2013年3月1日 「公職選挙法の一部を改正する法律案」提出に関する「民主党・みんなの党共同記者会見」についての、たいへんに興味深い質疑応答部分を書き起こしてみました。

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ーここからは、質問応答とさせていただきます。ご質問のある方は挙手をして、一問一答でお願い致します。ー


記者:これまで5回の実務者協議を通じて、自民党が当初「全面解禁」と言っていたのが、何故「全面解禁」でなくなったのか、その理由をどのようにお感じになっているのかを教えていただけますでしょうか?


鈴木:いくつか理由を伺いましたが、我々はいずれもよく解りません。何故、平成22年(の案)と方針を変更されたのかということについて、5回(の実務者協議)を通じて未だもって明解なご説明はいただけていないということです。従いまして、もう3月にもなり、私どもはなんとしてでも解禁をしたいので今回の案を提示させていただいた訳であります。ただ繰り返しになりますけれども「一般有権者は、第三者ではなくて、まさに当事者です」「民主主義の主役です」という理念が、今のところ与党と充分に共有できていないというところでございます。


記者:鈴木さんから「次の参議院選に間に合わせる」という表示がございましたが、与野党協議の中で(こちらについての)「自公の考え」をどのように捉えていますでしょうか?


鈴木:わたくしどもは一刻も早く、自公も国会に法案を提出されることを「強く強く」期待をしております。しかし、やや側聞をいたしますと「与党内の手続きに手こずっておられえる」という情報も入っていますので「いたずらに法案提出の時期が明言されないなかで水面下の交渉が続き、時間切れになってしまう」という事態は絶対にさけなければならないということで当初から与野党協議というのは「2月末を目途に進める」ということで、2月末までは両党とも真摯な議論をしていただいたと思います。そして5回にわたる濃密な議論を積み重ね合意出来たこともいっぱいあります。

しかし、最後に残った論点がここ(一般有権者への解禁)であり、3月で国会審議を相当進めなければならないというなかで、我々は準備が整って今日(法案を)出させていただいて、そのことが自民党のなかでもいろいろなご意見があり「かなり手こずっている」という噂も聞きますが、自民党さんが党内をまとめてこれ(民みん案提出)により国会審議が促されるという一助にもなるという考えたかで今回(法案を)提出させていただきました。


松田:私も国会議員になって2年半、もうすぐ3年になるのですが、このような選挙制度改革は、ある意味「全党合意の上で進めなくてはならない」それが慣例なので、なるべく協議会で合意をして「みんなで賛成して出そうじゃないか」と、わたくし何度も言われました。そもそもなんで「全党合意」でなくてはならないのかと不思議でならないのです。なんでそんな部分が慣例になってしまっているのか、よく「慣例主義」といいますけれども、その時の説明が「選挙制度というのは国会議員全員に関わる話」で「だからこそ全党の合意が必要なんです」と「当たり前じゃないですか」と言われたのですが、それも不思議でならない。さっきお話したことではないのですが「何の為の選挙制度改革なんだ?」と。

いつも我々国会議員サイドに立ってみてしまうからそういう考え方になってしまうのであって、鈴木寛さんからご提案あったのですが、むしろ外の平場で、国会の場で、オープンな場所で議論を進めた方がいいのではないかと。『この「選挙制度改革」も国会議員の為だけでなく、国民・一般有権者の為でもある訳ですから、そういったクローズのところではない、ディスクローズされたオープンな場で話し合った方が良いと思いますし、最終的には「全党合意」にならなくても「多数決」という形で決しても良いのでは?』と、その時わたくしは申し上げました。



記者:(質問は)2点ありますが、1点は改めて自公案との違いで「メール」のところ以外に、細かい点があれば教えていただきたいのと、もう1点は「メール」のところについて先ほど鈴木先生から「将来の確証が得られなかった」という発言がありましたが、今回の「参議院選」に間に合わなくても「将来これを解禁するという確証が得られた場合」は、自公側と折り合う余地はあるのか、との2点をお願いいたします。


松田:その他(の違い)も、実はいろいろあります。例えばメールですが、「一般有権者に解禁する・しない」は別にして、仮に候補者・政党だけだったとして、自民党・公明党の考え方というのは徹底した「オプト イン」という考え方を持っています。「オプト イン」というのは「しっかりと通知をして」そして「通知に対する返信をいただいて」それではじめて「選挙期間中にメールが送れる」ということです。それに対して「みんなの党・民主党案」は「オプト アウト」的ではありますが、全部オープンにしてしまうといろんな問題が発生してしまうと懸念しておりますので、若干の規制はかけた上での「オプト アウト」形式にしようではないかと考えております。ちょうど「オプト イン」と「オプト アウト」の間だとお考えいただければ、と思います。

