happy birthday to town headman'19~3年半後の僕ら~
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

happy birthday to town headman'19~3年半後の僕ら~

2019-06-18 09:16

    「清士朗様、お誕生日おめでとうございます」
     着替えをすませればいつもの朝の鍛錬。
     寮の部屋から玄関へ向け廊下を歩く俺へと声をかけて来たのはエルスだった。
    「おはようエルス。そしてありがとう……朝の散歩か何かか?」
     俺がそう聞いたのは、彼女が廊下の向こう、二階の窓の向こうから声をかけて来たからだ。
    「ううん、違うの。ちょっとお買い物に……今日は朝ご飯の当番だったから、パンを買いに行っていたの」
     そう言えば、胸に抱えた紙袋から見るからに美味しそうなバケットが覗いている。
    「ああ、成程。あそこのパン屋さん、最近ウチの隊内で流行っているものな。しかしあそこからの帰り道だと、男子寮の方から戻っては遠回りでは」
    「えへへ、実はそろそろ清士朗様が起きる頃じゃないかと思ったんですね」
    「ふ、そうか。ありがとう、わざわざ挨拶とお祝いをしに来てくれて」
    「ううん、私が早く言いたかっただけなの。……じゃ、じゃあまたあとで!いってらっしゃい」
     朝日を受けて輝く髪を翻し、天使が窓の向こうへ姿を消す。
    「ああ、またあとで。……さて、いくか」

    「おかえりなさい清士朗様!はい、ごはんです」
     鍛錬から戻りシャワーを浴びた俺の前にはたっぷり浴びて来た朝日に見劣りしない、輝くばかりの笑顔を浮かべたエルス。
     ちなみにその恰好は中学校の制服に可愛いピンクのエロ、もといエプロン。
     長い髪は料理の邪魔にならぬよう、編み込んで後頭部で軽くまとめている。
     そして本日の朝食。
     レタスとトマトのサラダ。
     南瓜のポタージュ。
     スクランブルエッグにベーコン。
     ミルクと珈琲。
     そして買って来たばかり、焼き立てふかふかの食パンにバケットだ。
    「いただきます」
     バターを塗って、ざくりとした歯ごたえと共にバケットの生地を割る。
     外はざくざく、中はふんわり。
     ブルーベリーのジャムを塗って、二口。
     シンプルなフレンチドレッシングのサラダはしかし、先日、玉ねぎをミキサーにかけて作りおきしておいた新鮮なもの。
     スクランブルエッグもほどよく柔らかく、塩気もいい。
    「美味い。上達したなエルス」
    「良かったです」
     向かいで食べていたエルスがはにかんで、そして小箱を一つ、そっと差し出して来る。
    「誕生日、プレゼントです」
    「ありがとう。……おお、これはいいな、シンプルだが上品で、男が使うにも派手過ぎない……お?」
     そのペンダントを開くと、中には砂時計。
    「あれから、もう三年半がたったんですね」
    「……そうだな」
     お互いに、飲み物を飲む。
     エルスはミルク。
     俺は珈琲。
     白と黒、男と女、大人と子供、生と死。
     時は流れて、男は眠りを思い出して、少女の料理は美味くなった。
     時は止まらない、生きている限り、この世にあるすべてのものは変わり続ける。
    「今後は、どんな敵が出るか、どんなことが起きるかはまだわからないけれど、今までのように、一緒に新しい思い出を作りたいんです」
    「うん、そうだな……俺もだ」
     夜は明けて、朝が来る。
     時は決して待ってはくれない。
     けれど時に。
     絶対に停滞を許してくれないその残酷さでこそ、救われるものもあるのかもしれなかった。

     続く。


    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。