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<マル激・後半>5金スペシャル・故レッドフォードが描いたアメリカという物語
月の5回目の金曜日に特別番組を無料でお送りする5金スペシャル。今回は、9月16日にこの世を去った映画界の巨星、ロバート・レッドフォード特集をお送りする。 今回取り上げたのはレッドフォード監督、出演の5作品。 ・『大統領の陰謀』(1976)出演 神保推薦 ・『大いなる陰謀』(2007)監督・出演 宮台推薦 ・『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)監督 神保・宮台推薦 ・『モンタナの風に抱かれて』(1998)監督・出演 宮台推薦 ・『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』(2013)出演 神保推薦 『大統領の陰謀』は、1972年のニクソン政権下で起きた民主党本部盗聴事件に端を発するウォーターゲート事件の真相を追求したワシントン・ポストの2人の記者を描いた実話の映画。ボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)とカール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)が数々の難問に直面しながらも地道な取材を続け、最後は大統領の関与まで暴く20世紀ジャーナリズムの金字塔を築いた。地道な取材、情報源の秘匿、NPOとの協力など、ジャーナリズムの基本に関わる論点が随所にちりばめられている。 『大いなる陰謀』はレッドフォードが監督と出演を兼ねた作品。アフガニスタンでの新たな軍事作戦をめぐり、上院議員、ベテラン記者、大学教授、そして学生がそれぞれの立場で葛藤する物語。大統領の座を狙うアーヴィング上院議員(トム・クルーズ)は、アフガニスタンでの新たな軍事作戦の情報をベテラン記者ロス(メリル・ストリープ)にリークする。その一方で、マレー教授(ロバート・レッドフォード)は、かつて教え子を戦地に送り出した罪悪感に苦しむ。 『リバー・ランズ・スルー・イット』は監督としてのレッドフォードの代表作の一つ。1910~1920年代のアメリカ合衆国モンタナ州の美しい自然を背景に描かれたある家族の物語。厳格な牧師の父に育てられた兄ノーマンと弟ポールは、幼い頃からフライ・フィッシングを通じて深い絆を結ぶ。しかし成長するにつれ、真面目な兄と自由を求める弟の人生は少しずつすれ違っていく。 『モンタナの風に抱かれて』は、事故で心身ともに深い傷を負った少女と、その母と、少女の愛馬を救おうとするカウボーイの物語。ニューヨークで暮らす少女グレース(スカーレット・ヨハンソン)は乗馬中の事故で片足を失い、愛馬は暴れ馬になってしまう。少女の母はグレースを連れて馬を癒す能力を持ったカウボーイのトム・ブッカー(ロバート・レッドフォード)を訪ね、グレースと母、そしてトム自身も大自然の中で心を回復していく物語。 『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』は出演がレッドフォードただ1人、台詞もほぼ皆無という珍しい作品。インド洋をヨットで航海していたある男(レッドフォード)が、海上を漂流していたコンテナに衝突してヨットに穴が開き浸水したのを手始めに、ありとあらゆる災難に見舞われながら、驚異的な抵抗力でそれを一つひとつ、黙々と乗り越えていく様が延々と描かれる。そして、無線は壊れ、水や食料も底を尽き、万策が尽きた時、思わぬところから救世主が現れる。まさに現代版ヨブ記と呼ぶべき作品だ。 今回の5金映画特集は、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が選んだロバート・レッドフォードの5つの名作について、両氏がそのテーマやそこにあるメッセージが何なのかなどについて議論した。前半はこちら→so45578834(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/11/03(月) 12:00
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<マル激・前半>5金スペシャル・故レッドフォードが描いたアメリカという物語
月の5回目の金曜日に特別番組を無料でお送りする5金スペシャル。今回は、9月16日にこの世を去った映画界の巨星、ロバート・レッドフォード特集をお送りする。 今回取り上げたのはレッドフォード監督、出演の5作品。 ・『大統領の陰謀』(1976)出演 神保推薦 ・『大いなる陰謀』(2007)監督・出演 宮台推薦 ・『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)監督 神保・宮台推薦 ・『モンタナの風に抱かれて』(1998)監督・出演 宮台推薦 ・『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』(2013)出演 神保推薦 『大統領の陰謀』は、1972年のニクソン政権下で起きた民主党本部盗聴事件に端を発するウォーターゲート事件の真相を追求したワシントン・ポストの2人の記者を描いた実話の映画。ボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)とカール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)が数々の難問に直面しながらも地道な取材を続け、最後は大統領の関与まで暴く20世紀ジャーナリズムの金字塔を築いた。地道な取材、情報源の秘匿、NPOとの協力など、ジャーナリズムの基本に関わる論点が随所にちりばめられている。 『大いなる陰謀』はレッドフォードが監督と出演を兼ねた作品。アフガニスタンでの新たな軍事作戦をめぐり、上院議員、ベテラン記者、大学教授、そして学生がそれぞれの立場で葛藤する物語。大統領の座を狙うアーヴィング上院議員(トム・クルーズ)は、アフガニスタンでの新たな軍事作戦の情報をベテラン記者ロス(メリル・ストリープ)にリークする。その一方で、マレー教授(ロバート・レッドフォード)は、かつて教え子を戦地に送り出した罪悪感に苦しむ。 『リバー・ランズ・スルー・イット』は監督としてのレッドフォードの代表作の一つ。1910~1920年代のアメリカ合衆国モンタナ州の美しい自然を背景に描かれたある家族の物語。厳格な牧師の父に育てられた兄ノーマンと弟ポールは、幼い頃からフライ・フィッシングを通じて深い絆を結ぶ。しかし成長するにつれ、真面目な兄と自由を求める弟の人生は少しずつすれ違っていく。 『モンタナの風に抱かれて』は、事故で心身ともに深い傷を負った少女と、その母と、少女の愛馬を救おうとするカウボーイの物語。ニューヨークで暮らす少女グレース(スカーレット・ヨハンソン)は乗馬中の事故で片足を失い、愛馬は暴れ馬になってしまう。少女の母はグレースを連れて馬を癒す能力を持ったカウボーイのトム・ブッカー(ロバート・レッドフォード)を訪ね、グレースと母、そしてトム自身も大自然の中で心を回復していく物語。 『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』は出演がレッドフォードただ1人、台詞もほぼ皆無という珍しい作品。インド洋をヨットで航海していたある男(レッドフォード)が、海上を漂流していたコンテナに衝突してヨットに穴が開き浸水したのを手始めに、ありとあらゆる災難に見舞われながら、驚異的な抵抗力でそれを一つひとつ、黙々と乗り越えていく様が延々と描かれる。そして、無線は壊れ、水や食料も底を尽き、万策が尽きた時、思わぬところから救世主が現れる。まさに現代版ヨブ記と呼ぶべき作品だ。 今回の5金映画特集は、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が選んだロバート・レッドフォードの5つの名作について、両氏がそのテーマやそこにあるメッセージが何なのかなどについて議論した。後半はこちら→so45579249(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/11/03(月) 12:00
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会員無料 48:37
<マル激・後半>最高裁判決で違法とされた生活保護の引き下げは国の責任で一刻も早い正常化を/小久保哲郎氏(弁護士、いのちのとりで裁判全国アクション事務局長)
生活保護基準の引き下げが最高裁で違法と判断されたにもかかわらず、政府が判決内容を誠実に履行しないために、今も各地の裁判所で訴訟が続いている。 全国で提訴されていた生活保護基準引き下げを問う裁判で、最高裁は今年6月、基準引き下げにいたった厚生労働大臣の判断には裁量権の範囲の逸脱、または濫用があり、生活保護法に違反しているとして、生活保護基準引き下げ処分を取り消す判決を出した。 この裁判は、2013年に行われた生活保護基準の改定で、これまでにない平均6.5%、最大で10%の削減という大幅な削減が行われ、多くの受給者が窮乏したことを受けて、全国で1,000人を超える原告が引き下げは違法として国を訴えていた。そのうち名古屋と大阪の訴訟が最高裁に上告され、今年6月、最高裁は生活保護基準引き下げ処分を取り消す判決を下していた。 しかし、最高裁判決が出たにもかかわらず、違法状態は続いており、その後も同様の裁判が各地で続いている。名古屋地裁・金沢支部、名古屋高裁(三重訴訟)では原告側が勝訴しているほか、仙台高裁(青森訴訟)と東京高裁(金沢訴訟)でも今後判決が下される予定だ。 2013年の生活保護基準引き下げは、第2次安倍政権発足直後に行われた。しかし、この時の引き下げは、厚生労働省が政権に忖度して恣意的に引き下げたものだった。その前年から生活保護バッシングが起こり、当時野党だった自民党は政権公約の1つに生活保護の給付水準の10%削減を挙げていた。 これまで生活保護基準の変更は社会保障審議会生活保護基準部会の検証を踏まえて行われてきたが、このときは厚労省が独断で削減に踏み切った。生活に必要な食費、光熱費として支給される生活扶助費は、これまで消費水準をもとに決められており、物価を考慮したことはなかったが、このときは「デフレ調整」という名目で、リーマンショック前後の3年間の物価下落から算出された。しかも、計算には総務省が出している一般的な消費者物価指数ではなく、厚労省が独自に計算した指数を用いており、テレビやパソコンの下落率を過大に評価するなど低所得世帯の消費実態とは合わない計算方法を用いたため、総務省の消費者物価指数の2倍以上の下落率となっていた。 全国訴訟の事務局長で、日弁連で貧困問題対策に取り組む小久保哲郎弁護士は、当事者が声をあげられないことを見越して、もっとも弱い立場の人を標的にしていると憤る。引き下げを違法と断じられながら、官僚組織が原告側に謝罪もせずに司法を軽視した行動をとっていることは問題だと小久保氏は語る。 確かに、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ための最低保障ラインを決めるのは難しい。現在、厚労省は最高裁判決後の対応をどうするか専門委員会を開き検討をしているが、当初、訴訟に加わった原告たちへの対応はきわめて不誠実だったという。一方で、来年度以降の生活保護基準自体の検討も始まっており、一刻も早く事態を収拾して違法状態を解消する必要がある。 生活保護基準は、さまざまな社会保障制度と連動する。数字合わせのような恣意的な基準変更では制度の信頼自体も問われる。小久保氏は、当事者にスティグマを与えるような生活保護という用語ではなく、海外の制度などにあるように生活保障という考え方に変えるべきだと主張する。 生活困窮の当事者に寄り添い続けてきた小久保氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。前半はこちら→so45554049(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/10/27(月) 12:00
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会員無料 54:11
<マル激・前半>最高裁判決で違法とされた生活保護の引き下げは国の責任で一刻も早い正常化を/小久保哲郎氏(弁護士、いのちのとりで裁判全国アクション事務局長)
