「Ghost of Tsushima」クリア後レビュー
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

「Ghost of Tsushima」クリア後レビュー

2020-07-20 12:32
  • 2

この記事は「Ghost of Tsushima」のクリア後感想です。ネタバレを避けてはいますが、
完全ネタバレNGという方はブラウザバックしてください。

 「Ghost of Tsushima(以下ツシマ)」のメインストーリーをエンディングまでクリアしたので、本作の良い点や悪い点、魅力とプレイ感覚について適宜他のゲームと比較しながら、感想レビューを書いていく。
 この記事では、本作の要素を大まかに「世界観」「アクション」「クエスト」「ストーリー」の四つに分けてそれぞれレビューする。あくまで好き嫌いを含んだ個人的な感想だということを心に留めつつ、これから購入する際の参考にしたり、購入者は自分のプレイ感覚と比較して楽しんだりして欲しい。

-世界観-
 時は鎌倉、場所は対馬。日本人ですらピンとこない設定であり、それも描かれるのは蒙古(モンゴル)が日本へと攻めてきた元寇である。紋切型で外国ナイズされた(ときに歪んだ)日本観を押し付けがちな海外の和風ゲームがこういった設定を選ぶ時点で異色といえるし、主人公は武士や侍でなく「冥人(くろうど)」と呼ばれる。一体どんな世界観に仕上がっているのか、それだけで興味を惹かれた方も多いだろう。
 主人公である境井仁は、誇り高い境井家の武士として蒙古の侵略に立ち向かうが、蒙古の圧倒的な戦力の前に対馬の武士はほとんどが虐殺され、ひとり戦に生き残った仁は島と民を守るため、独力で蒙古に立ち向かう。はじめ「武士の誉れ」を重んじて戦っていた仁は、圧倒的な蒙古の軍勢を前に、だんだんと闇討や毒といった卑劣な手さえも使う「冥人」としての戦いに身を落としていくことになる。こうした「武士」としての生き方を捨てることで逆説的に「武士」のあり方を浮き彫りにしていく語り口については、「ストーリー」の章で触れる。

 一言でいえば本作の世界観は、「露骨な非現実性を削いだ和風ファンタジー」である。妖怪や幽霊といった怪異が出てきたりはしないし、美男美女ばかりが出てくるわけでもないものの、息を呑むような絶景は誇張されたファンタジーであり、実際の歴史を踏襲しているわけでもないという点では、間違いなくフィクションでもある。しかし本作をクリアしてなお、それを欠点と考える人は少ないだろう。向かい合うだけでも時代劇のような画になる殺陣、(大げさなほど)美しい自然を前に和歌を詠む風流、狐や鳥に導かれた先で出会う新しい発見。その見え方がときに外国人的であり、しこりを感じることもあるとはいえ、いずれもファンタジーでしか表現し得ない領域であり、他のゲームにない独自の体験を提供してくれる。特に剣戟アクションの出来映えは見事なものであり、睨み合う時の間、敵の刀を受け流す動作、人を斬った時の確かな手応え、とどめを刺して血を払う動作、どれをとっても映画のワンシーンと見まごう出来で、一度でも時代劇に惹かれたことのある人ならばそれだけでこのゲームに引き込まれるはずだ。本来なら必要ない納刀や礼といった動作も任意で行うことができ、適度なロールプレイを実現してくれる。
 一方でツシマの世界観が絶賛できる点ばかりかというとそうでもない。「ストーリー」の章でも触れるが、NPCは没個性的でキャラクター性がなく、喋り方も現代語と古語をごちゃまぜにした使い方で不統一感があり、いちいち引っかかるところが多かった。また佳景を前に和歌を詠んでいるのに和風というより中華的な音楽が流れてきて強烈な違和感を覚えたりもした。これらは、個人的にあまり良い印象を受けなかった点である。

