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  • 理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.11】『歯科衛生士は、身体のことを相談できる数少ない存在』

    2020-02-17 20:00

    理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.11
    『歯科衛生士は、身体のことを相談できる数少ない存在』

     歯科衛生士3年目を迎えた春、歯科診療所の部門別に歯科衛生士10数名が集まり、スタッフルームでミーティングした時の事です。その時の議題が何であったかは記憶には無いのですが、自分が何を言ったかはっきり覚えています。
     私は『例えば患者さんから「最近生理が不順で心配なんです」と相談された時には、患者さんの気持ちを受け止め、何かアドバイス出来る歯科衛生士になりたいです』と言いました。他の歯科衛生士の反応はなく、シーンとしたあるいはシラーとした嫌な雰囲気になっていました。議題は覚えていませんが、全くの見当違いな発言ではなかったことは覚えています。
     しかしその時の雰囲気は、自分がトンチンカンな間違った意見を言ってしまったように思え、実に後味の悪いミーティングでした。あまりの反応の無さに、焦りから恥ずかしい気持ちも出てきたことや、『なぜ私の思いがわからないの?』という悔しさと悲しさ、また、あまりに無関心な態度に怒りさえ感じたため、今でも記憶に残っているのだと思います。
     身近に自分の身体のことを相談できる存在はなかなかいません。患者さんにとって歯科衛生士は、数少ない相談できる存在なのです。当時ミーティングに参加した歯科衛生士には、患者さんに寄り添う気持ちはあるように思えませんでした。

     あれから30数年が過ぎ、10年以上お付き合いのあるメインテナンス患者さんも増えてきました。このような患者さんとは、数ヶ月に1回定期的にお会いしていますから、口腔内の変化だけではなく、体調や心の変化、環境の変化にも気付きます。

     ある時、メインテナンスで来院されている60代後半女性Bさんから『来週私、手術するの』と言われました。私は突然の手術と言う発言にびっくりし、思わず『えっ?何かありましたか?』と言ってしまいました。毎回メインテナンス開始前に問診していますから、突然のこの発言には驚きしかありませんでした。詳しく聞くと『10年以上前の乳癌の切除で胸にシリコンを入れていることは前に話たでしょ?そのシリコンがだいぶ古くなってタレてきたから、先生がお腹の脂肪を胸にもっていく手術を提案してくれたの。』ということでした。『あら、それはいい提案ですね!』と私が答えると『夫にもお友達にも誰にも話してないのよ。定期的に私の口の中や健康を気遣ってくれる長岐さんだから、私の気持ちわかってくれるかなぁって。』『わかりますよ、私もBさんと同じように手術します。』この言葉の後、私もBさんも涙腺が緩くなった笑顔で会話していました。

     65歳女性Cさんが数ヶ月間で激痩せしたことがありました。私は口腔を診てから、歯肉の色や唾液量、プラークのつき方や質に変化があることをCさんに話しました。そして『何かありましたか?』と聞きました。すると、Cさんの口から『夫が胃癌になって、、ステージ4だと言われ、今自宅で夫の食事を作りをしています。』と話ながら、Cさんの目が赤くなり、みるみる涙が溢れてきたのです。この後、Cさんからもう少しだけお話を聴かせていただき、私がアドバイス出来ることをお伝えしました。他の人には言えずにいた気持ちを、受け止めてもらえたことが嬉しかったのだと思います。Cさんは笑顔で帰られました。

     歯科衛生士3年目で理想としていた会話が、こうして叶えられ、目の前の患者さんを勇気付けているという実感があります。私は『専門家以上身内未満』の思いで、患者さんを勇気付けることのできる歯科衛生士を目指しています。

     1人でも多くの歯科衛生士が、ただ患者さんのメインテナンス業務を行うのではなく、患者さんの心の拠り所のような存在になれればと、願っています。

    ~素敵な私たちでありますように~
    長岐 祐子

  • 理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.10】『社会的に自立して活躍できるようになりたい、と決意させた出来事』

    2020-02-16 20:00

    理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.10
    『社会的に自立して活躍できるようになりたい、と決意させた出来事』

     私は子育て中の7年間の歯科衛生士業のブランクはありますが、この期間も何かしら仕事をしていました。当時は内職という自宅で自分のペースで出来る、1個何銭という単位の仕事がありました。髪につけるリボン作りをしたり、携帯電話など電子機器の一部になる部品を組み立てたり、チラシ折とポスティングなど色々体験しました。
     内職は子どもが寝静まった夜中にラジオを聴きながら黙々と行いました。日中は子どもの機嫌やペースに振り回されながら1日を過ごしていたため、自分のペースで仕事が出来る内職はストレスフリーを感じました。内職も納期は決まっていますが、仕事量は自分で調整出来ました。最初は『1日2時間くらいで月1万弱程度のお小遣いが稼げたら』と考え始めたのですが、当時子育て以外没頭出来る物もなく、根気強さだけが取り柄の私には、1つのことに没頭できる時間が楽しかったのです。
     しかし、集中力には限界があります。浴を出し内職の時間を増やしていくと、仕事が乱雑になりました。返品でやり直しという無駄な労力もありました。そこで『同じ時間でもっと作る量を増やせないか』と効率性を考え、アレコレとテーブルに置く部品の位置や並び方を工夫するようになりました。そしてある程度ルールと手順をマニュアル化することで、予想時間通りに予想した個数が出来る事も学びました。つまり、○個作るなら何時間必要、もしくは今日の作業時間は1時間半なので約△個できる、など逆算して考えることができるようになったのです。
     マニュアル化された仕事に慣れてくると、段々と『誰でも出来る仕事ではなく、私にしか出来ない仕事がしたい』そう考えるようになりました。『もっと自分の知識と経験を活かせる、私にしか出来ない仕事がしたい』と切実に考え始めたのです。