生活保護基準の引き下げが最高裁で違法と判断されたにもかかわらず、政府が判決内容を誠実に履行しないために、今も各地の裁判所で訴訟が続いている。 全国で提訴されていた生活保護基準引き下げを問う裁判で、最高裁は今年6月、基準引き下げにいたった厚生労働大臣の判断には裁量権の範囲の逸脱、または濫用があり、生活保護法に違反しているとして、生活保護基準引き下げ処分を取り消す判決を出した。 この裁判は、2013年に行われた生活保護基準の改定で、これまでにない平均6.5%、最大で10%の削減という大幅な削減が行われ、多くの受給者が窮乏したことを受けて、全国で1,000人を超える原告が引き下げは違法として国を訴えていた。そのうち名古屋と大阪の訴訟が最高裁に上告され、今年6月、最高裁は生活保護基準引き下げ処分を取り消す判決を下していた。 しかし、最高裁判決が出たにもかかわらず、違法状態は続いており、その後も同様の裁判が各地で続いている。名古屋地裁・金沢支部、名古屋高裁(三重訴訟)では原告側が勝訴しているほか、仙台高裁(青森訴訟)と東京高裁(金沢訴訟)でも今後判決が下される予定だ。 2013年の生活保護基準引き下げは、第2次安倍政権発足直後に行われた。しかし、この時の引き下げは、厚生労働省が政権に忖度して恣意的に引き下げたものだった。その前年から生活保護バッシングが起こり、当時野党だった自民党は政権公約の1つに生活保護の給付水準の10%削減を挙げていた。 これまで生活保護基準の変更は社会保障審議会生活保護基準部会の検証を踏まえて行われてきたが、このときは厚労省が独断で削減に踏み切った。生活に必要な食費、光熱費として支給される生活扶助費は、これまで消費水準をもとに決められており、物価を考慮したことはなかったが、このときは「デフレ調整」という名目で、リーマンショック前後の3年間の物価下落から算出された。しかも、計算には総務省が出している一般的な消費者物価指数ではなく、厚労省が独自に計算した指数を用いており、テレビやパソコンの下落率を過大に評価するなど低所得世帯の消費実態とは合わない計算方法を用いたため、総務省の消費者物価指数の2倍以上の下落率となっていた。 全国訴訟の事務局長で、日弁連で貧困問題対策に取り組む小久保哲郎弁護士は、当事者が声をあげられないことを見越して、もっとも弱い立場の人を標的にしていると憤る。引き下げを違法と断じられながら、官僚組織が原告側に謝罪もせずに司法を軽視した行動をとっていることは問題だと小久保氏は語る。 確かに、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ための最低保障ラインを決めるのは難しい。現在、厚労省は最高裁判決後の対応をどうするか専門委員会を開き検討をしているが、当初、訴訟に加わった原告たちへの対応はきわめて不誠実だったという。一方で、来年度以降の生活保護基準自体の検討も始まっており、一刻も早く事態を収拾して違法状態を解消する必要がある。 生活保護基準は、さまざまな社会保障制度と連動する。数字合わせのような恣意的な基準変更では制度の信頼自体も問われる。小久保氏は、当事者にスティグマを与えるような生活保護という用語ではなく、海外の制度などにあるように生活保障という考え方に変えるべきだと主張する。 生活困窮の当事者に寄り添い続けてきた小久保氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。後半はこちら→so45554051(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/10/27(月) 12:00
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会員無料 52:27
【後半会員パート】越智萌氏生出演!『だれが戦争の後片づけをするのか』(2025年10月23日生放送)
ゲストは国際刑事司法 (国際法学、国際制度論、平和紛争論)について研究している越智萌さん。越智さんの最新刊をテキストに戦争犯罪、戦争犯罪裁判、兵士の帰還など戦後処理の問題を深掘りする。■参考テキスト:越智萌著『だれが戦争の後片付けをするのか』https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480076908/●日時:10月23日(木)20時から生配信●ゲスト:越智萌(立命館大学国際関係研究科准教授)●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)●司会:ジョー横溝
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2025/10/27(月) 00:00
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【前半無料パート】越智萌氏生出演!『だれが戦争の後片づけをするのか』(2025年10月23日生放送)
ゲストは国際刑事司法 (国際法学、国際制度論、平和紛争論)について研究している越智萌さん。越智さんの最新刊をテキストに戦争犯罪、戦争犯罪裁判、兵士の帰還など戦後処理の問題を深掘りする。■参考テキスト:越智萌著『だれが戦争の後片付けをするのか』https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480076908/●日時:10月23日(木)20時から生配信●ゲスト:越智萌(立命館大学国際関係研究科准教授)●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)●司会:ジョー横溝
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2025/10/27(月) 00:00
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<マル激・後半>サナエノミクスは失われた30年から日本を救えるのか/門間一夫氏(みずほリサーチ&テクノロジーズ エグゼクティブエコノミスト)
サナエノミクスはアベノミクス2なのだろうか。 来週21日に予定される総理大臣指名選挙では、自民党の高市早苗総裁が選出される見込みが大きくなった。公明党の連立離脱で一時は首相就任が危ぶまれた高市氏だったが、日本維新の会が自民党との連立に乗り出してきたため、高市氏の首相選出がほぼ確実となった。 高市政権の経済政策はどのようなものになるのか。高市氏は自民党総裁選を通じて当面の物価高対策として、ガソリンや軽油の暫定税率廃止、自治体向けの交付金の拡充、給付付き税額控除の導入に向けた制度設計を進めることなどを挙げている。ガソリン減税などは野党の多くも同じような主張をしていることから、早晩実現する見込みだ。 しかし、緊急措置としての物価高対策が一巡したときに問題になるのが、高市政権の経済政策がこれまでの自民党のそれと同じようなものになるのか、あるいは日本経済が長期低迷から抜け出すための新機軸を打ち出すことができるのかどうかだ。 長年日本銀行に在籍し、現在はエコノミストとして積極的に発信を続ける門間一夫氏は、高市氏が掲げる物価高対策には目先で生活苦を抱える人の痛みを和らげる一定の効果はあると評価する一方で、中・長期的な政策についてはまだ未知数のところが多いと指摘する。高市氏の中長期の経済政策の中には、「危機管理投資」や「成長投資」、「新技術立国を目指す」などのメニューが並び、高市氏自身もAIや半導体、核融合といった分野への大胆な投資を強調しているが、実際の中身はまだ明確になっていないからだ。 そもそも「失われた30年」とは何だったのか。1995年頃に世界有数の経済大国にまで登りつめた日本は、その後の30年、経済成長がほぼ横ばいで実質賃金も上がらないまま低迷した。1995年以降日本の生産年齢人口が減少に転じている以上、日本は一人一人の生産性を上げない限り、成長率はさらに低くなっていくことが避けられないが、1人あたりのGDPもこの30年ほぼ横ばいのまま来てしまった。 門間氏は物価高により名目GDPや税収や株価は上がっているので、景気が回復したかのような言説が一部で流布されているが、日本経済の実際の状態は失われた30年の時よりもさらに悪くなっていると指摘した上で、すでに失われた40年が始まっていると考えるべきだし、このままでは50年、60年経っても日本経済の低迷は避けられないとの悲観的な見通しを示す。その上で、門間氏はそれを避けるために2つの重要なポイントをあげる。 それは格差の解消と、そもそもGDPを増やすことを目的とすべきかを再考することの2点だ。 安倍政権下で採用されたアベノミクスの下では金融緩和、財政出動、構造改革という3本の矢が掲げられたが、門間氏によると、大々的に喧伝された異次元緩和よりも、3本目の矢の一環で行われた資本市場改革の方が実は効果があったと指摘する。経営者がより株主の方を見るようになり、株価を上げる合理的な経営が大企業の多くに根付いた結果、大企業は拡大する見込みのない国内市場から海外へシフトし、国内産業の空洞化が進んだ。また、国内でも非正規雇用の増加や中小企業の切り捨てが進み、格差が広がった。格差の拡大や中小企業の多くが直面する苦境は、アベノミクスが機能した結果でもあると、門間氏は言う。 高市政権もアベノミクスの考えを踏襲しているとすれば、安倍政権下と同様に株価は上がり大企業は空前の好況を享受する一方で、格差はさらに広がり、ワーキングプアと呼ばれる貧困層が膨らみ続ける可能性がある。そして、それが実は自民党の政治基盤を弱体化させ、参政党などの新興政党に多くの票が流れる原因となっている。 日本が格差を放置したままでは、財政をめぐる社会の分断も続き、それが政権がとるべき政策の選択肢を縛ることになる。ところが給付付き税額控除とセットで行うことで富裕層の負担を増やす消費税増税や、明らかに富裕層に有利な金融所得税の増税などは政治的にはリスクが大きいとみられ、政治家は誰もが尻込みしている。 門間氏は、そもそも成長率を上げることを国の目標にすべきなのかについても、いったん立ち止まって考えてみる必要があると言う。無理にGDPを増やそうとするとさまざまな痛みを伴うが、その痛みを甘受してまで成長率を上げることを優先すべきなのか。経済成長も大事だが、国民が豊かさを感じられ、楽しく生きられる社会を作ることも、同じくらい重要なのではないか。そのためには格差是正など、やるべきことがあるのではないか。昨今の政治にはそういった議論が不足していると指摘する。 今われわれが問われているのは、日本をどのような国にしたいのかというビジョンではないか。アメリカのような格差を容認するのか、それとも格差を是正するのか。教育に力を入れ技術立国を目指すのか。あるいは資源の無いことを逆手にとって再生エネルギー大国を目指すのか等々。今の日本にはそのような国の方向性を示す大きなビジョンに対する国民的な合意が何よりも必要だと門間氏は言う。なぜならば、いずれの施策にも財源が必要で、その負担を国民に求める以上、国民がその目的を共有できている必要があるからだ。 高市氏の経済政策はどのようなものか。その経済政策で日本は失われた30年から脱することができるのか。今日本が目指すべき方向とは何なのかなどについて、みずほリサーチ&テクノロジーズ エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so45530717(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/10/20(月) 12:00
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会員無料 59:05
<マル激・前半>サナエノミクスは失われた30年から日本を救えるのか/門間一夫氏(みずほリサーチ&テクノロジーズ エグゼクティブエコノミスト)
