私の父親は昔から仕事で地方に行くことが多く、出張の度にお土産で神社やお寺でお守りを買ってきてくれました。

 某有名私立中学の受験前に、父から不思議なお守りを渡されました。それは真っ赤というよりどす黒い赤色で、文字や模様などが全く書かれていないお守りでした。

 「このお守りを大事に持っていけば必ず受験に受かるから。絶対に試験の日に持っていくように」と言われていたのですが、受験当日うっかりそのお守りをどこかに落としてしまったのです。

 私は案の定、受験には失敗してしまったのですが、一番悲しかったことはそんな父親が、その日以来どこかへ消えてしまったのです。


 あれから20年以上たちますが未だに会っていません。