萌えアニメ紹介に見せかけた何か
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萌えアニメ紹介に見せかけた何か

2018-05-20 15:59

    今期も折り返しに入りましたが、ここ数期は良作が多くて視聴時間確保が大変です・・・。

    今期始まったアニメで毎回一番楽しみにしている作品が「ウマ娘 プリティーダービー」です。
    この作品、アニメ好きという観点だけでなく、ビジネス戦略としても見本にしたいぐらい魅力的です。
    絵柄を見て「自分には合わないな」と思った方も、少し私の考察にお付き合いいただけると嬉しいです(このアニメを観ろという内容ではありませんので)。
    この作品の一番のポイントは、現代のオタクビジネスに一般的ではない実在する歴史をプラスしたことにあります。

    アニメ・ゲーム文化は現在若者を中心として一般化し、そして、多種多様な広がりを見せていますが、その中で強い支持を得ているジャンルの特徴を私なりにピックアップすると以下になります。
    (あくまでひとつのジャンルです。この特徴とは違っていても魅力的な作品は沢山あります)

    ・可愛い女の子、格好いい男の子(理想の異性)
    ・沢山のメインキャラ(自分好みの異性が見つかる)
    ・キャラ同士が競い合う(応援したくなる)
    ・キャラが歌う(曲を聴くことでいつも身近に感じられる)
    ・一定期間毎に結果が出る(自分の応援が反映される)

    アイドルに少し詳しい方ならピンと来たと思いますが、AKB48スタイルですね。

    このスタイルは一世を風靡しておりますが、似たようなものが沢山存在し、現在は前述の5つのポイントを押さえただけでは、目立つ(ビジネスとして成功する)ことができなくなっています。

    そこで更に6番目の追加要素として、注目されているのがリアル(現実)さです。これは歴史と置き換えても良いと思います。「事実は小説よりも奇なり」という言葉もありますが、実際に存在したものを加えることで、ストーリーやキャラクターに深みを与えます。シナリオライターが考えなくても、歴史という膨大な情報が付加されるのです。
    歴史上の人物を女の子化させることから始まり、現在は人以外を擬人化してキャラクター化させる流れができつつあります。
    参考作品として、「艦隊これくしょん(艦これ)」は実在した第二次世界大戦の艦船を人間の女の子に擬人化した作品で、そのキャラクターのビジュアルや性格、役割などは実在した艦船の情報(エピソードも含む)を基に作られています。男の子のロマンである戦艦に、可愛い女の子の組み合わせが男性ファンを虜にしました。女性向けでは「刀剣乱舞」というものがあり、有名な日本刀などを当時の所有者や歴史を参考に美男子化したのですが、昨今、刀剣展を開くと「刀剣女子」と呼ばれるファンが自分の好きなキャラクターの基になった刀剣を観に来場するなど、ちょっとした社会現象になっています。
    思い起こせば、キャプテン翼でサッカーを、スラムダンクでバスケットを、ヒカルの碁で囲碁を始めたなど、漫画やアニメが影響して、日本のある業界が急に認知されるという現象は昔からありましたね。

    では、ウマ娘はどうでしょうか。
    ウマ娘に登場するキャラクターは名前の通り馬の特徴を持った娘(女の子)です。馬の耳に馬の尻尾を持つ彼女たちは、歴史上の有名な競争馬が基になっています。いわゆる、獣人(じゅうじん=半獣半人)ですが、競争馬娘(きょうそううまむすめ)として、作品の人間社会では人間と対等な地位を持っているようです(普通に電車に乗ったり、病院に入院したりしています)。
    なお、実在する競争馬の性別は関係なく、全て女の子(ウマ娘)として登場します。
    ウマ娘達はトレーニングをしてレースに臨み、優勝を目指します。このレースは日本中央競馬会(JRA)でほぼ実在します。馬は地上で最も美しく走る動物と呼ばれたりしますが、ウマ娘達の走る姿も非常に力強く、そして疾走感に溢れています。そこにレースの駆け引きや力尽きてバテる時の「むりぃ~」というウマ娘達の情けない声も面白さを盛り上げます。そして、レースで3位までに入着すると、アイドルのようにステージで歌って踊ってファンにお礼をするのです。