サナエノミクスはアベノミクス2なのだろうか。 来週21日に予定される総理大臣指名選挙では、自民党の高市早苗総裁が選出される見込みが大きくなった。公明党の連立離脱で一時は首相就任が危ぶまれた高市氏だったが、日本維新の会が自民党との連立に乗り出してきたため、高市氏の首相選出がほぼ確実となった。 高市政権の経済政策はどのようなものになるのか。高市氏は自民党総裁選を通じて当面の物価高対策として、ガソリンや軽油の暫定税率廃止、自治体向けの交付金の拡充、給付付き税額控除の導入に向けた制度設計を進めることなどを挙げている。ガソリン減税などは野党の多くも同じような主張をしていることから、早晩実現する見込みだ。 しかし、緊急措置としての物価高対策が一巡したときに問題になるのが、高市政権の経済政策がこれまでの自民党のそれと同じようなものになるのか、あるいは日本経済が長期低迷から抜け出すための新機軸を打ち出すことができるのかどうかだ。 長年日本銀行に在籍し、現在はエコノミストとして積極的に発信を続ける門間一夫氏は、高市氏が掲げる物価高対策には目先で生活苦を抱える人の痛みを和らげる一定の効果はあると評価する一方で、中・長期的な政策についてはまだ未知数のところが多いと指摘する。高市氏の中長期の経済政策の中には、「危機管理投資」や「成長投資」、「新技術立国を目指す」などのメニューが並び、高市氏自身もAIや半導体、核融合といった分野への大胆な投資を強調しているが、実際の中身はまだ明確になっていないからだ。 そもそも「失われた30年」とは何だったのか。1995年頃に世界有数の経済大国にまで登りつめた日本は、その後の30年、経済成長がほぼ横ばいで実質賃金も上がらないまま低迷した。1995年以降日本の生産年齢人口が減少に転じている以上、日本は一人一人の生産性を上げない限り、成長率はさらに低くなっていくことが避けられないが、1人あたりのGDPもこの30年ほぼ横ばいのまま来てしまった。 門間氏は物価高により名目GDPや税収や株価は上がっているので、景気が回復したかのような言説が一部で流布されているが、日本経済の実際の状態は失われた30年の時よりもさらに悪くなっていると指摘した上で、すでに失われた40年が始まっていると考えるべきだし、このままでは50年、60年経っても日本経済の低迷は避けられないとの悲観的な見通しを示す。その上で、門間氏はそれを避けるために2つの重要なポイントをあげる。 それは格差の解消と、そもそもGDPを増やすことを目的とすべきかを再考することの2点だ。 安倍政権下で採用されたアベノミクスの下では金融緩和、財政出動、構造改革という3本の矢が掲げられたが、門間氏によると、大々的に喧伝された異次元緩和よりも、3本目の矢の一環で行われた資本市場改革の方が実は効果があったと指摘する。経営者がより株主の方を見るようになり、株価を上げる合理的な経営が大企業の多くに根付いた結果、大企業は拡大する見込みのない国内市場から海外へシフトし、国内産業の空洞化が進んだ。また、国内でも非正規雇用の増加や中小企業の切り捨てが進み、格差が広がった。格差の拡大や中小企業の多くが直面する苦境は、アベノミクスが機能した結果でもあると、門間氏は言う。 高市政権もアベノミクスの考えを踏襲しているとすれば、安倍政権下と同様に株価は上がり大企業は空前の好況を享受する一方で、格差はさらに広がり、ワーキングプアと呼ばれる貧困層が膨らみ続ける可能性がある。そして、それが実は自民党の政治基盤を弱体化させ、参政党などの新興政党に多くの票が流れる原因となっている。 日本が格差を放置したままでは、財政をめぐる社会の分断も続き、それが政権がとるべき政策の選択肢を縛ることになる。ところが給付付き税額控除とセットで行うことで富裕層の負担を増やす消費税増税や、明らかに富裕層に有利な金融所得税の増税などは政治的にはリスクが大きいとみられ、政治家は誰もが尻込みしている。 門間氏は、そもそも成長率を上げることを国の目標にすべきなのかについても、いったん立ち止まって考えてみる必要があると言う。無理にGDPを増やそうとするとさまざまな痛みを伴うが、その痛みを甘受してまで成長率を上げることを優先すべきなのか。経済成長も大事だが、国民が豊かさを感じられ、楽しく生きられる社会を作ることも、同じくらい重要なのではないか。そのためには格差是正など、やるべきことがあるのではないか。昨今の政治にはそういった議論が不足していると指摘する。 今われわれが問われているのは、日本をどのような国にしたいのかというビジョンではないか。アメリカのような格差を容認するのか、それとも格差を是正するのか。教育に力を入れ技術立国を目指すのか。あるいは資源の無いことを逆手にとって再生エネルギー大国を目指すのか等々。今の日本にはそのような国の方向性を示す大きなビジョンに対する国民的な合意が何よりも必要だと門間氏は言う。なぜならば、いずれの施策にも財源が必要で、その負担を国民に求める以上、国民がその目的を共有できている必要があるからだ。 高市氏の経済政策はどのようなものか。その経済政策で日本は失われた30年から脱することができるのか。今日本が目指すべき方向とは何なのかなどについて、みずほリサーチ&テクノロジーズ エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so45530720(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/10/20(月) 12:00
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【後半会員パート】富永京子氏生出演!『なぜ社会は変わるのか』2025年10月10日生配信)
ゲストは社会学者の富永京子さん。富永京子さんの話題の最新刊『なぜ社会は変わるのか』をテキストに配信。社会はひとりでに変わっていくわけではない。そこには必ず「変えた」人たちがいる。デモにストライキ、不買運動…社会運動はどのようにして起きるのか?そのメカニズムを徹底深掘りし、そこから激動の時代を生きるための社会を<視る>技術を視聴者に提供する。■参考テキスト:富永京子著『なぜ社会は変わるのか はじての社会運動論』https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000417364●日時:10月10日(金)20時から生配信●出演:富永京子(社会学者)●出演:島田雅彦(作家) 白井聡(政治学者)●司会:ジョー横溝
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【前半無料パート】富永京子氏生出演!『なぜ社会は変わるのか』2025年10月10日生配信)
ゲストは社会学者の富永京子さん。富永京子さんの話題の最新刊『なぜ社会は変わるのか』をテキストに配信。社会はひとりでに変わっていくわけではない。そこには必ず「変えた」人たちがいる。デモにストライキ、不買運動…社会運動はどのようにして起きるのか?そのメカニズムを徹底深掘りし、そこから激動の時代を生きるための社会を<視る>技術を視聴者に提供する。■参考テキスト:富永京子著『なぜ社会は変わるのか はじての社会運動論』https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000417364●日時:10月10日(金)20時から生配信●出演:富永京子(社会学者)●出演:島田雅彦(作家) 白井聡(政治学者)●司会:ジョー横溝
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<マル激・後半>権力に抗えないNHKの肥大化が意味すること/砂川浩慶氏(立教大学社会学部教授)
政治に弱いNHKの一人勝ちを許していて、本当に大丈夫なのだろうか。 この10月からNHKによる「NHK ONE」という新しいネットサービスが始まった。これはテレビのNHKで放送されている内容がそのままネットでも配信されるもので、10月1日に施行された改正放送法によって、ネット配信がNHKの「必須業務」に指定され、NHKがネット配信を通じてNHKを視聴する人からも受信料を徴収することが可能になったことを受けたものだ。NHK ONEでは放送の同時配信に加え、過去の番組をオンディマンドで視聴できる「見逃し配信」や記事の配信などのサービスも提供される。 受信料収入の伸び悩みに苦しんできたNHKは、かねてよりネット配信を通じた課金が悲願だった。今回ようやくその悲願を達成したことになるが、問題は受信料収入という巨大な安定財源を持つNHKという団体が、政治や行政に極端に弱い立場にあることだ。そのNHKが特に報道の分野で放送のみならずネット市場でも他社を席巻するようなことになれば、日本の報道市場は政府や政権与党に忖度した情報で溢れかえることになりかねない。 NHKの番組は2020年4月からインターネットで同時配信されているが、今回の法改正では放送を補完する「任意業務」にすぎなかったNHKのインターネット配信が、放送と同じ「必須業務」に格上げされ、ネット配信のみの視聴者からも受信料の徴収が可能になった。当面、既に受信料を払っている世帯は追加負担なくインターネット上のコンテンツを利用できるとしているほか、スマホやパソコンを持っているだけでは受信料は発生しないという方針のようだが、元々NHKの野望は斜陽産業化している放送事業への依存から脱皮し、ネットでも課金できるようになることだったため、そう遠くない将来、課金の範囲が広がる可能性は否定できない。 メディア法制度に詳しい立教大学社会学部教授の砂川浩慶氏は、今回のインターネット業務の必須業務化は政治と行政とNHKの妥協の産物でしかなく、NHK ONEがNHKにとって基幹ビジネスに育っていく可能性は非常に低いだろうと言う。本来NHKは放送との単なる同時配信だけではなくインターネット上で独自のサービスを提供し別料金を徴収することを目指していたが、菅政権を始めとする政治権力がこれを寄ってたかって潰してしまったと砂川氏はいう。その結果、NHK ONEが始まっても何か劇的にサービスが充実したわけでもない。また、NHK ONEにより受信料を新たに払うことになる人はほとんどいないだろうと砂川氏は語る。 とはいえ今回の法改正で、NHKのインターネット事業がNHKの必須業務として認められたことは確かだ。NHKのネット事業の拡大に対して日本新聞協会や民放連は、民業圧迫になる懸念を示しているが、年間6,000億円という圧倒的な受信料収入を持つNHKがフルにネットに参入してくれば、市場を席巻する可能性は排除できない。 では、なぜNHKが市場を席巻し他の事業者を駆逐することが問題なのか。それは、受信料という事実上の税金によって運営されているNHKが相手では、他の民間事業者との間に公正な競争が生まれないという問題もあるが、それにもまして問題なのは、そのような特権的な地位にあるがゆえにNHKは政府に対して極端に弱い立場にあることだ。 NHKは予算に国会の承認を必要とする上、組織のトップである経営委員会の委員の任命にも衆参両議院の同意が必要だ。これまでもNHKには政治介入を許したり、元総務省OBが天下っている日本郵政からのいいがかりのような抗議にも全面降伏した前歴がある。そのNHKがどんどん肥大化し、他の事業者を駆逐するようになれば、それは日本の言論、とりわけ政府や権力をチェックする言論が大きく後退することになる。 今、アメリカではトランプ政権が大手放送局や公共放送局に対する介入の度合いを強めている。そして、そのほぼすべてで放送局側が政権に全面降伏している。それは特にアメリカでは放送局が他のメディアビジネスの傘下に入り、親会社が政権や政権の影響下にあるFCC(連邦通信委員会)からの認可を必要とするようになっているからだ。また政府からの助成金に依存している公共放送の場合は、トランプ政権が助成金を引き上げた途端に経営が立ち行かなくなっている。 言論という事業は過度な商業主義に走ることで政府の認可を必要としたり、公共放送のように政府の補助金に依存していては、いざ政府が言論に対して牙を剥いてきた時、それと対峙することができず、結果的に自由な言論を守ることができないのだ。 アメリカで起きていることは単なる対岸の火事と思うことなかれ。現時点で次期総理になる可能性が一番高い高市早苗自民党総裁は、総務大臣当時、政権の放送局への介入は当然の権利であるとの見解を明らかにしている。アメリカで起きていることは大抵10年くらい後で日本でも起きていることを考えると、権力の言論への介入は決して他人事として見過ごしていい問題ではない。 NHKのネット業務をめぐる放送法改正により何がどう変わるのか。NHKが政治的に脆弱な現行の体制のまま肥大化することにどのような問題があるのかなどについて、立教大学社会学部教授の砂川浩慶氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so45501544(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/10/13(月) 12:00
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会員無料 63:35
<マル激・前半>権力に抗えないNHKの肥大化が意味すること/砂川浩慶氏(立教大学社会学部教授)
