-
-
風が強く吹いている
俺は知りたいんだ。走るってどういうことなのか―
寛政大学4年の清瀬灰二(ハイジ)は肌寒い三月、類まれな「走り」で夜道を駆け抜けていく蔵原走(カケル)に出くわし、下宿の竹青荘(通称・アオタケ)に半ば強引に住まわせる。
ハイジには「夢と野望」があった。高校時代の怪我による挫折。でももう一度、走りたい、駅伝の最高峰・箱根駅伝に出て、自分の追求する走りを見せたい。その「夢と野望」を「現実」にするにはあと一年しかない。そしていま強力な牽引者が彼の目の前に現れたのだ。
竹青荘は特異な才能に恵まれた男子学生の巣窟だった。寮生のため炊事をこなすハイジをはじめに、大学に5年在籍している25歳ヘビースモーカーのニコチャン先輩(平田彰宏)、双子の兄弟・ジョージ(城次郎)とジョータ(城太郎)、留学生のムサ、実家が山奥のど田舎にある神童(杉山高志)、司法試験に合格済の音楽フリーク・ユキ、クイズ番組好きのキング、金と時間のすべてを漫画に捧げる王子…。そんな個性豊かな面々が、その竹青荘が実は「寛政大学陸上競技部錬成所」であることなど知らずに共同生活を送っていた。
ハイジは彼らを脅しすかし、奮い立たせ、「箱根」に挑む。たった十人で。蔵原の屈折や過去、住人の身体能力と精神力の限界など、壁と障害が立ちはだかるなか、果たして彼らは「あの山」の頂きにたどりつけるのか――
「走りとは力だ。スピードではなく、一人のままでだれかとつながれる強さだ。」
-
戦姫絶唱シンフォギアXV
神の力を以ってして、神そのものを討ち斃さんとした原初のヒトガタ、アダム・ヴァイスハウプトは、サンジェルマンたちの理想の源(※「理想の源」にルビで「パワーソース」)であるラピス・フィロソフィカスにて黄金錬成されたシンフォギアが撃槍。
暗躍してきたパヴァリア光明結社はここに瓦解し、その残党は、各国機関の活躍によって追い詰められていくのであった。
そして——
追い詰められているのはパヴァリア光明結社だけではない。
かつての超大国アメリカもまた、日本に向けた反応兵器の発射事実を非難・追及され、国際社会からの孤立を招いていた。
閉塞した状況は、新たな世界規模闘争の火種にもなりかねないため、速やかなる政治的解決が望まれているが、複雑に絡む国家間の思惑は軋みをあげるばかりで、遅々として進んでいない。
当該国である日本も、アメリカとの協調政策を打ち出して関係修復をアピールしているものの、どこかうすら寒い表面的なムードに終始して、局面打開には至っていない。
いまだ見えない世界の行く末。
さらに、張りつめた空気はここにも。
都内ランドマーク各所が一望できる、デートスポットとしても人気の大観覧車のゴンドラに乗っているのは、私立リディアン音楽院に通う高校生、立花 響と小日向 未来。
ふたりが手にした鯛焼きは白玉入りであり、絶品。
甘すぎず、まるでぜんざいもかくやという口当たりの餡は申し分が無かった。
それでも、ふたりの間に緊張が走るのは、何の気なしに未来が響に発した、問い掛けに始まるものであった。
返答に窮した響の胸の奥にあるものは、果たして。
過去から現在に向けて紡がれたいくつもの物語は、XVに集束していく。
聖骸を巡る攻防は、どこまでも真夏の只中。
はじける湖面を舞台に、少女たちの歌声が輝きを放つ。