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俺たちに翼はない
――大都市「柳木原」。
おびただしい数のひとと建物がひしめく、巨大な繁華街。
――季節は冬。
空を見上げれば、そこには無表情な白い空。
羽田タカシには人に言えない秘密があった。冴えない学園生活から逃れ、いずれは異世界・グレタガルドへと消えるつもりだったのだ。
ただ胸にあるのはいくつかの心残り。顔を合わせてはぎこちない会話をする妹・『羽田小鳩』のこと。
そして、学園のプリンセスと称えられる仮初の恋人・『渡来明日香』のこと……。
千歳鷲介はしがない貧乏フリーター。色んなバイトをしながら日々を面白おかしく過ごしている。
そんなある日、ひょんなことから学生作家の『玉泉日和子』と出会う。第一印象は最悪……。
その直後に行きつけのレストラン『アレキサンダー』で再会するふたりは店長に誘われるまま、微妙な関係の仕事仲間となりっ!?
成田隼人。職業は無職。星座、血液型はナイショ。性格は自称・ハードボイルド。
肉体労働系のバイトで日々を食いつなぐかたわら、便利屋の真似事もこなしていた。
人付き合いを疎んじている隼人だが、同じく夜の街に暮らす風変りな人間や不良少年たちが集まってくる。
そんなある夜、『鳳鳴』と名乗る少女が、便利屋隼人のもとを訪れた――。
ありがちな悩みとありがちじゃない悩みを抱えた若者たち。
彼らが出会う、恋ともろもろ。
それはきっと何処にでもある、ありふれた物語。
これは“たとえば”の話だけど、
ぼくらが君に語るのは、たとえばそんなメルヘン。
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妖怪奇談
わたしが妖怪になる日
人間の醜い驕りや傲慢さが、心の闇とシンクロする時、ヒトは哀れな姿へ進化を遂げる。
切なく悲しい3篇の妖怪物語。
『かまいたち KAMAITACHI』
岩崎みひろは、どこにでもいるフリーター。バイト先でも普通に友達と付き合って、うまく生きていると本人は思っていた。普通よりも少し明るく、普通より少し可愛い。だが、そう思っているのは自分だけ。裏では高飛車な女だと思われ、陰口を叩かれていた。そんなみひろがバイト代をつぎ込み、命を懸けているのがネイルアート。神経質なまでに、爪に気を使い、毎日の手入れは欠かさない。
ある日、自分の爪が伸びるのが、異様に早いことに気が付く。ネイルサロンの店長に相談してみるが、人間の爪はそれほど早くは伸びないと、相手にしてもらえない。だが、伸びる勢いは止まらず、切ろうとすると激痛を伴い、指と同化している。日常生活にも支障をきたし、バイト仲間からは、露骨に文句を言われる。頭が混乱してきたみひろは、その鋭利な爪でバイト仲間を傷つけてしまう。返り血を浴び、爪の長いみひろは街中を逃げ惑う…
他、『ろくろ首 ROKURO』、『のっぺらぼう NOPPERA』の2篇が互いにシンクロしながら物語は進みます。