政治に弱いNHKの一人勝ちを許していて、本当に大丈夫なのだろうか。 この10月からNHKによる「NHK ONE」という新しいネットサービスが始まった。これはテレビのNHKで放送されている内容がそのままネットでも配信されるもので、10月1日に施行された改正放送法によって、ネット配信がNHKの「必須業務」に指定され、NHKがネット配信を通じてNHKを視聴する人からも受信料を徴収することが可能になったことを受けたものだ。NHK ONEでは放送の同時配信に加え、過去の番組をオンディマンドで視聴できる「見逃し配信」や記事の配信などのサービスも提供される。 受信料収入の伸び悩みに苦しんできたNHKは、かねてよりネット配信を通じた課金が悲願だった。今回ようやくその悲願を達成したことになるが、問題は受信料収入という巨大な安定財源を持つNHKという団体が、政治や行政に極端に弱い立場にあることだ。そのNHKが特に報道の分野で放送のみならずネット市場でも他社を席巻するようなことになれば、日本の報道市場は政府や政権与党に忖度した情報で溢れかえることになりかねない。 NHKの番組は2020年4月からインターネットで同時配信されているが、今回の法改正では放送を補完する「任意業務」にすぎなかったNHKのインターネット配信が、放送と同じ「必須業務」に格上げされ、ネット配信のみの視聴者からも受信料の徴収が可能になった。当面、既に受信料を払っている世帯は追加負担なくインターネット上のコンテンツを利用できるとしているほか、スマホやパソコンを持っているだけでは受信料は発生しないという方針のようだが、元々NHKの野望は斜陽産業化している放送事業への依存から脱皮し、ネットでも課金できるようになることだったため、そう遠くない将来、課金の範囲が広がる可能性は否定できない。 メディア法制度に詳しい立教大学社会学部教授の砂川浩慶氏は、今回のインターネット業務の必須業務化は政治と行政とNHKの妥協の産物でしかなく、NHK ONEがNHKにとって基幹ビジネスに育っていく可能性は非常に低いだろうと言う。本来NHKは放送との単なる同時配信だけではなくインターネット上で独自のサービスを提供し別料金を徴収することを目指していたが、菅政権を始めとする政治権力がこれを寄ってたかって潰してしまったと砂川氏はいう。その結果、NHK ONEが始まっても何か劇的にサービスが充実したわけでもない。また、NHK ONEにより受信料を新たに払うことになる人はほとんどいないだろうと砂川氏は語る。 とはいえ今回の法改正で、NHKのインターネット事業がNHKの必須業務として認められたことは確かだ。NHKのネット事業の拡大に対して日本新聞協会や民放連は、民業圧迫になる懸念を示しているが、年間6,000億円という圧倒的な受信料収入を持つNHKがフルにネットに参入してくれば、市場を席巻する可能性は排除できない。 では、なぜNHKが市場を席巻し他の事業者を駆逐することが問題なのか。それは、受信料という事実上の税金によって運営されているNHKが相手では、他の民間事業者との間に公正な競争が生まれないという問題もあるが、それにもまして問題なのは、そのような特権的な地位にあるがゆえにNHKは政府に対して極端に弱い立場にあることだ。 NHKは予算に国会の承認を必要とする上、組織のトップである経営委員会の委員の任命にも衆参両議院の同意が必要だ。これまでもNHKには政治介入を許したり、元総務省OBが天下っている日本郵政からのいいがかりのような抗議にも全面降伏した前歴がある。そのNHKがどんどん肥大化し、他の事業者を駆逐するようになれば、それは日本の言論、とりわけ政府や権力をチェックする言論が大きく後退することになる。 今、アメリカではトランプ政権が大手放送局や公共放送局に対する介入の度合いを強めている。そして、そのほぼすべてで放送局側が政権に全面降伏している。それは特にアメリカでは放送局が他のメディアビジネスの傘下に入り、親会社が政権や政権の影響下にあるFCC(連邦通信委員会)からの認可を必要とするようになっているからだ。また政府からの助成金に依存している公共放送の場合は、トランプ政権が助成金を引き上げた途端に経営が立ち行かなくなっている。 言論という事業は過度な商業主義に走ることで政府の認可を必要としたり、公共放送のように政府の補助金に依存していては、いざ政府が言論に対して牙を剥いてきた時、それと対峙することができず、結果的に自由な言論を守ることができないのだ。 アメリカで起きていることは単なる対岸の火事と思うことなかれ。現時点で次期総理になる可能性が一番高い高市早苗自民党総裁は、総務大臣当時、政権の放送局への介入は当然の権利であるとの見解を明らかにしている。アメリカで起きていることは大抵10年くらい後で日本でも起きていることを考えると、権力の言論への介入は決して他人事として見過ごしていい問題ではない。 NHKのネット業務をめぐる放送法改正により何がどう変わるのか。NHKが政治的に脆弱な現行の体制のまま肥大化することにどのような問題があるのかなどについて、立教大学社会学部教授の砂川浩慶氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so45501758(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/10/13(月) 12:00
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【後半会員パート】中島岳志氏生出演!『“縄文”から戦後の思想を紐解く』(2025年10月9日生放送)
2025年話題の1冊、中島岳志著『縄文』をテキストにしての配信。この中島氏の『縄文』は縄文について書いておらず、戦後の知識人、芸術家が縄文をどう見たかのか?縄文に何を仮託して縄文を語ってきたのか?の言説史を書いている。そして、その縄文を最初は左翼が、今はスピリチュアリズムを好む参政党など右派が縄文を好んでいるが、その転換がなぜ起きたのかも理解できる。この話題の『縄文』を紹介しながら戦後の思想を紐解く。■参考テキスト:中島岳志著『縄文 革命とナショナリズム』(太田出版)https://www.ohtabooks.com/publish/2025/06/24183925.html●日時:10月9日(木)20時から生配信●ゲスト:中島岳志(政治学者)●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)●司会:ジョー横溝
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【前半無料パート】中島岳志氏生出演!『“縄文”から戦後の思想を紐解く』(2025年10月9日生放送)
2025年話題の1冊、中島岳志著『縄文』をテキストにしての配信。この中島氏の『縄文』は縄文について書いておらず、戦後の知識人、芸術家が縄文をどう見たかのか?縄文に何を仮託して縄文を語ってきたのか?の言説史を書いている。そして、その縄文を最初は左翼が、今はスピリチュアリズムを好む参政党など右派が縄文を好んでいるが、その転換がなぜ起きたのかも理解できる。この話題の『縄文』を紹介しながら戦後の思想を紐解く。■参考テキスト:中島岳志著『縄文 革命とナショナリズム』(太田出版)https://www.ohtabooks.com/publish/2025/06/24183925.html●日時:10月9日(木)20時から生配信●ゲスト:中島岳志(政治学者)●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)●司会:ジョー横溝
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RONDAN FES直前スペシャル! 宮台真司、ダースレイダー、島田雅彦、白井聡、古谷経衡出演全編無料配信!(2025年10月1日21:00~生配信)
「深掘TV」「エアレボリューション」「古谷経衡チャンネル」合同企画!10月4日(土)、10月5日(日)開催の「RONDAN FES 2025 in IZU」開催直前スペシャル。▼チケットご購入⇒https://rondanfes.jp/ticket/現地観覧🎟️2日間通し(+配信チケット):9000円現地観覧🎟️1日(+配信チケット):5000円※駐車場、宿泊チケットも発売中配信🎟️:3500円※アーカイブは12月8日23:59まで視聴可能―――RONDAN FES 2025 in IZU―――https://rondanfes.jp■開催日時10月4日(土)12:00~23:00 ※予定10月5日(日)10:00~19:30 ※予定■開催場所crotchet / school(クロチェット スクール)〒410-2113 伊豆の国市中1606-59※伊豆箱根鉄道駿豆線「伊豆長岡駅」から車で13分程度。※イベント中は伊豆長岡駅⇒会場間シャトルバスが往復しております。●日時:10月1日(水)21から生配信●出演:宮台真司(社会学者)、ダースレイダー(ラッパー)、島田雅彦(作家)、白井聡(政治学者)、古谷経衡(作家・評論家)●司会:ジョー横溝ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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【後半会員パート】井上弘貴氏生出演!『トランプを生み出した思想家たち--アメリカの新右翼を深掘りする』(2025年9月18日生放送)
ゲストは政治学者・井上弘貴氏。, トランプを生み出した思想家たち…テック右派からネオナチまで…アメリカの新右翼を徹底深掘りします。■参考テキスト:井上弘貴氏著『アメリカの新右翼 トランプを生み出した思想家たち』(新潮新書) https://www.shinchosha.co.jp/book/603932/●日時:9月18日(木)20時から生配信●ゲスト:井上弘貴(政治学者)●出演:宮台真司(社会学者)ダースレイダー(ラッパー)●司会:ジョー横溝
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2025/10/10(金) 00:00
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【前半無料パート】井上弘貴氏生出演!『トランプを生み出した思想家たち--アメリカの新右翼を深掘りする』(2025年9月18日~生放送)
ゲストは政治学者・井上弘貴氏。, トランプを生み出した思想家たち…テック右派からネオナチまで…アメリカの新右翼を徹底深掘りします。■参考テキスト:井上弘貴氏著『アメリカの新右翼 トランプを生み出した思想家たち』(新潮新書) https://www.shinchosha.co.jp/book/603932/●日時:9月18日(木)20時から生配信●ゲスト:井上弘貴(政治学者)●出演:宮台真司(社会学者)ダースレイダー(ラッパー)●司会:ジョー横溝
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2025/10/07(火) 00:00
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<マル激・前半>自民党は統治能力を失ってしまったのか/河野有理氏(法政大学法学部教授)
石破首相の退陣表明を受けた自民党総裁選の投開票が10月4日に行われ、決選投票で高市早苗氏が小泉進次郎氏を抑えて第29代自民党総裁に選ばれた。現時点では高市氏が内閣総理大臣に選ばれる可能性が最も高い。 選挙戦では日本記者クラブでの討論会や党本部での共同記者会見などが行われ、それなりにメディアは取り上げたものの、その中身はいたって空疎なものだった。2024年10月の衆院選、2025年7月の参院選で両院とも自公で過半数割れの少数与党に転落した自民党は、あえて党員投票を含む「フルスペック」の総裁選を仕掛けて注目を集めようとしたが、肝心の中身がほとんどなかった。 特に自民党が石破政権の下での2度の国政選挙に大敗し、衆参ともに過半数割れとなった直接の原因ともいうべき裏金問題や統一教会との癒着問題、そして自民党政権の下で続いてきた失われた30年からどう抜け出すのか、そしてトランプ政権の下で明らかに変容しているアメリカとの関係をどうするのかといった、日本にとって根本的な問題に対しては、5人のどの候補からも踏み込んだ発言はなかった。 自民党は統治能力を失ってしまったのか。 日本政治思想史が専門の河野有理・法政大学法学部教授は、今回の総裁選で論点に迫力が出ないのは、1年前に比べて自民党の地位が劇的に低下したからだという。2025年7月の参院選で自公が非改選を含めて過半数を失ったことで、今後20~30年、日本の政党政治はもう安倍政権のような一党多弱の時代には戻らないということがはっきりした。どこかの野党に支持してもらわないと自民党総裁は日本の首相にもなれず、政策も実現できない。一政党の内輪の選挙という感じが強く出てしまったと河野氏は語る。 自民党は少数与党だが、とはいえ野党の足並みが揃わない中、自民党の高市新総裁が次の首相に選ばれる公算は大きい。今回も自民党総裁選が実質的に日本の総理大臣を選ぶ選挙だったことに変わりはないのだが、選挙戦での議論はあまりにもスカスカだった。 河野氏は、かつて55年体制下には今よりむしろ色々な中間団体がいて、癒着といえば癒着なのかもしれないが、利権をめぐる癒着競争があったと指摘する。その活力が失われ、イデオロギー的な動機を持つ宗教団体などが悪目立ちしているというのが自民党の衰退の1つの原因だと言う。 一方、河野氏は、このような基本的な問いに自民党が答えられなくなっている中、代わりとなる競争的なリーダーが現れるというのが本来の民主主義の姿のはずだと語る。そして河野氏は、そうしたリーダーが出てこない原因は、30年前の政治改革の失敗にあると見る。政権交代可能な2大政党制を目指した政治改革はうまくいかず、多党制になり、自民党のオルタナティブを生み出すという構想は崩れてしまった。 自民党政治とは何だったのか、なぜそれが終わりを迎えているのか、日本の政治はどこに向かうのかなどについて、法政大学法学部教授の河野有理氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so45477697(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/10/06(月) 12:00
