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自分で言うのもはばかられるが、だれも言ってくれないから言おう。わたしは律儀である。約束したことは守る男だ。
小学生のときは毎日宿題を忘れていた。だが大人になってそれが一変した。
約束を避けるようにしたのだ。出社時間などが厳重に決められている会社に勤めるのもあきらめた。
だが、人生にはやむをえないことがある。学部長をしていたころは会議を開く必要に迫られ、十回ほど招集した。そのうち、すっぽかしたのはわずか三回、実に七割もの出席率である。責任感が強いタイプなのだ。
何より、原稿の締め切りを忘れたことは一度もない。週刊誌など発行日が決まっている場合は、締め切りに間に合わなければ、最悪、連載のページが空白になる。万一空白ページになれば、わたしの場合、空白の方がメモに使えるから好ましいと思われる恐れがある。空白の方がマシだということに気づかせたくない一心で、締め切りを死守してきた。

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最終更新日:2021-04-16 18:00
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