「これは『眼鏡バサミ』といって、持った時に小指をかける部分がついてない昔の理容バサミなんです。修業時代から使い始めて、もう90年以上になりますかねえ。刃を研いで使っているうちに、半分ほどの短さになってしまいまして」

 年季と誇りが詰まった鈍色の宝物を手に、箱石シツイさんが破顔する。1916年生まれの108歳。床屋の現役おばあちゃんだ。 
週刊文春デジタル