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<マル激・後半>自民党は統治能力を失ってしまったのか/河野有理氏(法政大学法学部教授)
石破首相の退陣表明を受けた自民党総裁選の投開票が10月4日に行われ、決選投票で高市早苗氏が小泉進次郎氏を抑えて第29代自民党総裁に選ばれた。現時点では高市氏が内閣総理大臣に選ばれる可能性が最も高い。 選挙戦では日本記者クラブでの討論会や党本部での共同記者会見などが行われ、それなりにメディアは取り上げたものの、その中身はいたって空疎なものだった。2024年10月の衆院選、2025年7月の参院選で両院とも自公で過半数割れの少数与党に転落した自民党は、あえて党員投票を含む「フルスペック」の総裁選を仕掛けて注目を集めようとしたが、肝心の中身がほとんどなかった。 特に自民党が石破政権の下での2度の国政選挙に大敗し、衆参ともに過半数割れとなった直接の原因ともいうべき裏金問題や統一教会との癒着問題、そして自民党政権の下で続いてきた失われた30年からどう抜け出すのか、そしてトランプ政権の下で明らかに変容しているアメリカとの関係をどうするのかといった、日本にとって根本的な問題に対しては、5人のどの候補からも踏み込んだ発言はなかった。 自民党は統治能力を失ってしまったのか。 日本政治思想史が専門の河野有理・法政大学法学部教授は、今回の総裁選で論点に迫力が出ないのは、1年前に比べて自民党の地位が劇的に低下したからだという。2025年7月の参院選で自公が非改選を含めて過半数を失ったことで、今後20~30年、日本の政党政治はもう安倍政権のような一党多弱の時代には戻らないということがはっきりした。どこかの野党に支持してもらわないと自民党総裁は日本の首相にもなれず、政策も実現できない。一政党の内輪の選挙という感じが強く出てしまったと河野氏は語る。 自民党は少数与党だが、とはいえ野党の足並みが揃わない中、自民党の高市新総裁が次の首相に選ばれる公算は大きい。今回も自民党総裁選が実質的に日本の総理大臣を選ぶ選挙だったことに変わりはないのだが、選挙戦での議論はあまりにもスカスカだった。 河野氏は、かつて55年体制下には今よりむしろ色々な中間団体がいて、癒着といえば癒着なのかもしれないが、利権をめぐる癒着競争があったと指摘する。その活力が失われ、イデオロギー的な動機を持つ宗教団体などが悪目立ちしているというのが自民党の衰退の1つの原因だと言う。 一方、河野氏は、このような基本的な問いに自民党が答えられなくなっている中、代わりとなる競争的なリーダーが現れるというのが本来の民主主義の姿のはずだと語る。そして河野氏は、そうしたリーダーが出てこない原因は、30年前の政治改革の失敗にあると見る。政権交代可能な2大政党制を目指した政治改革はうまくいかず、多党制になり、自民党のオルタナティブを生み出すという構想は崩れてしまった。 自民党政治とは何だったのか、なぜそれが終わりを迎えているのか、日本の政治はどこに向かうのかなどについて、法政大学法学部教授の河野有理氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so45477707(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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【後半会員パート】田中将人氏生出演!『平等とは何か』(2025年9月3日生放送)
ゲストは政治哲学・政治思想史を専門とする岡山商科大学法学部准教授・田中将人氏。氏の最新刊にして話題の著『平等とは何か』をテキストに議論を展開します。一億総中流といわれてきた日本も、いまや格差が広がり、社会の分断も進んでいます。人生が親ガチャ・運しだいでよいのか。能力主義は正しいか。そもそも不平等の何がわるいのか。日本の「失われた30年」を振り返り、政治哲学と思想史の知見から世界を覆う不平等に切り込み、経済・政治・評価の平等を問いなおします。■参考テキスト『平等とは何か 運、格差、能力主義を問いなおす』(中公新書)https://www.chuko.co.jp/shinsho/2025/03/102846.html※都合によりダースレイダーさんはお休みとなります。●日時:9月3日(水)20時から生配信●ゲスト:田中将人(政治思想史研究者)●出演:宮台真司(社会学者)●司会:ジョー横溝
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【前半無料パート】田中将人氏生出演!『平等とは何か』(2025年9月3日生放送)
ゲストは政治哲学・政治思想史を専門とする岡山商科大学法学部准教授・田中将人氏。氏の最新刊にして話題の著『平等とは何か』をテキストに議論を展開します。一億総中流といわれてきた日本も、いまや格差が広がり、社会の分断も進んでいます。人生が親ガチャ・運しだいでよいのか。能力主義は正しいか。そもそも不平等の何がわるいのか。日本の「失われた30年」を振り返り、政治哲学と思想史の知見から世界を覆う不平等に切り込み、経済・政治・評価の平等を問いなおします。■参考テキスト『平等とは何か 運、格差、能力主義を問いなおす』(中公新書)https://www.chuko.co.jp/shinsho/2025/03/102846.html※都合によりダースレイダーさんはお休みとなります。●日時:9月3日(水)20時から生配信●ゲスト:田中将人(政治思想史研究者)●出演:宮台真司(社会学者)●司会:ジョー横溝
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<マル激・後半>見えてきたトランプ関税の真の狙いとその影響/前田和馬氏(第一生命経済研究所主任エコノミスト)
結局、トランプ関税とは何だったのか。 トランプ政権は4月、約60の国・地域に対し、10%~50%にのぼる高率の「相互関税」を一方的に課すことを発表し、その後、各国との交渉に入った。アメリカ側は税率を下げて欲しければ、交換条件としてアメリカ製品を買うなりアメリカに投資するなりして、何らかの形でアメリカに利益をもたらす措置を取るよう求めてきたのだ。 そしてここに来て中国やインド、ブラジルなど一部の国を除き一連の交渉が概ね妥結したため、トランプ関税の全貌がほぼ出揃った形となった。 そもそもトランプ関税の発端は無名のエコノミストが書いた1本の論文だった。ハドソン・ベイ・キャピタルのシニアストラテジストだったスティーブン・ミラン氏が、トランプ大統領が大統領選挙に勝利した直後の2024年11月に発表した「ミラン・ペーパー」と呼ばれるものだ。その論文の内容をトランプ大統領がひどく気に入り、トランプ政権の経済政策の理論的基盤に据えることとなった。 ミラン氏の主張は、ドルが世界の基軸通貨であるがゆえに、アメリカはドル高を甘受せざるを得ず、それがアメリカの製造業を衰退させてきたというもの。そのため、アメリカ経済を再興するためにはドル高を是正する必要があり、それを実現するための有効な交渉カードとして、アメリカは関税を利用すべきだとミラン氏は主張していた。同時にミラン氏は、アメリカが関税と並んでその圧倒的な軍事力も交渉カードに使うことも提唱する。アメリカにとって有利な条件をのまない国に対しては、安全を保障しないというカードを切ればいいというのだ。関税と軍事力という2つのツールを使って、世界の貿易体制をアメリカにとってより有利なものに変えていこうというのが、ミラン・ペーパーの趣旨だった。 ところが、それまでまったく無名だったミラン氏は、第2次トランプ政権でCEA(大統領経済諮問委員会)委員長の重責を与えられたばかりか、9月16日にはFRB(連邦準備制度理事会)理事に就任している。これを見てもミラン氏の考えがトランプ政権の経済政策に多大な影響を与えていることは間違いないだろう。つまり、トランプ政権にとって関税はそれ自体が目的ではなく、あくまで交渉を有利に進めるための武器として利用している可能性が大きいということだ。 さて、問題は日本だ。日本は石破茂首相の数少ない側近の1人だった赤沢亮正経済財政・再生相がアメリカとの粘り強い交渉の結果、8月1日から導入が予定されていた25%の関税を15%に引き下げることに成功したとされる。それはそれで評価に値しようが、しかし、トランプ政権の真の目的が関税そのものではなかったことを忘れてはならない。 日本は関税を15%に下げることと引き換えに、2029年1月19日までにアメリカに80兆円の投資をすることに同意している。2029年1月19日というのは、トランプ大統領の任期が終わる日だ。これは金額が巨額な上、投資先は事実上アメリカが一方的に決められるようになっている。日本がその案件を拒否するのは自由だが、その場合、アメリカはふたたび関税を25%に戻すことができるような建て付けになっているため、事実上日本側に拒否権はないも同然だ。アメリカが一方的に決めた事業に日本はほぼ無条件で80兆円もの巨額の出資や融資を行うことになってしまった。 第一生命経済研究所主任エコノミストでアメリカウォッチャーでもある前田和馬氏は、世界一金融が発達しているアメリカで、良質な投資案件が80兆円分も残っているとは考えにくいという。利益が出る事業なら、とっくに民間が投資していると考えられるからだ。 しかも、日本はその80兆円を捻出するために、為替相場の急激な変動に対応するための特別会計である外国為替資金特別会計(外為特会)を使う予定だそうだ。実際に80兆円を投資するのは民間の金融機関や企業になるとしても、この投資には政府が何らかの保証を付ける必要がある。そこで政府系金融機関のJBIC(国際協力銀行)や NEXI(日本貿易保険)などが融資保証を行うとともに、JBICが財投債を発行し、これを外為特会で引き受けることで80兆円を捻出する計画のようだ。 トランプ大統領はアメリカメディアのインタビューで「関税を少し下げてやっただけで、5,500億ドルを引き出せた」と満足げに語っているが、早い話が外為特会160兆円の半分を、トランプ政権が自由に使えるお金としてくれてやったようなものだった可能性が大きいのではないか。 言うまでもないが、万が一事業が失敗し融資や出資の一部が焦げ付いた場合、裏書きをしているJBICはたちまち破綻の危機に瀕することになり、政府はその損失を公的資金、つまり税金で埋めなければならなくなる。 日本にとっては何もいいことのない条件で合意しているようにしか見えないが、前田氏は、そもそもアメリカが一方的に関税をかけてきて、何をすれば下げてくれるのかという不平等な立場での交渉を強いられていたことを考えると、今回の合意は日本にとっては悪くはなかったのではないかと言う。 トランプ関税の影響はどこまで見えてきたのか、日本はどのように対応すべきか、世界経済の形はどこまで変わるのかなどについて、第一生命経済研究所主任エコノミストの前田和馬氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so45451714(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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<マル激・前半>見えてきたトランプ関税の真の狙いとその影響/前田和馬氏(第一生命経済研究所主任エコノミスト)
