ドラマや映画の中で登場人物が舞台に立つ、いわゆる劇中劇のシーン、一度は目にしたことあるんじゃないでしょうか。

 最近だと映画『国宝』における『曽根崎心中』。まるで1本の狂言を見たという錯覚に陥るほど圧倒的熱量を感じました。あの場面のために気が遠くなるほどのリハーサルを重ね、エキストラで客席を埋め尽くし、アングルを変え、メイクや衣裳を直しながら何度も何度も、おそらく何日もかけて撮ったんでしょう。それでも繋いだらせいぜい5分か10分にしかならない。恐ろしくコストパフォーマンスが悪いんです。

 台本に「劇中劇」と書くと、予算を管理するプロデューサーは苦い顔をする。

「本当にやります?」 
週刊文春デジタル