-
-
風が強く吹いている
俺は知りたいんだ。走るってどういうことなのか―
寛政大学4年の清瀬灰二(ハイジ)は肌寒い三月、類まれな「走り」で夜道を駆け抜けていく蔵原走(カケル)に出くわし、下宿の竹青荘(通称・アオタケ)に半ば強引に住まわせる。
ハイジには「夢と野望」があった。高校時代の怪我による挫折。でももう一度、走りたい、駅伝の最高峰・箱根駅伝に出て、自分の追求する走りを見せたい。その「夢と野望」を「現実」にするにはあと一年しかない。そしていま強力な牽引者が彼の目の前に現れたのだ。
竹青荘は特異な才能に恵まれた男子学生の巣窟だった。寮生のため炊事をこなすハイジをはじめに、大学に5年在籍している25歳ヘビースモーカーのニコチャン先輩(平田彰宏)、双子の兄弟・ジョージ(城次郎)とジョータ(城太郎)、留学生のムサ、実家が山奥のど田舎にある神童(杉山高志)、司法試験に合格済の音楽フリーク・ユキ、クイズ番組好きのキング、金と時間のすべてを漫画に捧げる王子…。そんな個性豊かな面々が、その竹青荘が実は「寛政大学陸上競技部錬成所」であることなど知らずに共同生活を送っていた。
ハイジは彼らを脅しすかし、奮い立たせ、「箱根」に挑む。たった十人で。蔵原の屈折や過去、住人の身体能力と精神力の限界など、壁と障害が立ちはだかるなか、果たして彼らは「あの山」の頂きにたどりつけるのか――
「走りとは力だ。スピードではなく、一人のままでだれかとつながれる強さだ。」
-
スキップとローファー
地方の小さな中学校から、東京の高偏差値高校に首席入学した岩倉美津未。
カンペキな生涯設計を胸に、ひとり上京してきた田舎の神童は、
勉強はできるけれど距離感が独特でちょっとズレてる。
だから失敗することもあるけれど、その天然っぷりにクラスメイトたちは
やわらかに感化されて、十人十色の個性はいつしか重なっていく。
知り合って、だんだんわかって、気づけば互いに通じ合う。
だれもが経験する心のもやもや、チリチリした気持ち。
わかりあえるきっかけをくれるのは、かけがえのない友達。
ときどき不協和音スレスレ、だけど
いつのまにかハッピーなスクールライフ・コメディ!
-
ダーリン・イン・ザ・フランキス
彼らは夢を見る。
いつの日か大空へはばたく夢を。
ガラスによって遮られたその空が、どれだけ遠いものだと知っていても。
遠い未来。
人類は荒廃した大地に、移動要塞都市“プランテーション”を建設し文明を謳歌していた。
その中に作られたパイロット居住施設“ミストルティン”、通称“鳥かご”。
コドモたちは、そこで暮らしている。
外の世界を知らず。
自由な空を知らず。
教えられた使命は、ただ、戦うことだけだった。
敵は、すべてが謎に包まれた巨大生命体“叫竜”。
まだ見ぬ敵に立ち向かうため、コドモたちは“フランクス”と呼ばれるロボットを駆る。
それに乗ることが、自らの存在を証明するのだと信じて。
かつて神童と呼ばれた少年がいた。
コードナンバーは016。名をヒロ。
けれど今は落ちこぼれ。
必要とされない存在。
フランクスに乗れなければ、居ないのと同じだというのに。
そんなヒロの前に、ある日、ゼロツーと呼ばれる謎の少女が現れる。
彼女の額からは、艶めかしい二本のツノが生えていた。
「――見つけたよ、ボクのダーリン」