結局、トランプ関税とは何だったのか。 トランプ政権は4月、約60の国・地域に対し、10%~50%にのぼる高率の「相互関税」を一方的に課すことを発表し、その後、各国との交渉に入った。アメリカ側は税率を下げて欲しければ、交換条件としてアメリカ製品を買うなりアメリカに投資するなりして、何らかの形でアメリカに利益をもたらす措置を取るよう求めてきたのだ。 そしてここに来て中国やインド、ブラジルなど一部の国を除き一連の交渉が概ね妥結したため、トランプ関税の全貌がほぼ出揃った形となった。 そもそもトランプ関税の発端は無名のエコノミストが書いた1本の論文だった。ハドソン・ベイ・キャピタルのシニアストラテジストだったスティーブン・ミラン氏が、トランプ大統領が大統領選挙に勝利した直後の2024年11月に発表した「ミラン・ペーパー」と呼ばれるものだ。その論文の内容をトランプ大統領がひどく気に入り、トランプ政権の経済政策の理論的基盤に据えることとなった。 ミラン氏の主張は、ドルが世界の基軸通貨であるがゆえに、アメリカはドル高を甘受せざるを得ず、それがアメリカの製造業を衰退させてきたというもの。そのため、アメリカ経済を再興するためにはドル高を是正する必要があり、それを実現するための有効な交渉カードとして、アメリカは関税を利用すべきだとミラン氏は主張していた。同時にミラン氏は、アメリカが関税と並んでその圧倒的な軍事力も交渉カードに使うことも提唱する。アメリカにとって有利な条件をのまない国に対しては、安全を保障しないというカードを切ればいいというのだ。関税と軍事力という2つのツールを使って、世界の貿易体制をアメリカにとってより有利なものに変えていこうというのが、ミラン・ペーパーの趣旨だった。 ところが、それまでまったく無名だったミラン氏は、第2次トランプ政権でCEA(大統領経済諮問委員会)委員長の重責を与えられたばかりか、9月16日にはFRB(連邦準備制度理事会)理事に就任している。これを見てもミラン氏の考えがトランプ政権の経済政策に多大な影響を与えていることは間違いないだろう。つまり、トランプ政権にとって関税はそれ自体が目的ではなく、あくまで交渉を有利に進めるための武器として利用している可能性が大きいということだ。 さて、問題は日本だ。日本は石破茂首相の数少ない側近の1人だった赤沢亮正経済財政・再生相がアメリカとの粘り強い交渉の結果、8月1日から導入が予定されていた25%の関税を15%に引き下げることに成功したとされる。それはそれで評価に値しようが、しかし、トランプ政権の真の目的が関税そのものではなかったことを忘れてはならない。 日本は関税を15%に下げることと引き換えに、2029年1月19日までにアメリカに80兆円の投資をすることに同意している。2029年1月19日というのは、トランプ大統領の任期が終わる日だ。これは金額が巨額な上、投資先は事実上アメリカが一方的に決められるようになっている。日本がその案件を拒否するのは自由だが、その場合、アメリカはふたたび関税を25%に戻すことができるような建て付けになっているため、事実上日本側に拒否権はないも同然だ。アメリカが一方的に決めた事業に日本はほぼ無条件で80兆円もの巨額の出資や融資を行うことになってしまった。 第一生命経済研究所主任エコノミストでアメリカウォッチャーでもある前田和馬氏は、世界一金融が発達しているアメリカで、良質な投資案件が80兆円分も残っているとは考えにくいという。利益が出る事業なら、とっくに民間が投資していると考えられるからだ。 しかも、日本はその80兆円を捻出するために、為替相場の急激な変動に対応するための特別会計である外国為替資金特別会計(外為特会)を使う予定だそうだ。実際に80兆円を投資するのは民間の金融機関や企業になるとしても、この投資には政府が何らかの保証を付ける必要がある。そこで政府系金融機関のJBIC(国際協力銀行)や NEXI(日本貿易保険)などが融資保証を行うとともに、JBICが財投債を発行し、これを外為特会で引き受けることで80兆円を捻出する計画のようだ。 トランプ大統領はアメリカメディアのインタビューで「関税を少し下げてやっただけで、5,500億ドルを引き出せた」と満足げに語っているが、早い話が外為特会160兆円の半分を、トランプ政権が自由に使えるお金としてくれてやったようなものだった可能性が大きいのではないか。 言うまでもないが、万が一事業が失敗し融資や出資の一部が焦げ付いた場合、裏書きをしているJBICはたちまち破綻の危機に瀕することになり、政府はその損失を公的資金、つまり税金で埋めなければならなくなる。 日本にとっては何もいいことのない条件で合意しているようにしか見えないが、前田氏は、そもそもアメリカが一方的に関税をかけてきて、何をすれば下げてくれるのかという不平等な立場での交渉を強いられていたことを考えると、今回の合意は日本にとっては悪くはなかったのではないかと言う。 トランプ関税の影響はどこまで見えてきたのか、日本はどのように対応すべきか、世界経済の形はどこまで変わるのかなどについて、第一生命経済研究所主任エコノミストの前田和馬氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so45451971(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/09/29(月) 12:00
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<マル激・後半>現行の学習指導要領体制のままでは日本の教育はよくならない/植田健男氏(名古屋大学名誉教授)
学習指導要領は今のままでよいのか。 10年に1度の学習指導要領の改訂に向けて、今月19日、文科大臣の諮問機関である中央教育審議会(中教審)が「論点整理」をまとめた。今後、これに沿って各教科で具体的な内容の検討が進められ、来年度中に中教審として答申する。その後、小・中・高の学習指導要領が順次改訂されることになっている。 実は、前回から学習指導要領改訂のプロセスが大きく変わっている。中教審のなかに教育課程企画特別部会が設けられ、教科の枠を超えた根本的な課題の議論をまず行うことになった。19日に出された「論点整理」がこれに当たる。次期学習指導要領に向け、主体的・対話的で深い学び、多様性の包摂、実現可能性の確保の3つを基本的な方向性として示し、分かりやすく使いやすい学習指導要領、調整授業時数制度の創設、「余白」の創出を通じた教育の質の向上、などを挙げている。 名古屋大学名誉教授で教育経営学が専門の植田健男氏は、論点整理の内容には一定の評価をしつつも、教育内容を一元的に管理しようとする現行の学習指導要領体制のやり方自体を変えないままでは、現場の負担を増やすだけで逆にますます教育自体が疲弊していくことを懸念する。 植田氏によれば、学習指導要領は戦後間もない1947年に「これまで上から与えられたことをそのとおりに実行するといった画一的な傾向を反省して、下の方からみんなの力でつくりあげよう」と当時の文部省が試案として発表したのが始まりで、当初は地域や児童・生徒の実態に応じて使っていく手引書といった扱いだったという。それが、1958年に文部省告示として「教育課程の基準」とされ、いつの間にか法的拘束力があるような誤った解釈が広がったという。さらに、教科書検定や全国一斉の学力テスト、大学入学試験なども学習指導要領が基準になっているため、学校現場は学習指導要領に縛られざるをえない状況に追い込まれている。 植田氏は、10年前の前回の改訂時の議論で、この1958年体制ともいえる画一的な学習指導要領のあり方を見直し、地域や子どもたちの実態に応じて一つひとつの学校が創意・工夫を凝らす「教育課程」の重要性が強調されたことに期待していたという。しかし結局は、教育内容や方法を縛る従来の学習指導要領のあり方そのものには手をつけられないままとなっている。 2年前には、子どもたちに合った教育課程を実施していたとされる奈良教育大附属小学校の授業が学習指導要領通りでないとの理由から、文科省や県教育委員会の介入が行われ、教員が異動させられるという事態も起きている。植田氏は、どのような教育課程が作られ、それがどれほど子どもたちに合ったものになっているかという観点から検討されることが重要だったはずだと指摘する。 グローバル化、デジタル化といった時代の変化のなかで教育はどうあるべきなのか、教育課程づくりの重要性を指摘し続けてきた植田健男氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。前半はこちら→so45423866(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/09/22(月) 12:00
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<マル激・前半>現行の学習指導要領体制のままでは日本の教育はよくならない/植田健男氏(名古屋大学名誉教授)
学習指導要領は今のままでよいのか。 10年に1度の学習指導要領の改訂に向けて、今月19日、文科大臣の諮問機関である中央教育審議会(中教審)が「論点整理」をまとめた。今後、これに沿って各教科で具体的な内容の検討が進められ、来年度中に中教審として答申する。その後、小・中・高の学習指導要領が順次改訂されることになっている。 実は、前回から学習指導要領改訂のプロセスが大きく変わっている。中教審のなかに教育課程企画特別部会が設けられ、教科の枠を超えた根本的な課題の議論をまず行うことになった。19日に出された「論点整理」がこれに当たる。次期学習指導要領に向け、主体的・対話的で深い学び、多様性の包摂、実現可能性の確保の3つを基本的な方向性として示し、分かりやすく使いやすい学習指導要領、調整授業時数制度の創設、「余白」の創出を通じた教育の質の向上、などを挙げている。 名古屋大学名誉教授で教育経営学が専門の植田健男氏は、論点整理の内容には一定の評価をしつつも、教育内容を一元的に管理しようとする現行の学習指導要領体制のやり方自体を変えないままでは、現場の負担を増やすだけで逆にますます教育自体が疲弊していくことを懸念する。 植田氏によれば、学習指導要領は戦後間もない1947年に「これまで上から与えられたことをそのとおりに実行するといった画一的な傾向を反省して、下の方からみんなの力でつくりあげよう」と当時の文部省が試案として発表したのが始まりで、当初は地域や児童・生徒の実態に応じて使っていく手引書といった扱いだったという。それが、1958年に文部省告示として「教育課程の基準」とされ、いつの間にか法的拘束力があるような誤った解釈が広がったという。さらに、教科書検定や全国一斉の学力テスト、大学入学試験なども学習指導要領が基準になっているため、学校現場は学習指導要領に縛られざるをえない状況に追い込まれている。 植田氏は、10年前の前回の改訂時の議論で、この1958年体制ともいえる画一的な学習指導要領のあり方を見直し、地域や子どもたちの実態に応じて一つひとつの学校が創意・工夫を凝らす「教育課程」の重要性が強調されたことに期待していたという。しかし結局は、教育内容や方法を縛る従来の学習指導要領のあり方そのものには手をつけられないままとなっている。 2年前には、子どもたちに合った教育課程を実施していたとされる奈良教育大附属小学校の授業が学習指導要領通りでないとの理由から、文科省や県教育委員会の介入が行われ、教員が異動させられるという事態も起きている。植田氏は、どのような教育課程が作られ、それがどれほど子どもたちに合ったものになっているかという観点から検討されることが重要だったはずだと指摘する。 グローバル化、デジタル化といった時代の変化のなかで教育はどうあるべきなのか、教育課程づくりの重要性を指摘し続けてきた植田健男氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。後半はこちら→so45424146(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/09/22(月) 12:00
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#38【後半会員パート】西田亮介氏生出演!『石破総理辞任・総裁選をめぐって他』(2025年9月11日放送)
社会学者・西田亮介氏が番組初登場!前半はメディア論で、西田氏の新刊『エモさと報道』をテキストにして討論を展開。そして、後半は…9月7日に発表された石破総理辞任をめぐって、その後の総裁選など政局・政治談議をたっぷりとお送りします!■参考テキスト:西田亮介著『エモさと報道』(ゲンロン)https://shop.genron.co.jp/products/emosatobao-dao-xi-tian-liang-jie●日時:9月11日(木)20時から生配信●ゲスト:西田亮介(社会学者)●出演:古谷経衡(作家・評論家)●司会:ジョー横溝
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2025/09/18(木) 00:00