複雑なので、具体的な例を挙げてみます。例えば、名刺交換をしたとします。私と鈴木さんで名刺交換しました。私の名刺にメールアドレスが記載されていたとしたら、それは当たり前に「どうぞわたくしにメールを送って下さい」という意思表示でもあると思います。鈴木さんは名刺を受け取った訳ですから、選挙期間中も私にメールを送っても良いと。ただし、それに対して私が鈴木さんに「私は選挙に興味がないので送らないで下さい」という通知をしたら、すぐに止めなければならないというルールになっております。自民党・公明党案というのは名刺交換した相手に対して、もう一度「今後、選挙期間中にメールを送らせていただきますよ」という通知をしなさいと、メールや他のかたちなのか詳細はまだ判りませんが、聞いていただくと。それに対して、私から鈴木さんに「わかりました。良いですよ、選挙期間中も送って下さい」という返信があり、その返信されたものをしっかりと保管するという保管義務が授けてあって、保管されていなければメールを送ってはいけないとなっているのです。そこが「オプト イン」と「オプト アウト」的な考え方の違いだと思っております。

そしてそれ以外にも沢山ありますが、中くらいの論点をお話ししますと「有料広告」です。「有料広告」については基本的に自公さんの考え方というのが「政党にはネット上、解禁する」と、ところが「候補者本人はダメ」だとなっております。民主党とみんなの党は「有料広告は政党はもちろん良い」けれども「候補者本人も良い」ではないかと。どこでキャップをつけるかと言うと、キャップをつけないと良く言われる「お金持ちばかりが選挙に勝ちやすくなる」という状況になってしまいますので、キャップは「法定選挙費用内」というところに授けております。ですから区によって違いますけれども「その選挙区の候補者のかたは法定費用の範囲内」であれば「お金の配分を何に使うのかというのは自由」にして良いのではと、そのなかに「ネットの有料広告」も入れても良いのではと考えております。


鈴木:今、いわゆる「自公案」と言われているものは、もちろん平井(卓也)先生、あるいは遠山(清彦)先生のもとで真摯に議論された「ある観点では非常に錬られた案」だということになりますが、そもそもその「平井案」あるいは「平井・遠山与党案」と言われているものが「自由民主党全体のコンセンサスが取れているのか」ということについて、我々は確認が出来ておりません。いろいろな自民党・参議院幹部のご発言等々を側聞をいたしますと、そこに党全体としてのオーソライズがあるのかどうかということについては疑問であります。そういうことも含めまして国会に「法律案」として提出されれば、それは「党全体がオーソライズした法案」であるということになりますので、

そういうことを促してきたいというのが今回のひとつの意図です。

そして改めて、今まで「平井案」「遠山案」というものが「自公の正式な案」だということになって国会に上程されれば、まず我々それぞれの党が「どういう考え方」で、そして「どういう懸念」を前提に、「国民の皆様さま方の前で議論」し、「議事録」にも残し、そして「論点の整理」ここまでは速やかにしていきたいと思っています。わたしどもが、自公の「平井・遠山案」についても「なるほどと思う論拠」あるいは「それは解決していかなければいけない」といった点も多々ございます。一方で昨日も平井先生と私たち、共同のシンポジウムに出させていただいたのですが、平井先生も個人的には我々の「一般有権者メール解禁案」について「考え方は理解できる」ということでしたので、決して対立をしている訳ではありません。

従って「国会のオープンな議論の場で論点整理がきちんと出来た」のちには、私たちのトップ プライオリティは「参議院選までにインターネット選挙が解禁される」ということです。その観点に立って柔軟に判断をしていきたいと思っております。 もうひとつ「インターネット選挙運動解禁法案」の大目的は、まさに民主主義の主役である「一般有権者の皆さま」がインターネットを使って公論を深め、広めるなかで、「新しい民主主義をつくりたい」と、このためにやるのだという大原則を確認されることが重要であって、あとは現実的にいろいろな懸念を払拭していく為に必要な修正は、柔軟に対応していきたいと思います。

そのことは昨日も相当確認はさせていただきました。「原則はこれですよね。導入のプロセスとしていろいろあるのは解りますが、原則はこれであることを確認して下さい」というところについて首を縦に振っていただけなかったので、引き続き協議が必要ということになっております。今後の対応についてはそういうことになっております。

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記者:「有料広告」について2点ほど伺いたいのですが、この案を見ると「バナー広告等」と書いてあり「等」は何を指すのか、ということと、「自公案」は掲げるバナーにも「政党名」であるとか「キャッチフレーズ」であるとか、直接選挙運動ではない文言を掲げてリンクした先が選挙運動用のホームページということですが、掲げる文言は何でも良いのかということについて伺います。


