人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。

 もう、30年以上前になるかな、山形県の立石寺(通称・山寺)に行った時、山門の手前にある宝物殿で、寺に伝わる九相図(くそうず)を見たんだ。

 九相図ってね、野外に放置された死後の人間の肉体が朽ち果てていく様子を9段階に分けて描いた、かなりリアルで、とてもグロな仏教絵画のこと。

 死体が腐敗によるガスの発生で内部から膨張する1段階(脹相〈ちょうそう〉)に始まり、骨が焼かれ灰だけになる9段階目(焼相〈しょうそう〉)で終わる。

 そもそも死体の変貌の様子を見て観想することを九相観といい、その経典は奈良時代には大陸から日本に伝わっていたらしいんだ。 
週刊文春デジタル