理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.9】
『病院や歯科医院はダメだしをもらう場所?』
1983年に歯科衛生士になり6年間働きました。その後、子育てのため7年間歯科業界から離れました。東京から秋田に嫁ぎ、近隣に頼れる親戚もいなかったため、初めての子育ては不安だらけでした。我が子が熱を出せば心配であたふたし、嘔吐や下痢をしたらオロオロし、直ぐにでも救急外来に駆け込みたくなるほど不安だらけの毎日でした。
子供を病院へ連れて行くと、私のような新米母親に優しく助言してくれる看護師も多くいました。当時の私の心配や不安を受け止めて共感してくれたことで、不安感が和らいだことを覚えています。
その一方で、機械的な対応で決まったセリフを言っているだけのような看護師も多くいました。また、『◯◯するから、それがダメ!』と強い口調で注意する医師も多く『子どもを病院に連れていく= 医師に注意されにいく』といった母親としてダメだしをもらいにいくようなものでした。
今でも覚えているのは、2歳になった2番目の子をむし歯にさせてしまい、歯科受診した時の事です。歯科医師が母親の私に『甘くて柔らかい物ばかり食べさせているからだよ!オヤツにスルメを食べさせて歯磨きしっかりして!』と指導を受けたことです。子育て中で、歯科衛生士としての仕事をしていませんが、私は歯科衛生士です。そんな教科書的な内容は重々理解しています。
1人目の時はおっかなびっくり子育てしてきましたので、オヤツは果物やお芋などお菓子でないものにし、ジュースも特別な日のみにし、歯磨きも徹底していました。しかし、2人目になると、上の子の世話をしながら下の子を育児になります。その為、外出中や人と会っている時など、『ここで泣かれは困る』といった親都合の場面で、ついついお菓子を与えてしまったり、ジュースを与えてしまったり、徹底出来ない事がたくさんありました。
そんな毎日子育てに奮闘しながら、自分の子育に不安を持つ親の気持ちを無視した歯科医師の助言は、当時の私には悔しくてたまりませんでした。『私は相手の生活背景を見て助言出来る歯科衛生士になる』そう胸に刻んだ出来事でした。
子育てばかりからでなく、義父の長期入院生活や様々な医療現場から、私たち医療に携わる専門家が、もっと生活者視点で助言や情報提供はできないのだろうか、と考え続けてきました。そして、歯科衛生士だからこそ出来る事はなんだろう、と自問自答し続け、やっと答えが見えてきました。
私が考えている予防歯科医院構想の中に、『スマイル・カフェ』があります。医院の近接に、歯科医院のメインテナンス来院者(メンバー)が集まるコミュニティの場です。そこは、メインテナンスを受ける方の待合室でもあり、メンバーの方々がいつでも気軽に足を運べる場所でもあります。健康に関する情報があり、趣味を共有できる仲間がいて、そして生活者視点でのアドバイスをすることができる歯科衛生士が常駐しているのです。
今はネットで様々な情報が手に入りる時代になりました。しかし情報がありすぎて、その情報は正しいのか、自分に適しているのかなど、取捨選択も必要になります。『スマイル・カフェ』では、その人に合った正しい情報を提供し、安心感も与えていけたら、と考えています。
患者さんの不安や心配事を察し、受け止めて、その方に合ったアドバイスができる衛生士が1人でも増えることを願っています。
~素敵な私たちでありますように~
長岐 祐子
臨床に役立つ「患者教育」と「行動変容」
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