06-11 21:28
  • 2
ごきげんよう。有料メルマガ批評家の渡辺文重です。今回は『機動戦士ガンダムUC』の感想(ネタバレあり)となります。

機動戦士ガンダムUC [MOBILE SUIT GUNDAM UC] 7 (初回限定版) [Blu-ray]
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『機動戦士ガンダム』のリアリティーとは何かを考えた時、真っ先に思い浮かぶことは「人間の進歩のなさ」です。モビルスーツやスペースコロニー、ニュータイプ、サイコフレームは実現できるかもしれないし、少なくとも、アニメを見る限りにおいてとっぴだと感じさせる設定ではないと思っています。ですが、やはり、リアリティーの要は、そうした進んだ技術を手に入れた未来においても、人間は戦争を続けていることだと思うのです。

私は歴史や考古学などの専門家ではないため、詳しいことは分かりませんが、第二次世界大戦が始まる以前から、さらにさかのぼって、エジプトやメソポタミア、インダス、黄河に文明が生まれたころ、あるいは人類に感情が生まれた時点から、人々による平和への希求はあったと思うのです。しかし、本日まで世界平和は実現していません。そう考えると、西暦が終わり、宇宙世紀が始まった未来においても争いが絶えないという物語は、すんなりと受け入れられるのです。

1000年単位でも変わらない現実を知れば、フル・フロンタルの「ただ存在し、消えていくだけの命に過分な期待を持たせるべきではない」という言葉に同意するしかないと思うのです。しかしながら、ララァ・スンの思念体が発した「この熱が、宇宙を温めるのでしょう」という言葉も事実。生命の進化の歩みがゆっくりなように、人間全体の意識が前に進むためには、1人の個体では認識できないほど、気の長い時間を必要としているのです。



『機動戦士ガンダムUC』の主人公は、ユニコーンのパイロットであるバナージ・リンクスと、「ジオンの姫さま」であるミネバ・ラオ・ザビであることは間違いありません。しかし、私が最も注目したキャラクターは、ネオ・ジオンのモビルスーツ、NZ-666クシャトリヤのパイロットとして登場したマリーダ・クルスです。彼女の正体は、episode3「ラプラスの亡霊」でプルトゥエルブだと判明します。『機動戦士ガンダムZZ』に登場したエルピー・プル。その12体目のクローンだったのです。

『機動戦士Zガンダム』に登場したフォウ・ムラサメやロザミア・バダム、『機動戦士ガンダムZZ』のプルやプルツーなどを見ても分かる通り、強化人間という設定は死亡フラグなのですが、マリーダも最終的には命を落とすことになります。しかし、これまでの強化人間に比べれば、かなり人間としての成熟が見られ、それは、少しずつではあるが進歩していることの証しではないかと感じました。

思い返すと、『機動戦士ガンダム』における戦友の死はもっと厳かだったと思うのです。少なくとも、リュウ・ホセイやマチルダ・アジャンは、その死後も主人公であるアムロ・レイにとって忘れられない存在だったことは、ジャブローでのエピソードからも分かります。しかし、のちの作品に対する強化人間たちの死は、随分と軽く扱われている印象を受けます。『機動戦士Zガンダム』の主人公であるカミーユ・ビダンにとってのフォウ・ムラサメも、『機動戦士ガンダムZZ』の主人公であるジュドー・アーシタにとってのプルも、戦死した次の回では、すっかり忘れられているようでした。

そうした強化人間に比べると、マリーダの扱いは、随分と良くなったように思います。正直、再調整を受けたマリーダが正気を取り戻し、無事に脱出できるとは思っていませんでした。(episode5「黒いユニコーン」)いや~、本当に良かった。また、episode6「宇宙と地球と」でも、マリーダは見せ場を作ります。ミネバとともにコクピットを出ろと命令するジンネマンに対し、「わがままを……許してくれますか……」と反抗してみせるのです。運命に翻弄(ほんろう)されるだけだった少女が、自らの意志を貫こうとする姿は、シリーズ屈指の名シーンではないかと思います。

要するに、私は「マリーダ・クルスのことが大好きだ」ということです。episode7「虹の彼方に」で彼女は戦死するのですが、私の気持ちはアルベルトが代弁してくれました。



『機動戦士Zガンダム』においてフォウ・ムラサメを殺したジェリド・メサは、言いたいことも言えずに死んでしまう結末を迎えます。しかし、マリーダを殺したリディは、主人公のライバルポジションを得た印象を受けます。『機動戦士Zガンダム』では死ぬポジションだったキャラクターが、『機動戦士ガンダムUC』では最後まで生き延びた。これこそが、ちょっとした進歩なのかもしれません。

ただ、そうしたことに希望を感じるのは私の主観であり、違った見方をすれば、100年間同じことを繰り返していることを確認しただけの物語だったと思います。結局は「全て善意から始まっている」ことを否定したら「この世は闇」。善意を信じるしかないのだなと思った次第です。

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コメント コメントを書く

硬派!
マリーダの設定はビックリしましたが、絶妙でしたね。

No.1 119ヶ月前
userPhoto 渡辺 文重(著者)

>>1
episode3でフル・フロンタルの口から正体が明かされた時は、衝撃を受けました。

No.2 119ヶ月前
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