     専業主婦の経験も、私を1人の人間として成長させてくれました。どんなに小さなコミュニティの中にもリーダー格がいて、強い意見に多くの人たちが左右されてしまいます。社宅、町内の集まり、ママ友の集まりの中で、自分の意見を言えずにいました。明らかに違うことは違うと意見を言ったことがありますが、かえって反発を受け落ち込むこともありました。今でこそ、ママ友同士でもお互いに名前を呼びあうなど、個を大切する時代になりましたが、2000年を過ぎる頃までは、専業主婦には意見や考えを他人には言えずにいたように思います。

     またある時、小学2年の娘が『○○ちゃんにはパパいないの?』とお友達から言われたと、不思議顔で私に言ってきました。よくよく話を整理していくと、PTAに提出する用紙の保護者欄に、配偶者である夫の名前ではなく、『長岐祐子』と自分の名前を書いていた事からそんな噂になったのでした。当時は、保護者欄には父親の名前を書くことが一般的だっただけなのでしょうが、私は自分が自立できていないことを指摘されているような気がしてなりませんでした。

     このような経験から、私は自分の考えや意見をちゃんと言えるようになりたい、社会に役立つ生き方がしたい、という思いが強くなり、『歯科衛生士』としてして自立していく事を決意したのです。

     そして、歯科衛生士が活躍できる場を作ることで、多くの歯科衛生士が自立するキッカケになればと願っています。

    ~素敵な私たちでありますように~
    長岐 祐子

  • 理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.9】『病院や歯科医院はダメだしをもらう場所?』

    2020-02-14 20:00

    理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.9
    『病院や歯科医院はダメだしをもらう場所?』

     1983
    年に歯科衛生士になり6年間働きました。その後、子育てのため7年間歯科業界から離れました。東京から秋田に嫁ぎ、近隣に頼れる親戚もいなかったため、初めての子育ては不安だらけでした。我が子が熱を出せば心配であたふたし、嘔吐や下痢をしたらオロオロし、直ぐにでも救急外来に駆け込みたくなるほど不安だらけの毎日でした。

     子供を病院へ連れて行くと、私のような新米母親に優しく助言してくれる看護師も多くいました。当時の私の心配や不安を受け止めて共感してくれたことで、不安感が和らいだことを覚えています。
     その一方で、機械的な対応で決まったセリフを言っているだけのような看護師も多くいました。また、『◯◯するから、それがダメ!』と強い口調で注意する医師も多く『子どもを病院に連れていく= 医師に注意されにいく』といった母親としてダメだしをもらいにいくようなものでした。

     今でも覚えているのは、2歳になった2番目の子をむし歯にさせてしまい、歯科受診した時の事です。歯科医師が母親の私に『甘くて柔らかい物ばかり食べさせているからだよ!オヤツにスルメを食べさせて歯磨きしっかりして!』と指導を受けたことです。子育て中で、歯科衛生士としての仕事をしていませんが、私は歯科衛生士です。そんな教科書的な内容は重々理解しています。
     1人目の時はおっかなびっくり子育てしてきましたので、オヤツは果物やお芋などお菓子でないものにし、ジュースも特別な日のみにし、歯磨きも徹底していました。しかし、2人目になると、上の子の世話をしながら下の子を育児になります。その為、外出中や人と会っている時など、『ここで泣かれは困る』といった親都合の場面で、ついついお菓子を与えてしまったり、ジュースを与えてしまったり、徹底出来ない事がたくさんありました。

     そんな毎日子育てに奮闘しながら、自分の子育に不安を持つ親の気持ちを無視した歯科医師の助言は、当時の私には悔しくてたまりませんでした。『私は相手の生活背景を見て助言出来る歯科衛生士になる』そう胸に刻んだ出来事でした。
     子育てばかりからでなく、義父の長期入院生活や様々な医療現場から、私たち医療に携わる専門家が、もっと生活者視点で助言や情報提供はできないのだろうか、と考え続けてきました。そして、歯科衛生士だからこそ出来る事はなんだろう、と自問自答し続け、やっと答えが見えてきました。

     私が考えている予防歯科医院構想の中に、『スマイル・カフェ』があります。医院の近接に、歯科医院のメインテナンス来院者(メンバー)が集まるコミュニティの場です。そこは、メインテナンスを受ける方の待合室でもあり、メンバーの方々がいつでも気軽に足を運べる場所でもあります。健康に関する情報があり、趣味を共有できる仲間がいて、そして生活者視点でのアドバイスをすることができる歯科衛生士が常駐しているのです。
     今はネットで様々な情報が手に入りる時代になりました。しかし情報がありすぎて、その情報は正しいのか、自分に適しているのかなど、取捨選択も必要になります。『スマイル・カフェ』では、その人に合った正しい情報を提供し、安心感も与えていけたら、と考えています。

     患者さんの不安や心配事を察し、受け止めて、その方に合ったアドバイスができる衛生士が1人でも増えることを願っています。

    ~素敵な私たちでありますように~
    長岐 祐子