-アクション-
 本作の戦闘システムを一言でいうと「アクションは劣化SEKIRO、ステルスは劣化アサクリ」という感じなのだが、これらの戦闘システムに関しては個人的にはそこそこ満足している。なお、以下は難易度「難しい」でプレイしたうえでの感想である。
 アクションは、弱・強攻撃、ガードと回避とジャンプという、SEKIROやFor Honorに代表されるベーシックな方式である。特にSEKIROや仁王の影響が濃く見られ、「ジャストガードで受け流し→切り返し」が基本的なループで、仁王のように敵のタイプに合わせて型を切り替えて攻撃できる。ガード不可の危険な攻撃を回避かジャンプで避けるシステムはSEKIROからそのまま輸入されているが、このシステムは(SEKIROに影響され急いで導入したのか)ゲーム内の説明がほとんどなく、特にジャンプで避ける攻撃はSEKIROをプレイしていないプレイヤーにとってははじめただの理不尽な攻撃にしか感じられないだろう。またガード不可攻撃をうまく避けてもリターンが少なく、最悪ガードされて終わることがあるというのも攻撃を捌く爽快感が感じられず、調整不足を感じる点である。型を切り替えるシステムも、乱戦の中で切り替えながら戦う楽しみ方はあるものの、連打ゲーになりがちで、戦闘に深みを与える要素としてはあまり上手く機能していない。しかしながらガード不可攻撃に注意しながら攻撃を捌き切り返すアクションは単純ながら中毒性がある。特にボス戦では敵の攻撃を覚えながら確実に捌いていく必要があり、倒した後には確かな達成感が得られ、オープンワールドゲームの戦闘システムとしては水準以上の出来であると感じた(たとえそれがSEKIROの劣化コピーだとしても)。
 また仁は「冥人」としてクナイや煙玉などの暗器をサブウェポンとして用いることができる。クナイは複数人にガード不可のダメージを与えつつしばらく怯ませられるし、煙玉は周囲の敵が一気にステルス待機状態になるので最大三人を連殺できる。いずれも安全に一瞬で戦場を制圧できるほど強力だが、それゆえ純粋にアクションを楽しみたいプレイヤーは封印することになるだろう。のっぴきならない状況に追い込まれたときの逆転の一手として使うくらいがちょうど良いと個人的には感じた。
 また本作独自の要素として、「一騎打ち」というのがある。敵陣に正面から入り、△ボタンを押し込んで、自分に敵の攻撃が当たる直前にボタンを放すと一撃の下に葬り去れるという単純なシステムだが、失敗するとHPが大幅に削られた状態で乱戦になるハイリスクハイリターンな仕様であり、後半になるにつれ敵がフェイントを入れてきたり攻撃速度が上がってきたりしてそれなりに難しくなってくる。私は終盤まで一騎打ち→乱戦の流れでもそこまで苦労しなかったものの、反射神経やアクションに自信がない人はステルスで確実に数を減らしていく戦略になるだろう。とくに後半は敵の数が多いので、乱戦しても時間を浪費するだけであり、ステルス主体になることも多かった。
 仁が「冥人」として戦うためのステルス要素ははっきりいって杜撰で、敵は何もない場所で孤立して尻を向けるし、死体を見ても少し騒いだら何事もなかったかのように持ち場に戻るし、地獄耳を習得すると敵の位置を常に把握できるようになる。アサクリやメタルギアなどのステルスゲームに慣れた人ならばあくびが出る難易度ではあるが、アサクリもスキルが揃ってくれば似たようなものなので、個人の経験や好みによって評価が分かれるポイントだと思う。私は敵の配置を見てどういう順番で倒すか考えるだけでも楽しめるタイプなので、こういった難易度でもそれなりに楽しむことができた。
 ここまでツシマの戦闘システムを他のゲームと比較してこっぴどく言ってきたが、それでも私はこの出来には満足している。なぜなら各要素それぞれの比較対象はそのジャンルに特化したゲームであり、昨今のオープンワールドゲームの戦闘システムの水準からすれば、(独自性や革新性は薄いものの)バランスがとれていてかなりの出来であることは間違いないからである。近年の比較対象としてもっとも近しいステルスゲームは「アサシンクリード オデッセイ」だと思われるが、あちらはステルスゲームとしてのクォリティは高いもののアクションはおまけ程度であり、英雄の一撃などのスキルを獲得するとほとんどワンパターンで攻略できるほどだった。アクションゲームとして近しい「SEKIRO」にはアクションの面白さや奥深さでは遠く及ばないものの、あちらのステルス要素は比較的薄く、敵情を把握する手段もなければ主人公を見るや騒ぎ立てて仲間を呼ぶこともほとんどない。これらのAAAタイトルと比較しても、アクションとステルスのどちらに比重を置く人でもそれなりに楽しめるという点では、「Ghost of Tsushima」は優れたゲームであると感じた。

