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何もかもが嫌で捨て鉢になっていた頃、何故だか決まってジャンクなハンバーガーばかりを食べていた。まるで復讐みたいに安い油でギトギトなものを摂取して、だいたいその後、胃を壊した。心がボロボロになって一切食事がとれなくなったこともある。食べるという行為に罪悪感を覚えて、何かを口にすると吐き気がとまらなくなった。それらは全部、ゆるやかな自殺みたいなものだったんだと思う。気づいたことは、食べないと人は死ぬということ。涙目になった友人に監視されながら食べた卵豆腐で、湯気が目に沁みるとぶつぶつ文句を言いながらみんなでつついたキムチ鍋で、私はどうにか生き永らえた。独りでも自炊をして、美味しいものを食べようという気持ちになれたのはもう少し後のことだ。『かしましめし』は、食べることと生きることを描いた作品だ。

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最終更新日:2021-01-15 18:00
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