暮れに、親しくさせてもらっている相撲部屋のお餅つきに行った。
 お相撲さんのついたお餅は、粘り気が強く本当においしい。アンコや納豆、キナコと三種類頬ばったうえ、大鍋のちゃんこ汁もいただき本当にお腹いっぱい。
 帰りにのし餅を二枚いただいた。
 帰ってそれを切りながら、しばし思い出にふける私。子どもの頃のお正月、どうしてあんなにたくさんのお餅を食べたんだろう。三ヶ日、家族が食べる数の切り餅をとりに行くのは私の役目であった。父親が六つ、母が四つ、私と弟が三つ。うちの中でいちばん寒い、階段下のダンボールの中、それをとって火鉢の網の上に置く。やがてぷっくりふくれていく切り餅は、今よりもはるかに大きかった。 
週刊文春デジタル