-クエスト-
 本作のクエストはメインクエストの「仁之道」、サイドクエストの「浮世草」、特別な技や装具を得られる「傳承(でんしょう)」の三つに分かれている。
 「仁之道」や「浮世草」ではゲームプレイとしてはあまり面白くないウィッチャー風の探索パートが多かったり、少しでもいるべき場所から離れると「元の場所に戻れ」と注意が出て鬱陶しかったりして、退屈さや不自由さによるストレスが多々あった。もっともいずれのクエストも仁や脇役のストーリーを追うことが主眼に置かれているし、仁がいきなり任務を放棄して神社探索など始めだすと不自然ではあるのだが、「元の場所に戻れ」と出る境界線は攻略の幅すら狭めるような厳しさであるので、もう少しプレイの自由度に幅を持たせてよかったと感じた。
 「傳承」は退屈なサブクエとは一転して個性的な遊びや試練が用意されていて、最後には強者との一騎打ちが待ち受けている。試練を達成しながら個々の伝承を追うだけでも面白いし、クリアすれば強力な技や装備といった報酬が得られるので、モチベーションも維持しやすい。水墨画風のアニメーションと(本編と違って)統一感のある古語で語られる伝説は、メインストーリーに組み込まなかったのが疑問なほどのクォリティである。青いマーカーを見つけたらメインクエストをほっぽりだしても向かってしまうほどの魅力がそこにある

-ストーリー-
 「世界観」の章でも触れた通り、本作は「武士の誉れ」を重んじて戦っていた仁が卑劣な手さえ使う「冥人」としての戦いに身を落としていく物語である。そう、美麗でリアリティある侍活劇を描いたはずの本作の主人公は、侍の道を捨て、あれほど忌み嫌った蒙古と同じようなやり方に手を汚していくのである。このストーリーラインを聞いた人は、「ほんとうに武士や侍らしい戦いが見られるのか」と不安になるかもしれないが、安心して欲しい。本作はどこまでも「武士道」や「侍らしさ」を描いた物語であり、仁が「冥人」に堕ちることによって、むしろそれと対比される「武士道」や「侍らしさ」の何たるかが浮き彫りになるような構成になっているのである。とくに、武士道を重んじる志村と冥人に堕ちる仁の美しい二項対立は、日本の作品ですら触れたことのなかった部分に光を当て、武士道の欠点や不条理といった深い影をも浮かび上がらせ、いままで誰も成しえなかった境地に達しているとすら言える。この点は、優れたストーリーテリングの手法として、高く評価されるべきだと私は思っている。
 一方でツシマのストーリーには欠点もある。島民は見た目も会話も没個性的でキャラクター性がないし、特に敵の蒙古は、彼らの考えも物語性もほとんど見えて来ず、主人公のストーリーに深く絡んでくることもないので「都合のいい単なる敵役」としか見ることができなかった。名前のある登場人物もキャラクターが一貫しておらず言動や行動が右往左往したり、本来主人公に向けるべき感情を向けなかったりその逆もあったりして、「ストーリーを思い通り進めるための都合の良い駒」としか感じられない部分も多々あった。
 しかしそれらを差し引いても、本作の孕むメッセージ性や深く記憶に残る物語は、すこしでも武士道や時代劇に興味がある人ならば手に取るべきであると言えるくらい、じゅうぶん価値あるものであると私は思う。

-まとめ-
 本作は独自性の薄い戦闘システムや退屈なサイドクエスト、個性のない登場人物といった少なくない欠点を抱えながらも、それを補って余りある魅力を放った作品である。秀麗な自然描写や映画のワンシーンのような殺陣、優れたストーリーテリングと重厚な物語は、剣術や時代劇に興味がある人だけでなく、ふだん和風ゲームやオープンワールドを遊ばないプレイヤーでさえ触れてみるだけの価値がある。
 個人的に点数をつけるならば85/100ほどで、完璧で斬新なゲームとはいえないが、本作でしか味わえない体験はふんだんに盛り込まれていると断言できる。比較対象として類似のゲームに個人的な点数をつけるなら、SEKIROが95点、アサクリオデッセイが85点、アサクリオリジンズが80点、ウィッチャー3が75点、仁王が70点といったところである。
広告
×
ここでは触れられてないけど ストーリーを追うごとに仁が冥人として名をはせていき
後半は、敵が仁を見て逃げ出したり技を見て腰を抜かすのは他のゲームにはない要素だと思った
ロールプレイが好きな人にはたまらない要素だと思う
敵が減るから戦闘が少し物足りなく感じるけどね
3ヶ月前
×
めちゃくちゃ読みやすく、面白い文章でした。
やっぱSEKIRO好きなんすねぇ!

・100点だと感じたゲームはあるのか
 無いなら限りなく100点に近いゲームタイトルは何かか
・SEKIROの95点の減点分の5点はどういう点なのか
・デモンズ、ダクソ1・2・3、Bloodboneの点数は何点か

良い意味で、気になる点が多かったです。
3ヶ月前
コメントを書く
コメントをするには、
ログインして下さい。