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ツチヤの口車 第1250回 土屋賢二「苦み走った男」
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ツチヤの口車 第1250回 土屋賢二「苦み走った男」

2022-07-07 05:00
     若いころから苦み走った男になることを目指してきた。だが現実は厳しい。
     成熟した中高年になっても「言動が子どもじみている」と評された。「子どもじみている」は、「苦み走った」の反対語だ。
     せめて見た目だけでもと思い、雑誌に載せる写真を撮られるときは、眉間にしわを寄せ、臥薪嘗胆、幾多の苦難を乗り越えてきた男の顔つきを作る。するとカメラマンが「どこか痛いんですか?」と聞く。
     やむなく笑顔を浮かべると「表情が硬いなぁ」と言う。表情をゆるめてもゆるめても「笑顔になっていない」と言われ、これ以上は無理だと思うほどしまりのない顔になったときシャッターが押され、雑誌に載るのは、苦味も渋味も知性もしまりもないヘラヘラした軽薄男の写真だ。
     わたしが苦み走った男になるには障害が二つある。
     一つは体重だ。定年後、体重が着実に増え続け、最近になって、この地上に立ちたくない場所が二箇所増えた。鏡の前と体重計の上だ。そんな丸々と太った男が苦み走った男になることは定義的に不可能だ。 
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    週刊文春デジタル
    更新頻度: 毎週水,木曜日
    最終更新日:2022-08-05 18:00
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