    アニメの製作会社はP.A.WORKSですが、この会社は色彩表現と安定した作画は業界でもトップクラスと思います。色彩表現の素晴らしさはウマ娘達のファッションにも存分に活かされています。また、ウマ娘達が走る時の足音が人間とは違い、重みのある競走馬っぽいものになっているのも、レースの迫力を増すのに貢献しています(実際、ウマ娘達が履くシューズに競走馬と同じ蹄鉄(ていてつ)を打ち込むシーンがあり音が違う理由付けにもなっています)。更にCGは違和感の出にくいキャラが遠くで小さく激しく動くシーンに限定し、ズームの時は手書きで丁寧に描く。笑いとシリアスの演出の違いやバランス。このハイクオリティな動画がなければ、この作品の魅力は半減どころか中途半端過ぎて駄作になっていたでしょう。
    さて、レース後にアイドルのように歌って踊ると書きましたが、昔のアイドルのように完璧さを描くのではなく、弱い部分も見せて、親近感や共感を得る見せ方も得意です。
    例えば、メインヒロインのスペシャルウィーク(愛称:スペ)は走ることしか頭になくて最初のステージではボロボロでした。また、実在のスペと同じく、大食漢で食べ過ぎてお腹が膨れて妊婦のようになってしまうシーンも前半は沢山あります(もちろん体重が増えることがレースに影響することも史実通りです)。
    その他のウマ娘も実在の競走馬の癖やレースでの出来事など、とにかく細かい部分まで特徴を捉えて描かれていて、競馬ファンも感心するほどです。

    なお、原作はCygames(サイゲームス)という会社になります。名前の通り、ゲームビジネスをメインとした会社でスマートフォン向けのゲームでは国内では大手の一角です。最近は任天堂と業務提携も発表し、ゲーム業界では話題になりました。
    ウマ娘は、アニメ、ゲーム、CD、マンガ、Youtubeなどでマルチ展開をしています。
    なぜ、Cygamesは競走馬を主題にした作品を作ろうと思ったのでしょうか?
    競馬=ギャンブルというイメージがあり、一般受けするのは難しいとは思わなかったのでしょうか?
    私は逆だと考えました。競馬=一般化していない=新しい(新鮮)なのだと。
    そして、競馬は今まで擬人化されてきた作品と比べて、圧倒的に情報量(競馬新聞やレース中継など最低でも毎週必ず更新されている)が多く、そして、それらのデータベースはしっかり保存・管理されており、その歴史を直に見てきた人が現在も生きており、更にその歴史はこれからも続いていく・・・人間以外の歴史でこれほどまでに身近で魅力的な素材は存在しないのではと私は思いました。この作品、毎年新しい競走馬が活躍すると、話のネタが自動的に増えるんです。
    そんな競馬の歴史の中で、本作品はスペの時代をメインとした時間軸で歴史をなぞっていきます。私もその時代は競馬に夢中になっていまして、最上級レースであるG1レースがある時は、夜勤明けでも競馬場に良く足を運んでいました(笑)
    スペの先輩で憧れの存在であるサイレンススズカというウマ娘も登場します。この競走馬の歴史は「ウマ娘」を観るまでは調べないでください。伝説の一つであり、私のリアルタイムの競馬歴で一番の衝撃でした。
    スペが活躍した時代は、まさに競馬全盛期で、武豊がNo.1ジョッキーでサンデーサイレンス産駒(さんでーさいれんすさんく:親がサンデーサイレンスの馬)が重賞(大きなレース)を総なめ、社台ファーム(競走馬を育てている所)の馬の新馬戦は取りあえず買え、岡部騎手と藤沢調教師のコンビは絶対外すなって感じでした。
    海外の騎手が日本で騎乗するようになり、日本の競走馬が海外へ遠征に出るようになり、日本競馬の国際化の始まりでもありました。
    そこには沢山のドラマ――感動と悲劇と伝説が生まれました。
    すでにGoogleの検索に影響が出始めていますが、この作品の影響で、競馬、競走馬に興味を持つ人が増えています。
    もしかしたら、牝馬(メスのウマ)限定の「ウマ娘カップ」とかJRAで重賞が作られるかもしれませんね。


    人気になる基本(ニーズ)を押さえ、他にはない特徴を出す。
    ということで、良い作品、ビジネスのお手本作品だと私は思いました。

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