理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.3】
『歯があるのに [食べる] ことができなくなった義父』
義母は、良く働き良く食べる健康的な生活を送っていた方でした。そんな義母の健康を奪うきっかけになったのは、義父の7年間の入院生活でした。
では、義父の健康を奪うきっかけになった出来事は何だったのか。
義父は筋肉もあり、体格の良いがっしりとした男性でした。毎日畑仕事を行い、肉も魚もガッツリ食べる方でした。一見、健康的な生活を送っているように思えましたが、1つ心配事がありました。それは高血圧。家族は高血圧を心配していましたが、頑として病院に行かなかったのです。
そして63歳の時に脳梗塞で倒れました。一命は取り留めたものの、後遺症は最悪でした。寝たきりになり、話すこともできなくなり、食事をすることもできなくなったのです。
寝たきりのため体を動かすことができず代謝は低下、口腔機能も失ったために食事ができず圧倒的な栄養不足。点滴のおかげで生き延びている状態でした。
義父の口には補綴は入っていましたが、重症というほどの歯周病ではありませんでした。しかし、自分の歯がしっかり残っているのに、「食べる」ことができなくなってしまったのです。好きな物を食べることができなくなり、点滴で何とか延命。年々衰弱してくる義父の姿を見るのは本当に辛いものでした。
病院のベッドの上で7年間生きた義父の人生を振り返ると、病院に行っていれば早期発見、早期治療ができたのではないか、病院に行かなかったことが脳梗塞を招いたのだと考えてしまします。そして義母は、『1日でも長く生きていて欲しい』そう思いながらも、一方では『楽にさせてあげたい』という、矛盾した思いを7年間持ち続けたことが、フレイルのきっかけになってしまいました。
2人はもうこの世にはいませんが、義父、義母の様な生き方に苦しみ、悩みを抱えている人たちは世の中に大勢いると思います。
私が歯科衛生士としてできることは、患者さんに同じような生き方をさせないこと。二人の亡くなり方を教訓に、患者さんに訴えていかなければならないと思います。
血圧が高くても日常生活にさほど支障はない方もいるでしょう。「病院に行かない」選択をすることは、その人の自由です。しかし、「病院に行かない」結果、どのような病気を招き、どのような亡くなり方をするかまでは、自分では選べません。「病気」は自分自身だけでなく、家族を巻き込み苦しめてしまいます。
歯科衛生士は、医者でもなければ看護師でもありません。なので病気の診断はできません。しかし、口腔内の変化から患者さんの身体の異変に気づくことはできます。身体からのSOSを歯科衛生士が見つけることで、患者さんを健康に導いていく事ができるのです。
口腔内から健康を考えることができる衛生士が、『予防歯科』を確立できるキーパーソンになると私は信じています。
~素敵な私たちでありますように~
長岐 祐子
臨床に役立つ「患者教育」と「行動変容」
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