歳をとると電話が怖くなる。だれかが死んだ、支払いが残っている、還付金が下りた、墓地を買えなどロクな電話がない。
 だが今日は特別だ。わたしの誕生日だ。友人からお祝いの連絡があるはずだ。だが待てど暮らせど一向にかかってこない。
 たぶん理由は、友人がいないからだろう。
 どいつもこいつも礼儀知らずだと、ふて寝した後、気づいた。 
週刊文春デジタル