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#38【前半無料パート】西田亮介氏生出演!『石破総理辞任・総裁選をめぐって他』(2025年9月11日放送)
社会学者・西田亮介氏が番組初登場!前半はメディア論で、西田氏の新刊『エモさと報道』をテキストにして討論を展開。そして、後半は…9月7日に発表された石破総理辞任をめぐって、その後の総裁選など政局・政治談議をたっぷりとお送りします!■参考テキスト:西田亮介著『エモさと報道』(ゲンロン)https://shop.genron.co.jp/products/emosatobao-dao-xi-tian-liang-jie●日時:9月11日(木)20時から生配信●ゲスト:西田亮介(社会学者)●出演:古谷経衡(作家・評論家)●司会:ジョー横溝
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<マル激・後半>陰謀論を侮ってはならないこれだけの理由/烏谷昌幸氏(慶應義塾大学法学部教授)
世界中で陰謀論が政治や社会に深刻な影響を与え始めている。一見荒唐無稽なトンデモ話にしか見えないような情報が、SNS上で集積され広く拡散されることで、実際の市民生活や一国の国政選挙にまで影響を及ぼし始めているのだ。もはや世界は現実の世界とパラレルワールドの識別がつかないところまで来ていると言っても過言ではないかもしれない。 著書『となりの陰謀論』の中で陰謀論を甘く見ることの危険性を指摘している慶應義塾大学法学部教授の烏谷昌幸氏は、陰謀論を「出来事の原因を誰かの陰謀であると不確かな根拠をもとに決めつける考え方」と定義した上で、素朴な陰謀論的思考は昔から人々の中にあったが、それがネット環境の中で過激なものに変異を遂げていると語る。烏谷氏によると、普段めったに起きないことが続けて起きると、人間の脳はそれをつなげて考えたくなり、偶然の一致に過剰な意味を読み込んでしまう習性がある。そこに、陰謀論が巧みに入り込んで来る余地ができるのだと言う。 しかし、陰謀論が広がっている状況を軽視するのは危険だと烏谷氏は言う。陰謀論の背景には人々の厳然たる剝奪感があるからだ。何か大事なものが奪われたという被害感情や、大事なものが奪われようとしているのではないかという不安や恐怖に支配されると、人間はその原因を説明する単純な答えに飛びつきたくなる。陰謀論の型は「信じられないほどの巨悪が糸を引いて公正な競争を歪めている」というものだが、そこには「悪いのはあなたではない」という隠れたメッセージがあるのだという。つまり、多くの人が陰謀論に引き寄せられることには原因があり、その原因に手当てしない限り、陰謀論は収まるどころか、更に広がっていくことが避けられない。 実際の陰謀論は多種多様だ。「選挙に不正があった」といった誰が信じてもおかしくないものもあれば、コロナやコロナワクチンが世界の人口を減らすための陰謀だと主張するものや、果てはオバマ元大統領もバイデン元大統領も本当はすでに処刑されていて偽物がゴムマスクを被っているのだといったものまである。その対象は宇宙人からディープステート、秘密結社、国際金融資本等々の伝統的なものから、最近では地球温暖化、パンデミックにワクチン、財務省の緊縮財政など多岐に渡る。中には一見すると誰も信じそうにない極端な陰謀論も多いが、そんなものでもYouTubeなどに出てくる関連動画を見続ける中で、無関係な点と点をつなぎ隠れていたものを暴き出すナラティブ(物語性)が徐々に説得力を持つようになり、気がつけばパラノイド性の強い陰謀論者になっている人が増えているのだと烏谷氏は言う。 世界的に見ると、陰謀論が最初に猛威を振るったのはアメリカだった。トランプ支持者の多くが、「2020年の大統領選挙には不正があった」、「ディープステートがアメリカを牛耳っている」、「非白人を意図的に移民させることで白人の政治力と文化を衰退させようという陰謀がある」といった陰謀論を主張している。トランプ大統領自身がこれらの陰謀論を本気で信じているかどうかは疑わしいが、政治的にはこれを積極的に利用している。実際、アメリカでは選挙不正を訴える人々が暴徒化し、2021年1月6日の議会襲撃事件まで引き起こすなど、陰謀論はもはや単なるトンデモ話にとどまらず、現実の世界に影響を与えている。 サイバーセキュリティが専門で、情報セキュリティ大学院大学客員研究員の長迫智子氏は、陰謀論は今や安全保障上の脅威になっていることを指摘する。人々の認知領域に攻撃を加える「認知戦」では、分かりやすく世界を説明する物語である陰謀論は広まりやすいため使いやすいのだ。 これまで日本語の壁に守られてきた日本も、生成AIの進歩によって誰でも自然な日本語が容易に書けるようになったことで、遅ればせながら外国勢力によるSNS上のディスインフォメーションの標的になり始めていることがようやく明らかになってきた。政府もようやくそれを認識し、遅ればせながら対策に乗り出し始めているが、明らかに後手に回っている。 さらに日本では国政選挙でも、陰謀論的な言説を党の主張に盛り込んだ参政党が大きく党勢を伸ばしており、もはや日本も陰謀論を対岸の火事と傍観していられる状態にはなくなっていると烏谷氏は言う。 陰謀論とは何か、陰謀論はどのようにして生まれるのか、なぜ人は陰謀論を信じてしまうのかなどについて、慶應義塾大学法学部教授の烏谷昌幸氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so45399642(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/09/15(月) 12:00
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<マル激・前半>陰謀論を侮ってはならないこれだけの理由/烏谷昌幸氏(慶應義塾大学法学部教授)
世界中で陰謀論が政治や社会に深刻な影響を与え始めている。一見荒唐無稽なトンデモ話にしか見えないような情報が、SNS上で集積され広く拡散されることで、実際の市民生活や一国の国政選挙にまで影響を及ぼし始めているのだ。もはや世界は現実の世界とパラレルワールドの識別がつかないところまで来ていると言っても過言ではないかもしれない。 著書『となりの陰謀論』の中で陰謀論を甘く見ることの危険性を指摘している慶應義塾大学法学部教授の烏谷昌幸氏は、陰謀論を「出来事の原因を誰かの陰謀であると不確かな根拠をもとに決めつける考え方」と定義した上で、素朴な陰謀論的思考は昔から人々の中にあったが、それがネット環境の中で過激なものに変異を遂げていると語る。烏谷氏によると、普段めったに起きないことが続けて起きると、人間の脳はそれをつなげて考えたくなり、偶然の一致に過剰な意味を読み込んでしまう習性がある。そこに、陰謀論が巧みに入り込んで来る余地ができるのだと言う。 しかし、陰謀論が広がっている状況を軽視するのは危険だと烏谷氏は言う。陰謀論の背景には人々の厳然たる剝奪感があるからだ。何か大事なものが奪われたという被害感情や、大事なものが奪われようとしているのではないかという不安や恐怖に支配されると、人間はその原因を説明する単純な答えに飛びつきたくなる。陰謀論の型は「信じられないほどの巨悪が糸を引いて公正な競争を歪めている」というものだが、そこには「悪いのはあなたではない」という隠れたメッセージがあるのだという。つまり、多くの人が陰謀論に引き寄せられることには原因があり、その原因に手当てしない限り、陰謀論は収まるどころか、更に広がっていくことが避けられない。 実際の陰謀論は多種多様だ。「選挙に不正があった」といった誰が信じてもおかしくないものもあれば、コロナやコロナワクチンが世界の人口を減らすための陰謀だと主張するものや、果てはオバマ元大統領もバイデン元大統領も本当はすでに処刑されていて偽物がゴムマスクを被っているのだといったものまである。その対象は宇宙人からディープステート、秘密結社、国際金融資本等々の伝統的なものから、最近では地球温暖化、パンデミックにワクチン、財務省の緊縮財政など多岐に渡る。中には一見すると誰も信じそうにない極端な陰謀論も多いが、そんなものでもYouTubeなどに出てくる関連動画を見続ける中で、無関係な点と点をつなぎ隠れていたものを暴き出すナラティブ(物語性)が徐々に説得力を持つようになり、気がつけばパラノイド性の強い陰謀論者になっている人が増えているのだと烏谷氏は言う。 世界的に見ると、陰謀論が最初に猛威を振るったのはアメリカだった。トランプ支持者の多くが、「2020年の大統領選挙には不正があった」、「ディープステートがアメリカを牛耳っている」、「非白人を意図的に移民させることで白人の政治力と文化を衰退させようという陰謀がある」といった陰謀論を主張している。トランプ大統領自身がこれらの陰謀論を本気で信じているかどうかは疑わしいが、政治的にはこれを積極的に利用している。実際、アメリカでは選挙不正を訴える人々が暴徒化し、2021年1月6日の議会襲撃事件まで引き起こすなど、陰謀論はもはや単なるトンデモ話にとどまらず、現実の世界に影響を与えている。 サイバーセキュリティが専門で、情報セキュリティ大学院大学客員研究員の長迫智子氏は、陰謀論は今や安全保障上の脅威になっていることを指摘する。人々の認知領域に攻撃を加える「認知戦」では、分かりやすく世界を説明する物語である陰謀論は広まりやすいため使いやすいのだ。 これまで日本語の壁に守られてきた日本も、生成AIの進歩によって誰でも自然な日本語が容易に書けるようになったことで、遅ればせながら外国勢力によるSNS上のディスインフォメーションの標的になり始めていることがようやく明らかになってきた。政府もようやくそれを認識し、遅ればせながら対策に乗り出し始めているが、明らかに後手に回っている。 さらに日本では国政選挙でも、陰謀論的な言説を党の主張に盛り込んだ参政党が大きく党勢を伸ばしており、もはや日本も陰謀論を対岸の火事と傍観していられる状態にはなくなっていると烏谷氏は言う。 陰謀論とは何か、陰謀論はどのようにして生まれるのか、なぜ人は陰謀論を信じてしまうのかなどについて、慶應義塾大学法学部教授の烏谷昌幸氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so45399992(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/09/15(月) 12:00
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<マル激・後半>角川裁判が問う「人質司法」の罪とそのやめ方/角川歴彦氏(KADOKAWA元会長)
東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会の高橋治之元理事側への贈賄の罪に問われている出版大手KADOKAWAの角川歴彦元会長は、9月3日に行われた裁判の最終意見陳述でも改めて無罪を主張し、結審した。 判決は来年1月22日に言い渡される予定だ。 五輪汚職事件とは、東京五輪・パラリンピックのスポンサー契約で有利な計らいをしてもらうことの見返りに、大会組織委元理事の高橋治之被告らが計約1億9,800万円の賄賂を受け取ったというもの。高橋元理事ら収賄側3人のほか、角川氏が会長を務めていた出版社のKADOKAWAのほか、AOKIホールディングス、大広、ADK、サン・アローの贈賄側12人が逮捕・起訴され、これまでに収賄側1人、贈賄側10人の有罪判決が確定している。 東京五輪は不祥事の連続だった。不透明な新国立競技場の決定過程や直前になってのデザイン変更に始まり、ロゴマークの盗作、関係者の相次ぐ差別発言等は記憶に新しいところだろう。数々の問題の中でも、経費が当初の予定から3倍近くに膨れあがったことは、実際に都民や国民にその負担を強いることになったこともあり、五輪そのものに対する国民の怒りを大きく助長した。かねてから金満体質を指摘されてきた五輪に対して、「正義の味方」を自任する特捜検察は何らかの対応を取る必要があった。 そうした中、検察は高橋元理事がコンサルティング契約などの名目でスポンサー企業から金銭を受け取っていたことを賄賂と認定し受託収賄で逮捕。贈収賄では贈賄側が必要になる中で、五輪スポンサーだったKADOKAWAの角川歴彦会長(当時)に目を付けた。角川氏は元理事側への金銭支払いについて報告を受けていなかったとして、一貫して無罪を主張している。角川氏の関与については、物的証拠はなく、他のKADOKAWA社員の証言のみに依存した立件だった。 しかし、角川氏が犯行を否認したために、そこから悲劇が始まった。当時既に79歳で心臓に重い持病を抱える角川氏は、2022年9月14日に逮捕され、その後も一貫して無実を主張し続けたため226日間、東京拘置所の独居房に留め置かれることとなった。 