松田:そこについてはまさしく今、わたくしども議論をさせていただいている状況です。例えば、バナーに候補者個人で(有料広告を)出すときに「鈴木寛に一票をお願い致します」と、果たして書いていいのかという議論があります。そこをクリックすれば、選挙活動用のwebサイトには繋がるのですが、そこの部分にそこまで書いてしまって良いものかと。それを許してしまったら、その期間中のバナー広告というのはそれ(選挙活動)一色になってしまうのではないかということで、そこは我々のなかでも今議論をさせていただいている状況です。

ただ、わたくしどもの案ではここは違うと明確に言えるのですが、その「松田公太というバナー」は候補者個人が出して良いと、それをクリックすれば「候補者本人の選挙活動用のwebサイト」に繋がると。そして、「政党のバナー」があった場合は「政党のバナー」をクリックすれば「政党のwebサイト」に繋がるということが、非常にクリアで良いと思って、ご提案をさせていただいている次第でございます。


鈴木:基本的にわたしたちは、何度も申し上げますが「インターネットを使って出来るかぎりのコミュニケーションの可能性を広げていきたい」という立場です。ですから「公職選挙法」全体を、今は、やっていることを「限定的にリスト化して認めている」ということなんですが、我々の考え方は「基本的には自由にして」そして「ダメなことをリスト化していく」という構造に変えていきたいと思っております。今回はインターネットに限りますけれども、インターネットの世界のなかで、そうした考えを先行的に導入していきたいということであります。今後、おそらく1~2年経てばいろいろなサービスが出てくると思いますので、そういったサービスを「法定費用の範囲内」で「基本的には原則、何でも出来るように」という方針に「ネット関連だけでも大きく1歩を切りたい」と、私たちの考え方はそういうことです。


松田:非常に難しいと思うのですが、例えば、バナー広告ということに制限しますと、テクノロジーが進んで皆さんもご存知と思いますがバナー自体が動くバナーになっていて、映像があって、しゃべったりもするという、それをどうするのかと。毎回テクノロジーの進歩によって、そういう議論が沸き起こってしまう訳ですから、その都度どうするのかとならなくて良いようにわたくしどもはオープンに考えていきたいと思っております。

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記者:先ほどから「有権者に利用してもらう為に」というのが「民主党・みんなの党案」の前提にあるとのお話ですが「インターネット選挙解禁」されて政治家自身が変わるべき部分とか、変わっていくであろうという部分は具体的にどうイメージされているのを教えていただきたいです。


鈴木:選挙期間中にネットを通じて、より「国民の皆さまと直接対話をしていく」ことが可能になる訳ですから、そのように政治家も政党も変わっていくと思います。ご確認いただきたいのは通常、選挙期間までに一般の有権者の皆さんが普通にメールでいろいろ会話をされている訳で、それは選挙期間後も普通に繋がると思います。当然メールのコミュニケーションのなかで、選挙のことも話題になることがあると思います。その時に「選挙関連の話題」を少し述べたり、あるいは「誰かの名前を引用」した時に違法だというのはあまりにも不自然で、「選挙期間中であってもネットを通じて普通にコミュニケーションを行えて選挙のことも普通に話題に出来る」ということを確保するということが我々の本旨ということです。「悪意をもって名簿を買ってきたり」「スパムをやったり」あるいは「虚偽なことを流したり」という、これは、認める必要はまったくない訳です。そうした(悪意あることを規制し)「通常のコミュニケーションを安心して続けていただくということを目指している」と、ご理解下さい。


松田:補足ですが、(記者の方が)求められている観点から言いますと「政治家に、どのような変化を求めるか」ということであれば今、鈴木寛さんも言っておられましたが、(政治家は)もっともっと発信していかなければならない。今まで場合によっては「政党の力だけで自分(候補者)が当選してしまう」ということが多々起こっていた訳で、「~チルドレン」とかあるじゃないですか。そうではなく、双方向から一般有権者もリテラシーを高めて、どんどんダイレクトにコンタクトを取っていただいて、質問していただいて、今後もいろいろなwebサイト「国会議員を監視するものとか」「果たしてこの国会議員がブレているのか、いないのか」などが出てくると思うのです。実はそのようなサイトは海外を見渡すと多くあるのです。

ところが日本では、まだまだそういったサイトが少ない状況なのですが、(インターネット選挙が)解禁になれば、それをきっかけに「選挙期間中に多くの情報を発信する」ということが政治家にも求められてくるのではと思うのです。「自分はネットの使い方が解らないから」とか「インターネットが不慣れだから」とか返信・返答をしないということになってくると「なんだ、その政治家は?」というように見方が変わってくると思うのです。つまり、政党ももちろん大切なのですが、政治家個人に対する質問であったり、オープネス、また政策の考え方・中身などが、もっともっと問われてくるのではというふうにわたくしは思っております。


ー短い時間ではございましたが、以上で本日の「法案提出に関わる民主・みんなの党の共同記者会見」を終了させていただきます。どうもありがとうがざいました。ー