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「ずっと笑っていた」
コメ0 草の根広告社 72ヶ月前
ずっと笑っていた。笑ってばかりいられな胸中を黄色いクレヨンで塗り潰すみたいに。ずっと笑っていた。笑ってばかりいられない現実に羽根をつけて大空に飛ばすみたいに。
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「その歩みに寄り添って」
コメ0 草の根広告社 75ヶ月前
思えばいつも歩くのが速いと言われてきた。主に、というより、全部女性からだ。女性と連れだって歩くたびに言われた。特に目的地が決まっている時なんかは先に到着して振り返って相手を待つなんてこともしばしばだった。断っておくけれど、女は三歩後からついて来いなんて前時代的な思想を持っていたわけじゃない。た...
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「踊らされることなく」
コメ0 草の根広告社 75ヶ月前
踊らされずに生きたいなあ、と最近つくづく思う。SNSで誰かが拡散させた情報に多くの人々が踊らされているのを目にする機会が多いせいかもしれない。
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「渇いた潮風とホットケーキ」
コメ3 草の根広告社 76ヶ月前
久し振りに湿気のない朝だった。乾いた潮風がいつか旅したハワイ島を思い起こさせる。「ホットケーキ食べようか?」 ベランダ柵の隙間から覗き込むように海を見ていた娘に言った。「たびるー」 娘が元気に笑う。土曜日だというのに、というより休みほど早く起きる彼女のおかげで、まだ午前6時前だった。
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「おおきなおおきなすいか」
コメ1 草の根広告社 76ヶ月前
広大な畑の向こうに波光煌めく海を見ながら車は尾根を昇っていく。三浦半島の最南端に広がる山間の畑はこの辺りの絶景のひとつだ。ここに春はキャベツ。夏はすいか。秋冬は大根が水平線の向こうまで実っている光景は目の当たりにするたびにここが東京まで僅か1時間の場所だというのが信じられなくなる。
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「たまには自分を褒めてやろう」
コメ2 草の根広告社 76ヶ月前
以前は走れていたスピードで走れなくなった。以前は走れていた距離を走れなくなった。まだまだずっと後ろにいると思っていたランナーたちが次々と追い抜いていく。焦っても、悔しさで叫び出しそうでも、泣きたくても、周囲の目を気にしてただ苦笑いしている自分がいる。
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「割れた玉子で作った卵料理と割った玉子で作った卵料理」
コメ1 草の根広告社 76ヶ月前
玉子はいつも近所の養鶏場で買う。その日の朝、産み落とされたばかりの卵だ。新鮮だけどスーパーの玉子みたいに頑丈なパックには入っていない。ビニール袋に十七個ごろんごろんと詰めてある。だから割れないように注意して持って帰るのにいつも神経を使う。
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「1年が過ぎるのがやけに早く感じて」
コメ0 草の根広告社 77ヶ月前
「大人になるとあっという間に1年が過ぎるのはトキメキがなくなったからです」とある学者の方がテレビ番組でおっしゃっていた。子供は見るもの聞くものすべてが新しくそこには常に発見や感動、沸き上がる疑問があるが、大人は日々の生活の何もかもがすでに経験済みなので、たとえば日々の食事なども光陰矢の如しで、す...
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「成熟しつつある社会における一抹の淋しさと憂鬱」
コメ0 草の根広告社 78ヶ月前
懐かしさとともに自分が子供の頃に撮られた映画やドラマを見ると、そこでは大人が所構わず煙草を吸っている。職場は勿論、子供のいる食卓でも、妊婦さんの前でも。平成生まれの人が聞いたらどこの国の話だと思うだろう。当時は電車の中も喫煙可だった。おそらく当時は周囲の人への影響など解明どころか考えられてもい...
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「いつも自由はここにある」
コメ0 草の根広告社 78ヶ月前
妻が出勤前に作っておいてくれた朝ごはんを娘と二人で食べた。着替えをさせ、歯の仕上げ磨きをし、検温して体温と昨日からの様子を連絡帳に記入する。湯冷ましを水筒に詰め、着替えにおむつ、給食袋とおやつ用のエプロンなどを入れたトートバッグを担ぎ、朝八時に娘と手を繋いで家を出る。
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「終わってしまった後の世界で」
コメ0 草の根広告社 80ヶ月前
深夜、たまたま点けたテレビでやっていた古い映画を見た。途中からだったのでタイトルすら確かめなかったけれど、核戦争後の世界を描いた外国のB級映画だった。
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「やってみたいけどできていないこと」
コメ0 草の根広告社 81ヶ月前
家の隣りに小さな釣具店がある。竿や餌、そして情報とこの辺りの海で釣りをする為に必要なものがすべて揃う店だ。もうひとつ言えば我が家の一番近くにある店でもある。にもかかわらず、引っ越して来た8年前に数回覗いて以来、前こそ通るものの顔も出していない。