しかも、検察が高齢の角川氏を逮捕に踏み切った理由が、角川氏がメディアの取材に応じたからだったことを後に検察は公判の中で明らかにしていた。メディア取材で無罪を主張したために、罪証隠滅の可能性があると検察が主張する根拠となり、7カ月あまりに及ぶ長期勾留につながったというのだが、この取材対応も、角川氏を任意で事情聴取していることが検察からメディアにリークされ、記者やカメラマンが角川氏の自宅前に大挙して押しかけてきたため、近所迷惑になることを懸念した角川氏が渋々メディアの代表取材に応じたもので、角川氏が自ら積極的にメディアを通じて発信したものではなかった。 一貫して自白も調書への押印も拒否していた角川氏の健康状態の悪化を懸念した弁護団が、やむなく検察側が提出していた証拠のいくつかに同意したことで、逮捕から約8カ月後に角川氏はようやく保釈された。 そして角川氏は2024年6月、国に2億2,000万円の損害賠償を求める国家賠償請求訴訟を起こす。これが「角川人質司法違憲訴訟」と呼ばれるものだ。これまで刑事事件で無罪が確定した人が捜査の違法性などを主張して国賠請求を提起することはあったが、刑事事件で係争中の被告人が国賠訴訟を起こすのは恐らくこれが初めてのことで、画期的なことだ。無罪であれ有罪であれ、いずれにしても人権を無視した人質司法は間違っているし、違法であるという強い信念が背景にある。 原告団には裁判官として袴田事件の再審決定の英断を下した村山浩昭団長の下、弘中惇一郎弁護士、喜田村洋一弁護士、海渡雄一弁護士、伊藤真弁護士ら、これまで人質司法と戦ってきたオールスター弁護団といっても過言ではない錚々たるメンバーが加わった。 弁護団は「人質司法」を「刑事手続で無罪を主張し、事実を否認または黙秘した被疑者・被告人ほど容易に身体拘束が認められやすく、釈放されることが困難となる実務運用」と定義。日本では人質司法が行われ、人質司法は「人身の自由」、「恣意的拘禁の禁止」など、憲法上・国際人権法上のあらゆる権利・原則を侵害していると訴えている。 しかし、ここまで国側は弁護団の主張に対し、人質司法の実行者として名指しされている検察官や裁判官は、法令と判例に則り職務を遂行しているだけで、憲法や国際人権法違反の批判は当たらないばかりかその可能性を検討する必要もないと、原告側の主張を嘲笑うかのような不誠実な立場をとっている。 この国賠訴訟の成り行き次第で、日本はこの先何十年、いや何百年もの間、世界から「中世」と揶揄される人権を蔑ろにした前時代的な人質司法がまかり通りことになるのか、ようやく戦後80年にして、国際水準の司法制度に近づくことができるのかが決まる可能性がある。 角川氏はなぜ逮捕されたのか、226日に渡る長期勾留はどのような状況だったのか、人質司法とは何か、どうすればやめることができるのかなどについて、刑事被告人であると同時に国賠訴訟の原告でもある角川歴彦氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so45377924(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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<マル激・前半>角川裁判が問う「人質司法」の罪とそのやめ方/角川歴彦氏(KADOKAWA元会長)
東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会の高橋治之元理事側への贈賄の罪に問われている出版大手KADOKAWAの角川歴彦元会長は、9月3日に行われた裁判の最終意見陳述でも改めて無罪を主張し、結審した。 判決は来年1月22日に言い渡される予定だ。 五輪汚職事件とは、東京五輪・パラリンピックのスポンサー契約で有利な計らいをしてもらうことの見返りに、大会組織委元理事の高橋治之被告らが計約1億9,800万円の賄賂を受け取ったというもの。高橋元理事ら収賄側3人のほか、角川氏が会長を務めていた出版社のKADOKAWAのほか、AOKIホールディングス、大広、ADK、サン・アローの贈賄側12人が逮捕・起訴され、これまでに収賄側1人、贈賄側10人の有罪判決が確定している。 東京五輪は不祥事の連続だった。不透明な新国立競技場の決定過程や直前になってのデザイン変更に始まり、ロゴマークの盗作、関係者の相次ぐ差別発言等は記憶に新しいところだろう。数々の問題の中でも、経費が当初の予定から3倍近くに膨れあがったことは、実際に都民や国民にその負担を強いることになったこともあり、五輪そのものに対する国民の怒りを大きく助長した。かねてから金満体質を指摘されてきた五輪に対して、「正義の味方」を自任する特捜検察は何らかの対応を取る必要があった。 そうした中、検察は高橋元理事がコンサルティング契約などの名目でスポンサー企業から金銭を受け取っていたことを賄賂と認定し受託収賄で逮捕。贈収賄では贈賄側が必要になる中で、五輪スポンサーだったKADOKAWAの角川歴彦会長(当時)に目を付けた。角川氏は元理事側への金銭支払いについて報告を受けていなかったとして、一貫して無罪を主張している。角川氏の関与については、物的証拠はなく、他のKADOKAWA社員の証言のみに依存した立件だった。 しかし、角川氏が犯行を否認したために、そこから悲劇が始まった。当時既に79歳で心臓に重い持病を抱える角川氏は、2022年9月14日に逮捕され、その後も一貫して無実を主張し続けたため226日間、東京拘置所の独居房に留め置かれることとなった。 しかも、検察が高齢の角川氏を逮捕に踏み切った理由が、角川氏がメディアの取材に応じたからだったことを後に検察は公判の中で明らかにしていた。メディア取材で無罪を主張したために、罪証隠滅の可能性があると検察が主張する根拠となり、7カ月あまりに及ぶ長期勾留につながったというのだが、この取材対応も、角川氏を任意で事情聴取していることが検察からメディアにリークされ、記者やカメラマンが角川氏の自宅前に大挙して押しかけてきたため、近所迷惑になることを懸念した角川氏が渋々メディアの代表取材に応じたもので、角川氏が自ら積極的にメディアを通じて発信したものではなかった。 一貫して自白も調書への押印も拒否していた角川氏の健康状態の悪化を懸念した弁護団が、やむなく検察側が提出していた証拠のいくつかに同意したことで、逮捕から約8カ月後に角川氏はようやく保釈された。 そして角川氏は2024年6月、国に2億2,000万円の損害賠償を求める国家賠償請求訴訟を起こす。これが「角川人質司法違憲訴訟」と呼ばれるものだ。これまで刑事事件で無罪が確定した人が捜査の違法性などを主張して国賠請求を提起することはあったが、刑事事件で係争中の被告人が国賠訴訟を起こすのは恐らくこれが初めてのことで、画期的なことだ。無罪であれ有罪であれ、いずれにしても人権を無視した人質司法は間違っているし、違法であるという強い信念が背景にある。 原告団には裁判官として袴田事件の再審決定の英断を下した村山浩昭団長の下、弘中惇一郎弁護士、喜田村洋一弁護士、海渡雄一弁護士、伊藤真弁護士ら、これまで人質司法と戦ってきたオールスター弁護団といっても過言ではない錚々たるメンバーが加わった。 弁護団は「人質司法」を「刑事手続で無罪を主張し、事実を否認または黙秘した被疑者・被告人ほど容易に身体拘束が認められやすく、釈放されることが困難となる実務運用」と定義。日本では人質司法が行われ、人質司法は「人身の自由」、「恣意的拘禁の禁止」など、憲法上・国際人権法上のあらゆる権利・原則を侵害していると訴えている。 しかし、ここまで国側は弁護団の主張に対し、人質司法の実行者として名指しされている検察官や裁判官は、法令と判例に則り職務を遂行しているだけで、憲法や国際人権法違反の批判は当たらないばかりかその可能性を検討する必要もないと、原告側の主張を嘲笑うかのような不誠実な立場をとっている。 この国賠訴訟の成り行き次第で、日本はこの先何十年、いや何百年もの間、世界から「中世」と揶揄される人権を蔑ろにした前時代的な人質司法がまかり通りことになるのか、ようやく戦後80年にして、国際水準の司法制度に近づくことができるのかが決まる可能性がある。 角川氏はなぜ逮捕されたのか、226日に渡る長期勾留はどのような状況だったのか、人質司法とは何か、どうすればやめることができるのかなどについて、刑事被告人であると同時に国賠訴訟の原告でもある角川歴彦氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so45377926(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/09/08(月) 12:00
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<マル激・後半>5金スペシャル・「法」と「掟」 韓国ドラマはなぜ社会問題を痛烈に描けるのか
月の5回目の金曜日に特別番組を無料でお送りする5金スペシャル。今回は韓国映画と韓国ドラマを取り上げた。 今回取り上げたのは以下の4作品。いずれも韓国の作品だ。 ・『ソウルの春』(キム・ソンス監督) ・『二十五、二十一』(チョン・ジヒョン監督) ・『広場』(チェ・ソンウン監督) ・『悪縁』(イ・イルヒョン監督) 『ソウルの春』は、1979年12月12日に韓国で発生した「粛軍クーデター」を、一部フィクションを交えて描いた2023年の韓国映画。このクーデターは、後に大統領となるチョン・ドゥファン(全斗煥)が中心となり武力で軍の指揮権を掌握したもので、「ソウルの春」と呼ばれた韓国の民主化運動の機運を壊すきっかけとなった。映画では、正義感の強い主人公イ・テシンがクーデターに果敢に立ち向かうが、次第に多勢に無勢となり、追いつめられる様子が描かれている。 『二十五、二十一』は、1997年のIMF危機に翻弄される韓国の若者たちの人生を描いたネットフリックスのドラマシリーズ。粛軍クーデター、光州事件と挫折を繰り返しながらようやく民主化を果たしながら、アジア通貨危機に端を発する経済危機に陥り、IMFからの緊急援助に頼らざるを得ない状況に追い込まれた韓国では、IMF主導の構造調整プログラムに基づく緊縮財政が進められ、多くの家庭が貧困に陥ったまま借金を抱えて一家離散の憂き目に遭うこととなった。 『二十五、二十一』には、その中で夢を追い続ける若者たちの姿が描かれている。突然これまでの生活が一変するような激動の時代だからこそ、相手が没落すれば切り捨てるうわべだけの愛は偽物だと見抜かれ、逆に本物の愛が輝く。マッチングアプリなど「効率的」な恋愛の形が世界的に広がる中で、このドラマは社会から本物の愛が失われたことを批評的に描いている。 『広場』は、ウェブ漫画を原作とするネットフリックスのドラマシリーズで、ソウルを仕切る2つのヤクザグループの抗争を描いたもの。「ジュウン組」と「ボンサン組」はかつて同じ組織に属していたが分裂した。その時に主人公ナム・ギジュンは、自らがヤクザの世界を去ることと引き換えに、ジュウン組とボンサン組は互いに裏切らないという掟を作った。しかし、その掟は若い世代のヤクザたちによって破られることになる。作品には法も掟も存在せず、他者を顧みることなくそれぞれが自分自身の利益のためだけに行動する荒廃した世界が描かれている。 『悪縁』も同じくウェブ漫画を原作とするネットフリックスのドラマシリーズだ。次々と明らかになる過去の因縁に翻弄される登場人物たちが、悪事に悪事を重ねていく姿が描かれている。極悪人が出てきたと思えばさらにそれを超える極悪人が現れるという、法も掟もない究極まで荒れた社会を描いた、これまでにない作品だ。 1997年の韓国を描いた『二十五、二十一』には、かつて存在した、少しずつ心が通い合うような恋愛の姿が描かれており、それが今は失われたことを批判している。また、IMF支援の下で経済成長は果たしたが、格差は広がり社会はよくならなかった現代韓国を舞台にした『広場』と『悪縁』は、愛も法も掟もない今の韓国社会を批判的に描いている。今回取り上げたネットフリックス3作品は、社会の劣化というモチーフを明確に批評的に提示している。このように、その時代が直面する問題を鋭くえぐるような作品は、日本ではなかなか見られない。 なぜ社会を痛烈に批評する作品が韓国では生まれるのか。4つの映像作品を題材にジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。 また、映画特集の冒頭では、8月12日に発生から40年を迎えた日航ジャンボ機墜落事故について、当時事故直後から墜落現場に入った神保哲生の取材を通じて、40年経った今も未解決のままの課題が多く残されていることなどを取り上げた。前半はこちら→so45353208(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2025/09/01(月) 12:00